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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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ララック 初めての料理


 妖精であるララックの身長は十五センチほどで他の成人した妖精たちよりも頭一つ分小さくやや童顔な顔つきなため他の妖精たちから奇異な目で見られることが多く、更に両親が妖精の里を出て冒険へと向かう変わり者扱いにより加速する偏見。


 結果として妖精の里は住みにくいのが現状でありマモルの弟子となり冒険の道に進むのに反対する者はおらず、親代わりとして育ててきたララックの叔母にあたる妖精の長は瞳に涙を溜めながらも許可を出すこととなった。


「師匠! 野菜を切り揃えました!」


 元気な声が響く湖畔ではララックが下準備を終えた野菜をマモルが確認する。


「妖精は小さく力が弱いが魔力が高く魔法に特化した存在だと思っていましたが例外もいるのですメェ」


「あれは強化魔法に全振りしたような存在なのねぇ。自分の体と大差ないナイフを使って野菜を切る姿は大剣を持ち戦う戦士のようだったのねぇ」


「ニンジンの頭を刎ねるところはそうだったね……うん、ちゃんと切れているね。でも、大丈夫? 疲れていない?」


 使っているナイフはララックの身長とほぼ同じぐらいのサイズで身体強化魔法を使いそれを両手で持って野菜をカットする姿はエルエルがいうように戦士の立ち回りで、まな板という闘技場の上で野菜を相手に奮闘するララックを遠巻きに応援する妖精たちという構図が出来上がっていた。


「肉は滑りやすいからボクが切るからよく見ててね」


 大量のストックがあるクリスタルリザードのバラ肉を小さくカットするマモル。肉を抑える手は猫の手にといった説明は体の小さなララックには当てはまらず、両手で力いっぱい振り下ろす斬撃にも似たナイフ捌きの参考になればと肉を引きカットする。


 野菜は押して切り、肉は引いて切るという包丁の基本を意識して見せると、何かを感じ取ったようで瞬きすら忘れ真剣な表情で手先を見つめる。


「それにしてもみじん切りをあんな丁寧にするのは初めて見るのねぇ」


「風魔法を使い粉々にカットすることもできますが何かしら意味があるのですメェ」


 外野のふたりも何かを感じ取ったのか真剣なマモルの料理を見つめ、肉をみじん切りにすると鍋に油を入れ肉を炒め始める。そこに同じくみじん切りにしたニンニクと玉ねぎやニンジンにキノコを入れ鍋の中はみじん切りにした肉と野菜でカラフルになり、興奮したように上を飛び回るララック。


「師匠! 鍋の中がカラフルです! 花畑を上空から見た感じと似ています!」


「危ないから火の上や鍋の上を飛ぶのはやめようね。ララックの髪の毛や靴が落ちて鍋に入ったら嫌だろ」


「た、確かに、すみませんでした!」


 素直に謝罪したララックはマモルの横でホバリングしながら鍋の中を見つめる。


「えっと、飛び続けるのは疲れるだろうから肩や頭の上に乗ってもいいからね。あんまり強く皮膚を掴まれると痛いから服や髪の毛を掴んでほしいけど」


「はい、優しくつかみます!」


 素直にマモルの頭の上に着地し落ちないよう両手で髪の毛数十本を掴むララック。下の鍋が見やすいようやや前頭部に座り身を乗り出して髪の毛を掴む姿に、笑いを堪えるエルエル。


「ララックがマモルを操縦しているように見えるのねぇ。巨大ロボマモルなのねぇ」


「ふぅ……また意味の分からないことをいっていますが、この香りは食欲をそそりますメェ」


「肉とニンニクが焼ける香りは食欲が沸いてくるのねぇ」


 大きな鍋の中で混ぜられ次第に焼き色が付いてくると同じように小さなサイコロ状にカットされたイモを入れサッと炒め、水を入れて煮込み始める。


「こうやって蓋をした方が早く煮えます。あとは沸騰したら火を弱めます」


「火を弱めるのですか?」


「そうしないと後から入れた芋が崩れてしまうので弱火でコトコトですね。それでも今日は具を小さく切っているのですぐに火が入りますね。煮えたかどうかは経験と、竹串を刺して確認ですね」


「この調理法は先ほど芋を油に入れる方法と似ているのですが違うのですか?」


「あれは揚げると炒めるですね。今回のは最初に鍋で炒めてから煮るですね。揚げるという調理法は油限定なのかな? 他は同じようにやっていても煮るという調理法だと思いますよ」


 今作っている料理の説明をしながら調理法を教え本当に師弟のような会話を続けるふたり。弟子が師匠の頭にしがみ付いている滑稽さはあるが真剣な瞳で湯気を上げる鍋を見つめるララックを茶化すものはおらず、次第にエルエルもまじめに頑張る姿を無言で見つめる。


「ほら、竹串がスッと入ったね。これが煮上がった合図です。最後にルーを入れて味見と隠し味にオイスターソースとチョコをひとかけ入れます」


 市販されているカレールーの甘口を入れ、チョコもひとかけ入れるとゆっくり木べらで混ぜながら溶かし、湖畔に漂うカレーの香り。


「絶対に美味しい料理です! これ絶対に美味しい料理です!」


 頭の上で興奮気味に叫ぶララック。まわりでソワソワと漂ってきたカレーの香りに反応する妖精たち。


「湖畔の夕食はカレーなのねぇ」


 キャンプを想像するエルエルがぽつりとつぶやくのであった。

 お読み頂きありがとうございます。

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