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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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ダンジョンと異界と湖畔の主


「ううう、頑張ってマモルの料理をいっぱい覚えないとな……」


 マモルの左肩に乗り涙を拭いながら宣言するララック。妖精たちから手を振られたばかりであり、感動的な別れのシーンにマモルも薄っすらと涙を浮かべて一緒になって手を振りオークの国を目指して足を進めている。


「どうせなら飛んで行った方が早いのねぇ」


「それについては同意ですが、これだけ大きな池なら美味しい食材になりそうな魔物や果実があるのですメェ」


「果実は見た感じあまりありそうにないけど、池の中なら魚とかはいそうだね。それこそナマズやマス系の魚はいるだろうしさ」


 巨大な湖は対岸の木々が緑に見えるほど遠く、朝には霧が立ち込め危険を感じるほどであり出発を霧が晴れるまで遅らせたほどである。空を飛び進むか船を使い対岸へと渡ればオークの国への近道になるが急ぐ旅というわけでもなく珍しく美味しい食材があるのであれば寄り道の方が重要で、湖畔をぐるりとまわることを選んだのである。


「この時期にはあまりないけど秋になれば木の実がいっぱいになるのです! トレントのなかでもモンブランツリーが分けてくれる栗が美味しいのです! 他にも歩くキノコや爆発する芋も驚く美味しさなのです!」


 涙が乾き始めたララックが湖畔の名物食材を紹介し、来る時期が早かったなと軽く反省するマモル。羊メイドもまだ実が小さいモンブランツリーのトレントを発見し肩を落とす。


「次に来るときは葉の色が変わる頃にするメェ」


「そうですね。山が色付く頃にもう一度来ましょう」


「その時は私がいっぱい湖畔の美味しい物を紹介します!」


 右肩から飛び上がりマモルの前でホバリングしながら叫ぶララックに「うん、お願いするよ」と答え、エルエルも秋の味覚を想像しながら涎を垂らす。


「魚についてはどうなのメェ?」


「魚は池の中で私たちを狙っている怖いのなのです。蜂たちも池の上では高く飛び襲われないようにしています。上空を飛べばわかりやすいのですが下から水の魔法を使って池に落としてくるのですよ」


「ほら、エルエルの出番ですメェ」


「あ? お前が飛んで魚の餌になればいいのねぇ」


 ゼロ距離で額を付け合わせるぬいぐるみ状態のエルエルと手乗り羊メイド。


「前にエビやカニが魔法を使っていたけど、それって魔物ということになるのかな?」


「魔物は体内に魔核、魔石を持つ生物なのねぇ。ニードルクラブやウォーターロブスターは体内に魔石があるので魔物なのねぇ。


 ただ、魔核や魔石を持たずに生まれてもまわりの環境や育ち方で魔物へ変化する生物もいるのねぇ。その多くはここの森に住むトレントなどの植物系の魔物なのねぇ。濃い魔力が影響することが多く、この森はワイバーンの餌場であった平原の影響を受け、ワイバーンの食べ残しの魔力や魔石が時間を掛け大地に溶け、この湖や地下水を巡り海へと流れて影響を与えているのねぇ」


「それであの大きな単眼ウニや巨大なタコやウツボに育ったか」


 ワイバーンの巣の近くで見かけ討伐した巨大なウニやタコにウツボを思い出しながら口にするマモル。


「濃い魔力はそれだけでも生態系に影響を与えるのメェ。そういった場所に出現するのがダンジョンや異界と呼ばれる不安定な魔力で作られた空間ですメェ」


「ダンジョンは聞いたことがあるけど異界というのは?」


「ダンジョンは基本的には縦階層に別れた迷路やフィールド型の空間ですメェ。異界はそのまま異なる世界と呼ぶべき空間ですメェ。その異界のひとつが妖精界ですメェ。異界は広く時の流れも違うので注意が必要ですメェ」


「天界も異界に似たような場所で創造の女神カルアミールさまの神力で満たされているのねぇ。逆に魔力がまったく存在しない場所も異界と呼ばれているのねぇ」


 額と角を突き合わせていたふたりだが魔物の話から発展した異界の話題に仲良く素直に応え、その説明に目を丸くする妖精のララック。


「魔力がまったくない場所だと私たち妖精は飛べなくなりそうなのです。きっと怖いところなのです」


 フルフルと震えながらマモルの首に抱き着き、そこへ池から水柱が上がり身構えるマモル。


「ドラゴンフライが落ちましたメェ」


「ドラゴンフライ? 強そうな名前だけど……」


 水しぶきを上げもがくドラゴンフライは一メートルほどの蜻蛉(とんぼ)であり、固い甲殻に半透明な翼は刃物のように鋭く空を行く捕食者として上位に入るだろう存在。なのだが、そんなドラゴンフライを水中から水魔法で打ち抜き落下させた存在が巨大な口を開く。


 一瞬にしてドラゴンフライが飲み込まれ、湖面を揺らし現れた巨大なカエルに顔を引き攣らせるマモル。


「この池の主なのです! 池の上を飛ぶものを捕食するこの池の主なのです!」


 巨岩と勘違いしそうなほど巨大なカエルはドラゴンフライが逃げ出さないよう口を押えて池の中へと姿を消し、できるだけ池に近づくのはやめようと心に誓うマモルであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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