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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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雨の湖畔と走りキノコ


 しとしとと降る雨とグッと冷えた気温に外に出るのを躊躇われるが、それでも先に進むべく亜空間をドアから足を進める。雨で濡れないようにシールドを頭上に天界して傘代わりにし数歩進むと昨日まで見ていた湖畔の光景といは明らかに違いがあり、多くの赤や黄色に茶色といったキノコが姿を現している。


「この時期は雨になると多くのキノコが地面から顔を出して魔物が近づくと爆発するのです!」


「危険なキノコですね」


 右肩に乗りキノコの説明を簡単にするララック。左肩には手乗りサイズの羊メイドが腰を下ろし、頭の上にはエルエルが掴まり、どちらも興味深くその爆発する色取り取りのキノコへ視線を向けている。


「魔物の魔力に反応して爆発するのねぇ?」


「雨の衝撃では爆発しないところを見ると魔力に反応してか、衝撃が足りないかでしょうメェ。エルエルが踏んで見るといいのメェ」


「それなら最近いつだけで暑苦しい羊が踏むといいのねぇ。白いモジャモジャが赤や黄色の鮮やかなモジャモジャになるのねぇ」


 互いに睨み合いふたりを無視して親指ほどのキノコを踏まないよう注意深く足を進めるマモル。雨脚はそれほど強くはないが足物と草は濡れ、気を付けなければ滑り爆発するだろうキノコへ衝撃を与える結果となるため慎重に足場を選び進む。


「空を飛んだ方が安全なのメェ」


「確かにいつ爆発するかわからないキノコの間を歩くのは危険だよね」


「あっ! イノシシなのねぇ」


 エルエルが森から出てきたイノシシを発見しぬいぐるみ状の手で指し、鋭い牙の生えたそれが湖面に近づきパンパンパンと三度の爆発音が炸裂する。


「爆発したけど大したことないのねぇ。花火程度の威力だったのねぇ」


「爆竹ぐらいだったね。イノシシも気にした様子もないし慣れているのかも」


「大爆発から連鎖して更なる大爆発を警戒しましたが予想外の小ささでしたメェ」


 ララックからの説明にキノコの爆発を過大評価していた三名は無事なイノシシを見つめ、次の瞬間には巨大な縦に開いた口に噛みつかれ池に引きずり込まれる姿に口をあんぐりと開けたまま固まる。


「大口ワニなのです。大きな口で池に水を飲みに来た魔物を食べるのです」


「一瞬で海面から現れてイノシシに噛みついたのねぇ」


「湖面には近づかない方がいいですメェ」


 湖畔が地で染まり姿を消す巨大なワニの魔物を前にマモルはやっぱり空を飛び先を急ぐことを選ぼうとするが、更なる爆発音が響き警戒しながら視線を向ける。


「走りキノコなのです!」


 森から現れた一メートルほどのキノコは爆発音を響かせ湖畔を走り回る。その衝撃に怯むことなく走り続けると急停止し、森からは数匹の走りキノコが現れ同じように急停止すると一か所に固まり身を震わせる。


「あれはいったい何をしているのねぇ?」


「走りキノコが胞子を出すところなのです。胞子を出したらまた走り回って爆発の勢いで胞子を遠くに飛ばすのです」


「雨が降っているのに遠くに飛ばせるのメェ?」


「胞子を飛ばしてから数日は同じ場所を走り回り地面に落ちた胞子を爆発に乗せて遠くに飛ばすのです。走り回るしか能力がないのでイノシシやシカの餌になるのですが爆発キノコを処理してくれるので私たちは助かっているのです」


「ララックたち妖精のサイズからしたら地雷みたいなものだものね。それにしてもその爆発を利用して胞子を遠くに飛ばそうと考えるは凄いね」


「凄いというか、遠くに胞子を飛ばすにしてももう少し手があった気がするのねぇ」


「風を使い遠くに飛ばしたり、木の上から胞子を撒いたり、鳥に食べられて糞と一緒に遠くへ運ばれたりできたと思うのメェ」


 爆発に任せ胞子が飛散する方法を選んだ走りキノコは頭部から白い煙状の胞子が湯気のように上がるが雨によって足元へと流され、胞子を撒き終えると集まっていた数匹が別れ近くを走り回り爆発音が響く。これを数日間続けて晴れた日には爆風と共に空へと舞い上がり遠くへと運ばれ走りキノコは繁殖するのだろう。


「走りキノコは食べられるのメェ?」


「爆発する方は危険なので食べられないと思いますが、走るだけなら身が締まって美味しいかもしれませんね」


「言い出したのは私ですので狩って参りますメェ!」


 マモルの肩から飛び出し一瞬にして走り回るキノコの一匹に近づくと、腕を振り下ろし高音が湖畔に響き縦に切り裂く音の一撃で二等分に別れ、まわりの走っていたキノコたちは森の中へと逃げて行く。


「音で切り裂いたのかな?」


「分体とはいえ音の大精霊なのねぇ。音を武器にすればそれなりに戦えるのねぇ」


「それなりという威力ではないのです……」


 一撃で走りキノコを切り裂く斬撃を放った羊メイドの強さに妖精であるララックは震え、切り裂かれた走りキノコが宙に浮きマモルの前へと運ばれる。一メートルほどのサイズの走りキノコがこの日の昼食になり、炊き込みご飯にスープや炒め物にフライと走りキノコ尽くしのメニューになるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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