鳳凰を使った料理
「いや~自分は美味しいのですね! 驚いちゃいましたよ! 天使長に殺されたときは恐ろしかったのですが、あんなにも美味しいとまた殺されてもいいかなって思えますね!」
自身が食材になり料理されたカラアゲを嘴で器用に口に入れ咀嚼する鳳凰。最初こそシクシクと蹲っていたがララックと手乗りサイズの羊メイドが料理を褒めたことでその味に興味を持ち、マモルからカラアゲを貰い口にした結果、自分は美味しいという狂気じみた発言を生み出したのである。
「自分は美味しいとか、中々のパワーワードなのねぇ」
「精霊として、羊として、ある意味では尊敬するのメェ」
「僕はあまり食欲が沸かないのだけど……」
鳳凰を使った料理を口にする一同。マモルだけは目の前に生きた本日の主役食材がおり食が進んでいないが他のものたちはその味に満足している。本人を含め満足しているのである。
「天使長さまが作る料理はどれも美味しいのです!」
「ふふ、ララックは繊細な味のわかる素直な良い子ですね。料理を学びたいと申しておりましたが私もその手助けを致しましょう」
小さくても食欲旺盛な妖精のララックの食べっぷりを微笑みながら見つめ、料理を教えると宣言する天使長。ララックは両手を上げて喜びを表現する。
「やったのです! マモルと天使長さまに料理を教われるのですよ!」
「私もマモルから料理を教わり独自の進化をさせてきました。ララックにもララックにしか作れない料理が見つかるかもしれませんね」
天使長にしか作れない料理は今まさにテーブルに並んでいるなと思うマモルとエルエルに羊メイド。事実、鳳凰という火の中で何度も蘇る不思議食材を料理し、剰え(あまつさえ)一緒のテーブルに着き食事をするという奇異な場面を生み出しているのである。そもそも幻獣という珍しい存在に出会うことが稀であり、それを討伐するということができる存在がこの世にどれほどおり、しかも料理できる存在が他にはいないだろう。
「いや~この甘酸っぱく木の実の入った料理も美味しいです! 長い時間を生きてきましたが料理とは素晴らしいですね!」
「はい! 私も料理のすばらしさを知ったばかりです! いっぱい覚えて妖精たちの食事を華やかにしたいです!」
鳳凰と妖精であるララックが料理の素晴らしさを知り共感し、それをひとり頷き満足そうに微笑む天使長。エルエルは食べる手を止めずに食べ続け、手乗り羊メイドは食べ終えると口を紙で丁寧に拭いメモを取り出して食べた料理のメモを取る。
マモルは食が進まなかったが食べないのもメイド長と食材でもある鳳凰に失礼だろうと棒棒鶏を口にする。
「うまっ……」
口に入れた瞬間に広がるゴマの風味と鳳凰の肉のしっとりとした食感とあっさりしながらも溢れる肉汁。千切りにされたキュウリのシャキシャキとした食感と白髪ねぎの香りが合わさり絶妙なハーモニーを繰り出していた。
「でしょう。自分は美味しいのですよ!」
鳳凰は鳩胸を突き出し嘴を高くドヤ顔を浮かべる。
「食材もそうですがゴマにも拘りました。金ゴマを使い直前に炒り香ばしさをプラスしています。キュウリとトマトも天界で栽培している特別なものを使い、ネギも切られたことに気が付かぬ速さで手刀を繰り出しカットしました。他の料理もそうですが私ができうる限り手を尽くした心算です」
天使長も鼻息荒く手料理の説明をし終えるとマモルを見つめ食が進み始めたことに安心感を覚えつつ次はどう料理してやろうかと視線を鳳凰へと向け、向けられた方をうはドヤ顔が一瞬に青ざめ身震いをする。
「鳳凰でもこれだけ美味しいのなら天龍や風龍の味も気になるのねぇ」
「それは盲点だったですメェ。龍の味……食べたものがいるかどうかもわからないのですメェ」
「天龍なら数度殴ったことがありますが、鱗さえ剥がせば食材として料理できるでしょうが……
「お願いだからやめようね! 天龍さんと次に会ったときに気まずいのとか本当に困るからやめようね! 龍の味とか気にならないし、それ以上に意思疎通ができる存在を料理とか絶対にやめようね!」
口にしていた鳳凰のカラアゲを飲み込み叫ぶマモル。命が軽い異世界であっても倫理観を訴え最低限の常識を叫び訴える。
「確かに自分の身が美味しいと自慢されるのは料理をする方からしたら思う所もありますね」
「料理の仕方で美味しくなるのも事実ですが、自分が美味しいという前提があってこそ! ぶっちゃけ生で食べても美味しいとは思いますが、料理することで数段に美味しくなるのでしょう……………………で、ですが、天使長さまのような方に料理して貰えるのも幸せかもしれませんです! はい!」
天使長からのジト目を受けプライドと延命を天秤にかけ生き残る方を選ぶ鳳凰。
「そうなのです! 妖精の作るお酒も長から持って行くようにいわれたのです! 美味しい料理への感謝と料理を教わる授業料として天使長さまに貰ってほしいのです!」
ララックがテーブルから飛び降り持ってきた荷物の大半を占める二十センチほどの木製の筒を持ち上げ飛びたち天使長の前へと進み差し出す。
「これは妖精が作る伝説と蜂蜜酒ですか?」
「良質な蜂蜜と妖精の祈りから作られます。美味しいのですよ」
笑顔で手渡された蜂蜜酒を受け取った天使長は主である創造の女神カルアミールに献上するか迷いながらも懐に入れるのであった。
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