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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者:
第二章 ゴブリンの王国
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ナマズとエビとカニ


 岸に上げた巨大なナマズに止めを刺すと慣れた手つきで頭を落とし内臓を取り出す。取り出した内臓はまた池に戻すと大量の水しぶきとともに現れたナマズとエビに捕食され、その食べ残しはカニなどが残さず食べ処理をする生態系が完成している。


「ここからは塩をしてぬめりと臭みを落とし、皮を剝いでから料理になる」


「小さき英雄殿は見学するか?」


 多少ショッキングな解体現場であったが生前は自分で釣ってさばいていたこともあり問題なく、ナマズキラーたちの問いに頷き後に続く。


 地底湖の近くには小さな部屋がありそこ頭と内臓を落としたナマズを皆で運び入れる。部屋の中には本格的な解体場なのか手入れされたナイフに石を加工した大きな解体テーブル。水も引かれており清潔に保たれている。


「ぬめりを取るぞ!」


 部屋の隅にある砕かれたピンク色の岩塩を大量にナマズにかけるとゴブリンたちが一斉に揉み始める。


「ここでしっかり揉んでやると臭みが取れる」


「ナマズの種類によっては棘や毒があるから注意が必要だ」


「ここのナマズは棘も毒もないが力が強い」


「気を付けないと強靭な尻尾に吹き飛ばされるぞ」


「頭を落としたら流石に襲ってはこないがな!」


 ゴブリンジョークなのか一斉に笑い出し、マモルもそれだとアンデッドで首のないデュラハン。ナマズデュラハンだなと心の中で呟く。


「ぬめりが取れたらこうして水を掛けながら洗い、ナイフを皮と身の間に入れゆっくりとナイフを滑らせる」


「切り出した身は料理の用途にもよるが羊の乳か酒に漬ける」


「どちらも臭み消しだ」


「焼いて食べるのなら羊の乳。煮て食べるのなら酒だな」


「やっぱり臭みがあるのですね」


「あるにはある程度だな。ここいらは池の底に泥がたまらないように頻繁に掃除をしている」


「ブラシで底を擦るのだ」


 話しながらも巨大なナマズが解体され部位ごとにまとめられ、最後に残った皮とヒレは池に戻し、骨は焼き灰にしてキノコなどの肥料になるらしい。


「これを上に運ぶのだが、どうせだ! エビやカニも取ってこい!」


「あっちは釜で茹でるだけだ」


「茹でてから下処理をするからな」


 ナマズキラーの男達が網を片手に走り出しまだ泡立っている水面へ向かい網を入れる。すると、男の腕サイズのエビが網に絡み、その下には拳サイズのカニが爪を立てている。


「エビとカニも大きいですね」


「エビの方は小さな水球を打つから注意が必要だ」


「小さいが水属性の魔石も取れるぞ」


「カニの方も土属性の魔石持ちだ。本来なら岩のように大きく育つ」


 池に網をすくい入れ次々にエビやカニを引き上げ腰にしているこん棒の一撃を入れしめる。水両手のハサミを高く上げ水球が生まれるが打たせるようなことはなく、逆にその水球をこん棒で明後日の方へと打ち返ししめられるエビたち。


「ゴブリンVSエビとカニだねぇ」


「攻撃のさばき方を知っているゴブリンさんたちの方が優勢だね」


 ナマズの下処理を終えゴブリンたちと解体部屋を退出し、地底湖での死闘を見つめていると最後の一匹のエビがこん棒の一撃を受け地に伏せる。


「では、上へ向かうぞ」


 来た坂道を戻るのかとヒカリゴケで覆われた道へ視線を移すとそこには二台の荷台を繋げた羊が鳴き声を上げる。


「上り坂は大変だろうと思い行く前に呼んでおいた」


「小さな英雄は空の覇者と戦い疲れているだろう」


「下り坂はスピードが出て危険だが、上りならゆっくりで振り落とされるようなことはない」


 ゴブリンライダーたちの気遣いに感謝して荷台にナマズとまだぴくぴくと動くエビやカニを積み込む。その中の一台にマモルが乗り込むとゆっくりと動き始める羊たち。


 メェェェエェェェェェ


 渓谷に木霊する羊の鳴き声を聞きながら坂道を進みゆっくりと揺られながら若干の生臭さが鼻を抜ける。


 結果としていえばすぐに気分が悪くなり荷馬車から降りて歩いて坂道を進むことを選ぶマモル。凹凸のある坂道とゆっくりとしたスピードに生臭さのある臭いが重なれば誰でも車酔いするだろう。


「小さき勇者にも弱点があるのだな」


「英雄殿に新鮮な水を用意しなくては!」


「だ、大丈夫です。水ならこうやって魔法で用意できますから……」


 左手に魔力を込め水球を作り自らの口を近づけるとゴブリンたちから歓声が上がり、エルエルはニヤリと口角を上げる。


「エビよりも小さな水球なのねぇ」


「ぶほっ!? ゲホゲホッ!!」


 水球に咽つつエルエルへ視線を強めるとふわりと浮き上がり空へと逃げ、それを追うように全力で走り出すマモル。


 あっという間に羊たちを引き離した姿に案内役のゴブリンライダーは大急ぎで羊に鞭を打ち速度を上げるのであった。





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