妖精と酒と料理
「これ、酔って空を飛んでは危険だ!」
「メイプルシロップは蜂蜜と比べてもそん色のない美味しさですわ!」
「みりんの甘く風味のある味も悪くない!」
「我らの作る蜂蜜酒には遠く及ばないが、これはこれで美味い!」
テンション高くみりんを飲み始める妖精たち。料理の甘みや照りとして使われているが古くは甘い酒として作られ、それに焼酎を同量で割り冷やして飲んだのが本直しと呼ばれるみりんの飲み方である。
「お酒として飲んでいたと聞いたことはあるけど、妖精たちが酔っているのはどうなのだろうか……」
ふらふらと飛ぶ妖精たちの姿に苦笑いを浮かべ、エルエルと羊メイドは妖精たちが持ってきた蜂蜜酒を飲み仲を深めている。
「程よい甘さとアルコール度ですメェ。仄かに花の香りが残っているのも良いですメェ」
「酒が進めばおつまみが欲しくなるのねぇ」
蜂蜜種の影響でほほを赤く染めるぬいぐるみ状態のエルエルからの視線と催促を受け、花や緑の少ない砂利の多くある湖畔近くへと向かい指輪型のアイテムボックスから使い慣れた焚火台を用意し、てきぱきと料理の準備を始めるマモル。
「火を焚いているわ」
「ラミアたちは火を使い魚を焼いていたわね」
「火はすべてを奪う! 扱いには注意されたし!」
妖精たちの主食は花の蜜や木の実といったもので火を使わずに食している。その為か火を起こし料理をする姿に興味があるのか多くの妖精たちが集まり慌てて声を掛ける。
「火を使っている時は危険なので一定の距離を取って下さい」
マモルの叫びに妖精たちはホバリングしながら離れ、それを確認したマモルは指輪型のアイテムボックスからサツマイモを取り出しサイコロ状に切り揃え、温めた油で揚げてはじめる。パチパチと音を立てて油の中を泳ぐサツマイモを見つめる妖精たち。エルエルや羊メイドも興味深げに見つめているとサツマイモが揚り、油を切りフライパンへと投入する。
「甘い匂いがするぞ!」
「あれも蜂蜜なのかしら?」
「透明な容器? ガラスとも違うみたい!」
市販されている蜂蜜と塩を入れ、熱したフライパンで揚げられたサイコロ状のサツマイモと絡められ広がる甘い香りに手乗りサイズの羊メイドの目が光る。
「これは絶対に精霊王さまが喜ぶ料理だメェ。必ず覚えて帰るメェ」
「大学芋なのねぇ。でも、醤油を入れないのねぇ?」
エルエルから上がる疑問にマモルは口を開く。
「ほら、魚醤はあっても醤油はないし、この料理を再現しようと思えば塩を使った方がやり易いだろ。塩大学芋とかでも美味しいしさ」
味が気に入ればこの料理を再現するだろうと手に入りやすいさと作りやすさを考えて塩大学芋を選び、ハチミツと絡み照りが出たところで最後に炒った黒ゴマを振りかけ皿に移す。
「熱いので少し冷めてから、マイフォーク持参ですか、どうぞ気を付けて食べて下さい」
湯気を上げる大学芋に群がる妖精たちは木製のフォークを持参しサイコロ状にカットされた大学芋に噛り付く。体長が二十センチと小さいが大学芋は拳よりも一回り大きく甘い香りの誘惑に負けたものから噛り付きハフハフと熱い息を漏らし、羊メイドも大学芋を口にして熱さに悶絶している。
「熱すぎるのメェェェェエェェェ!?」
「だから注意するようにマモルにいわれたのねぇ。これだから精霊は食い意地が張って、あむっつ!! はふはふはふはふはふはふはふっ」
エルエルもまた熱さに口の中を焼かれ、慌てて蜂蜜種を口にする。
「まわりがカリカリとして楽しい食感だわ!」
「甘さの中に塩気もあって食が進むぞ!」
「火を使うことでパリパリした食感になるのね!」
「長老たちに許可を取って火を使う料理を提案しましょうよ!」
妖精たちは確りとマモルの注意を聞き息を吹きかけ冷ましてから恐る恐る噛り付き火傷を回避しており、悶絶し撃沈したエルエルと羊メイドは砂利の上でまだ口内を冷やすべく蜂蜜種を口に入れ苦悶の表情を浮かべており、マモルは仕方なしに指輪型のアイテムボックスからポーションを取り出すと小さなカップに分けて渡す。
「ぷはっ! 口内がずるむけになったのねぇ! 熱すぎなのねぇ!」
「精霊王さまには冷めたものをお出ししないと危険すぎるのメェ……」
「こっちは注意してといったけど……って、一瞬にしてなくなったな。次は何がいいか、トカゲか魚か貝も多くあるな」
ケットシーの村で分けて貰った魚は既に鱗と内臓が取り外されており、それに塩をして串に刺し焼きはじめる。吊るしてある鍋には砂抜きをした貝を入れ茹で、温かい油にはクリスタルリザードのモモ肉に塩コショウとショウガを入れよく混ぜ、小麦粉と片栗粉を入れ油で揚げる。一度に三品作り始めたことで妖精たちのテンションが上がり宙を飛び始め、エルエルと羊メイドを呼び焚火台や熱している油に飛び込まないよう注意してもらい、羊メイドはその姿を通常サイズへと巨大化させ料理を手伝い、エルエルも力ある言葉で結界を発動させ半透明な結界にムギュっと衝突しズルズルと落下する妖精が数人でたが安全に料理を終え提供するのであった。
お読み頂きありがとうございます。




