小瓶1札 雑貨屋 ケントニス店
※小瓶は、別のキャラ視点のエピソードです。
※いつもとは違う視点で・・お楽しみください。
私は、ケントニス・アルベン 68歳になる。
エキャルラットの地で、一代で‥アルドルの町に雑貨屋を作り、今日まで営業してきた。私の後継者にと、息子を育てていたが…本人は『 違う仕事がしたい!』と、家から飛び出して行った。
今は、息子の息子・・。つまり、孫のソルアが‥店を手伝ってくれている。
もう立派に店の運営も、任せれるようになってきた。
時代が変わる度に、我ら道具屋の商品も様変わりしてきた。だが、それでも続けてこれたのだ。これからも、ソルアが‥続けてくれるだろうよ。
「じいちゃ‥いや、店長。傷薬の在庫‥少なくなったから、俺・・薬草採りに行って来るよ!」
「あぁ。頼むよ。わしは、店に出ていよう」
孫は、よく気の付く良い男じゃ。彼女は・・おらんようだがな。
‥最近・・足腰が弱くなってきておる。薬草も、北の雑木林に在るのは、昔から知っておるし、そこから必要な分を採取して、わしが・・作っておる。孫も、最近になって‥やっと、作る気になってきたようで、手伝っておるが・・まだまだ だな。
他の道具屋は、そこら辺の雑多な草でしか作らない。基礎の傷薬しか扱っておらん。嘆かわしい。簡単で安いが、その分 効果も低い。しかも、かけだし商人の小遣い稼ぎ程度の金額では採算合わん。わしらは…薬草と蒸留水で効果の高いものを作っておる。これを目当てに、冒険者が買いに来るほどじゃ。
エキャルラット州軍からも、良質で効果の高い傷薬 や 回復薬 を注文される。名誉な事じゃ。客商売は、楽しく続けれてるのが良いと、わしは思っておる。
・・・あの走り方は、孫じゃな。今日は、群生地でも見つけたのか?早いのぅ。
「ただいま!‥はぁ はぁ・・じいちゃん・・大変だっ!」
「? どうしたんじゃ?」 なぜ、慌てておる?
「薬草が、見つからなかった!」
?! 何じゃと?!
いや、ちょっと待て。・・・一昨日に行った時は、まだいくつか残っていたぞ。他の者に採られたとしても、そこまで無いなんて事なんぞ、今まで無かった。
「…今日は、先を越されたのう。また明日、行ってみれば良い」
「…うん。・・でも、なんか‥変なんだ‥」
「どうした? まだ、何かあるのか?」
「いつもは林の入口辺りで‥数本見つかるし、そこに無くても‥少し奥へ行くだけで、必要な分は入手出来る。でも今日行ったら・・。変に丸く草が無くなってて・・地面が見えて、草1本も無かったんだ・・・」
・・・何じゃ? 孫の話を聞いみても、よく分からぬ。
心配せずとも、明日には生えておる。そう…孫を説得し、倉庫から予備を出して店に並べていく。この地の生命力は高いのじゃ。
今日、無くとも・・明日には、復活しておる。今までも そうだったのじゃ。何も心配せずとも良い。
・・・そう・・・思っておったが・・。
備蓄が・・無くなりそうになっても、薬草が採れない状況が続いておる。どうなっておる?! 一体・・何が起こっておるというのじゃ?!
孫は、騎士団に居る友人に‥調査依頼をしたそうじゃが、進展は無い。
わしは‥頼るのは嫌なのじゃが、背に腹は代えられぬ。
商館に傷薬の納品 依頼を出す事にした。幸いにも、回復薬の材料の花は、孫が店からの買い付けを可能にし 納品してもらえるようになったお陰で 困っておらん。
・・困っておるのは、傷薬の方じゃ。
他国との物流で流れてくる薬草は、品質が良くても‥我が家で使う水と相性が悪くて同じ物にならぬ。孫にも作らせてみたが・・。
商館に依頼を出すのは、店が出来て・・客が多くて大変な時 以来じゃな・・と思いながらも、依頼したのじゃが・・・。
緑の傷薬は、最低な効果しか無いような物しか・・納品されない事に驚愕した。
こんな品質の物を‥置かねばならぬのか?!
・・時々、ランク5の依頼を受けてくれる者がおり、なんとか品質を保つ事が出来ていた。しかし、それも一時 凌ぎじゃ。
孫は、毎日のように・・見に行く。わしも一緒に行くが・・やはり、森の奥まで行かねば・・薬草は見当たらない。奥は危険なのじゃ。
冒険者に依頼を出すなら、護衛くらいしかない。薬草採取は、商人の仕事になってしまう。商人ギルド長も‥今は、薬草が手に入らぬと言い、依頼を受けれないと言われてしもうた。
冒険者・・。
わしが、まだ若い頃・・・。素材採取の為にと、ある冒険者グループを雇った事があった。しかし、そやつらは・・わしを護衛するのではなく、わしが見つけた貴重な鉱石や素材を根こそぎ奪い、あまつさえ・・依頼の報酬を横取りされ・・。
・・・そのような事が、二度三度と起きれば・・。
もう冒険者を雇う気は・・無い。
身近な所で採れる素材を、良い素材の選別、機材も新調し、腕を磨いた。
そうして、様々な商人たちと交流し、あらゆる商品を扱ってきた。
傷薬は、わしの店の・・。一番売れ行きの良い‥自慢の商品なのじゃ。
入れ物だって、こだわりがある。昔は、こだわるより‥数が合ってれば不揃いでも・・という輩も居たものだが、わしは、同じ緑の傷薬であろうと、効果が高いのが一目で分かるようにと、少し装飾を施したものを特注して、使っておる。
入れる瓶は、在庫としてあるのじゃが…。肝心な素材が手に入らぬ事には・・。
「じい・・いや、店長。仕方ないよ・・。今は安い効果でも、無理してでも売らないと…」
そうじゃな。 他の商品の在庫はある。冒険者の皆さんには申し訳無いが、品薄と言っておこう。
ある日・・
「じいちゃん!」と孫が、笑顔で作業場に入って来た。何事じゃ?
「そんな顔して、どうした?」
孫は、興奮しておる。落ち着いてから、話せ・・と言う。
「今、薬の納品が来たんだけど!」と、手にしてる傷薬を見せる。
ん? わしの傷薬とは、また違った入れ物じゃが・・品の良いものじゃ。
「鑑定したら、驚いた!」
孫は、商売人じゃ。
傷薬の納品とはいえ、効果の薄く・・量まで、偽ってるような奴も居るから、鑑定の力を使うようにしている。見ためが御大層な入れ物だったからと言って、中の効果が良いとは限らぬからな。
しかし・・そんな、孫が・・・。
「見ためは、良いが・・効果は普通なのじゃろう?」
普通とは、体力10 回復・・という意味じゃ。
わしらの作るのは、体力30 回復なのじゃよ・・。薬草も手に入らぬ状態では・・誰も作れぬだろうよ‥。そう思ったのじゃが・・・。
「それが、これ・・じいちゃんの薬と同じ効果があるんだ!」
「何じゃと?! どこの店の者が売りに来たのじゃ?!」
「じ‥じいちゃん、納品に来たのは、少年だよ・・。どこかの店の子じゃなくて、商人見習いだったよ・・」
そんなバカな事があるのか?!
・・まぁ・・たまに、居るな・・・。
大きな店で、住み込みで働いてた経験のある者の中には・・。しかし・・・・。
「これ、店に並べて良いよね?」
・・なんと、眩しい笑顔じゃろうか。うむ。効果が高い事は、わしの目にも見えておる。10個の納品がされたという。報酬は、多めに払ったのか?と、わしは孫に聞いたのじゃが・・。
「‥あ・・」と言ったまま、首の後ろを撫でる・・。忘れておったな・・・。
次に来た際には、イロを付けてやれ・・と言っておいた。
・・・それから数日は、納品に来たのは見習い共の、弱い効果の物ばかり。仕方あるまい。相変わらず、薬草は生えず、丸い穴のように地面が見える場所に、草も生えず・・・・日々が過ぎて行く。
「ごめんください。店主は、どちらに?」
「呼んで参ります」
どなたじゃろうか?
品薄の傷薬は、もう2個しか・・残っておらんがな・・。
「店長‥あの、騎士団の方が・・」
!!
‥そうじゃ。いつも、この時期になると・・騎士団からの要請により、傷薬を納品しておる。薬草が不足している現状で・・忘れておった!!
わしは‥努めて、平常心で・・店のカウンターへと出る。
いつもの人物が、来ておる。マズイ状況じゃ・・・。
「店主・・。品薄のようですが、騎士団へ いつもの傷薬を50個 納品をお願い‥出来ますかな?」
・・断りたいが、断れぬ!!
「えぇ。えぇ。もちろんでございます。いつものように、数日間 頂けますかな?」
「‥‥断られるかと一瞬 思ったが、無事納品してくれる事を願う。では頼んだ」と騎士団の者は、礼を言い・・店から去る。
・・・客が居ないのを見てから、作業場へ戻ると・・孫は青い顔をしておった。
すまぬ。断れば・・困るのは、わしらでは 無い。
この‥アルドルの町じゃ。
騎士団が常駐してくれてるのも、わしら商人の納める薬が在るからじゃ。
傷薬の担当が、わしらケントニス店というだけの。
一番、重要なのじゃ。
「じいちゃん・・どうすんのさ?!」
「前に、わしらのような 傷薬を納品してくれた者が、居ったじゃろ?」
「あぁ。赤毛の少年の・・」
「商人ギルドの長に、特徴を伝えて…30個の納品を頼めないか?と伝えてくれ!」
「‥30個って! ほぼ・・じゃん。いくらなんでも・・」
「わしらに入手出来ない、薬草のルートを持ってる者かも知れん。あと、商館で買い取られた効果が同じ傷薬も、買うと伝えろ!」
孫は、大きく頷くと・・裏口から、商館へと走って行く。
孫が出かけてる内は、わしがカウンターに居ないとな。
その夜。
孫に頼んだばかりの傷薬 30個が、商館から納品という形で来た。
・・頼んだ、その日じゃぞ?! わしは、腰が抜けるかと思ったわい・・。
「フージー…早かったな・・予想以上に・・」
フージーは、商館の1階で素材や薬を販売してるカウンターの店員じゃ。大口の納品業務もやっておる。細い体のどこに、そんな筋肉があるのかと思う程に逞しい男じゃ。
「あぁ。伝えた時には持ってたらしい」・・・なんと!
孫が荷物を受け取りながら、フージーと‥いつものように話 始めた。孫とは歳が離れておるが、商人見習い時に‥よく面倒を見てくれた相手らしく、懐いておるようで・・。
「フージーよ。残り20個は入手出来そうか?」
うーん・・と悩んでおる。やはり、難しいか・・・。どうしたもんかのう。
「一応‥10個は…在るから、明日持ってくる」 なぬ?!
「え?・・在るの??」孫も びっくりしてるわぃ・・。
「うん。なんか上の買取カウンターで15コ売ったらしくて、5コは売れたんだけど、ギルド長が『それ以上売らずに仕舞っておけ』って言うから。まさか、ケントニスさんとこで 必要になるからだとは、思わなかったよ」
「もしかして、それも・・同じ子供?」
「うん。最近、トパジィになった」
「え・・登録したばかりなんじゃ‥?」
孫が見た時は、黒い帽子をかぶっておったそうじゃ。
それが、数日の内に・・もう、黄色のを得られたのか・・。
将来有望じゃのう。
「じゃあ俺、戻るよ。ケントニスさん、ソルア‥またな」
「あぁ。気を付けて戻れよ」
「じゃあな!」
「…じいちゃん、俺・・なんか、なんとかなりそうって思うよ」
「わしもじゃ」
しかし、その後が・・中々・・来ない。
どうしても・・と願われ、在庫として持っていた内の10個は冒険者に売る事となった。それもまた、商館に連絡する事になる。
雨の日。
フージーが、在庫として残してあったという傷薬を持ってくる。
同じ瓶と同じ効果の。
料金を渡す。
孫との会話で、冒険者に売った話などを知ったフージーは・・
「仕方ないとはいえ、マズイですね・・。足りますか?騎士団に持っていくのは、まだ余裕がありますか?」
というが、実は・・明後日までなのじゃ。
「じゃあ、すぐ戻って報告します。明日までに予定数 集めます!」
そう頼もしく言って、駆けて行く。
夕食後・・準備が必要と判断し、孫と準備をする。
騎士団に納品する際は、専用の箱に入れるのが‥通例である。
1瓶 1瓶、綺麗な柔らかな布で拭き、1つ づつ、丁寧に仕舞っていく。上下合わせて30個入るのは、通常の納品時の木箱と同じじゃが・・。騎士団は、白地に赤い線と、エキャルラット州のマークが描かれている。
その箱 2つめの途中で・・。
「今日の作業は終わりにして、もう眠ろう」
孫の言葉に頷き、作業の後片づけをして・・鍵をかけ・・寝室へ戻って眠る。
・・・翌日は、酷い大雨じゃった。
客が来ないのは、いつもなら大打撃じゃが・・・。
今は、余分に売る事も無い事に、ホッとしているのが、なんとも不思議な感覚じゃ。客が来なくてホッとしてるなんぞ・・。商人では無いのじゃがな・・。
しかし、この大雨では・・フージーも来れないのではないか?
孫にそう言うと「フージーなら、大丈夫!」と、彼の伝説的 働きの話をし始める。まるで、自分の自慢話のように。
午後に入ると、少し雨も落ち着いてきたように思う頃、フージーが来た。その後ろから、キントリヒまでやってきた。
若者 2人は、それぞれ箱を抱えておった。
「フージーだけじゃなくて、キントリヒさんまで?!」
作業場へ二人を案内し、濡れた体を拭くようにと‥布を渡す。
フージーは、10個ほど持ってきた。道理で‥いつもより、小さな箱だったのかと納得する。あと・・10個じゃ。
キントリヒ‥普段は商館1階の、わしらの依頼など‥他の商人との手続きをするカウンター内で、仕事をしている印象しか無かったが・・・。
「ケントニスさん、ギルド長からの伝令で…。えっと この中の傷薬は、あなたへ。回復薬はバルヘント店へ持って行きます。傷薬の方・・受け取ってください」
疲れた声じゃが、顔は元気そうじゃ。
孫と二人で、傷薬を移動させる。
「じいちゃん・・騎士団への納品・・間に合ったよ…!」
おぉ・・なんという事じゃ。
「じゃあ、荷車 持って来るから、用意しておいてくれ!俺が運ぶ!」
フージーが、この雨の中・・わしでは大変と言い、孫と共に納品へ向かってくれた。「じゃあ、俺もバルヘントさんの所へ行かないといけないので、これで失礼しますね」とキントリヒ。
「なんじゃ? バルヘントの奴も、足りておらんかったのか?」
「えぇ。数個とはいえ、そうだったみたいで・・」
開けた蓋を再び閉め、担いで雨の中・・バルヘルトの店の方角へと向かった。バルヘルトは、わしの息子くらいの歳の雑貨屋じゃ。
・・あやつの所は、確か・・回復薬・・じゃったな。
薬草よりかは、数があるとはいえ・・。
花を購入するのも、最近は高くなったからのう。
しかし‥。わしは、会っておらんが・・。
今回の事に協力してくれた少年に、感謝を伝えたい。
わしらの命だけでなく、この町を‥この州を・・・救ってくれたのじゃから。
【ケントニス】ケントニス・アルベン 68歳・男。ケントニス店・店主。騎士団 御用達の商店として、定期的に傷薬 (体力30 回復)を納品する役目を担っている。本人が一代で築いてきた店。後継者は、孫のソルア。高齢とはいえ、まだ薬師としての腕も、店の経営も順調。最近 近場で『薬草』が手に入らないのが目下の悩み。
【ソルア】ソルア・アルベン 18歳・男。ケントニス店の店員。父に代わって、祖父の後を継ぐ為に商人として成長した後、店で仕事をしている。商館での見習い時代に、売店のフージーに いろいろ教わり、尊敬している。最近になってアイテム作りを習いだした。本人的には、素材採取と店番が好きだが、アイテム作りは苦手。
【傷薬】普通=体力10 回復。材料・草1束で作れる。草の汁を集めたもの。飲むのではなく、傷口に直接かける。すり傷程度なら秒で回復する。
【フージー】足腰が丈夫な、商館1階担当の売店と店への納品配送係。赤茶色の短髪/黄色の目。23歳。彼女無し。以前は周りと同じように、恋人が欲しいと言ってたが…女性に興味が湧かないと最近気づく。ケントニス店のソルアを昔指導してた事もあり懐かれている。
次回・・商館に寄ったあと・・薬草の為、北を‥目指します。




