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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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湖畔の生物と恐怖


 湖畔を徒歩で進み五日ほど経過し目にしていた湖の大きさとそこに住む多くの魔物や植物たちの多様性や、地球の生物に似た多くの生物がいることを確認した。


「不自然に乾かない砂の凹みがありますが、アレはもしかして」


「アリジゴクなのねぇ。雨で他の場所は濡れているのに、あの大きな岩の横だけ不自然に削り取られ濡れないようになっているのねぇ」


「あの罠は砂漠などで見たことがありますメェ」


 五メートルほどの岩が削られその側面の下には乾いた砂が円錐状になり、足を滑らせ落ちた生物が下で待ち構えるアリジゴクに捕食される罠である。地球に存在するアリジゴクとの違いはサイズと捕食対象がアリだけではないことだろう。


「イノシシや地面を歩く虫がよく罠にはまっているのです。空の飛べる妖精があの罠にはまることはないのです」


 ララックが自信満々に言い放ち空が飛べるのならそうだろうと思いながら足を進め、一瞬視界に入った黒い何かに足を止めナイフを抜くマモル。


「何かいる!」


 マモルの言葉に緊迫感のある空気に変わりララックは右肩に座りながら襟を掴み震え、左肩に乗ていた羊メイドは警戒を強めながらその肩を離れる。エルエルは頭から離れることはなく常に警戒していたこともあり、その正体に気が付いたのか一瞬で移動した先を指差す。


「マモルが警戒した正体はあそこの毒々しいキノコの後ろなのねぇ」


 赤い傘に黄色と紫色の斑点がある一メートルサイズのキノコはどう見ても食欲が沸かない見た目で、逆に生命の危機を感じるほどの毒があるだろうと期待をしてしまうビジュアルをしており嫌な予感を覚え、ナイフを抜き身構えていたまま数歩下がる。


「下がらずに正体を突き止めるのが冒険者なのねぇ」


「ぼくは冒険者ではなく料理が好きな少年なだけです。戦いよりも安心して料理ができるのならそっちを選びます」


「その割にはワイバーンやクリスタルリザードなどの危険な魔物を討伐しているのねぇ」


「あれは成り行きだったよね! エルエルが一番わかっているよね!」


「確かに成り行きだったのねぇ。どっちも子供や羊を守った結果だったけど、その気概があればこそ打倒したのねぇ。今回も頑張るのねぇ」


「いや、嫌な予感がする……エルエルの顔が見えないけど嫌な笑い方をしてそう……」


 マモルの指摘に警戒していた羊メイドと右肩に乗るララックが視線を上げ、マモルの頭の上にのるエルエルの表情を確かめる。


「これは確かに嫌な顔なのメェ」


「企んでいるのです?」


 自然と上がっていた口角を両手で抑えて下ろすエルエル。


「エルエルが仕掛けようとするときは本当に碌なことがないからね。天界でもそうだったけど、天使長へ感謝のプレゼントを贈るのにどうしてはく製にしてまでゴ〇ブリを入れるかね! 他にも魔法の師匠と剣の師匠にも変な似顔絵を送ったよね。駅前で書いてもらった似顔絵屋さんが絵が可愛く見えたからね!」


 天界での出来事をばらされ両手で抑えていた頬が引きつるエルエル。


「どうしようもない悪戯をしていそうだと思いましたが、本当だったのメェ……」


「ゴ〇ブリのはく製を送られたら戦争になるのですよ」


 ふたりから呆れた表情を受けたエルエルはふわりとマモルの頭から離れると元の美少女天使の姿へ変わりその身に光を宿す。


「マモルが無理なら我が片づけるのねぇ」


 身体強化を施したエルエルは光に溢れながら一気に加速し赤く毒々しい見た目のキノコへと突っ込み、輝きを増した蹴りがキノコの胴体を切り裂きながら上空へと打ち上げる。それと同時に一瞬見えた黒い影も回避できずに打ち上がりその姿が控えている後ろの三名にも確認し、マモルはすぐに手にしていたナイフに魔力を通す。


「ゴ〇ブリですメェ」


「ひゃっ!?」


 冷静に呟く羊メイド。右肩で悲鳴を上げるララック。どうやらこの世界でもGの存在は恐怖の対象なようで、サイズも大人のスニーカーほどの大きさでありながらもそのスピードはマモルの動体視力を上回る俊敏さを持っている。が、身体強化したエルエルのスピードの前では敵ではなかったようで光を帯びた蹴りを食らい四散し、浄化魔法が降り注ぎ跡形もなく消え去る。


「これで我の威厳は保てたのねぇ」


両腰に手を置きドヤ顔で小さな胸を張るエルエル。


「威厳を保ちたいのなら普段の行動を反省する方が正しいと思うけど……」


「正体を知っていながらマモルに戦わせようとしていたのメェ」


「あれは恐怖を与える悪魔の虫なのです。本当に怖い虫なのです」


 マモルはエルエルにジト目を向け、羊メイドは呆れ顔を浮かべながらエルエルからまわりに視線を向けて警戒を続け、ララックはマモルの首に抱き着きながら震える。


「ふっ、瞬間的にあれだけのスピードを生み出す魔物相手に一方的な完全勝利! これが我の実力なのねぇ!」


 マモルからのジト目も気にせず今度は片腕を上げ勝利を宣言し、その上げた腕に轟音と共に落雷が降り注ぐ。


「ひゃっ!? て、ててて、天罰なのです!」


 ララックの驚きと叫びに頷くマモルと羊メイドなのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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