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ドワナプラ王国


 亀裂の走る赤い山に近づくとそれはさびた鉄で覆われた都市だと気が付き、壮大さに目を丸めるマモル。ドワーフたちは誇らしいのか胸を張りながら先導し山のような都市の説明を口にする。


「ここが我らドワーフが作り上げたドワナプラ王国! 都市は鉄製の屋根を付けワイバーンからの襲撃に備えておるのだ!」


「丁寧に油を塗っておるがどうしてもさびてしまうが、遠くから見れば赤く美しい山に見えただろう!」


「中腹には馬を休める馬房もあるからな!」


 山のように作られた都市には鉄製の屋根があり両脇を商店が並ぶ。多くのドワーフたちがざわめきながらドワーフに先導されるマモルとゴブリンであるランエボラに興味があるのか視線を向ける。


「この少年がワイバーンを討伐した英雄だ!」


 先導するドワーフの男が叫ぶと一斉に歓声が上がり、鉄製の屋根がその歓声を響かせ都市へと広がる。あまりの歓声の大きさに耳を塞ぐマモル。エルエルはぬいぐるみボディーなこともありギリギリ手が耳に届かずフラフラとマモルの頭上へと落下し、先頭を行くドワーフの男が手を上げると一斉に歓声が止む。


「すまぬ! これほどの歓声が上がるとは思わなかった!」


「皆も自由に空の下に出られると思うと嬉しく、感謝しておるのだ!」


「英雄殿、どうか許してくれ!」


 ドワーフたちもワイバーンが草原に現れてから不自由な暮らしを余儀なくされ、都市を隆起させ鉄で空を覆うというパワープレーで民の命を守ってきたのだ。その不自由から解放されたとなれば声が枯れるまで感謝を叫ぶものも多いだろう。


「えっと、羊さんも驚かなかったし大丈夫ですよ。エルエルだけは驚いたみたいだけど……」


 頭の上にフラフラと落ちてきたエルエルを掴むとそのまま羊の上に乗せ微笑みを浮かべ問題ないと口にするマモル。ドワーフたちは軽く頭を下げると市民たちに向き直り声を上げる。


「お前たちもわかっただろうがいわせてほしい! 皆で騒ぐと鉄の屋根が落ちかねない!」


「声がこもると耳がやられる!」


「我らが王の下へ案内するので落ち着いて待っていてくれ!」


 先導するドワーフからの注意にざわめきながらも理解した市民たちは軽く手を振ったり手を合わせ祈ったりしながら馬と羊に乗り足を進める五名を見送り、坂になった道には多くのドワーフが同じうようにマモルたちを見つめ、それは馬房のある中腹まで続いた。




「凄い都市ですね。山一つが都市になっているのは初めて見ます」


 馬房のある中腹へと到着すると開けた場所があり馬房とダートコースなのか山を一周できるスペースがある。グレートフォースたちから降りたドワーフは馬たちを休ませるべく近くの樽から水を汲み桶へ入れ、マモルとランエボラが乗っている羊たちにも水を分け与える。


「本来は平地に都市があり鉄の地下鉱脈があったのだ」


「二百年も前に魔法を使い強引に山へと姿を変えさせたのだ」


「ワイバーンから身を守るために都市一つを山にしたのだ。ゴブリンたちのように地下で暮らすには狭すぎたからな」


 水を飲む馬の背を優しく撫でながらワイバーン対策でこの都市が山へと変貌し、悲願である空を手に入れたことを改めて知ったマモルも水を飲む羊を優しく撫でる。


「あのワイバーンに二百年も苦しめられていたのですね」


「うむ、我らドワーフをはじめ、ゴブリンやオークにラミアなども空を奪われた」


「地下に住むものや、鉄で屋根を作るもの、森で暮らすようになったものたちもいる」


「自由に空の下で暮らせるようになれば、また往来もできるようになり貿易が活性化するぞ!」


「そうなるとやっぱり鉄製品の武器などを売るのですか?」


「うむ、それもあるが農具が売れるだろうな」


「空からの襲撃を気にせず農業ができるからな」


「そうなれば酒も多く作れるぞ!」


 ドワーフらしい会話にマモルとランエボラが笑い出しドワーフたちも笑い、そこへグレートフォースに乗った十名ほどの一団が到着する。装飾された鋼鉄製の鎧を身にまとった姿は騎士団を思わせ、優雅にグレートフォースから降りるとマモルの前で背を正す。


「ワイバーンを討伐された英雄殿とお見受けします!」


「その通りだが騎士団が今頃でてきて手柄の横取りか?」


 マモルをこの地へと案内したドワーフが一歩前に出て口をはさみ、同僚たちも同じようにマモルの前にでる。


「ええい! お前たちが連れてきたのは事実だろうと王の御前に案内するのは我ら赤鉄の騎士団の役目である!」


 鎧の奥からみせる瞳を釣り上げ今にも背にしているバトルアックスを手に取りかねない状況に苦笑いを浮かべるマモル。


「ゴブリンライダーたちに敬意を表しゴブリンたちの国へと迎えに走ったのなら理解もするが、ワイバーン討伐を信じることができず我らグレートフォース乗りに押し付けたではないか!」


「そうだ! ワイバーンを恐れるのは理解できるがゴブリンたちの言葉を信じることができず隠れていた卑怯者たちめ!」


「こうして連れてきたのは我らグレートフォース乗りだ! 仰々しい鎧などまといやがって! 邪魔だ! どけっ!」


 言い争いをはじめたドワーフたちに面倒くさいことになったと心の中でため息を吐くマモル。エルエルはふわふわと水を飲む羊から飛び立ち声を大にして叫ぶ。


「我の為に争うのはやめて!」


 一生のうちに一度は言ってみたいセリフだったのだろうがドワーフたちは手を止めることなく、互いに背中に装備されている斧に手を掛け構えるのであった。





 お読み頂きありがとうございます。

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