グリフォンの番
グリフォンとの話し合いで平和的な解決をした一行は卵を温めている番の元へと向かった。グリフォンはその生涯を一頭のパートナーと暮らし、その愛を永遠に育むことが多い。
(うちが巣の中でお腹を痛めているのに、貴方はこの可愛らしい天使さまに嘴を伸ばして誘惑されたのかしら!!)
(ちちち、違うよ!! 私は君を守ろうと戦い、多くの爆発するキノコを踏み……天使は天使なだけで白く美しい翼に魅了されていないよ。君の壮健な翼や後ろ足の方が何倍も素敵さ)
互いに念話を飛ばし言い争うグリフォンの番。マモルはメスの方が大きく力強い瞳や巨大な翼に力関係を察し会話の成り行きを見守りながらも、木の枝を集め雨ざらしの巣に思うところがあったのか辺りにも目を走らせる。
「爆発するキノコは少ないけどあるな。生まれてくる子供が逃げ出して間違って突いて怪我したら困るだろうし、森の中とはいえ雨風に晒されるのは可哀そうだし……この辺りで切っても大丈夫な木はありますか?」
振り返りついてきたリスたちのリーダーに話しかけ、それを訳す羊メイド。
「この辺りの木はトレントがまばらにいるので、それ以外でしたら切り倒しても問題ないそうですメェ。木を切る仕草をすればトレントは逃げるか横に体をよじり抵抗するそうですメェ」
「なるほど、ありがとうございます」
お礼を口にすると精霊石に魔力を通し大きな鋸の形へと変化させると近くの木々が横に揺れ思っていたよりもトレントの数が多いことに驚き、番のグリフォンたちの念話も止まり揺れる森に唖然とする。
「落ち着くのねぇ。この森はアルラウネをトップにトレントとリスが支配しているのねぇ。それなのにのこのこと現れ我が物顔で縄張りを主張しながらもマモルの善意で和解したのねぇ。これからは我に感謝しながらリスやトレントと共存の道を模索するのねぇ」
エルエルの言葉を受けここへ案内されたマモルとエルエルに羊メイドと多くのリスたちの意味を知り、唖然としていたグリフォンの雌は現状を理解する。雄の方はヒステリックな念話を飛ばしていた番が冷静になり胸を撫で下ろしながらも、その提案を受け入れてくれるか言葉を待つ。
(はぁ……ワイバーンがいなくなり安全に子供を育てられると思い美しい湖の近い場所へ羽を伸ばしたのだけれど……共存……これも安全な子育てへの答えなのかもしれないわね……)
(我が空の敵を倒し、リスが地上の敵を排除する。トレントはその敵を知らせるのだ。リスたちはこの湖畔で古くから暮らしておりその知恵があり教えてくれるらしい。私も最善を尽くすのでこの提案に乗ってくれないか?)
(ええ、その方が良いかもしれないわね。特にと気負い狂ったように走るキノコや爆発するキノコとかの対策ができれば生まれてくる子供を守ることに繋がるもの)
二体のグリフォンは互いに長い首を絡め親愛を現し、それ見つめるエルエルはイチャイチャしやがってと思いながらも視線を不審者へと向ける。
「動いていなかったのですがあなたはトレントさんではないですよね? 本当に切りますが大丈夫ですよね? 切っちゃいますよ? いいですか? 切っちゃいますよ?」
巨大な鋸を片手で持ち上げ何度もトレントではない確認をするマモル。事故の防止策なのは見ていて理解できるのだがリアクションのない木に向かい鋸を高く掲げて脅迫するヤバイ奴になっていた。
「それはトレントではないですメェ」
あまりの不審者ぶりに羊メイドが話しかけトレントではない木を指差し、マモルは鋸の形にしていた精霊石に魔力を通してロングソードへと形を変えると足元を踵で軽く数回蹴り地面の状態を確認すると横薙ぎに一閃。ゆっくりとずれはじめマモルが手で押すと木は倒れ、トレントたちが逃げ出すように一定の距離を取り巣のまわりに広いスペースが出来上がる。
(ほとんどがトレントだったのね……)
(そ、そのようだな……)
イチャついていたグリフォンが逃げたトレントたちの多さに驚いているとマモルは倒れた木に手を置き呟く。
「また器用に変な魔法を使っているのねぇ」
「変な魔法メェ?」
「天界でも第三位天使に使わないだろう魔法を教わっていたのねぇ」
「現に今使っている魔法がそれなのメェ?」
「対象の物体から水を排出させる魔法なのねぇ。木から樹液や中に含まれる水分を確保する魔法なのねぇ。これは血抜きや魔素抜きにも応用が利く魔法だと第三位天使は喜んでいたのねぇ」
「お~い、ふたりも手伝って木の皮を剥がすからさ!」
木から水分を抜く魔法を終えたマモルがエルエルと羊メイドを呼び三人で作業をはじめるとリスのリーダーとその手下たちも作業に加わり急ピッチで捗る木の解体作業。巨大な前歯は電動のこぎり以上の速さで木を正確にカットし、その日のうちにグリフォン二頭が横になれるほどの小屋が完成するのであった。
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