ゴブリンたちとのお茶会と魔道具
「そのようなことがオークの村であったとは……いま付けているネックレスと指輪を送ったのだが、これも呪われたものなのだろうか?」
マモルがオークの村に現れ戦士長リラグオを呪物で呪いその姿がオークとは思えない姿に闇落ちした事を伝えると、震えながらネックレスと指輪を外しメイドたちが用意したテーブルに置く二人のゴブリン婦人たち。
「これは呪われてはいないのねぇ。ただ、どちらも宝石というよりも魔石なのねぇ」
エルエルが興味深げにテーブルに置かれたネックレスを見つめ口にする。
「どちらも魔力が抜けているのねぇ……魔力を補充すればシールドを発動させられるのねぇ」
「危険はないのかね?」
「危険から身を守るためのシールドなのねぇ。装備した状態で手を前にかざした方へシールドが展開されるのねぇ」
ネックレスをぬいぐるみのような手で掴むとゆっくりを魔力を通す。するとネックレスの魔石が紫の輝きを取り戻しゴブリンクイーンたちは目を輝かせる。
「シールド展開! なのねぇ」
手から三十センチほど先に半透明のシールドが現れ歓声を上げるゴブリンクイーン。メイドたちも驚きの表情を浮かべている。
「それほど強固なシールドではないのねぇ。あればいい程度だから注意するのねぇ」
手にしていたネックレスの魔道具をゴブリンクイーンに手渡すと、魔力が補充されていない指輪を持ちキラキラした瞳を向けてくるもう一人のゴブリンクイーン。
「か、可能でしたらこちらにも魔力の補充をお願いできないでしょうか?」
「そのぐらいならいいのねぇ。このエルエルさまが直々に魔力補充してあげるのねぇ~」
キラキラした瞳を向けられ「感謝します」と口にしたゴブリンクイーンの態度を気に入ったのか進んで魔力を込め、こちらも紫の輝きを取り戻し何度も頭を下げゴブリンキングも揃って礼を口にする。
「呪物かと思いましたが、魔力が切れていたとしてもお買い得なものでしたね」
「買ったときは中央の町で流行っている宝石とだけ説明を受けたが、このような魔道具だったとは驚きだな。もしかしたらマモル殿が追っている商人ではないのかもしれんな」
「自分たちは追っている心算はないのですが、出会ったらオークの国の法で裁いてもらいたいですね」
「うむ、こちらでも他にオークの商人から買い物をしたものがいるかもしれん。通達を出して安全の確認をすべきだな」
ゴブリンキングの言葉にすぐにメイドのひとりが頷きその場を後に連絡に走る。
「そろそろお茶を入れて下さるかしら」
ゴブリンクイーンが指輪を付け微笑みながらメイドに告げるとてきぱきと動き出し、テーブルにはお茶をマフィンのような菓子が並べられる。
「本日はこの国の名物であるキノコ茶と羊のバターを使ったマフィンです。珍しい食材を探していると聞きしたので用意させていただきました」
メイドの説明を受けながらテーブルに着くマモル。エルエルは椅子に座ると頭すら隠れてしまい仕方なく椅子の上に立ち、配られたキノコ茶を手に取りスンスンとその香りを楽しむ。
配られたキノコ茶を口にすると前世でも同じような味のシイタケ茶を旅先の旅館で出され飲んだことを思い出すマモル。その懐かしさに家族の顔や仕事でのつらい記憶が思い出しつつもマフィンに手を出して口にする。
「甘さが控えめで美味しいです。羊からもバターが作れるのですね」
「うむ、この国は羊を育て、肉や乳に布に加工して生活をしているのだ。本来ならドワーフやオークと貿易をしていたが……だが、空の覇者が倒された貿易を再開できる! マモル殿には感謝してもしきれぬよ」
「ドワーフの国からは鉄製品や酒、オークの国からは穀物と物々交換できます。もちろん硬貨でも取引されますが、この辺りの村を相手にする場合は物々交換の方が喜ばれますね」
「オークの商隊にも干したキノコや羊の肉に布を物々交換したのだ。いま考えればシールドを発生させることができる魔道具などと交換できたのは得だったな」
「このマフィンもオークの商隊と取引した小麦を使っていますのよ」
「空の覇者が倒され貿易が活発になれば小麦や砂糖も安くなりますわね」
この国の貿易事情を耳にしながらキノコ茶とマフィンを堪能する。国ごとに食材や特色が違うのはもちろんだが、オークの国の中央へ行けばいま以上に珍しい食材が手に入るだろうという情報を得たマモルはマフィンの甘さをキノコ茶で流し込む。
「そうそう、マモル殿は羊に乗ったことがあるかね? 多くの羊たちの恩人であるマモル殿にも羊レースを堪能されてはどうかな」
「三日後に開催されるレースは国を挙げて行われますのよ」
「勝者には羊ライダーの称号も与えられますの」
盛り上がるゴブリンたちの話を耳にしながら乗馬の経験すらないなと苦笑いを浮かべるマモルなのであった。
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