はじめてのお買い物
指輪型のアイテムボックスから取り出された布製の財布。そこから女神が描かれた金貨を取り出す。
「この金貨は使えますか?」
まだ鷹に姿を変えた天使長が話したことに驚いているラミアとケットシーの商人たちだが手渡された金貨を見ると目の色が変わり顔を近づけ確かめる。
「ん? これはどこの国の金貨です?」
「ここいらの平原や近海ではドワーフが使っているドワナプラ硬貨かオークの国から発行される銀黒貨。珍しいところだとダンジョンで産出される共通貨や獣王国の銀棒貨にゃどは見たことあるけどにゃ~この金貨は見たことがにゃいのにゃ~」
「金の純度は高そうだけど買い物に使えるかといわれれば……」
「折角の太客が台無しにゃのにゃ~」
マモルがこの地に降りて初めて買い物だったのだが使えない金貨を持たされたのだと知り方を落とし、その姿に鷹状態の天使長はどうにかしなければと口を開く。
「待ちなさい! 金としての純度は申し分ないはずです! ここの国王に新たな通貨として認めさせるか、金としての価格で取引させれば買い物として成立するのでは?」
鷹からの提案に目を輝かせるマモル。商人たちは顔を見合わせドワーフの国王に硬貨を認めさせるという驚きの提案に何を言っているのかと呆れた表情を浮かべるが、後ろから急に声が掛かり振り返る一同。
「硬貨を認めるのは審査しなければならぬが、その会計は我が全額支払うので問題ない。マモル殿、どうか日が暮れる前に王宮へ」
声を掛けてきたのはこの国の国王であるドドランダその人であり、その横には宰相とゴブリン王国の使者であるランエボラ。もちろん警備のものたちがグレートフォースを連れずらりと並び顔を引きつらせるラミアとケットシーの商人たち。
「王宮にですか? エルエルが戻らないと精霊炉はどうにもなりませんし、日が暮れてもどこかの宿屋に宿泊しようと思っていたのですが」
「ですがではない。ワイバーンを討伐した英雄をその辺の安ホテルに泊まらせたら我々ドワーフが白い目で見られてしまう」
「手持ちの金貨があっても使えないのなら我々の接待を受けていただけると助かるのですが、どうでしょうか?」
宰相もドドランダ国王の手助けに入り正論を口にする。
確かに認められていない金貨をどれだけ持っていても支払いに使えないのであれば買い物はもちろん宿屋さんにも泊まれないし、下手したら貨幣の偽造とかの罪になるかも……転移の門さえ置かせてもらえば宿泊とか関係なく中で休めるけど……ここでごねて問題を増やしてもドワーフさんたちに申し訳ないよな。
「もしも、マモル殿を連れて帰らなければ我が妻に殺されるっ! どうにか、我を助けると思って、どうにか!」
深く頭を下げるこの国の最高権力者の姿にラミアとケットシーの商人はもちろんのことマモルやそれを取り囲み警備する兵士たちも顔を引きつらせ、巻き込まれているランエボラもどうしてこうなったのだろうと街中をグレートフォースに乗せられ爆速で探し回り、宰相だけは落ち着いた表情を浮かべマモルの肩に止まっている鷹見つめる。
「えっと、わかりましたけど、まずは頭を上げてください。ここの支払いも結構な額になるのですが本当に任せても宜しいのですか?」
「ああ、構わない! 恐らくだがその手持ちの硬貨も審査を落ちることはないだろう。もし落ちても適正価格でこちらで買い取らせてもらう! そうすれば生活しやすくなるだろう!」
早口で捲し立てるよう意見を口にする国王。フリーズする商店街。手に持っていた金貨を宰相に渡し「お願いします」と審査してもらうマモル。鋭い瞳で首を振り警戒する天使長。
「明日には審査し終えて見せますぞ。今日はもう日も落ちるのでどうか用意した馬車に乗って王宮へお願いします」
「はい、お願いします。っと、その前に商品だけ受け取ってもいいですか? 試してみたい料理とかもあるので」
宰相が優しい笑みを浮かべ金貨を受け取りマモルの言葉に再起動した商人たちは急いで購入希望の商品を用意する。
「ま、マモルさまはいったいどれほどの人物にゃのにゃ~?」
「ワイバーンを討伐した英雄で、ドワーフの国王が頭を下げ、喋る鷹を従えている髭のないオーク?」
「太客だにゃ~」
「それには違いないね! すぐに帰って商品の補充がしたいけど……」
「予定通りにこの街に宿泊するのにゃ」
「ああ、疲れたからねぇ……ワイバーンが討伐された噂話は聞いていたけど……」
「にゃ~これからはもっと交流が増え貿易が活発化するのにゃ~稼ぎ時にゃのにゃ~」
ケットシーの商人の言葉に互いに頷きこれから訪れるだろう貿易の時代に向けやる気をみなぎらせる商人たち。
「これですべてですにゃ!」
「これだけの量なら警備兵さまの力を借りれば運べ……凄いアイテムボックスだね……」
一瞬にして大量の食品が指輪型のアイテムボックスに収納される光景に再度目を見開く商人とドワーフたちなのであった。
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