44瓶 即効性
兵士が帰ってくるのを見ながらも、鍛冶屋に向かいます。
‥液剤は、出来たけど‥・・どうかな?
「おはようございます!」
声をかけると、親方さんがすぐ、気づいた。
「ホルム!」
奥から‥見習いの方が、やってきて・・。
カウンターで、ノズルの部分を見せてもらった。
形は、思ってた通りで‥尚且つ、小さな穴もあって・・瓶の口に ぴったり!
「凄いです!思ってた通りのです!!」テンション高くなってしまった。
「こっちも、出来てるぞ」
3本の、ピンセット‥小さいのを、つまむのと、トゲとか小骨を抜くもの、それと耳かき‥みたいな‥微匙‥よ・・うん。それ。
おぉ!! 凄い!‥‥ってボキャブラリー壊滅かっ!ってくらい、凄い‥としか言えない哀しさ。
「ありがとうございます! いくらですか?!」
いくらでも出せますよ!と言った顔をしてたのか、軽く笑われ‥る。うぅ。
「この3本のは、1本‥まぁ・・大穴銀貨3枚って所だな」
「3本なので、大穴銀貨9枚です」と、ホルンさん。
はい・・。大穴銀貨9枚・・出す。
「確かに」
「こちらは?」
「そりゃ、まだ商品じゃなく試作品だぞ。おまえが使って、ちゃんと使えるかを確認したら、数を作ってやる。何個 必要なんだ?」
あ・・そっか。それからか。
「液剤は、在るんですけど・・。今‥森は、兵士達が居るんで・・」
「あー・・確認し難いのか・・」と、親方は キョロ キョロしてる。
「この鉢植えに、それ使ってみろ」と言われ、ガラス小瓶に薬剤を少し入れ、ノズルを付けた状態で、刺してみた。土しか入ってない‥所に・・。
‥しばらく待つと思ってた。‥リモンを含め全員が、驚く結果となる。
速攻にも、ほどがあるよ!って思うほどに、刺した直後に ぶわっ と、草生えて来た・・。そんな事ある?!無いよね?? あー・・びっくりした。
「凄い効果だな・・」
みなさん、固まってるけど・・。自分も、固まってたよ・・。
「ま‥まぁ、ちゃんと使えたので‥これを、あと12個 お願いします」
「おう!任せろ」用意してくれてれば、いつでも動けるね。
薬剤は、あとで準備しておこう。材料は、貰った中で十分 足りるから。
・・そうだ。この薬・・やっぱり‥あった!
私のステータス画面と同じ所の『レシピ』には、私が組み合わせた‥材料だけの錬成レシピとは別に…。
普通に作るなら、こうなる・・みたいな、精製レシピも書いてある。これを紙に書き写して、軍の研究者にでも作って貰ったら‥。
騎士団で、森の維持活動で、兵士に使ってもらって…。継続的に使える薬になるんじゃないかな?・・そしたら、私が他へ行っても、家に戻ったとしても、鍛冶屋での注文や、料金なども書いておけば・・。
それ、報告書みたいな形で、出しても良いかも。
‥せめて、検討くらいは‥して欲しい。
「お話中 失礼します!」
突然、息の上がった‥水色のマントの兄さんが来た。
・・何だろ?
「どうしたんでぃ?」
親方さんが、聞いたけど・・その兵士は、私を見てる?
「リ‥リモン殿‥でしょうか?」はい。
「‥一緒に、森へ ご同行‥ふぅ・・えっと、願えますでしょうか?‥」
ん?‥なんで?
「理由まで、ちゃんと言え」
親方に叱られ、兵士は‥息を整えると ビシッ と立って‥。
「はっ!‥ラフェヌ殿からの要請で、救助に薬の提供を願いたい‥との事です!」
‥ラフェヌさん? 救助に薬‥。
少しは‥ある。特に‥普通のなら、大量に在る。飲み薬は、少しだけど…。
「分かりました。同行します」
鍛冶屋の皆さんに、お辞儀して‥足早に、兵士 兄さんに・・ついて行く。
近くとは言え、まず外へ出て‥森の入口へ。
相変わらず見習いが、立ってる。
私を見て、ビシッ‥って、なるのは‥ビハイルさんの影響ね‥。
街道と森の境目から、森へ 一歩‥足を踏み入れた瞬間・・・。
うっ‥何・・・?‥この臭い・・。
血のニオイ‥だろうか?
何と言えば良いのか‥ちょっと思いつかない‥ニオイ・・。
‥雨が降ってるからか、酷く淀んだ空気の中に、足を踏み入れたみたいに…。土のニオイに混ざって‥血のような‥鉄のような・・異臭がしていた。
森の入口の広い場所には、緑や黄緑のマントが、青や赤の兵士の治療をしてるのが‥見えてる。紫のマントを纏った‥白い服装‥魔法使いの足元まで隠すくらいの、長いローブを着てる人物が、近づいて来たのに気づいたけど・・それは・・。
「見つけれたんだね。エライえらい」と、見習いを労った。
「え?‥ラフェヌさん?」
「うん。来てくれて助かるよ。体力治す薬、何か在るかい?」
「はい!飲薬は、少しですが・・かけるタイプなら沢山 持ってます!」
物資班の知らない兄さんが呼ばれ、魔道具の袋に入れてく。
・・いっぺんに入れれないのが、大変だけど・・。
いっぱいになると、入らなくなり、お辞儀して戻って行く。
ラフェヌさんに促されるまま、穴の開いてる方の道に進むと、毒や麻痺になってる兵士を治療してる人達が、多く居る場所に来た。そんな状態異常になったり‥って、壮絶だったんだろうな・・そう・・思った。
「ラフェヌさん‥。ソルさんは?他の・・人も…」無事かな・・。
「まだ、分からないんだよ」みんな、顔が泥だらけになってて、判別しにくいせいもあるらしい。それから・・気になったので、聞いてみた。
「あの・・山になってるのは?」
道を塞がない程度に、荷物のように山積みにされた‥人達。みんな、泥だらけで、誰がどれとか、分からないけど…。扱いが雑だし・・もしかして、亡くなってるの?
「あぁ。まだ、息は‥あるけど、瀕死に近いね。魔力回復も、あるかい?」
「あります!」正直、体力回復より・・多いかも。
別の物資班の人が呼ばれ、同じように・・こっちは、飲薬 や アメ が多め。
「助かります」と、お辞儀して去り、魔法使ってる人に配ってた。
「これで、少しは助かる人が増えるよ・・」
「‥あの・・ラフェヌさん」
‥アレを・・・・試したい。‥不謹慎?でも・・助けたい。
「ん?‥どうしたの?」
朝‥試しに‥ガムジャから、でんぷん‥っぽいの‥普通に取り出せたから、それを含ませて‥紙のように出来た薬もある。噛めなくても、使えるようにしてあるのも‥在る。
100枚で1セットだけど・・。これ、売れないな・・と思ったよ・・。
なんせ、この1枚で‥大金貨5枚 ( 50万 R ) ・・だよ?!
‥そこら辺に置けないし、普通の人にも売れないし。粒の方は、1粒で‥25万 R・・。誰が そんな お金、出せるの!?って思ったのよ・・。
それは さ て お き ‥
「この山にされた人達に、新しい薬‥試して良いですか?」
恐る 恐る‥聞いてみた。
「うん!良いよ。何かあっても、僕の責任になるから。僕は構わないよ」
良かった!・・・しかし、1つ問題が。
自分では、人の口‥開けられないと知る!‥どうしようか・・。
「あのー‥この人達の‥口を開いて貰いたい・・の ですが‥」
すると兵士が数人‥呼ばれる。寝かされてる兵士の、口開け要員として。
青と水色の。頭上に疑問符を浮かべたような顔してる。
一体、何する気だろうか‥と、言った表情だ。
・・・お手数かけますね・・。
意識も薄くて、声も届いてないみたいだったから。
‥無理やり‥口を開かれて・・・そこに、1枚 薄いの入れて・・。
口が、閉じられた瞬間に ぶわっ と、光に包まれて‥。
え?!‥大丈夫かな?‥これ・・・。
光が消えていき‥薄ぼんやりしてた顔は、目をパチリと開き、むくって起きて・・。「自分、大丈夫です!」その場からも‥下りた。
『おぉ!!!』 口開け要員の兵士含めて、歓声が起こる!
「凄いですね!それ・・」ホントにね。
「何それ⁈ 僕も やりた~い!」
ラフェヌさんが、キラキラした顔で‥見てくる。
はい・・。じゃ、やりますか・・。
1瓶で、3セットくらい出来たから、2人1組になって‥山積みにされた兵士達の、口を開け‥1枚入れては回復させ・・を繰り返す。
ここの山の人達は・・・復活。
「意識ありそうな人には、こっちの粒の方を1粒入れて、噛ませて下さい」
他の兵士も、手伝って‥全域に避難してた兵士達の、復活をお願いした。
‥でも、ソルさん‥ラオフェンさんとかも、見当たらない・・。
「リモンくん!‥これ、僕も欲しい‥」と、目で訴えてきた・・。
えー・・・いや、これ‥売れる物じゃないんですけど・・。しかし、元々‥騎士団から貰った素材で出来てるし・・うーーん・・と、悩んでると・・。
「駄目ですよ。ラフェヌ殿」と、ダスクさんが‥止めに来てくれた。
わざ わざ、すみません。
ラフェヌさんを止めれる人は‥けっこう居るんだなって感想。
そして、ダスクさんは・・ご無事 確認。
良かった。ジェニーさんも居る。
「リモン殿。地下にも、まだ兵士達が残ってます。お願い…出来ますか?」
ダスクさんに言われ頷いて、数人の兵士と一緒に、地下へ向かう。
ラフェヌさんは、ダスクさんに引き留められてる。
代わりに自分の班員だろうか?‥その1人が一緒に来た。
地下に在った洞穴に、ミロウルススが居たけど、それが出ないように‥保護の結界魔法で塞がれてるみたい。それを維持してる魔法使ってる人が、青い顔してる。
‥魔力無くなりそうって思ったので、回復のアメを‥近くに居た人に渡す。魔力回復の高いアメを、口に入れてもらい・・女性陣は「甘いし、美味しい!」と言ってるけど、男性 数人は「甘っ・・」で終わった。
そして、さらに奥へと進んで‥地下 深くへ。
水辺の在った‥休憩所に・・沢山の兵士の・・・山が‥出来てた‥。
全員もれなく、マントの色すら判別 出来ないくらいに、泥で汚れてる‥。
水辺の近くには、意識 残ってる兵士が居るみたいで、粒の方を2人の兵士に渡して‥回復に移動してもらった。何人か‥赤の人も混ざってる。
‥奥の山は・・ダスク班の兄さんと一緒に、シートで回復していく。
上級が居ただろう洞穴は、跡形も無くなってて・・。
中央で、何やらブツブツ言ってる‥数人の紫のマントの人達が居るのが、見えてる横で‥ぶわっと光らせ回復してるので、何事かと思ったみたい。
‥文句言おう‥という顔で、近づいて来たのが見えた。
こっち来るよりも前に「ラフェヌさんの許可は、頂いてます」って言ったら、苦虫 噛んだような顔の人達は止まった。
山の中 頃に・・あ・・ソル・・さん?
回復 直後に「‥リモン‥殿?・・」
「はぁ~‥良かったぁ~…」ソルさん、無事 確認!
「‥」ん?‥大丈夫?‥あ、起き上がったし‥大丈夫だね。
・・まぁ死んでても、アレ・・あるけどね・・。
ラオフェンさんも、けっこう下の部分に・・圧死・・してない?とか、不安になったけど・・シートで起きたので、ホッとした。
私‥冷や汗かいてたみたい・・。でも、皆さん 無事・・復活!
町へ戻る為に、地上へ‥移動してもらった。
人が居なくなってくと、さっきの紫マントの人達で、囲まれた‥中央には・・緑っぽい・・結晶のような物が…見えた。
すごく、薄い・・緑だ。
遠くから‥鑑定!
〈 ウィリディスの魔結晶 〉
ウィリディス州 全域の魔力 供給体。これが枯渇すると、土地が滅びる。あと1年程度で枯渇予定。
うぇっ⁈・・そりゃ、やばかったね。
「これが、こんなに薄いとは・・」
「これに魔力を注ぐには…」ブツブツ言ってる。
いや・・それ、私の役目では?
地上へ戻る為に移動してる中で・・。
「リモン殿は、果てしないですね・・」と、ソルさんに言われた。
え?・・何の話です?
私が、何の事か分からず、首を傾げてると‥かなり遠くから‥聞いたような声が聴こえ・・てきた・・。
『‥リ‥モ・・ン・・どのーーーー…』あ‥ビハイルさん?
響くからっ!うるさっ!‥いつも通りに、元気に‥やってきた。
「ビハイルさんは、ご無事・・と」うん。
「元気ですぞ!」響くので・・もっと、ボリューム下げて・・。
・・言いたくなったけど、止めておいた。
どうやら、自分が来てる事を知ったから、迎えに来たらしい。
道中‥危険じゃないですけどね・・。一緒に町へ・・。
兵士さん・・ぞろぞろ引きつれる形で、戻る事になったのよね・・。
それは良いけど‥良いんですけど‥でも・・・。
‥ビハイルさん。・・私は、後方で良いんですよ?
こんな、先頭じゃなくって・・目立つ!
町へ戻ると、みんなが泥だらけ‥なのは変わらないけど、元気に戻って来た事に驚いている。最も驚いてたのは、騎士団 内部・・だったらしいけどね。
「リモンくん」ラフェヌさんが、門の広場に来た頃、声をかけてきた。
「明日以降、森を戻す為に‥いろいろ行動すると思うけど、森は自由に入って良いからね」はい‥どうも。
「僕の班の人が居るかもだけど、何か言われたら、僕の名前出せば良いからね」「はい。ありがとうございます」
「たぶん、地下にあった『魔結晶』に魔力を注がないと、回復しそうにないよね・・」‥魔結晶?・・あぁ。なんか、薄くなってた‥あれねぇ。
「魔力を戻すには、どうすれば良いんでしょうか?」
「魔力量の高い物を、傍に置けば‥良いと思う‥」
‥例えば?‥と聞くと・・。
「そういえば、トントの町にある商店で、欠片だったけど‥。相当量の魔力を、持ってた石とか…」と その後も、いろいろな素材だろう物の名前を言うけど、全然 知らない物ばかりだった。
‥商店・・石の欠片?・・もしかする・・??
とにかく、森用の薬剤・・残りの分、準備しないと!
【3種のピンセット】作ってくれたのは、鍛冶屋イロアスのグロルさん。細かい作業が得意な人。数年前に、小さな刃の付いたナイフを、作ってくれ‥と言われて、要望通りに仕上げた職人。①一般的なピンセット②骨抜きピンセット③耳かきのような小さな匙。
※森用栄養剤の瓶に付ける差込口=ノズル
※大穴銀貨1枚=1,000Rです。
※ラフェヌさんは、研究者なので、紫のマントを甲冑ではなく、ローブに付けたものを着ます。若いけど、司令官の立ち回りもします。
※ガムジャ=この世界で、じゃがいも‥に似た食材。
【リモン ヴェーシ】( ヴェーシ=ロシア語・全て )
ガムジャのでんぷんと似た成分を合わせ、木のトレイに流し入れ、セーカで乾かした物。それをチューインガムくらいに細長く切り、100枚で1セットとして、小さな木箱に入れてます。それが1瓶分で、3セット出来ました。なお、残った分はダスクさんが回収し、リモンに返却されます。
【保護結界魔法】主に、緑マントの人が使う。補助魔法の1つ。白い魔法陣が展開され、空間に壁を作り出す魔法。維持には、微量ながら魔力を消費してる。魔力が無くなるか、解除すると消える。
※泥で汚れてる理由は、上級魔物が‥泥を飛ばしてきたりした為。
※ソルさんは、知り合いですから‥回復して、ホッとしたリモンの顔は‥女子に見えたようですよ‥。
【魔結晶】各州に1つは、必ず存在している結晶体。地下奥深くの触覚と繋がっていて、毎年‥チェントロ国では、巨大樹から魔力の供給が行われる。基本は、その魔力供給で十分濃い魔力を蓄えるのだが‥。ザンザーラの雌が居た事で、その魔力の大半は吸われていた。
※本来、山積み兵士たちは回復されないまま、放置される運命でした。赤い兵士を優先する為。それを回復させてしまったので、ソルさん含め、皆が驚いてました。軍団長も凄く、驚いてたそうです。
次回は、森復活の薬について、捧樹に助言を頂くのだけど・・・




