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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
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ナマズとワイバーンのメイン料理


「カニを使ったサラダも美味かったが、このスープは絶品だな。丸められたエビの食感が楽しくスープはとても複雑で香り高い」


「これまで食べたことのあるスープで一番美味しいですわ」


「私はサラダが好きです。少し酸味のあるまろやかな味わいが癖になりそうです」


「うむ、どちらも美味かったな。その、あれだ、美味いのは確かなのだが酒が合うと思わないか?」


「お酒ですか?」


「マモルさまは未成年ですし、お酒が合うといった考え方はまだ早いのかもしれませんね」


「そうかもしれんがこれだけの料理に酒がないのはもったいないというか、前菜のときにも思ったがオークから輸入し何十年も寝かせた酒があるだろう。いまこそ開けるのはどうだろうか?」


 ゴブリンキングの言葉にクイーンのふたりは一瞬考える素振りを見せるが流れてきた香ばしい匂いに目をぱちくりとさせ、鶏ガラを煮詰めているコックたちからも声が上がる。


「今までよりもいい香りがするぞ」


「あえて焦がして料理に香りを付けているのか?」


「この香りは胃にくるな」


「少し甘い香りもするが……」


 鼻をスンスンと鳴らしながら奥へと続く廊下を見つめ、ゴブリンキングとクイーンたちも同じように期待しながら視線を向ける。コツコツと響く音に次の料理が運ばれてきたのだと心躍らせていると料理を乗せた皿と見慣れない形の細い壺が見えそれを凝視する一同。


「こちらはナマズの蒲焼になります。濃い色の方が醤油ダレ、白い方が白焼きとなり緑色したワサビを少量付けてお召し上がりください。どちらも大変酒に合うとのことで、マモルさまからお酒が飲める方はどうぞとのことです」


 テーブルには二種類のナマズの蒲焼が並べられ徳利とっくりには冷の日本酒が入れられている。初めて見るおちょこを不思議そうな目で見つめているとメイドが断りを入れ徳利に入れてある冷の日本酒を注ぎ例を見せるとクイーンたちも同じように入れ香りを確認する。


「とてもフルーティーな香りですわね」


「ドワーフが作る花酒ほどではありませんが香りが宜しいですわ」


「うむ、味も少し強めだな。どれ、蒲焼といったか? この料理と合うとのことだが、あむ!?」


 一口サイズに切り分けられた蒲焼を口に入れるとゴブリンキングは目を見開き静止する。ただ、咀嚼音だけが小さく聞こえ続け、最後に日本酒を喉へと流し込むと顔が緩む。


「ふはははは、これは凄いぞ! 我は昔からナマズの串焼きが好きだがそれ以上だ! 皮が付いたまま焼いては臭くなるかと思ったがまったく臭みなど感じぬし、皮と身の間の脂が美味い! この黒いタレも恐ろしく身の味を引き立て皮がぱりぱりと口の中で踊るのだ! 最後にこの酒を流せばすっきりとした味わいで口の中がリセットされる!」


「あら、本当に美味しいわ。皮の食感が香ばしいわ」


「昔からナマズ料理はあまり得意ではなかったけれど、この香ばしい匂いは癖になりそう。味も先ほど食べた前菜に使った酸味のあるソースにどこか似ているわね」


「白い方も美味いぞ! 少し辛いがそこがまた酒に合う!」


「シンプルに塩だけですのね」


「不思議な薬味ですわ……鼻の奥を刺激する……癖になりそうですわ……」


 ナマズの白焼きも好評でパリパリに焼いた皮と身の間から溢れる甘みのある脂をワサビの辛さが中和し、更には日本酒によって完全に脂と臭みが洗い流されすっきりとした味わいを感じたゴブリンキングとクイーンは自然を口角を上げる。


「ナマズ料理の可能性が広がったな」


「王様方がべた褒めする料理とか初めて見るぞ」


「いま煮ているこの骨だってどんな味になるか楽しみだな」


「次がいよいよワイバーンを使った料理だろ。この骨も使うのかな?」


「さすがに骨は食べられないだろ」


 コックたちが灰汁を取りながらに続けるワイバーンの骨の予想を立てるなか次の料理が運び込まれる。


「また見たことのない料理だが……」


「こちらはワイバーンのはさみ揚げです。中には羊のチーズが入っているので大変お熱くなっております。下のタレをかけ食してください。添えられた果実は酸味が強いのですがさっぱりと食べられるので絞ってお使いください」


 皿には千切りのキャベツとカットされたレモンにサックリと上げられた厚みのあるカツが三枚。その下には煮とろけたトマトベースのソース。


「羊のチーズということはゴブリーニの手作りかしら!」


「料理長はチーズ作りの名人だものね! ワイバーンのお肉も美味しかったし期待が持てるわ!」


 クイーンのふたりは躊躇なくナイフを入れ肉の間から流れ出すチーズにうっとりとした瞳を向ける。


「チーズの洪水だわ!」


 クイーンが叫び警備兵やコックたちの視線を集め、ゴブリンキングも観念したようにフォークを持つとカツを一刺しして噛り付く。


「熱っ!? むむむぅぅぅ!!!」


 一気にチーズが溢れ表情を悶絶させると口内を冷やすべく日本酒を一気に口に入れる。


「熱いと注意を受けたでしょう」


「ハフハフ……熱いけど濃厚なチーズとワイバーンの身から出る旨味が最高ですわ。下のソースも甘みがあってとても合いますわね」


「すまぬ……が、これでワイバーンを克服したも同然! もし次があるとしても臆さず完食してみせようではないか! がはははは」


 盛大に笑い声を上げるゴブリンキングにクイーンたちはジト目を向けすぐに口を閉じるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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