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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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妖精への劇薬


「これが料理!!」


「はふはふ、美味しいわ!」


「果実や蜂蜜とは違って温かいのはもちろんだけど、色々な食材を使い料理するとこんなにも複雑な味になるのね!」


「例える味を知らん! これまで食べていた果実や蜂蜜もこのような料理になるのだろうか!」


 はじめて食べるカレーの味に感想を叫ぶように言い合い、食べ過ぎて飛ぶことができずお腹を摩り地面に転がる妖精たち。


「料理の力とはこれほどなのか! 火を禁忌と定めたことで我々はこの味を失ったのか!」


 妖精たちの長の背景に稲妻が走って見えそうなほど叫びをあげ、森を焼き尽くす火を禁忌と定め後悔し、ララックもカレーを一口食べたまま固まり続けている。


「良い意味でも悪い意味でも妖精たちに刺激を与えたのねぇ」


「カレーの刺激は抵抗力のない妖精たちには劇薬ですメェ。私もはじめて食べたときは複雑でスパイシーな味に理解が追い付かなかったですメェ」


 カレーを食べながら話し辺りを見つめ食べ過ぎて地面に横たわる妖精や驚きのあまり固まる妖精を不憫に思っていると、料理をしたマモルが口を開く。


「まずかったですかね……」


「逆なのねぇ。美味しくて驚いているのねぇ」


「食べ過ぎたものたちも気が付けばおかわりの列に並び、今後食べられないだろうカレーの味を脳内に記憶したのですメェ。明日からはカレーの味を懐かしく思いながら長い生涯を思い出し続けるのメェ」


「流石にそれは言い過ぎじゃ……」


 死屍累々に食べ過ぎて地面に転がる妖精やスプーンを口に咥えたまま固まる妖精の姿に、その可能性もあるのかなとカレーを作り振舞ったのを後悔するマモル。


「塩大学芋は醤油を使わないで作ったのに、どうしてカレーを作ったのねぇ?」


「カレーこそ複雑な味わいで必要なスパイスを集めるだけでも大変なのですメェ。なぜカレーを作ったのですメェ?」


 ふたりからの疑問にカットして煮るだけの簡単な料理であり、料理の基本を教えるのに都合がいいからという本心をぐっと飲み込み口を開く。


「えっと、カレーは万人受けしやすくて果実や蜂蜜はカレーの隠し味として使うこともあるから妖精さんたちが喜ぶかなと、他にもカレーは大量に作ると美味しいとか、アイテムボックスの在庫から考えて受けがいい料理とか、ララックが作った料理をみんなに褒めてほしかったとか考えてカレーを作ったのですが……」


「マモルなりの優しさだったのメェ……」


「その優しさが一番の武器で殺傷能力が半端ないのねぇ……」


 マモルとララックが作ったカレーの効果で妖精全体を戦闘不能にし、数十年に渡るトラウマを植え付けたのだろう。


「最初に作った大学芋にカラアゲや串焼きが可愛く見えるのねぇ」


「もし、マモルがパンケーキやプリンを作り振舞ったら妖精たちすべてがマモルの後に続くか、この地に留まり続けるよう画策してくるのメェ。マモルの料理はそれだけ恐ろしいものだと自覚するのメェ」


 エルエルと羊メイドからジト目を向けられ反省するマモル。


「酷い言われようだけど目の前の光景を目にすると言い訳ができない……」


「反省するのが大切なのねぇ。同じ失敗をしなければいいのねぇ」


「それについては同意ですメェ。劇薬は薄めて与えゆっくり抗体を作らせるのメェ。そろそろ日暮れなのメェ」


 劇薬に例えた手乗り羊メイドがオレンジに染まる光に包まれ、いつもならどこでも的なドアを設置し亜空間の自宅に戻るのだが倒れ続ける妖精たちをこのままにはしておけず、固まっているララックの背中を軽くトントンと押して声を掛ける。


「ララック、ララック、そろそろ帰ってきて。このまま放置は危険だと思うから手伝って」


「はっ!? あれ? カレーを食べて、ん? 師匠、どうかしましたか?」


 数度背中を優しく叩かれたララックは気を取り戻し、背中からの衝撃で振り返り不思議そうな顔でマモルを見つめる。


「気分は大丈夫? あと、スプーンを落とさないようにね」


 手にしていたスプーンを落としそうになるララックは慌てて握りを強め、目の前にある冷めたカレーに気が付く。


「ああ、味見がまだでしたね。では、味見を、」


「ちょっと、ま、また、固まった……」


 慌てて声を掛けるも再度口にしたカレーの味で気を失うララック。それを見て笑い声を上げて転がるエルエル。羊メイドは顔を左右に振り呆れている。


「もうララックにはカレーを食べさせない方が良いのだろうか……」


 カレーを一口食べては固まるララックにどうやってこれから料理を教えたらと悩むマモル。そこへ空から光が舞い降りる。


 オレンジから黒へと変わる空に現れた光の柱を目にしたものたちはこの世の奇跡を前に祈りの姿勢を取ろうとするが食べ過ぎて動けず、横になりならが奇跡を体験する。


「5時までには帰ってくるよう約束したではありませんか」


 優しさのなかに厳しさのある声が湖畔に響き、白い翼と白いエプロンドレスが風に舞い佇む天使長の姿に妖精は唖然とし、笑い転げていたエルエルの回転が止まり、羊メイドは優雅にカーテシーを決め、マモルは現状をどう報告したものかと思案するのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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