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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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禁忌とララック



「凄いのです……火は禁忌とされ妖精は扱ってはいけないと教わってきたのです……それなのにこんなにも美味しい料理へと生まれ変わらせることができるのです……」


 大学芋を食べフルフルと震えるひとりの妖精。多くの妖精はその味に驚きマモルの作った大学芋に群がり一心不乱に口に入れるなか、その妖精はひとり目を閉じて味を確かめるように噛みしめる。


「使っているのは油と芋と蜂蜜に塩。火で油を温めることで何かしらの反応が芋に起きたのです……最後に蜂蜜と絡めたときも火を入れ、カリカリと輝く膜を芋がまとったのです……」


 あっという間に大学芋がなくなりマモルはクリスタルリザードのカラアゲに魚の串焼きと、茹でた貝は身を取り出しひと口大にカットしてワカメと一緒に煮込み最後に溶き卵を入れスープが完成する。


「ちまちま貝から身を取り出すのは大変なのねぇ」


「ですが、こうやってスープの器になるのですから便利なのメェ」


 ハマグリのような二枚貝なのだが大きさがマモルの拳ほどある大きさで、妖精たちからしたら大きな皿として使えるだろうと貝のスープの容器として使ったことで妖精たちは喜び、はじめて見る大きな貝を使ったスープやその殻に驚いている。


「外ではこんなにも大きな貝がいるのか!」


「火を使うことで深みのある味になるのかしら?」


「この葉は海の中の植物らしいわよ」


 安全な場所でひっそりと暮らす妖精たちが初めて触れる外の世界の食べ物や火を使った料理に驚き感動していると、ひとりの妖精が前に飛び出しホバリングしながらマモルの目を見つめ叫ぶ。


「私にも火を使った料理を教えて! 私にできることはなんでもするから、火を使った料理を教えてほしいの!」


 急な叫びに妖精たちの視線は一気に集まり、マモルは数度瞬きをしながら驚きつつも叫んだ言葉を理解する。


「えっと、火を使った料理? 妖精さんたちは火を使わないで料理をするのですか?」


「我々は森や命を奪う火を使うことを禁忌としております。矯正する蜂も火を恐れ、共に暮らすのであれば火を使わずに生活し、蜂たちを守っ!?」


「弟子にして下さい! 火を使った料理を覚えたいです!」


 マモルの前で火を使わないことを説明していた妖精の戦士をヒップアタックで吹き飛ばし、再度料理を教えてほしいと懇願する妖精。その瞳には力があり絶対に引かないという意志が見える。


「ラックラ! おまえは何を願っているかわかっているのか! 禁忌である火を扱う意味がわかっているのか!」


 吹き飛ばされた妖精が空中で体勢を立て直しララックと呼ばれた弟子入り希望の妖精の横へと戻り胸倉を掴み叫ぶ。


「禁忌だろうが皆が認める味! 感動する料理になったの! 私の料理の道は渡しが作るの!」


 胸倉を掴まれながらも叫ぶララック。掴んでいる兵士は更に目を吊り上げるが、次の瞬間には左手を外に回しながらその胸倉を掴む手から解放され、掴んだ左手を両手で持ちグルグルと横回転しはじめる。


「自分の道は自分で切り開くの!」


 回転しながら叫び手が離れた次の瞬間には明後日の方角へ投げ飛ばされる妖精兵士。投げ飛ばしたララックは目が回っているのかフラフラと降下し、慌ててマモルが両手で優しく包み込むようにキャッチする。他の妖精よりも少し小さいララックはマモルの手の上で這いながらも立ち上がろうと力を籠め、「絶対に弟子になるの」と呟く。


「また変なのが弟子になろうとしているのねぇ」


「また? 変なのメェ? 誰の事をいっているのか気になりますが、その妖精は気合がありますめぇ。きっと、何かしら偉業を成し遂げそうな気迫を感じるメェ」


「ボクの料理で偉業とかいわれても全くピンときませんが、ご両親からの許可が取れるのなら教えますよ」


 マモルの言葉に顔を上げ目を見開くララック。


「本当っ! なら大丈夫! 両親は好きに生きろって前にいってたの!」


 ララックの言葉に信用性がないなと思いまわりの妖精たちへと視線を向けると皆で頭を縦に振り何かしらあるのかもしれないと思考するマモル。


「えっと、そのご両親に会うことはできますか?」


「たぶん無理! ふたりは私を置いて旅に出たの! 私は妖精酒を教わっていたから旅にはついて行かないって断ったの! 父も母も凄く強いから旅をしていればいつか会うかもしれないの!」


 どうやら両親も行動力のある妖精だったのだろう。


「会うかもですか……」


「連れて行ったらいいのねぇ。そうすれば我の負担も減るのねぇ」


「エルエルの負担? たまに料理を少し手伝うだけで基本的に浮いた存在のあなたに負担があるようには思えないメェ」


「これだから羊頭なのねぇ。我は常にマモルを気にかけているのねぇ。精霊王の使いっパシリが生意気なのねぇ」


 互いに視線を強めながら距離を詰めるエルエルと羊メイド。手の上でキラキラした瞳を向けるララック。マモルはもう少しだけでいいから互いに仲良くしてくれたらと思うのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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