謝罪メシとキングとクイーン
羊の乗り方とエルエルの機嫌を取り戻したマモルはお世話になったゴブリンライダーにとある提案をする。
「あの、もしよかったら自分が作る料理を食べて感想をいただけませんか?」
その提案にゴブリンライダーたちは頭を縦に振るがランエボラだけは右手を軽く上げ声を上げる。
「すまない。嬉しいのだがゴブリーニだけでも誘ってよいだろうか。後から泣き付かれたらかなわん」
ランエボラからの言葉にまわりのゴブリンライダーは笑い声を上げ、マモルも笑顔で了承するとゴブリンライダーのひとりが知らせてくると羊に乗り走りマモルの頭の上ではニヤニヤと口角を上げるエルエルが口を開く。
「謝罪メシ、楽しみにしいてるのねぇ」
先ほどエルエルの口元を乱暴に掴んだこともありマモルも反省しているのか素直に了承すると頭の中でメニューを考えはじめる。
ゴブリンさんたちはナマズやエビにカニといった魚介類にキノコをよく食べている。草原の端の方には葉野菜を育てているけど大々的に農業はしていなかったな。やっぱり、ワイバーンの脅威があって羊の放牧以外にはあまり外に出なかったからだろうけど……
そう考えるとナマズやエビを使った料理が喜ばれるかな……
ワイバーンを使ったカラアゲとかは料理長のゴブリーニさんと作って好評だったから油を使った料理……いっそのこと一羽のワイバーンをゴブリンキングさんに譲渡してもいいかもな……
「ハンバーグ、オムライス、タンシチュー、エビフライ、ホットケーキ、ラーメン、カレー、ピザに寿司」
頭上から降り注ぐアイディアという名の欲望を言葉にしたエルエルの助言を振り払いながらランエボラに案内され渓谷へと入り、ゴブリンたちの歓声を浴びながら昨晩料理を振舞ってもらった食堂の奥へと足を進める。
途中、許可を取りに走ったゴブリンライダーと合流してゴブリーニから許可という名の感謝を伝えられ心置きなく料理ができるなと自然と笑みを浮かべるマモルと頭上で邪悪な笑みを浮かべるエルエル。
目的の食堂の場所は渓谷の中でも上部に位置していることもありすぐに到着したのだが昼時を少し過ぎたにしては静かで、食堂のドアを開けると見慣れはじめたゴブリンたちではなく髭を生やした笑顔のゴブリンキングとその妻であるクイーンがふたりが席に着き、護衛だろう兵士たちが壁際に整列し、ゴブリーニがあからさまに困った表情を浮かべている。
「小さき英雄マモル殿、すまぬが待たせてもらった」
そう口にしながら立ち上がるゴブリンキングとクイーン。マモルも急いでゴブリンキングの前に走り膝を折ろうとするがすぐに静止の声がかかる。
「こちらが勝手にしていることだ。畏まらないでくれ」
「そうです。そうです。ささ、こちらの椅子にかけてください」
「こちらが頭を下げるべき英雄さまなのですから、ささ、エルエルさまもどうぞお掛けになって下さい」
王と王妃というこの国のトップスリーからの歓迎に昨日会った時よりも砕けた態度で助かるが、昼食を作りたいマモルは苦笑いを浮かべる。
「えっと、ここに来たのには理由があって」
「それは知っておるよ。昨日も聞いたが珍しい食材を探す旅をしているとかだったな。して、それをランエボラたちに振舞うのだったかな?」
正確にマモルの行動を理解しているゴブリンキング。その横では微笑みを浮かべるクイーンたち。
マモルもすぐに理解する。未知の料理が食べたいのだろうと……
「それならご一緒、ご一緒だと不敬になるのかな? えっと、奥でゴブリーニさんと料理を作りますので試食なさいますか?」
マモルの提案に目を輝かせるクイーンたち。ゴブリンキングは椅子に掛けながらテーブルに手を付き深く頭を下げる。
「すまんぬな……」
その態度にクイーンたちに頼まれゴブリンキングが頭を下げているのだと理解し、ついでにと気にしていたことを口にする。
「いえいえ、多くの食材を譲っていただけましたし、ゴブリーニさんの料理も参考になりました。そうそう、ワイバーンを二体討伐したのですが一体は献上したほうがこの国の威信に使えませんか? 羽は黒く美しいものでしたし、爪やクチバシは武器にも防具にも加工できます。もちろん肉もお譲りしますが」
マモルの提案に数度瞬きをしたまま固まるゴブリンキング。クイーンたちも若干目を泳がせていたがその視線は近くで笑いを堪えるゴブリーニへと向かう。
「そ、それなら頂戴する。ずっと苦しめられてきた天敵だが、国王さま方に俺が料理して天空の覇者ワイバーンを食で討伐させるぞ!」
若干引いていたが後半になるにつれ口調も元に戻り自信を取り戻したのかやる気に満ちた表情へと変わり、マモルも急なゴブリンキングの来訪を逆手に取りドッキリ的なサプライズができたことが嬉しかったのだろう。頭上のエルエルも笑い声は上げていないがニンマリとした表情を浮かべている。
「では、料理の準備をしてきますのでゆっくりとお待ちください」
席を立ち頭を下げ奥へと向かうマモルとそれに続くゴブリーニ。その背中を見つめながらゴブリンキングは近くで待機している宰相にギギギと首を向けるのであった。
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