メイド長と夜空に浮かぶ光
商店街での支払いをドドランダ国王に肩代わりしてもらい、馬車に乗り再度丘の上にある城へと戻ったマモルと鷹の姿の天使長。先ほどとは違う部屋へと通された頃には空は夕日に染まり窓からは鉄で覆われた王都が赤く輝き神秘的な光景を前に見とれているとノックの音が響きマモルが返事をするとドワーフのメイドが入室して口を開く。
「本日はこちらの部屋をお使い下さい。部屋を出て右の突き当りには入浴施設もありますので外に待機しているものに一声を願い致します。そちらのベルを鳴らしていただければすぐにでも対応させていただきます」
そう告げると一礼して部屋をでるドワーフメイド。テーブルにはよく磨かれた銀製のベルとウェルカムフルーツなのか先ほど見た果実などが置かれている。
「一流のホテルにいるみたいで落ち着かないや……」
部屋の中はシックな色で統一された家具に見てすぐわかる高価そうな革製のソファー。天上はアーチ状で大理石のような高級感のある石材が使用され、魔道具なのかランプも淡い光を放っている。
「この部屋は少し仰々しいですね。気を付けなけれこの爪でソファーを傷つけてしまいそうですし、そろそろ元の姿に戻りましょうか」
光に包まれ元の天使長の姿へと戻ると振り向いたマモルに笑みを向け、テーブルに置いてあるスパイダーマンゴーを手にすると傍に置いてあるナイフで器用に皮を剥きはじめる。
「試食しましたが美味しかったですよね」
「ええ、果肉の甘みと酸味のバランスがよくトロリとした食感も素晴らしい果実でした。ただ、鷹の舌ではしっかりと味わえなかったので確認のため試食させていただきます」
スパイダーマンゴーはヤシのような高い木からぶら下がるように実をつけ、その実はマンゴーのような形と味をしており中心には大きな種がひとつは入っている。
皮の剥き方やカットの仕方はラミアのやり方を見ていたのか迷うことなく終えると皿に乗せマモルの前に置くとフォークに刺して自身の口に運ぶ。
「鷹のときよりも舌が敏感なのか鮮明な甘さと酸味、香りも良いですね。サルの魔物がこれを使い酒を作るといっていましたがドワーフも作っているのでしょうか……」
「あむあむ、どうでしょう。夕食のときにでも聞いてみましょう。ああ、聞いてもボクはまだ飲めないのか……」
まだ十二歳ということもあり成人前で飲酒は禁止されているマモルはガックリと肩を落とし、それを見て微笑みを浮かべる天使長。
「でもでも、梅酒であれば二十年以上も腐らないとか聞いたことあるし、成人まであと三年だから楽しみに待てばいいかな」
「ふふふ、その時は私も一緒に頂いても構いませんか?」
「もちろんです。天使長には本当にお世話になりましたし、現に今もお世話になりっぱなしで……こっちの世界の母親だと思っています……」
そう口にするとマモルは天使長から視線をまた窓へと向ける。赤い空が暗く変わり星々の光と半月が二つ浮かぶ世界は暗くありながらも明るさを保っている。
「母親ですか……天使である私には過分な栄誉です。我らが主様が魂だけをこの世界に引き込みどうするのかと思いましたが、こんなにも立派に青立ち……この成長を楽しみに毎日ゆっくりと成長するマモルを見つめることが楽しみへと変わり……ふふふ、あと三年もすれば成人になるのですね……」
背中を向けたマモルにギリギリ聞こえるかどうかの小声で話す天使長の言葉を受けながらマモルも天使長と共に天界での生活を思い出していた。
どんなときも優しく接してくれた天使長。この世界の文字や魔力の基本的な使い方に一般的な常識とかも教えてくれたな。毎日のように生活する中で家事全般を引き受けてくれて、戦闘訓練をするようになったら剣術の師匠相手に目をぎらつかせ応援というなの威嚇を放ち、魔法の師匠にも容赦なく殴りかかっていたなぁ……素手なら私は主様にだって負けませんと言い放ち創造の女神カルアミールさま相手に殴り掛かろうとしたこともあったっけ……
あれ、天使長は子煩悩というよりもかなりヤバイ奴なのでは?
天使長の優しさというフィルターを外して見てはじめて気が付いた現状に背を向けながら過去を思い出し考え込む。
「やっと戻ってきたようですね」
後ろから聞こえる声に思考を停止し顔を上げると夜空には白い光と赤い光が見え、こちらへと向かっているのが確認できる。白い光はエルエルでよく見れば白い翼が視認でき、もうひとつは赤く燃えるような光を放ちそれは複数確認でき、先頭を進むそれに続いているのか目を細め魔力を込めると見たことのない赤いトカゲと、その背に乗りきゃっきゃと喜んでいる小さな子供の姿に、凛とした直立姿勢のメイド服を着た羊の姿が目に入り苦笑いをする。
「エルエル以外にもいろいろといるようですが……」
小さく漏らした言葉に大きなため息とその後にポキポキという指を鳴らす音が耳に入りエルエルの身を多少なり心配するマモルであった。
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