グリフォンと辛辣な天使長
グリフォンとは鷹の頭に強靭な翼とライオンの胴体を持ち鋭い爪が鉄をも裂き切る狂暴な魔物である。場所によっては神獣という扱いもされるが、戦闘力はワイバーンと同等かそれ以上である。
「そうなると食肉として鶏肉なのかライオン肉なのか気になるところですね……」
顎に手を当て真剣に考える天使長を前に苦笑いを浮かべるマモル。
グリフォンというファンタジー世界でも有名な存在を勝手に討伐してよいのか確認のためにも一度亜空間の家に戻りメイド長へと相談していた。結果からいえば何も問題がないが狩るからには食材として使いたいとう天使長の弱肉強食としての考え方に引いている最中である。
「タカだろうがワシだろうが頭と翼は美味しくないのねぇ。体や足もライオンだとしたらスジばっかりできっと美味しくないのねぇ」
「幻獣として考えれば魔力を豊富に蓄えているはずですメェ。栄養価としてなら食べる価値があるかもしれないメェ」
「魔力を摂取するためです? それなら魔力草やトレントの実やアルラウネの蜜の方が魔力が詰まっていそうなのですよ」
「アルラウネの蜜とトレントの実は持っていますね。大精霊さまに必要なら分けますよ」
「いえ、それらは既にラミアの村で頂きましたメェ。魔力草は精霊の森に多く自生しているので味も知っておりますメェ」
「スジ肉なら煮込むほどに柔らかくなって美味しいブラウンシチューやスジ肉の煮込みになると思うのです。翼だってコラーゲンが豊富でぴちぴちムチムチの肌になるのですよ」
「それは素晴らしいです!」
パンと手を叩き光の中から現れた存在に天使長はすぐに片膝を付き頭を下げ、エルエルも同じ姿勢を取り、羊メイドはマモルの肩から瞬時に降りると優雅にカーテシーを決め、数回瞬きをしてかた固まるララック。
「急に現れるとみんなはこうやって緊張するからさ。できるだけ出てこないでくれたら嬉しいかな……」
辛辣な対応に現れた創造の女神カルアミールは目に涙をゆっくりと溜めながらフルフルと震え、慌ててフォローを入れるマモル。
「えとえとえと、か、母さんだって忙しいだろうし、急にこっちに来ると師匠たちも慌てると思うしさ。グリフォンの料理に興味があるのなら後で届けさせるから夕食のときにでもゆっくり師匠たちとこっちに来てもらえたら……」
「うふふふ、フォローしてくれるマモルも可愛いですね。皆さんもそう思いません?」
「いえ、フォローしなくても十分に可愛らしいですよ。そもそも、フォローさせるような行動を起こす方が間違っておりますし、マモルは料理を作ってくれるときや、その日あった出来事を報告してくれるときや、素振りをする姿ですら可愛らしいのです。最近ではララックに料理を教えつつも心配そうに包丁を使わせる姿とかマモルの親でよかったと素直に喜んでおります。
大体、マモルのかわいらしさをエルエルや音の大精霊に共感させようとする時点で間違いなことに気が付かないのは創造神として失格かと、エルエルは良きライバル。音の大精霊は精霊王が喜べばとマモルの料理を教わっているに過ぎません。ララックちゃんならマモルのかわいらしさに共感するかもしれませんが創造神さまが現れてからずっと驚いたまま固まっておりますので、マモルがいうようにできるだけこちらには姿を現さないでいただければと思います」
長々と創造神カルアミールの疑問に応えつつ辛辣に迎撃する天使長。
「えっと、作ったら必ず料理は届けるので、泣かないでいただけたら……ああ、迎えも現れた……」
天使長からの長々とした辛辣な発言をフォローしたマモルであったが、涙が新たに溜まり流れ落ちそうになる。が、更にはその涙を吹き飛ばす第二位天使と第三位天使のふたりが創造の女神カルアミールの後ろに現れ素早く左右から捕まえる。
「急にいなくなられては業務に差しさわりがあります!」
「やることやってからマモルに会いに来てください! じゃあな! ちゃんと毎日素振りだけはしろよ~」
「今度はゆっくりと来ますので、失礼します」
第二位天使と第三位天使に手を引かれ転移する創造の女神カルアミールは涙を流しながら亜空間のリビングから姿を消し、エルエルはいつものようにソファーに横になり、羊メイドもマモルの肩に移動して腰を下ろす。
「ララックは大丈夫? 母さんに会うのははじめてだっけ?」
「まだ固まっていますね。ふふふ、落ちないよう私が持っていますね」
優しく両手で包み込むようにララックを手にする天使長は優しい笑みを浮かべるのであった。
お読み頂きありがとうございます。




