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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
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ナマズとエビとカニの料理


 空が黒く染まり星々が輝く時間になると多くのゴブリンたちは光が漏れる食堂へと集まる。数が多く数ヵ所に分かれてはいるが家族ごとのテーブルに分かれたり独身同士でテーブルを囲んだり男女でのペアシートで食事をしている。


「家というか部屋はいっぱいありましたが食事は皆で集まるのですね」


「数が多くひと家庭ごとにキッチンを作っては燃料がいくらあっても足りん。煙が渓谷をにたまり煤だらけにもなるからな」


「メニューは三種類にしぼって無駄がでないよう作られている」


「まあ、これから出す料理とは違うがな」


 ゴブリンライダーに案内されたのは渓谷の上部にある開けた大空間で、羊たちが迷い込まないよう柵が設けられ、それが対岸にも複数あり巨大な食事処となっている。すぐ上が地上なこともあり窓からは星空が見える。


「目的地はここを抜けた先だ。見つかるとうるさいから早く抜けるぞ」


 こそこそと多くのゴブリンが食事している場所を壁伝いに進んでいると気が付いたひとりのゴブリンが声を上げる。


「英雄さまだ! 小さい英雄さまだぞ!」


「いっぱい奢らせてくれ!」


「空の覇者を倒した英雄さまだ!」


「あんたのお陰でまたドワーフたちと交流が持てる!」


「小さき勇者に感謝を!」


 一気に騒ぎはじめたゴブリンたちに軽く会釈だけして逃げるように速度を上げるマモルたち。ふわふわと飛んでいるエルエルが足を止めそうになるがその足を掴み速度を上げ、コック姿のゴブリンが手招きする入口へと逃げ込むように入室する。


「空の覇者を討伐した小さな英雄殿が逃げるようにやってくるとは驚きだ!」


 そう声をかけてきたのはこの場にいる誰よりも大きく丸いゴブリン。


「先ほどは助かった。紹介しよう、この国一の料理長として皆の食事を作っているゴブリーニだ。チーズ作りの名人でもある」


 紹介されたゴブリーニは大きな体で頭を丁寧に下げ、マモルも礼を返すと視線が合いニッカリと笑う表情に安心感を覚える。


「少し狭いが我慢してくれ」


 厨房ではまだ料理をしているゴブリンのコックたちが汗を流しているが、ゴブリーニは隣の部屋へと続く細い道へと入り更に奥の部屋へと足を踏み入れる。


「ここなら邪魔が入らずに料理を作りながら説明できる」


 厨房から更に奥にある部屋に六畳ほどのスペースなのだが煙突と竈があり、更には多くの鉄製の調理器具が壁に掛けられている。中央にはテーブルがあり数脚の椅子とガラス製のピッチャーには果実が輪切りにされた水が置かれている。


「お気遣いありがとうございます」


「気にするな。小さな英雄殿に料理を出せる。こんなに嬉しい事はないからな! ガハハハハ!」


 笑いながら竈の温度を確認すると湯を沸かし先ほど地底湖から取ってきたナマズ料理に取り掛かる。


「一口サイズにしたナマズに酒を揉み込み生臭さを消し、塩と香草をあえてザルに乗せ蒸す。背わたを取ったエビも一緒に蒸して一品。蒸して旨味の出た湯には多少焦げるまで焼いたエビの殻を入れ、身を潰してボール状にして根菜と煮てスープにする」


 手際よくナマズとエビが料理され部屋には美味そうな香りが漂い自身のお腹の音に気が付き両手で抑え、頭上でもグルルルルと地鳴りのような胃の音を鳴らすエルエル。


「カニは生きたまま湯に入れて黄色く変わったら少し待ち取り上げ、このドワーフ製のナイフで硬い殻に切り込みを入れると剥きやすくなる」


「ごつごつと棘がありますが、そのナイフだとスッと切れますね」


「ああ、これはドワーフの中でも特級技師が作ったミスリル製のナイフだ。魔力を通すと刃先が輝き切れ味が増す」


 手にしているナイフをマモルに見せ、それを受け取り掘り込まれた刻印や埋め込まれた魔石に刀身を見つめる。


「芸術作品としての価値も高そうですが切れ味を見てしまうと実用したい逸品ですね」


「その通りだな。このカニなどは特に硬く、昔はこの殻を使い鎧を作っていたそうだぞ」


 ナイフを丁寧に返すとニッカリと笑い茹でたカニが更に乗せられテーブルへと運ばれる。


「ナマズとエビの蒸し物、ナマズとエビの出汁が出たスープ、茹でカニだ。スープには干したキノコを戻したものも入れているから奥深い味わいだぞ」


 テーブルに並べら湯気を上げる料理を前にグルルルルとお腹を鳴らす一同。エルエルに至っては既に大きなカニのハサミを手にフォークを差し入れほじっている。


「丁寧な説明までしていただいてありがとうございます」


「うむ、気にせず食べてくれ」


「我々もいただくぞ!」


 案内を買って出てくれたゴブリンライダーたちと共に料理を口にする。湯気を上げるナマズの香草蒸しを口に入れると爽やかな香りと共にナマズのこってりとした脂でありながらもシットリとした淡白な身の味が広がる。泥臭さはまったくなくトロリとした舌触りのよい弾力が楽しめる。


「これ美味しいです!」


 テンションを上げたマモルの感想に数度頷き手応えを感じる料理長のゴブリーニなのであった。




 お読み頂きありがとうございます。

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