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助けたオークと女神に天使


 

「神さま、神さま、どうか父を、戦士リラグオをお助け下さい……」

 

 膝立ちで手を合わせ祈る少年の言葉を耳にしながらマモルは倒れた漆黒の狼をアイテムボックスへと収納し、ぬいぐるみはまわりに魔物の気配がないのを確認すると視線を助けた少年へ向ける。

 

「マモルは神ではないが、我こそは第十位界天使エルエルさまだねぇ! 首を垂れて信仰するがいいねぇ!」

 

 ふわふわと宙を浮くぬいぐるみ天使の言葉に目を開きその場で土下座のように頭を下げる少年。

 

「第十位界は見習いの位だからな。どうしてドヤ顔でそんな事を言い切れるのかね……」

 

 呆れた表情を浮かべ収納し終えたマモルは跪いている少年の元へと向かう。


「えっと、オーク族の子供でいいのかな?」

 

 その言葉に顔を上げ期待に満ちた表情を浮かべる少年。


「は、はい、オレはすぐ近くにあるオークタル村の戦士長リラグオの息子リララグ。薬草を探して林を見てまわって、うぐ、えぐっ……うえぇぇぇえぇぇん」

 

 まだ小学校低学年ほどの身長の少年は緊張の糸が切れたように自己紹介をしながら自身が危険な状況から脱した事と、その恐怖に今更ながら目の前に迫った死に震え声を出して涙する。

 

 「え、あの、ほら、怖くないよ~ほらほら、もうおっかない狼は倒したからねぇ~」

 

 「ぷっ、マモルだってその行動はどうなんだねぇ? ワタワタして情けないねぇ」

 

 泣いているまだ小さなリララグの姿に右往左往しながらも近くにオークの村があるという情報を受け自身の旅が始まったのだと実感を覚えるマモルであった。








 

「マモルは上手くやっているようですねぇ」


「誰かさんが異常なまでの魔力と剣技を教えたのもありますが……」


「魔力操作は貴女が教えたのでしょう?」


「剣技だって基本を教えたに過ぎませんが?」


「武具に魔力を通し強化する……そんな事ができる戦士がこの世界にどれ程存在するか……」

 

「普通に生活するには過ぎた力ですねぇ」

 

「いやいや、ほら、さっきのブラックウルフやクリスタルリザードは災害級の魔物と恐れられています!」

 

「新生活スタートが即終了になるところでした。我々の努力が水の泡にならず良かったかと……」

 

 大きなテーブルにはオークの少年を前にアタフタするマモルの姿が映し出されており、それを見つめるのはこの世界の神であるカルアミールと数名の美しい天使たち。エルエルとは違いぬいぐるみの姿ではなく八頭身の美女が円卓に揃いその瞳を向けている。


「ふふ、こうして見ると頼もしく育ちましたねぇ」


「頼もしく育ったのは事実ですが、日本の神々への感謝も忘れないで下さい。元はといえば主さまがマモルを……」

 

「そ、それは……でも、ほらほら、オークの子が立ち上がりましたよ」


「立ち上がりましたよ。ではありません! 地球観光で神力を暴走させたのが原因……確りと反省し神力を高め、日本の神々へ謝罪しなければです!」


「ううう、エルナちゃんは厳しいよぉ~インファラちゃんとジャスティルちゃんたち、助けてよぉ~」


 美しい女神なのだが助けを求める子供のようにまわりの天使に縋り付き、反省を促すよう声を上げるメイド服の天使からの威嚇に似た視線を受けた同僚天使たちは顔を引き攣らせくるりとその身を反転させる。


「そういや書類がまわって来ていたな」


「南に大きな歪みがという報告があったはず……」


「ダンジョンの管理について相談されていた気がするね」


 適当な言い訳を口にしながらその場から去る天使たち。それを涙ながらに見つめながら天使長であるエルナリーゼに手を引かれこの場を後にする創造の女神カルアミール。


 テーブルに映る地上の様子は立ち上がらせたオークの少年と言葉を交わすマモルの姿があり、オークの少年であるリララグの案内で足を進めその後ろを追うぬいぐるみ姿の天使エルエル。

 どこまでも続く草原と所々にある数十本の木々集まった林。先ほどのような巨大なトカゲや漆黒の狼などの姿はなく、羊のような白い体毛に覆われた草食動物が群れを成して草を食べ、木々の根元では数匹のキノコが日光を避けるように歩き出す。


 やっぱり自分が知っている世界とは違うよなぁ。オークといえば豚の顔をした大男で狂暴なイメージだったけど、頭の上にある豚耳以外は人間と変わらないね。もしかしたら豚っぽい尻尾がズボンのなかに隠れているのかな? 見たい気もするが少年のズボンを下ろさせるわけにはいかないし、見つめ続けてもヤバイ奴認定されちゃうよね……

 それよりもこの世界にしかない食材を見つけたいな……


 リララグのお尻から視線を変え、遠くに見え始めた小高い丘とその先にある木々で組まれた見張り台の姿にオークの村が近い事を知るマモルであった。





 お読みいただきありがとうございました。

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