雷王の斧
「この無礼者どもめ!」
「何が無礼者か! 臆病者どもが!」
ドワーフたちが背中のバトルアックスを手に取り構え殺気立ち、マモルは小さくため息を吐き力ある言葉を開放する。
「イージスの盾……」
小さく呟くように発せられた力はすぐに魔法陣を展開させドワーフたちの間に半透明でありながらも黄金に輝くシールドが出現する。その数、十二枚。一瞬にして現れた黄金のシールド魔法に呆気に取られるドワーフたち。なかには手にしていたバトルアックスを落とすものや、あんぐりと口を開けたまま固まるものや、驚きのあまり後ろに倒れるものなどが多いなか、マモルを案内していたドワーフたちは驚きはしたものの無様な姿をさらすことはなくバトルアックスを杖のように持ち替える。
「見事なシールド魔法だ」
「これを武具で再現できたらのう」
「黄金に輝くシールドを再現するとして問題は金の硬度だな」
根っからの職人気質などワーフたちらしくマモルが発生させたシールド魔法を見つめ顎ひげに手を当て考え込み、水を飲んでいた馬が顔を上げ、驚いていたドワーフの騎士たちも顔を歪めながら立ち上がる。
「え、英雄殿! これはどういうことか!」
「我らの邪魔をしないでいただきたい!」
「逆賊を捉えねば、」
「誰を捉えるというのだ?」
激昂して叫ぶ赤鉄の騎士団たちであったがこの場に現れたひとりのドワーフによってその口が閉じられる。
「へ、陛下!?」
「なぜこのような場所に!」
あからさまな動揺を見せる様を見てエルエルがニヤニヤとしながらその様子を見つめ、マモルは陛下という単語を耳にしシールドを解除しようとするが陛下と呼ばれた男は大振りのアックスを手を掛け口を開く。
「英雄殿! 少しだけ待ってくれ! この雷王の斧でシールドが砕けるか試してみたい!」
国王の言葉に今度はマモルを連れてきたドワーフたちが呆れた表情を浮かべるが、マモルが無言で頷くとパッと表情を明るくしたと思った次の瞬間には雷王の斧に魔力を注ぎバチバチと放電を開始する。
「あれがクリスタルリザードの角を加工した雷王の斧だ」
「我らの国王であるドドランダさまが持つ国宝である」
「魔力を雷王の斧のため振り下ろせば雷撃が走るぞ」
急いでドドランダ国王以外が浮かぶシールドから離れ、馬たちが暴れないよう馬房の近くへと向かうドワーフたち。マモルとエルエルも少し離れると精神を統一しながら魔力がゆっくり充電されるのを見つめる。
「ふはははは、雷王の斧の威力! 試させてもらうぞ!」
大きく振りかぶると力任せに一枚のシールドへと叩きつける。雷鳴が響き渡りグレートフォースが驚き暴れるが素早く声をかけながら首をさすり宥め、羊乗りのランエボラも驚いて走り出しそうになる羊たちを宥める。
「これは驚いた……雷王の斧の一撃でもヒビすら入らんとは……」
雷鳴と砂煙を上げた一撃だがマモルのシールドはヒビひとつは入らずその場に浮かび続けており、その丈夫さに目を丸めるドワーフの国の国王ドドランダは雷王の斧を杖代わりにしながらシールドを見つめる。
「何と強固なシールドだ!」
「魔法のシールドは脆いと聞いたがウソだったのか!」
「あれほどの強度があるのであれば我らが作る盾は重く嵩張るだけではないか!」
赤鉄の騎士団たちの口からは敗北宣言のような言葉が漏れるなか雷王の斧を杖代わりに体を支えていたドドランダが体勢を崩しその場に倒れ、多くのドワーフたちが叫びをあげて一斉に国王の下へと集まる。
「いたたたた、少し無茶を……ら、らい、雷王の斧のがっ!?」
杖代わりにしていた雷王の斧が修復不可能なまでに砕け散り柄すらもヒビが走っている。
「我が国の国宝が!」
「雷王の斧がぁぁぁぁぁぁ!」
「終わりだ! ドワーフの歴史が終わった!」
赤鉄の騎士団は国王のまわりで膝を付きならが砕けたそれを前に崩れ、グレートフォースを宥め終えたドワーフたちも衝撃を受けたのかそのまま固まっている。
「なんだか申し訳ない感じになったが……」
「申し訳ないとかじゃないのねぇ。ただただ盾が固く斧が弱かっただけなのねぇ」
「そうかもしれないけどオブラートに包む言い方とかさ」
「あれは武器と防具の戦いなのねぇ。そもそも戦場に出たら砕ける斧とか命を落とすだけなのねぇ」
「だからオブラートに……」
「え、英雄殿……エルエル殿のいう通りだ。戦場であったのなら武器を失いやられていたのだ。いたが……くぅぅぅぅぅぅぅ!!! 我が国の国宝をひとつ失った事実には変わりない! 元老院や妻への言い訳を皆で考えるぞ!」
ドドランダの叫びに崩れていた赤鉄の騎士団は顔を上げ意見を交わし言い訳を考えるのであった。
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