王妃と貴賓室でお茶を
玉座の間の控室は来賓を招くことが多いのかドワーフの歴史を精巧な石画で掘り出されており見るものを楽しませ、芸術性の高い剣や槍に斧や鎧や盾などが並んでいる。更には黄金の輝きを放つ宝石や銀色をした鉱石でありながらも神秘的な輝きを放つミスリルと呼ばれる神銀に、オリハルコンと呼ばれる金に似た色をしながらも貴重性は遥かに高く錬金術師の憧れが飾られニヤニヤと表情を変えるエルエル。
「ミスリルやオリハルコンが気になりますか?」
メイドのひとりが王妃の紅茶に数滴の花酒と呼ばれる梅酒に似た香りを放つ酒を入れ、それを受け取り満足そうな笑みを浮かべ口を開く。
「どちらも貴重な金属なのねぇ。ミスリルは魔力の流れをスムーズに伝える性質とどの属性とも相性がいいのねぇ。オリハルコンは魔力を閉じ込めため、ルーン文字との相性がよく硬度も高いのねぇ」
「エルエルさまは博学なのですね」
「もちろんなのねぇ。これでも鍛冶を手伝っていたのねぇ」
ぬいぐるみ形態のエルエルには身長が低く椅子に乗っても顔の半分はテーブルから出ない姿に、微笑みを浮かべながら信じられないといいう表情を押し殺しポーカーフェイスを作る王妃。マモルは花酒が入っていない紅茶を口に入れ、仄かな甘さに砂糖を入れられたのだと気が付きドワーフのメイドへ視線を向ける。
「あの、これは砂糖を入れて甘さを出しているのですか?」
「はい、特別な方法で砂糖を生成しております」
「特別な方法ですか?」
「はい、特別な方法でしてお教えすることができません」
微笑みを浮かべ砂糖の生成法を笑顔で断るが王妃が口を開く。
「英雄さまには特別にお教えします。紅茶や花酒に使われている砂糖は魔道具を使い生成しておりますわ。まだ貿易が盛んだった頃にダンジョンから発掘され我が国へと献上されたものですわ。確かオークの国の冒険者と呼ばれるものたちが発掘し王族が買取ったとか」
「砂糖を生成する魔道具があるのですか!? 凄いですね!」
「ええ、お譲りすることはできませんが魔力さえあれば大量の砂糖が生成できます。ただ、消費魔力が多いのが残念ですが」
マモルの食いつきにこの度の褒賞のひとつとして選ばれないようけん制する王妃。
「世の中には凄い魔道具があるのですね」
感心したように呟くと仄かに甘い紅茶を口にする。
「エルエルさま、もしよろしければミスリルとオリハルコンの原石をお持ちしますか?」
「よいのねぇ?」
「もちろんですわ! どれだけ高価で貴重だとしても加工できなければ無用の長物! いまでも少量が採掘され続けておりますが専用の炉が使えなく倉庫代わりの穴を増やす日々が続いておりますのよ。加工できなければ捨て置けばよいと思いすのに……」
「加工ができないのですか?」
「そうですのよ。もう百五十年以上も前に炉に火が入らなくなりミスリルやオリハルコンが生成できないのですわ。他にも高温で精製する魔獣の素材を加工するのにも苦労しておりますのよ。国宝である雷王の斧もそういった特別な炉で溶かしたクリスタルリザードの角を鉄と混ぜインゴットにして加工するのですわ」
ドワーフの秘伝を軽々と口にする王妃にメイドたちの表情が青ざめ、入り口を敬語している兵士も苦笑いを浮かべている。
「それって精霊炉のことですか? 精霊にお願いして融点の高い鉄を溶かして他の素材と合わせ精霊の魔力を付与するんだったかな」
ドワーフの秘伝のなかでもトップシークレットとなる炉の秘密を易々と口にするマモルに王妃の目が輝く。
「もしかしたらマモルさまの手に掛かれば精霊炉の復活が可能なのですか?」
いまドワーフの国が抱えている最大の問題である精霊炉の再稼働に向け糸口が見つかったかもしれないことに、駆け引きなしで疑問をぶつけニヤリと口角を上げるエルエル。
「マモルには無理なのでねぇ」
「む、無理なのですか!?」
「でも、我なら可能なのねぇ。炉の状態にもよるけど精霊との会話ぐらいなら得意なのねぇ」
椅子の上に立ちぬいぐるみボディーを反らし胸を張るエルエル。王妃は驚きのあまりに目を見開き固まり、マモルは口を尖らせながら王妃の再起動を待つ。
「ほ、本当に精霊炉の再稼働が可能なのでしょうか……」
固まる王妃に変わり紅茶を入れたメイドのひとり口にするとぬいぐるみ状の手で胸をポンと叩くエルエル。
「大船に乗った心算で任せるのねぇ。報酬としてミスリルとオリハルコンの原石、ではなく復活させた精霊炉で精製したインゴットを所望するのねぇ」
エルエルの宣言にまわりのメイドたちは驚きの声を上げ、入り口を警備していたドワーフの兵士は一礼するとその場を離れ皆に伝えに走る。
「本当に直せるのか?」
盛り上がる室内でひとり冷静なマモルはエルエルにジト目を向け、エルエルは口角を上げ一言「任せるのねぇ」と口にするのであった。
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