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旅のお供は変わり者~種族を越えて囲むテーブル~  作者: 彩
第五章 妖精とオークの国へ
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羽音の主と試食会


 羽音と共にわらわらと現れマモルとエルエルの前でホバリングをしながら頭を下げる。


「助けていただいたのに失礼な態度を取り申し訳ありませんでしたわ」


 そう口にしたのは身長が二十センチほどで背中に虫の羽を付け、どんぐりの殻と葉を器用に縫い合わせたドレスアーマーを着込み、手には針葉樹の葉で作られたランスを持ち、赤く美しい瞳に緑色の長い髪が特徴的な集団。


「凶悪なアサシンマンティスをすべて討伐するとは恐れ入る!」


「さぞ名の知れた戦士なのだろう!」


「我らは湖畔の妖精ぞ! 名乗るがよい!」


 中央の統率者が謝罪するとまわりのものたちが一斉にしゃべり出し聞き分けることができず困惑するマモル。そんな妖精たちにエルエルが口を開く。


「謝罪ではなく礼を述べるのが筋なのねぇ。どうせこのカマキリどもに縄張りを襲われリベンジマッチのタイミングを窺っていたのねぇ。小さな存在の割に口だけは大きいとかどっかの羊頭みたいなのねぇ」


「あぁぁぁぁ? 誰が小さく、口だけだとメェ?」


「現にマモルが襲われ真っ先に隠れたのねぇ。我じゃなきゃ見逃しちゃうのねぇ」


「隠れていたのではなく、隠れている妖精たちに気が付きそちらを警戒したのですメェ。妖精は固有の魔法や特技を持つ個体が多いので侮れないのですメェ。その証拠にほら、このものたちが守ろうとしたのはあちらの花々とハチの巣でしょうメェ?」


 いつの間にかマモルの頭の上に着地しエルエルと軽い口論をし、最後に指差す先には色取り取りの花々が風に揺れ、その中央には一本の果樹と複数のハチの巣が目に入る。


「その通りですわ。そちらの精霊さまに睨まれ手助けに入ることもできず申し訳ありませんでしたわ」


「本来であれば我らだけで戦っていただろうが……」


「我らだけでは……」


「せめてもの礼に我らと共生する蜂たちから蜜を分けて貰いご馳走したいぞ!」


「大きな戦士よ! 是非とも我らの歓迎を受けよ!」


 統制が取れているのかいないのか、自由に口を開き一方的に自分たちのペースに巻き込むのを得意としているようで、湖畔に佇む果樹の下にあるハチの巣へ向かうのに抵抗のあるマモルはエルエルに助けを求め視線を送る。


「ハチミツ……悪くないのねぇ……」


 エルエルは既にハチミツに懐柔されており、常識力があるだろう手乗り羊メイドへと視線を向ける。


「精霊王さまの供物として最適ですメェ」


 羊メイドは精霊王のツグミが喜ぶ顔を妄想しておりマモルは大きくため息を吐く。


「えっと、お礼とか気にしないで下さい。襲われたから撃退しただけですし、拳サイズのミツバチとか正直怖いです」


 素直に思ったままを口にするマモル。妖精たちはホバリングから一転して飛び回り代表だろうひとりがマモルの前でと進む。


「妖精を前に欲のない……我らが宝である蜂蜜を前にしても謙虚でいるとは……本当に蜂蜜を欲さないのですか?」


「手持ちの蜂蜜もありますし、なんなら砂糖やメイプルシロップに水あめもありますので、ハチの巣に近づく恐怖を考えれば欲しいとは……」


 ひとりを残し飛び去った妖精は仲間へと報告に向かったのかハチの巣の方へと飛び去り、拒否の姿勢をするマモルにエルエルと羊メイドは互いに視線を合わせ頷き合う。


「あの蜂は安全なのねぇ。刺すのは敵対したものだけなのねぇ」


「その証拠に、ほら妖精たちが飛び方で敵意がないことを伝えているのメェ。極上の蜂蜜が手に入るのチャンスなのメェ」


 必死の説得をしてくる二人に苦笑いを浮かべ、指輪型のアイテムボックスから自分が持っている市販の蜂蜜を取り出すと興味深げに見つめる妖精。


「綺麗な琥珀色ですね」


「味見しますか?」


「是非!」


 小皿を取り出してスプーンで取り出すと妖精は目を輝かせながらマモルの手に腰を下ろし、小さな指で蜂蜜をすくい口に入れる。


「………………これは雄大な花畑が見えます。紫に咲き誇る花々が生き生きと育っていますわ」


 目を閉じながら蜂蜜を口にして食レポする妖精を前に、ラベンダー畑のロゴが印刷されているパッケージを目に入れ味から判断したのか疑わしいなと思う一同。


「マモル、マモル、メイプルシロップも食べさせてみるのねぇ」


「みりんも甘かったのでそれも飲ませてみるメェ」


 食レポを疑う二人の悪ノリに思うところがあるがメイプルシロップなら大丈夫だろうと同じように小皿に入れて提供し、みりんも少量ならと小皿に入れ頭の上から降りた羊メイドに手渡す。


「これも中々の甘みと風味があります………………花というよりも樹液? 甘い香りでありながらもシンプルにガツンとくる甘みに好感が持てますわ。こちらは……お酒でしょうか? 甘みが他よりも少なく感じますが……これはこれで素晴らしい味わいですわ!」


 みりんのアルコールの影響か顔を軽く赤く染めた妖精は飛び立つことなくマモルの腕に腰かけ、迎えに来た他の妖精たちも同じようにメイプルシロップやみりんを口にして喜び、軽い試食会上のような雰囲気で仲を深めるのであった。



 お読み頂きありがとうございます。

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