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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
33/46

こんいん?

 


「これがエビ天うどん……」


 目の前に運ばれた器には揚げられたエビが二本とネギにキノコが乗り、やや深い琥珀色下スープと底には面が沈んでいる。


「先ほど切る様子を見なければあまり食べたいとは思えないビジュアルですわね……」


「確かに別の生き物のようにも見えますわ……」


 クイーンたちの言葉にゴブリンキングも頷くが輸入でしか手に入らない小麦を贅沢に使い作られている麺は実際に見て知っており、勇気をもってフォークを器に入れ麺を引き出す。


「では、いただくぞ」


 自分を奮い立たせるように麺を睨みつけ声を掛けうどんを口に運ぶ。それを見たクイーンたちもスープを口にし、エビ天を口にする。


「これは凄い! ワイバーンで作られたスープがうどんに絡み複雑な味わい! うどんの食感もムニムニとしていて小麦の味と風味が残っているぞ! このうどんとスープが手を組み最後に残ったエビは……サックリとしながらもワイバーンのスープが染み込み……美味過ぎるぞ!」


 ゴブリンキングが叫ぶように感想を口にするとマモルと調理長であるゴブリーニはホッと胸を撫で下ろす。味見の段階で美味しいのはわかっていたがその味が受け入れられるかは種族ごとに異なるだろうし、何よりもうどんつゆに使った醤油が受け入れられるか心配だったのだ。


「このうどんの麺もワイバーンの出汁も凄いがエビ天が最高だ! この天ぷらという料理を我が国でもっと流行らせ独自の文化としたいぐらいだぞ!」


「それは素敵ですわね!」


「そうなると小麦の輸入量を増やさなければですわね」


「うむ、油も多く使うのだったな……空を取り戻せたのだ! これからは積極的に他の国と貿易してゆくぞ!」


 ゴブリンキングの叫びにコックたちも歓声を上げ、対岸の食堂で食事をしている一般ゴブリンたちにも声が届いたのか歓声を上げている。


「ワイバーンの鶏ガラが使い終わっても別ので代用できる方法を考えないとですね。うどんつゆに使うのであれば鰹節や昆布とかもお勧めだけど、どちらも海に生息するから……」


「この辺でよく食べられている魔物の骨をワイバーンと同じように煮込んで出汁を取ってみるほかないだろう。出汁という文化もしっかりと継承したからには後世に残させてもらう」


「そうしてください。美味しいものを食べられる生活は心の安定や喜びにも繋がります」


「うむ、その通りだな。小さな英雄であるマモル殿には空の覇者を討伐し、多くの料理を教えていただいた。その功績に我が国の食料の譲渡だけでは申し訳が立たないのだが」


「いえ、干したキノコやナマズにエビにカニだって美味しかったです。これ以上もらっては申し訳ないですよ。ああ、それとワイバーンはどこにだせばいいですか? 食堂に出してはアレだろうし、解体するのならまた地下へ持っていきますが相当大きいので出す場所を考えないとですね」


 ひとり腕組みをして思案するマモル。


「それは宰相と相談してくれ。それよりもどうだろう、我らゴブリンの誰かと婚姻を結んではどうだろうか?」


「こんいん?」


「うむ、まだ成人前だと聞いているがそれだけの武と知識に料理の才があればどこでも成功できる器の持ち主。マモル殿の気に入った娘がいれば嫁に嫁がせるが」


「そういったのはちょっと……自分にはまだ早いです。それよりも麺が伸びてしまう前にどうぞうどんを楽しんで下さい」


 そこからは逃げるように厨房へと戻りひとり隅で椅子に座り箸を持つエルエルに天ぷらうどんを作り始める。作るといっても天ぷらは揚り麺も茹でてあるので器に入れスープと具をのせるだけなのですぐに完成し、珍しく良い子に待っているエルエルへと届ける。


「七味がほしいのねぇ」


 目の前に置かれた天ぷらうどんを前にあって当たり前だといわんばかりの態度に少しだけムッとするが、近くで王族がうどんを食べていることもあり大人の対応で指輪のアイテムボックスからスマートに取り出すと目の前に置き、それを手に取り数度振ってから天ぷらうどんのスープを口にする。


「ん? 美味しいけどうどんつゆというよりもカモ汁? 鳥感が強いのねぇ。天ぷらはあむあむ……プリっとしていて美味しいのねぇ。でも、見た目がカニカマなのねぇ」


 大人の腕ほどもあるエビをまるのまま揚げ器に乗せるのは不可能であり、仕方なく十センチほどの長方形にカットしたこともあってか見た目が完全にちょっと大きなカニカマに見え、それを的確に指摘するエルエル。


 マモルもそう思っていたのか何ともいえない表情を浮かべるが、ゴブリンコックたちが味見をはじめ口にしたものたちが驚きの表情から笑顔へと自然に変わる様子にマモル自身の表情も自然と明るく変わる。


「種族とか関係なく美味しいものは美味しいし自然と笑顔になるのな」


「その通りなのねぇ。これだけ多くのゴブリンたちの笑顔を引き出したのは凄いことなのねぇ。きっと天使長も喜んでいるのねぇ」


 今朝がた怒られたエルエルは天使長の機嫌が回復しているのを祈りながら天ぷらうどんを完食するのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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