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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
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料理開始



 昨晩使用した狭い竈付きの部屋へと移動したマモルとゴブリーニは互いに打ち合わせをしながら手を動かす。


「前菜、サラダ、スープでメインですかね。キノコを水で戻しますね」


「そうだな。四品でいいだろう。王宮の料理人に作り方を教えることになったら……」


「別にかまいませんよ。みんなで美味しいものが食べられるようになれば喜ぶ人も増えますし、貿易だって上手くいきますよ」


「違いない……本当にマモル殿には感謝しかないな……」


「いやいや、自分だってナマズがあんなにも美味しいなんて知りませんでした。そうそう、ナマズ料理でやってみたい料理があって」


「ほうほう、マモル殿が作りたい料理とな……」


 まるで悪だくみをする子供同士のような表情を浮かべひそひそと打ち合わせをしながら手を動かす二人。身長も普通人族の子供とゴブリン族の大人なこともあり、つり合いが取れ余計にそういった風に見えるのだろう。


「まるでゴブリーニの息子が帰ってきたようだな……」


 古くからの付き合いであるゴブリンライダーのランエボラが呟くように口にすると一緒に中の様子を見ていたゴブリンたちも頷く。


「やっと成人になったばかりでワイバーンに襲われたな……」


「ゴブリーニのような料理人ではなく我らのようなゴブリンライダーを目指し……」


「子羊を庇って……」


「そんなことがあったのねぇ……」


 エルエルもその輪に加わりいまはもういないゴブリーニの息子に目を閉じ、流れてくる香りに鼻をヒクヒクさせる。


「カニを茹でる匂いなのねぇ」


「エビっぽい香りもあるな」


「肉っぽさもないか?」


「キノコの匂いだろう」


 エルエルとゴブリンライダーたちの意見はバラバラだが皆正解している。


 答えは簡単なことでボウルに入れられた湯で干したキノコを戻し、大鍋では背中を下にしたカニが茹でられ、その上では蒸し器に入れられたエビとナマズにワイバーンが蒸されているのである。


 竈の熱を効率よく使い縦に蒸篭せいろを積んでいる。熱以外にも無駄なく食材の旨味が蒸篭という調理器具によって湯気へとなり上がり、水となり下へと落ち一番下で茹でられているカニとともに最高の出汁が取れるだろう。


「これにヒビを入れて煮込んでみたいのですが」


 指輪のアイテムボックスから自身の身長よりも大きな骨を取り出し慌てて支えるマモル。


「そのサイズをというか……骨を食べるのか?」


「いえ、骨を煮込んで出汁を取りたいなと、自分の住んでいたところでは鶏ガラと呼ばれる方法で、骨を丁寧に洗って汚れを落として香味野菜などと似て旨味を引き出します。いまから煮ても二時間近く掛かるので王様たちには振舞えないですが、万能のスープの出汁になりますよ」


「それならやるか! 窯でなくとも煮ることはできる! おい、ランエボラよ!」


 目を閉じ鼻をエルエルやゴブリンライダーと共にヒクヒクさせていたこともあり驚きながらも立ち上がったランエボラは恥ずかしさから顔を赤く染めるが平然を装いながら向かい、マモルから説明され一メートル半はある骨と野菜の入った袋(ネギの葉やショウガなど)を受け取り部屋を出る。


「ハンマーで殴ってヒビを入れ、大鍋に入れ弱火でゆっくり煮込む。浮いてきた灰汁はこまめに取り除く……ハンマーで殴ってヒビを入れ、大鍋に入れて弱火――――」


 忘れないよう作業工程を呟きながら足を進め食堂のキッチンへと戻ると一斉に警備兵やコックたちの視線を集め、特に手にしている巨大な骨に目を丸める一同。ゴブリンキングとクイーンのまわりでは警戒した警備兵が庇うように前に出るが、ランエボラは気にした様子もなく待っていたコックたちに呟いていたことを説明すると大鍋に水を入れどこから用意したのかハンマーを構える。


「これはワイバーンの骨だ! 小さき英雄がこれを煮てくれと頼まれた! やり方は説明した通りだがやれるか!」


「任せろ!」


「ゴブリーニ料理長ほどじゃないにしても俺たちもコックだ!」


「憎いワイバーンを料理してやるぞ!」


 自分たちが生まれる前から頭上を死神のように飛び回っていた空の覇者であるワイバーンを料理できると息巻くゴブリンコックたち。その叫びにゴブリンキングとクイーンの顔色がやや青くなるのは仕方のないことだろう。


「ああああ、あれを本当に我らが食すのですか?」


「我らの同胞と大切な羊を襲ったワイバーンの骨……きゅぅ」


 クイーンのひとりがゴブリンキングに抱き着きながら恐怖し、もうひとりは現実に巨大な骨を前に気を失う。


「腹を括るしかないのかもしれんな……」


 あきらめたように呟くとまだ意識のある抱き着いてきたクイーンを優しく手を添え、視界の先で骨を叩くゴブリンコックたちの勇敢な姿に自身を奮い立たせるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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