リララグとオークの村
オークの少年に案内されながら足を進めるマモルとぬいぐるみ型の天使エルエル。
「見張り台のおじちゃんたち気が付いたみたい! お~い!」
元気に手を振りながら足を進めるオークの少年リララグ。その後ろでマモルは魔力を左手に集中させ、いつでも発動はせられるよう辺りに視線を走らせる。
「先制攻撃が基本だが、相手の出方を見るねぇ?」
「いやいやいや、攻撃って! 用意した魔法だってシールド系のものだからな! 案内をしているリララグくんのこともあるし、不審者だと勘違いされても防御できるようにしているだけだよ!」
後ろで騒ぐマモルとエルエルの言葉に顔を引き攣らせながらも手を振り駆け足で木製の大きな門の下へと辿り着く一行。
見張り台のオークは突如現れた幼さの残るマモルと、ふわふわと宙を浮くぬいぐるみ姿の天使エルエルに戸惑いながらも声を掛ける。
「おい! リララグ! どうしてよそ者を連れて来た!」
「聞いてよ! この人たちはオレの命の恩人! あとあと、林に住み着いた黒狼を倒してくれた! 小さくも勇敢な戦士だ!」
大きく声を張り上げるリララグに見張りのオークは訝しげな瞳を向け、やっぱり疑われていると察したマモルは指輪のアイテムボックスから先ほどの漆黒の狼の頭部を取り出すと見張り台や塀の上から様子を見ていたオークたちからわっと歓声が上がる。
「住み着いて困っていたが……本当に討伐したのか……」
「知らせの鐘を鳴らす! 音が大きいから驚くなよ!」
見張り台に設置されたドラのような銅製の鐘を用意されていた木の棒で叩き、その音は花火のように腹の中にまで響くような衝撃が走る。と同時に五メートルはあるだろう巨大な門がゆっくりと動き始める。
防御魔法は必要なさそうだけど、オークさんたち意外とフレンドリーなのかな? 漫画やアニメのイメージだと短気で人間嫌い。それに豚の鼻や猪のような牙があったりするのかと思ったけど、豚っぽい耳以外はちょっと恰幅の良い人間と同じように見えるな……
ゆっくりと開いた門からは槍を持ち獣の皮で作られた防具を着込んだオークの戦士たちが姿を現す。どのオークも三メートルを超える大男でありその迫力は凄まじく顔を引き攣らせるマモル。リララグはそんな戦士たちに憧れているのか目を輝かせている。
「我らの子が世話になったようで感謝する! 小さな戦士よ!」
その言葉に丁寧に頭を下げるマモル。門の中からは歓声が上がり本当に快く出迎えられているのだと実感するが、オークの戦士の中には悔しそうにギリギリと歯ぎしりをしながら黒狼を睨みつけ手にした槍に力を籠めるものたちもおり恨みを買っていたのだろう。
「あの黒狼は最近現れ、あの林を自分の縄張りにして困っていた。何度か討伐に向かったが返り討ちに遭い酷い怪我を負ったものもいる。小さな戦士よ、もしよければ名を教えてもらえないだろうか?」
片膝を付き視線を合わせるオークの戦士。一緒に現れた十名ほどのオークの戦士たちも同じように片膝を付く。
「自分はマモルです。浮いているのはエルエルで、たまたま通り掛かったというか、逃げてくるリララグくんを見つけて助けただけです」
素直に現状を報告するマモル。
「感謝するがいいねぇ! 我が子オークの怪我を直し、襲ってくる黒狼に立ち向かった英雄であり天しぃごもごもご……」
「エルエルはちょっと黙ってようなぁ。せっかくいい感じに話が進んでいるあから厄介な設定とか暴露しないで、浮いた存在は素直に浮いていてくれ」
前に出て自分がどれだけ活躍したかを口にするエルエル。その口元を両手で抑え込むマモル。そして、その行動にきょとんとした瞳を向けるオークたち。
「様々な種族がいると聞いたことがありますが、マモル殿やエルエル殿の種族はどのような名なのでしょうか?」
きょとんとした表情から戻り興味が勝ったのか顔を上げ質問を口にするオークの戦士。
「もごもご、天もごもご、ごごごごご」
「自分は普通人族です。このエルエルという生物は種族という括りよりも不思議な生物だと覚えていただけたら、それよりもそろそろ立ち上がって下さい。リララグくんのお父さんに薬草を届けないと」
その言葉に近くにいたリララグは思い出したかのように走り出し、それを見たマモルは後を追いたげな視線を向ける。
「危険な人物という事もないようですので村のへの滞在を許可します。が、できる限り問題を起こさぬよう、伏してお願い致します」
確りと頭を下げるオークの戦士。まだ幼く見えオークたちよりも小さいマモルだが漆黒の狼を討伐する実力を理解し敬意をもって接しているのだろう。
「ありがとう、リララグ~待ってよ~」
村への入村を許されお礼を口にして走るマモル。その手にはまだ口を塞ぎ乱暴に抱えるエルエルの姿があり、オークの兵士たちは見送りながら笑いを堪えるのであった。
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