2瓶 アルドルの町 前編
不慮の事故で異世界転生した私・凛は・・この世界の少女・リモーネの体へ入っていた。彼女の願いを叶えるべく、行動すると決めたものの・・。
この場所の事すら、よく分かって無い状態だから‥いろいろ確認しつつ、町を散策する事にした。
ひと眠りして・・・布団に入ったまま、目をパチリと開ける。
・・・ 真 っ 暗 ・・ですね。
むくっと起きると…カーテンは開いたまま、外は暗くなっていた。
・・・変わらず、異世界ですか・・そうですか・・・。
そして‥ぐぅ~・・。腹が減りました。
・・そういえば・・と、食料があった事を思い出し、取り出す。
鑑定が出来るという事も思い出して、干しパンなどの鑑定をしてみた。
・・どうやって出来るんだ? 「鑑定」と、言えばいいのか?
それとも、思うだけか?
片手に干したと思われるパンを、じっ と見る・・・無反応。
「えーと‥これは?」と呟いた瞬間、パッ と、説明の白い半透明なものが現れた・・。
[ パン ]
この世界で一般的な麦粉パン。長期保存に向いている。
え・・麦粉って何よ・・。小麦粉・・とかじゃなくって??
・・・・もしや、まとめて書いてるとか? うーん・・・。
ってか、干してある訳じゃなくて、固いパンって事か・・。フランスパンというなら、なんとなく想像は出来るけど・・。
食べる時は薄くスライスするか、何かスープや水と一緒に食べないと辛そう。
・・・。 うん・・まぁいいか。
[ チーズ ]
シュタインボックのミルクで作られたもの。一般的な食材。
シュタインボック? 何だろ?
まぁ、生き物って事なんだろうけど、たまに魔物だったりするもんな・・。生き物とか見かけたら、すぐ鑑定した方が良さそうだ‥と思った。
あとは、このリンゴのような実は・・
[ カロミリャ ]
赤や緑の皮を持つ木の実。
甘酸っぱい味。広く一般的に好まれてる果物のひとつ。
・・・名前・・。
リンゴ・・とかポム…とかなんとか・・では無いのか…そうですか・・はい。
とりあえず、この鑑定・・説明だけ だな。効能とかは、無いもよう…今の所。・・腹が催促してくるので、パンを薄く切って、チーズの四角い塊から少し切りパンと共に食べる。
・・・・かなり薄っぺらく切ったけど、けっこう噛み応えがあるな。
丈夫な若い歯でも、けっこうな固さだ。
・・・ここの人達は、水は‥どこから? 井戸かな?
明日、町を見て周って‥調べる必要があるな・・・。
あっ・・
思い出したのは、この宿屋代を払ってくれたカワイイ顔のお兄さんのこと。
どこかのお店の名前を言ったけど・・何だったかな? うーーーん・・
あぁ、そうそう。
『ナイト』・・と言って、大通りにあるそうな。
・・・大通りなら、迷わ‥‥ない・・よね?
正直、迷子になる自信がある。いや、そんなの自信持つなって言われそうだが、大抵見慣れない場所では…迷子になりやすいのだ、私。
地図も在ったら、欲しいものだが・・・どうだろうか?
・・宿屋の人に聞いたら、お店の場所・・・分かるかも。
朝、聞いてみよう。よし。
そうだった。手帳の続きを見ようと思っていたんだった。
・・・えー と?
・・いやしかし、それはこのステータスになってしまったではないか。手帳・・カムバーック! と天井に向け、右腕を突き出す形に脳内で思った時‥
ポテッ
・・あれ? なんか、出てきた。
つか、どっから出た? 見て無かったのだけど・・・。
空間に消えたはずの手帳が、どこからともなく出てきた。
・・・同じ・・もの・・・に 見える。ページを確認すると、見た事のある状態で・・本当に、復活していた。読み物があるのは、暇つぶしにも良い。確認してたのは、服装の事や家族の問題、少女の夢などだったように思う。
次は‥母親の病を治す薬の名前と、作れる薬師の名前‥。その人が居る場所の目星が載ってるのだが・・・・。
病の名は、マナ リジェクト症 と言い、特定の薬師にしか作れないと言われるほど、高度な技術と品質の良い素材が、5つ も必要とされている。
‥品質の良い素材って事は、きっと・・・高価だろうね。もしくは、入手が困難・・というのが、一般的だろうね。
それで、薬師さんのお名前が・・・エシェック という男性だそうな。
居そうな場所は、国内の ウィリディス州らしい。この州は森ばかりで、薬の素材を集めるのに最適らしく、多くの薬師や商人が訪れる所なのだとか。森は好きだ。
今居るのは、エキャルラットだから・・2つ関所を越えないといけないみたい。・・ま、まずは‥町から出られるか・・だよな~。
それから、ガラス瓶に入ってる3つの素材についても、書いてある。これは‥家から持ってきた薬の素材らしい。
薬師にお願いする際に、渡す予定のもの・・・みたいで、けっこう価値が高い・・と考えてるみたい。…実際には、どうだか知らないけどね。
・・鑑定しても、値段すら 出ないもの。
ひとまず、書いてあるのを読みつつ・・素材を持って、鑑定もしつつ‥見てみることにした。
1つめは、紫色の砂?くらいの大きさの顆粒が入っている。いや、火薬な訳は無い・・よね? なになに・・
[ ノクスレーテ ]
アイテム『忘却香』の素材の1つ。微匙ほどの量で3個作れる。・・火薬じゃなくて良かったけど、わりと物騒で‥取り扱い注意だなって思う。・・微匙って・・・・。
次のは・・・これまた何だか分からない。まぁ、分かるものなど何も無いのだけどね。見ためが・・アレに似ている・・・。正月の・・私は嫌いなので食べないが・・『数の子』に、見ため や 色 がそっくりだった。
鑑定・・うげっ ・・思わず、声が出てしまった。
[ 雷衝卵 ]
セントライ‥という、魔虫の卵・・・だってよ。 うぇえぇ・・
卵、1つ1つに雷を蓄えてる。空気に触れて数時間後に羽化する。
・・気を付けなくては・・・。開けないように。
最後のは、これは食材かな? 緑茶の新芽のような見ためで、植物のように見える。普通に緑色をしてるし。
[ イズムルート ] 鉱物の一種。
魔獣・アルボヴァリオンの一部。砕いて粉にすれば、薬として使われる素材。希少品。アルボヴァリオンは主に、ガーバート国に生息。
・・・鉱物なの?! 見ためとイメージ違うなー・・・。
しかも、魔物の素材かいっ・・。
他に、瓶は無いから・・明日、道具屋とかも見て‥在れば数個は買っておこう。どこで、何を見つけるか・・分からないからな・・。町の外がどうなってるかも‥分からないんだし。
それに、武器が小型ナイフだけなのは・・・心もとないものね・・。
鞄を棚の上に戻そうと思ったら、棚の横に帽子が落ちている。
・・・茶色のキャスケットだった。
軽くはたき、鞄と一緒に棚に置き、そろそろ眠ろう・・・。トイレは、どこだろうか?部屋を出ると、たぶん・・トイレだろう小部屋のドアが近くにあった。・・念のため、帽子を鞄に入れ・・鞄を持ったまま入る。
・・・。
何事も無く、部屋に戻り・・棚ではなく、ベッドの反対側に置いてから寝た。
スズメのような鳴き声の鳥に、起こされ目を覚ますと、すでに明るくなっていた。起き上がり、一応 昨日とは違う服装に着替える。今日は落ち着いた色味の緑1色の服だ。
朝食に、カロミリャを食べる。食材・・というか、すぐに食べてれる、こういった果物を中心に買おうと考え、メモ帳の後ろ側の・・何も書かれてない所に、メモする。
〈今日 やること〉
① お兄さんのお店『ナイト』の場所を、宿屋の人に聞く
→店に行って朝食を食べる。
② 道具屋・武器屋などを巡って、品揃えを確認。
→必要と感じたら、購入を考える。
③ 町から出られるのか?の確認
→男という以外の条件を確認する。
くらいかな。
・・今は、とにかく・・行動だ。
部屋の鍵らしいものは、見当たらない。棚の引き出しも空だった。布団を・・・必要無いだろうけど‥と思いながらも整えて・・帽子をかぶり、鞄を斜めにかけて・・ドアを開いた方がいいのか?と、部屋の入口で迷ってると、隣の部屋から出てきた人に‥変な顔をされる。みかねたのか、その人は「…この宿を、もう使わないなら、開けとけよ」ひと言。階下へ降りて行った。なるほど。
・・・アドバイス通りに、開いておいた。
階下へ行くと、宿屋のおばさんが‥声をかけてきた。
宿屋「あぁ、あんた・・すっかり、元気になったんだねぇ!」
「はい。お世話になりました」
宿屋「あっはははっ・・。そんなに畏まることないよっ。もう、部屋は いいのかい?」 私が頷くと「じゃあ、手続きしておくから」と言う。
「あの・・『ナイト』って店、どこにありますか?」と聞くと、近くに居た人達まで・・こっち見る。宿屋のおばさんも、なんだろうか・・驚いている。
え?・・変な店とか言わないよね・・・? 不安になってきた。
宿屋「あんたみたいな若い男の子が好んで行く店じゃないけどねぇ・・。あー・・あのレアーレが働いてるからかい?」
ん? レアーレ?
どうやら、あのお兄さんの名前のようだ。昨日、店に来てくれ って言われた事を伝えると、やれやれ・・と言った顔で、おばさんが道を教えてくれた。
おずおずと、いかがわしい店なのか?と聞いたが、笑って・・そんな事は無いという。・・・ただ、女性に人気なお店だから、男が行く事が少ない・・・らしい。まぁ、とにかく行ってみよう。おばさんにお礼言って、宿を出る。
目の前には、かなり大きな通りがあり、中央分離帯みたいに、花壇で仕切られている。宿を出て、右を向き・・2本めの道を、今度は左手に曲がると角の店がそうだよ・・と教えられた通りに進む。
ここは、とても大きな町なんだなと思うほどに広く、お店も多い印象だった。朝早い時間らしく、同じ姿の兄さん方が・・忙しく準備している。
・・・お店の外にも、オープンカフェのような席が並べられている。今が何時かも分からない状態だったが、看板などを設置してる人に声をかけ「こちらはいつからですか?」と聞くと、もう入れると言われる。
店員「お好きな席へ どうぞ」と促される。他の作業を終えた人達が、自分を見て「客じゃないんじゃないか?」と言ってるのが聴こえる。
どうしようか? 朝飯 目当てに来たけど…。軽食屋というより、喫茶店だ。
先ほどの店員は少し考え込んだ感じだったが、なぜか「ご指名はございますか?」と聞いてくる。
え? 何??
「えーと? 初めてなので、分からないです。あ、ここに『レアーレ』って人、いますか?」と伝えると、頷いて‥やや大きな声で呼んでくれた。
慌てて奥からやってきた、あの時のお兄さんが来た。
店員「レアーレ、指名だ」と離れて行く。
レアーレ「へ? 俺に指名・・って・・・あー!!」
私の顔を見て、やっと察してくれたようで店の奥の席へ 案内される。
レアーレ「さっそく来てくれたんだね!嬉しいよ!」と満面な笑顔だ・・・。
眩しいな・・。元気いっぱいでハキハキ話す。
アバウトに「何にする?」って聞かれるのが、一番 困る。
いや・・だから、ここは初めてで・・と言うと・・・がたいのいいおじさん…店長らしいが、その人から自慢の『スルクロ』を飲んで行けと言われる。
お兄さんが丁寧に運んで来たのは、白いカップに・・黒い液体。
・・? コーヒーみたいなのかな?香りも、それっぽい。
遠く小声で『苦いって言うぜ・・』とか言ってるのが聴こえる。
一口飲む。 なんとも、軽い飲み口で‥甘みも感じるような・・・
「お い し い 」と、声に出てた。
店長「おぉ? 苦くないのか?」
コーヒーは、子供の頃から飲んでいる。・・・まぁ、当時は砂糖もミルクも入れてたが。今も変わらず好きな飲み物だ。これは、飲みやすい!
店長を見て「これ、おいしいです!」と伝えると、何か納得したように頷いた。
レアーレ「これも、食べてよ」と、今度はハムやら卵が焼かれたものが挟まってるパンが出てきた。見た感じは‥普通にサンドイッチだ。
「いいんですか? ありがとうございます!」って両手で持ち、噛みつく。
・・うっま~ぁ・・・ 柔らかいパンも ある じゃーん!
おいしく頂き・・お金を払おうとすると、お兄さんに止められる。これは、自分を助けてくれたお礼だからって。
・・・お兄さんよ、それ・・今の自分じゃな・・・い・・と言いたかったが、説明しにくいので、次回はお金払う事にして「ごちそうさまでした!」って言って、道具屋などのお店の方角を教えてもらって、お兄さんと別れる。
元気な人だったな・・・。・・うん。店員が 男しか居なかった。
そんで、好みは人それぞれだけど、たぶん・・俗に言う『イケメン』が揃ってる。だから女性客が多いのと『指名』というサービスがあるように思った。
ちなみに、店長には‥マダム系列が指名に来るらしい。
・・・次行っても、入れるか・・・あやしいな・・・。
そんなこんなで大通りを横切り、先ほど渡った方へ進んで最初の道を奥へ進んで行くと、道具屋などの看板が見えてきた。
・・・やたらある気がするのだけど・・・。どれが何を扱ってるのか、確認しながら進んで行こう。まずは、手前の道具屋へ。
【鑑定Lv,1】名前・簡易説明のみ、表示される。
【ナイト】(ドイツ語・嫉妬)
レアーレが働く喫茶店。男性店員のみ。女性客が多い。接客してもらいたい店員を『指名』出来る。日中だけの営業。スルクロという珍しい豆で作られた飲み物が自慢。人気な店員は取り合いになりやすく、現在はお休み中らしい。
【レアーレ】21歳・男 最近、ナイトで働き始めた若者。今は休み中の先輩と口論になった事で、落下するも、リモーネに助けられる。しかしその反対に、落ちてしまい焦った挙句に、近くの治癒術士の人にお願いして、治してもらい宿屋に運んだ。目覚めてくれて良かったと安堵している。
【スルクロ】(ポルトガル語・円) 黒い豆。
コーヒーのような黒い液体。苦味がある為、飲む人を選ぶと言われてる。店長はこの飲み物を流行らせたいらしい。
※主人公の味覚・・一晩しっかり眠ったので、魂の記憶で書き換えられている。
【リモーネの手帳】空間に入ってしまったが、なぜか出てきた。最初の10数ページには何か書いてあるが、他は白紙。見ためや肌感では、わら半紙のような紙。外側の表紙だけ、厚めな紙が使われている。ボールペンの中の芯のようなペンが付いている。
【柔らかなパン】を鑑定し損ねている事に気付いていない。
次回、お店巡りで買い物して、町から出る条件・・・とは?




