サラダとスープにメインの下準備
キッチンではマモルとゴブリーニが忙しなく手を動かしキュウリやレタスにニンジンを千切りに、茹でたカニの身を丁寧にほぐし、塩コショウとマヨで合わせる。
「本物のカニで作ったカニカマサラダなのねぇ」
「エルエル用にはちゃんとしたカニカマサラダを作れるがどうする?」
「態々魚のすり身にカニの味を付けて食紅で色を付けてからそれをほぐしてサラダにするとか、手間の掛かり過ぎる嫌がらせはやめるのねぇ」
「確かにな……やって味の違いがわかるか調べたくもあるが、これお願いします!」
完成したカニカマサラダを器に入れるとゴブリンメイドにお願いして簡単に料理の説明をする。メイドは一言も漏らすことなく聞き取ると洗練された動きで料理を運び、マモルは次の料理に取り掛かる。
「ゴブリーニさんはこの生のエビを細かく粘り気が出るまですってください。僕はそのスープに入れる具材を切ります」
「この棒で潰しながらすればいいのか?」
「それでお願いします」
指示された通りにカットされた生のエビをすり鉢に入れ丁寧にすり、マモルはショウガと長ネギを切るとオークの村で分けて貰ったイモの皮を剝きおろし金ですると目の細かい布に入れボウルに水と一緒に入れるとゆっくりと揉む。すると、ボウルの中が白く濁り目的のものが姿を現す。
「一々イモからデンプンを作るのねぇ」
エルエルからの指摘にこくりと頷き、指輪に触れアイテムボックスを起動する。
「これを二十分ほど寝かせ、水と分離させ乾かしたものがこちらになります」
指輪から出現した片栗粉の市販品を取り出す。これはマモルが常備しているもので前もって女神カルアミールにお願いすれば取り寄せてもらえる。いわゆるひとつのチートである。
「その片栗粉は昨夜作ったワイバーンのカラアゲに使ったものですな」
「あの時は説明不足だったので片栗粉の作り方も説明できたらと思って用意しました。水とカタクリがわかれるまで暫く時間が掛かるので今日はこちらを使いましょう」
市販の片栗粉を開封しゴブリーニがすり潰したエビと合わせ香味野菜と塩を入れ混ぜ合わせ、最後にぶつ切りのエビを入れ再度混ぜる。
「潰していないエビも混ぜることで食感にアクセントを加えるのですな……」
「潰しただけの食感もしっとりとして舌ざわりがいいと思うのですが、こうやって食感が残るようにするとエビ本来の弾力も楽しめるかなと思いまして」
先ほど蒸すのに使ったお湯を沸かすと干したキノコと長ネギに、スプーンを使い丸めながら潰したエビを入れ茹でる。
「これならエビ、ワイバーン、ナマズの旨味が合わさり複雑な味になりますな」
「干したキノコの旨味も加わるし、この長ネギからは甘さがでるね。味見してみようか」
エビ団子が鍋の中で浮き上がり火が入ったのを確認するとマモルとゴブリーニでスープの味を見る。
「これは何ともいえぬ味わいですな! 複雑に溶けだした旨味が合わさるとこうも美味しく感じられるとは驚きです!」
「味は足し算、旨味は掛け算とか聞いたことありますね。三種とキノコの相性もいいのかもな」
そういいながらも塩コショウを足し、最後にごま油を回しかける。
「香りが更に膨らみましたな!」
「美味しかったけどひと味たりない気がしてごま油を入れました」
スープ皿にエビ団子のスープを入れると控えていたメイドが説明を求め、マモルが丁寧に伝えると洗練された動きでスープを運ぶ。
「次はナマズですね」
「下処理は終わっています」
巨大なナマズは地下の処理場で塩を使い揉み洗いされ、その場で部位ごとに分け食堂へとゴブリンライダーたちに運ばれる。
「では、腹身は串に刺して炭火で炙ります。皮の方から焼くと余分な脂が落ちてさっぱり食べられますね」
そう口にしながら指輪のアイテムボックスを立ち上げるとBBQ用のコンロを取り出し炭を並べ始める。室内とはいっても床は岩肌が見えゴブリーニも問題ないと判断したのかマモルが取り出した鉄串に切り身を刺してゆく。
「ぼくよりも上手です……」
「似た料理を作ったことがありまして、羊肉を串で打ち香草をかけ焼き上げるのです」
「今度はそれを食べさせて下さいね」
「もちろんです! 今日だけで俺の料理の幅がどれだけ広がったか! はじめて見る調味料も多くありましたぞ!」
テンション高くナマズに串を打ち、マモルも小さな手でナマズに串を打ち、その後ろではエルエルが炭に火を入れる。
「聖なる炎よ、我が声に応え、すべてを浄化し、すべてを無に帰す光の炎となれ!」
詠唱が終わると無数の魔法陣が浮かび上がり聖なる光が白い炎へと変わりながら炭に火を灯す。その炎は白い光を発しながら揺らぎ神秘的な光景に帰ってきたメイドは膝を折り手を合わせ祈りの姿勢に入り、マモルは串を打ち終えたと同時にエルエルの頭を掴むとキッチンの外へと放り投げる。
「炭を浄化してどうするよ……」
ふうふうと息を吹きかけながら炭を均して白い炎をかき消し、慣れた手つきで小さな火種を竈から取り出し炭に移すのだった。
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