ラミアとケットシーの商品
「これが花酒に使われる実です。マンイーターと呼ばれる食虫植物の実で独特の香りと仄かに甘く酸味が強く薬や酒に使われています」
「マンイーターはその実の香りで他の魔物やひとを呼び蔦で絡め捕って根本の消化液が入った袋に入れて溶かすのにゃ。その消化液も新鮮なのもなら薬や錬金術の素材になるのにゃ」
「恐ろしい果物ですね……」
「魔物使いがいれば襲われることなくその実を採取できますし、あらかじめ棒を投げて蔦を握らせておけば身を安全に採取することも可能です。ただ、それをし過ぎるとマンイーターが弱ってしまうので定期的に肥料となる魔物の過食部分以外やクズ魔石などを蔦に巻き取らせ養分を与えた方が美味しい実を付けますね」
大量に籠に入れられている青い実であるマンイーターの果実の説明を受けるマモル。鷹の姿になったメイド長はおとなしくその腕に抱かれており安全だと感じた商人から色々と説明を受け買うものを選んでいる。
「こっちの海の魚も見るのにゃ! にゃ~の生まれた海沿いの村では多くの塩が取れ魚を捌いて塩をして天日で干すのにゃ! 他にも柱と呼ばれる貝や小魚を干したり魚を発酵させたタレなんかもあるのにゃ! 岩塩だって売っているのにゃ!」
ザルの上にはホタテの貝柱を乾燥させたものや、煮干しのように一度煮たものを乾燥させた小魚や、魚醤のようなナンプラーに近い壺が並び、マモルの目を引いたのは乾燥させた海藻で目を輝かせている。
「その海藻はどうやって食べているのですか?」
「これにゃ? 昆布だにゃ! 小さくちぎって口に入れておくと美味しいのにゃ。故郷を離れて行商するケットシーは誰でも持っているのにゃ~売り物として置いていても買うのは同族ぐらいだにゃ。この小魚の干したのとかもそうだにゃ」
商品であるだろう並べていた煮干しを手に取り口に運ぶケットシーの商人。それはラミアの女性も同じようでバナナに似た果実の皮をむいて口へと運ぶ。
「遠くから行商をしているのに新鮮な果実なのですね」
「ラミアの集落はすぐ近くの森だからね。ワイバーンも森の中に入ることはないし、入ったとしても毒のある果実が多いから口にはしないのさ」
「ここに並ぶ果実は毒がないので安心してください」
手のひらサイズの蜘蛛の形をした果実が目に入り一瞬疑りたくなるが、それを察したラミアの商人がナイフを手に取ると器用に皮をむくと黄色い果肉が姿を現し、串に刺してマモルへと向ける。
「食べたことがないようだからね」
「酸味が少なくて甘いからオークたちの方が喜んで食べますよ」
「ありがとうございます。オークさんたちとも交流があるのですか? あむあむ……甘いですね」
「鳥さんには魚をあげるのにゃ~」
ケットシーが煮干しに似た小魚を鷹の姿に変身している天使長へと向けるがその顔を横に反らして拒否の姿勢を取り、ケットシーは悲しそうにそれを自身の口に入れマモルは食べていたそれを差し出すと器用にクチバシで突いて口へと運ぶ。
「美味しいだろう。これはスパイダーマンゴーと呼ばれ木からぶら下がるように育ち、サル系の魔物が好んで食べる」
「この実を巣に持ち帰って酒を作ることもあるらしいです」
「集めた果実が偶然に発酵して酒になるのだろうけど、サルの魔物もドワーフと同じように酒が好きなのかもね」
ラミアの女性の笑い声に釣られて笑うケットシーたち。
「えっと、それではこれとこれを買えるだけ、あとは適当に二つづつお願いします。塩漬けの魚は二匹と貝柱や小魚と昆布は多めに買えますか?」
笑っていたラミアの商人が一瞬フリーズし、その間にケットシーの商人は指を折りながら口角を上げる。
「ちょ、マンイーターの実とスパイダーマンゴーを買えるだけだって!?」
「帰ればまだまだあるから急いで戻ってまた売りに来なきゃだね!」
「にゃ~の嬉しい悲鳴だにゃ! 金貨に届く売り上げになるのにゃ!」
「太客だにゃ! 特別に魚醤もおまけしてやるのにゃ! 癖になる味がするのにゃ!」
ラミアたちは嬉しさよりも驚きが勝り、ケットシーは素早く商品を風通しの良い編まれたかごに入れ始める。
「マンイーターの実をそんなに購入して花酒を作るのですか?」
「そうですね。お酒にしてもいいのですがボクも飲めるようにアルコール抜きで漬けて梅ジュースに似たマンイーターのジュースが作れるシロップを作ります。海鮮は貝柱や煮干しに昆布で出汁を取ってスープにしてもいいかもですね」
「そうなると塩漬けの魚は塩抜きをしなければですね」
「一晩水に浸けて塩を抜いて昆布で巻いて昆布巻きとかも作れるかな~ん? 手が止まっていますが……」
「しゃ、喋っているのにゃ!?」
「喋る鳥は見たことがあるが会話が成立するのは初めて見たね……」
オウムのような喋る鳥を見たことがあっても、鷹のような鳥が流暢にしゃべり会話が成立している状況に驚くのは無理もないだろう。
「この子が優秀なので会話が成立しているだけですから深く考えずに会計をお願いします」
現実逃避気味にそう口にするマモルは指輪のアイテムボックスを起動して金貨を取り出すのであった。
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