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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
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最後のデザート



 羊のミルクを人肌よりも少しだけ高めに温めレモン汁を入れ攪拌する。すると鍋の中のミルクに変化が起きゴブリーニは目を凝らす。


「まるでチーズを作る工程に似ているな……」


「レモン汁を入れることでミルクのタンパク質が固まってフレッシュチーズになります。ゴブリーニさんはチーズ作りの名人とお聞きしましたので、デザートにはこのフレッシュチーズを使おうと思います」


「確かに作り方は近いかもしれないが食べたことはないな……味見をしても?」


「どうぞ、ボクもいただきますね」


 鍋を傾け布でこすと小さな塊が集まりカッテージチーズが完成する。癖がなく食べやすいこのチーズはサラダに入れたりクリーミーなパスタソースに使えたりデザートにも多く活用される。


「しっとりとして癖がないな……」


「この状態を食べられるのはチーズを作る人の特権みたいですね」


 ふたりで味見をしながらマモルは指輪のアイテムボックスを起動すると缶詰を取り出し封を開ける。


「モモ缶なのねぇ!」


 キッチンから追い出したエルエルがモモ缶を開封するとその上を飛び回り、マモルは眉間にしわを作りながら声をかける。


「埃が立つから椅子に座って待ってような。いい子にしないとわけてあげないぞ」


 その言葉に素早く反応したエルエルは急降下して椅子に着地する。


「これはモモの缶詰で甘い汁につけて保存しています。それをこうやってカットして、カッテージチーズを添えて、最後にはちみつを垂らして完成です」


「チーズがデザートになるとは……そのモモといったか? それもかなりの高級品なのではないか?」


「金額でいえばそうでもないですが、これも味見してみますか?」


「是非!」


 その言葉は予想外の方から放たれ、声がした方へ視線を向けると料理を運んでいたゴブリンメイドのひとりが目を輝かせている。数名いるゴブリンメイドのなかでもメイド長と呼ばれるまとめ役でありゴブリンキングですら頭の上がらない教育係の最上位者であり、そのひとが目を輝かせている現状では差し出さないというわけにはいかずモモをカットするマモル。


「これは……何とも……美味です……」


 うっとりとした瞳でモモ缶の味を確かめるゴブリンメイド長。他のメイドたちも味見を申し出てそれぞれに感動しているのか頬に手を当て余韻を楽しんでいる。


「やっぱりどの種族でも女性は甘味が好きですね」


「ああ、ついでにいえば力や発言力もな……」


 ゴブリーニとふたり分かり合えた気になりつつも最後の料理を完成させ、メイドに料理をお願いすると無駄のない動きでデザートを運び、エルエルもモモとカッテージチーズのはちみつがけを口にする。


「これはやばいのねぇ~自然と笑顔になるのねぇ~」


「甘みと酸味に塩味が調和すると美味いよな」


「そうなのね! 美味しいのね! 三つの味が合わさって無敵なのねぇ!」


 エルエルの叫びにメイドたちも深く頷き、それは運ばれたデザートを口にしたクイーンたちも目を見開き同じ感想を口にしていた。


「この果物もすごいけど、チーズの塩味に酸味とはちみつの甘みが合わさるとこんなにも美味しいのですね……」


「初めて食べるチーズですが癖がなくて食べやすいわ。是非ともマモルさまにお願いして作り方を教わってほしいわ」


「我には少し甘すぎるが、この桃といったか、実に美味い! この辺りでは見ない果実だが育てることができないものか……」


「マモルさまに聞いてみたらどうかしら? どの料理も素晴らしく未知の食材も使われていたわ」


「食材といえばワイバーンが討伐されただけではなく食せる日がこようとは驚きね。この国の食材だけではなく何か送れたらいいのだけど……」


「うむ、食材だけで喜んでいたが何かしらを考えるべきだろう。宰相はどう思う?」


 警備に紛れていた宰相が一歩前に出ると重い口を開く。


「恐らくですがマモル殿に金貨や財宝の類は喜ばれない可能性が高いかと、高い戦闘能力に加えて規格外のアイテムボックスを所有しておられる。その気になれば自身で討伐した魔物を売り金を得ることは可能……まだ成人でないことが悔やまれますな……」


 顎に手を当ててそう口にするとゴブリンキングが口を開く。


「成人であれば何か策があるのか?」


「はい、それはもちろんです。この国の娘と婚姻していただければマモル殿はこの地にとどまる可能性もでてくるでしょう」


 宰相の提案に深く頷くゴブリンキングとクイーンたち。


「まあ、マモル殿が気に入る娘がいればだが……」


「普通人族という種族らしいのですが文献にも残っておらず、我々ゴブリンとの子ができるかどうか……」


「うむ、あくまでもこれは提案の一つということで、他に策はないか?」


「勲章などを送るのも手ではと」


「うむ、勲章……」


 腕を組みながら思案するゴブリンキング。宰相も目をつぶり深く考え込み、クイーンたちは食べ終えた皿を見つめ鼻に抜ける桃とはちみつの香りを名残惜しく楽しむのであった。







 お読み頂きありがとうございます。

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