第二十一部 神、勉強する
夜の久世庵・縁側。
月明かりの下で団子の仕込みをしていたエーテルの横に、
忍ぶようにネメシスが来る。
「父上」
「ん?」
「新人の神谷と、ひなた……いい感じ」
エーテルの手がピタッと止まる。
「ほう?」
「部屋で並んで笑ってた」
「青春の匂いがした」
エーテル、ゆっくり団子をひっくり返しながらニヤリ。
「……よし」
完全にお節介父モード突入。
少しして。
エーテルは盆に
・焼きたて団子
・渋茶
・季節の果物
をのせて、足音消して移動。
(戦国久世の気配消しスキル)
ひなたの部屋の前。
中から楽しそうな声。
エーテルは一瞬だけ躊躇してから
コンコン。
「夜分にすまない」
障子が開く。
「あ、エーテルさん!」
「どうしたんですか?」
「仕事熱心なのは良いことだが」
「糖分と休憩も大事だ」
「差し入れだ」
そっと盆を差し出す。
団子を見た瞬間ひなたの目が輝く。
「えっ……焼きたて?」
「神すぎます……」
(元・神)
陽斗も慌てて
「ありがとうございます!」
エーテルは縁側を指さす。
「部屋より風が気持ちいい」
「外で食べると、団子は三割うまくなる」
数分後。
縁側で並んで団子を食べる二人。
夜風、虫の音、月。
完璧な青春ロケーション。
エーテルは少し離れた柱の影で見守る。
ネメシスも隣に座る。
「父上、策士」
「ふふ……自然が一番だ」
ひなたが笑う。
「神谷くん、団子好き?」
「好きです!でもこんなの初めて」
「じゃあまた一緒に撮影しよ」
「はい!」
完全に距離縮まる。
ネメシス小声。
「付き合うの時間の問題」
エーテル満足そう。
「若さは尊い……」
そして最後にエーテルがぽつり。
「久世庵はな」
「人が人を好きになる場所であってほしい」
夜の久世庵。
営業も終わって、灯りは最低限。
縁側には月と虫の声。
エーテルは湯のみを両手で持って座っている。
少し離れた所で、ひなたがもじもじ。
「……エーテルさん」
「なんだ?」
「恋って、どうやって始まるんですか」
エーテル、少しだけ目を細める。
「突然だな」
「最近、分からなくて」
「一緒にいると楽しいけど……これが好きなのか、自分でも分からない」
少し間。
夜風が吹く。
エーテルは庭の桜の木を見る。
「好きはな」
「気づいた時にはもう遅い」
「始まる瞬間は分からん」
ひなたは膝を抱える。
「怖いんです」
「もし気持ちがズレてたらって」
エーテルは小さく笑う。
「ズレるのは普通だ」
「最初から同じ方向を見るやつなんていない」
「歩きながら揃えていくんだ」
そこへ、音もなくネメシスが座る。
「恋は厄介」
「でも逃げたら一生分からない」
ひなたびくっ。
「いつからいたの?」
「最初から」
エーテルが渋茶を一口飲む。
「俺はな」
「言わなかったことで後悔したことの方が多い」
ひなたが顔を上げる。
「……エーテルさんでも?」
「特に俺がな」
少しだけ遠い目。
ネメシスが静かに言う。
「好きなら、ちゃんと好きって言ったほうがいい」
その声は少しだけ自分にも向いている。
ひなた、ゆっくり息を吐く。
「もし振られたら?」
エーテル即答。
「それは経験値になる」
「振られた痛みは、次に誰かを大事にする材料になる」
少し沈黙。
虫の声。
ひなたがぽつり。
「……エーテルさんって、恋のプロですか」
「違う」
「失敗のプロだ」
ネメシスがクスッと笑う。
「父上は不器用代表」
「おい」
ひなたが少しだけ笑う。
緊張がほどける。
「明日、ちょっと勇気出してみます」
エーテルは頷く。
「結果はどうでもいい」
「ちゃんと向き合った自分を誇れ」
ひなたが立ち上がる。
「ありがとうございます」
去っていく背中。
ネメシスがぽつり。
「父上は、ちゃんと向き合ってる?」
エーテル、目を逸らす。
「……団子の焼き加減にはな」
「恋から逃げてる」
「うるさい」
月が静かに照らす縁側。
ネメシスは少しだけ肩を寄せる。
「父上」
「なに?」
「僕は逃げない」
エーテル、湯のみを持つ手がわずかに止まる。
翌日、夕方。
仕事終わりの裏庭。
オレンジ色の空、風鈴が鳴ってる。
ひなたは深呼吸を何度もしていた。
そこに――神谷陽斗。
「森野さん?」
「……神谷くん、ちょっといい?」
沈黙。
セミの声がやたらうるさい。
ひなた、ぎゅっと拳を握る。
「私……神谷くんのこと、好きです」
震えながらも、ちゃんと目を見る。
「一緒にいると楽しくて、気づいたら探してて……」
「迷ったけど、逃げたくなくて」
神谷、目を丸くして数秒固まる。
そして――
「……それ、俺のセリフだったんだけど」
ひなた「え?」
神谷、頭をかきながら顔真っ赤。
「俺も好き」
「最初は仕事仲間だったけどさ」
「いつの間にか、森野さんがいないと落ち着かなくなってて」
一瞬、風が止まる。
ひなたの目が潤む。
「……ほんと?」
「ほんと」
「むしろ先に言われて悔しい」
ひなた、思わず笑いながら泣く。
「私も先に言うつもりだったのに!」
「お互い作戦失敗だな」
二人同時に吹き出す。
夕焼けの中で笑い合う。
そこを――
木の陰から見てるエーテルとネメシス。
ネメシス小声
「成功だね」
エーテル
「そうだな」
ひなたが神谷の方を向いて、少し照れながら。
「……これから、よろしくお願いします」
神谷も照れ笑い。
「こちらこそ」
その瞬間。
縁側から拍手。
パンパンパン。
かや、セラ、アーク、ルミナまで勢揃い。
「おめでとーーー!!」
ひなた&神谷「えぇ!?」
エーテルが満足そうに頷く。
「よし、久世庵初の両想いカップル誕生だ」
ネメシス
「団子赤飯作ろう」
ひなた、顔真っ赤で叫ぶ。
「見てたんですか!?」
エーテル
「最初からな」
笑い声が夕焼けに溶けていく。
久世庵、今日も平和。
朝。
旅館の中庭に――
でっかい横断幕。
「今年もやるぞ!久世庵・真夏の水着祭!!」
一瞬で空気がざわつく。
ルミナ
「きたぁぁぁぁぁぁ!!!」
ネメシス
「今年も勝つ」
アーク
「去年は理不尽だった」
セラ
「今年こそ私が一位よ」
エーテルは縁側で静かにお茶すすりながら
「……去年、俺の精神が一番ダメージ受けた日だ」
かや、腕組みしてニヤッ。
「今年は投票方法変えたから」
「組織票禁止」
「純・宿泊客投票のみ」
全員
「うわああああああああ」
イリス
「科学的に言うとネメシス有利消えましたね」
ネメシス
「そんな……」
するとルミナが拳を突き上げる。
「つまり!」
「可愛いが正義じゃなくて!」
「本物の魅力勝負ってことだね!!」
アークが爽やかに笑う。
「なら余裕だな」
セラ
「黙りなさい王子」
エーテルがぽつり。
「今年も俺は審査員席な」
かや
「あなたは出場禁止」
「去年、存在が反則だったから」
エーテル
「水着着ただけで悲鳴上がったのは俺のせいじゃない」
ネメシスがそっと耳打ち。
「父上……今年は女物ビキニでいく」
エーテル
「やめろ」
「戦争になる」
そこへ琥珀とひなた。
ひなた
「え、水着イベントって本気なんですか?」
琥珀
「逃げられないやつだ」
かやがにっこり。
「新人も参加OKだから」
ひなた
「え?????」
エーテル
「今年は被害者増えるな……」
そして貼り出される出場者一覧。
セラ
アーク
ネメシス
ルミナ
ナポリネス(なぜか)
イリス(なぜか)
琥珀
ひなた
エーテル
「おい学園祭かここは」
ネメシスが燃える目。
「今年こそ圧勝する」
ルミナ
「負けないよ!」
セラ
「覚悟しなさい」
かやが鐘を鳴らす。
「久世庵・水着イベント準備開始ーーー!!」
エーテル、天を仰ぐ。
「……今年も平和が終わった」
審査席。
そこに座るのは――
エーテル
なぜか上半身裸+ふんどし一本(完全戦国仕様)
かや
白を基調にした上品な水着、髪もまとめて完全女神モード
客席ざわっ……
「え、審査員の人……誰……美人すぎない?」
「モデル?芸能人?」
「いや女神だろあれ」
視線が一斉にかやへ集中した瞬間。
エーテルが――
湯のみを置く。
コト。
何も言わない。
ただ、圧だけ出す。
空気が一気に冷える。
客A
「……なんか今寒くなかった?」
客B
「心臓ギュッてなった」
客C
「俺……謝ったほうがいい気がする」
かやは気づいてないふりして微笑み続ける。
エーテルは静かに一言だけ。
「……見るな」
(声小さいのに全員に聞こえる)
会場:沈黙
ネメシス(出番待ち)
「父上こわ……」
ルミナ
「あれ嫉妬オーラだよね」
セラ
「独占欲の化身ね」
アーク
「ふんどしで威圧すんな」
ナポリネスが真顔で分析。
「戦力として最強だが
精神的ダメージも最大だな」
司会(震え声)
「で、では!第一出場者ーーー!」
かやが拍手しようとした瞬間、
また客の視線がかやに集まり――
エーテル、無言で圧。
客たち、全員目を伏せる。
ひなた小声
「このイベント……
実質かやさんを見ると死ぬルールなんですか?」
琥珀
「そうだ」
エーテルはふんどし姿のまま腕組みして一言。
「審査は公平にする」
「だが俺の妻を見るな」
全員
「無理ゲー!!!!」
司会
「つ、続いての出場者は――」
ドンッとスモーク。
現れたのは――
ネメシス(男の娘・女物水着)
琥珀(完全女装・しかも似合いすぎ)
会場
「うおおおおおおおお!!!!」
「今年やばくね!?!?!?」
「性癖破壊されるんだが!!!」
「どっちも可愛すぎだろ!!」
ネメシスはいつも通り余裕の笑顔でくるっと一回転。
「どう?今年も可愛いでしょ?」
琥珀はちょっと照れながらも小さくピース。
「……エーテル様が出ろって」
その瞬間。
歓声、過去最大
客
「守りたいこの笑顔」
「男とか関係ねぇ!!」
「琥珀くん反則だろ!!」
「ネメシス様今年も優勝確定!!」
そして――
審査席。
かやは微笑みながら拍手。
エーテルはふんどし姿で、無言。
……が。
湯のみがまたコトって鳴る。
エーテル(低音)
「……盛り上がりすぎだ」
一気に静まり返る会場。
でもネメシスがニヤッとして言う。
「父上、嫉妬?」
エーテル
「当然だ」
琥珀が小声でネメシスに。
「これ、俺たち命懸けイベントじゃない?」
ネメシス
「うん♡」
ルミナ爆笑
「毎年死人出そう!」
アーク
「水着大会じゃなくて精神耐久戦だな」
ナポリネス
「社会的影響力が危険水準」
司会が震えながら叫ぶ。
「と、とにかく投票お願いします!!!」
結果途中経過――
ネメシス&琥珀、ぶっちぎり首位
エーテル、腕組みして一言。
「……人気出すぎだ」
「次から防御結界張るか」
ネメシス&琥珀で会場が限界突破した直後――
司会が震える声で言う。
「つ、次の出場者は……アーク様です!」
ざわっ……
「え、アークっていつも服着ててもやばいのに?」
「水着とか聞いてないんだが??」
「心の準備させろよ!!」
スモークが晴れる。
そこに立っていたのは――
・無駄な脂肪ゼロ
・戦神として鍛え抜かれた肉体
・肩から腹筋まで芸術レベル
しかもただの水着じゃない。
戦場仕様みたいなシンプル黒の競泳タイプ。
完全に “魅せに来てる”。
会場、静止。
……1秒後。
爆発
「うわあああああああ!!!!」
「筋肉が彫刻!!!」
「これは優勝候補!!」
「ネメシス派だったけど裏切るわ!!」
アークは涼しい顔で腕を組む。
「仕上げてきた」
それだけ。
ルミナ
「わ……」
ミラ
「これ全年齢向けじゃないよね」
ルーク
「国宝」
ネメシスが歯ぎしり。
「聞いてないんだけど!!!」
琥珀
「これは……勝てないかも」
そして審査席。
かやは一瞬言葉を失う。
エーテルは――
ふんどしのまま、静かに立ち上がる。
エーテル
「……アーク」
「やりすぎだ」
アーク
「父上が許可したイベントだろ」
エーテル
「肉体兵器の解禁までは聞いてない」
会場ヒエッ……
でもアークはさらに追撃。
ゆっくりポーズを変える。
背筋 → 腹筋 → 肩ライン全部強調。
完全に観客を殺しにきてる。
歓声が悲鳴レベルへ。
「無理無理無理無理!!」
「心臓止まる!!」
「ネメシス可愛い枠、アーク致死枠!!」
途中経過投票――
1位アーク急浮上
2位ネメシス
3位琥珀
ネメシス
「父上ぇぇぇ!!ルール違反でしょこれぇぇ!!」
エーテル
「同感だ」
でもアークはさらっと一言。
「勝負の場だ」
アークの筋肉兵器で会場が焼け野原になった直後――
司会が少し震えながら言う。
「つ、次の出場者は……森野ひなたさんです!」
さっきまでの戦場みたいな空気が、ふっと変わる。
ステージに現れたひなたは――
淡いパステルカラーのシンプルな水着
少し緊張して肩をすくめて
手を胸の前でぎゅっと握っている
完全に初々しさの暴力。
会場、一瞬静まり返る。
そして次の瞬間――
「かわいいいいいい!!!!!」
「守りたい!!!」
「さっきまで筋肉見てたのに情緒どうなってんの!?」
ギャップで全員の脳がバグる。
そして一人だけ様子がおかしい男。
神谷。
最前列で拳を握りしめて立ち上がってる。
「ひ、ひなた……!!
がんばれ……!!世界一だぞ……!!」
完全に保護者兼ガチ恋勢。
ひなたは気づいて、目をぱちっとさせて――
小さく手を振る。
「……神谷くん」
神谷、即死
その場に崩れ落ちるレベル。
「尊い……生きててよかった……」
ネメシス(小声)
「さっきまでアーク見て悲鳴あげてた人たち、手のひら忙しすぎない?」
琥珀
「情緒ジェットコースターだね……」
エーテルは腕組みして満足げ。
「よし……バランスが取れた」
かや
「どこがよ」
途中投票速報。
1位アーク(致死量の筋肉)
2位ネメシス(男の娘革命)
3位ひなた(純粋破壊力)
一気にトップ争いへ。
神谷はというと――
誰よりも真剣にスマホで応援メッセージ打ってる。
「ひなたが一番だあああああ!!」
完全に一人だけ恋愛漫画の世界。
司会の声が一段トーン落ちる。
「つ、次の出場者は……技術担当、イリスさんです」
ステージに現れた瞬間――
会場の空気が“変わる”。
太陽に当たってない透き通るような白い肌
反射する照明でほのかに光って見えるレベル
無駄のないライン、神の造形そのもの
まさに――
工房育ちの神性ホワイトボディ。
さっきまでの
筋肉!
かわいい!
尊い!
が一気に消えて、
「……え、女神?」
「発光してない?」
「目が焼かれるんだけど」
と、静かなどよめき。
ネメシス小声
「これ強すぎない?」
琥珀
「ラスボス感ある……」
ひなた
「まぶしい……」
イリス本人はいつも通り無表情。
「……別に、興味ないけど」
(その一言で観客のHP半分消える)
神谷すら呆然。
「え……現実の人間……?」
そして審査席。
エーテル、無言でうなずく。
「……完成度が高すぎる」
かや
「評価が職人目線なのよ」
途中投票更新。
1位アーク(筋肉兵器)
2位イリス(神性ホワイト破壊)
3位ひなた(純粋の暴力)
4位 ネメシス(文化革命)
一気に女神が食い込んできた。
観客の感想がカオス。
「もうジャンル違うだろ!」
「筋肉と女神と天使が同じ大会って何!?」
「情緒が死ぬ!」
イリスはさっと一礼して退場。
誰よりも静かなのに、
一番記憶を焼き付けていくタイプ。
司会が震え声になる。
「つ、次の出場者は……セラさんです……」
その瞬間――
照明が落ちる。
ざわつく会場。
そして――
――後光。
マジで後ろが光ってる。
スポットライトじゃない。存在そのものが発光してる。
ゆっくり現れるセラ。
・長い髪が光を反射して天使の輪郭
・一歩ごとにキラキラ粒子みたいなの舞う
・水着なのに“神聖”が勝つ謎現象
観客、完全沈黙。
さっきまで騒いでた層が
一斉に息を止める。
「……女神、降臨した?」
「いやこれ神話だろ」
「見ちゃいけないやつでは?」
ネメシス
「これ勝てるとかいうレベルじゃないよね」
琥珀
「ラスボスの後に真エンド来た感じ」
ひなた
「心が浄化されていく……」
イリスですら目を細める。
「……完成形」
セラは静かに微笑むだけ。
その微笑みで
会場の精神力がごっそり削れる。
審査席。
エーテル、即座に理解。
「……優勝だ」
かや
「早い早い、まだ採点してない」
「いやもう結果出てる」
リアルタイム投票がバグる。
セラ 78%
アーク 8%
イリス 7%
その他 合わせて7%
一気に独走。
観客の声が宗教化。
「セラ様ぁぁぁ!」
「拝ませてください!」
「人生救われました!」
司会、泣きそう。
「え、えー……優勝候補が確定しつつあります……」
セラは最後に軽く手を振る。
後光MAX
その瞬間、拍手というより礼拝。
後光セラで会場が宗教施設と化した直後。
誰も拍手やめない。
むしろ拝んでる。
エーテルがこめかみ押さえる。
「……このままだと水着大会じゃなくて聖典になる」
そこで――
司会が震えながら叫ぶ。
「つ、続いての出場者!ナポリネスさんです!!」
会場の空気がスッ…と冷える。
眩しさが引く。
熱狂が理性に戻る。
まるで神域から現世へ引き戻された感覚。
登場するナポリネス。
・派手じゃない
・でも完璧なスタイル
・計算された無駄のなさ
「美しい」じゃなく
“整っている”
という言葉が似合う存在。
ナポリネス(無表情)
「……騒ぎすぎだ」
一言でざわつきが止まる。
観客
「あ、はい……」
「すみません……」
「急に冷静になった……」
イリス小声
「空気制御能力、健在ね」
アーク
「戦場でもあれやられた」
ネメシス
「精神デバフ担当だよね兄さん」
ナポリネスは淡々と一周。
過剰なポーズなし。
笑顔なし。
でも隙もなし。
まるで審査基準そのものが歩いてる。
エーテル、深く頷く。
「よし……世界が戻った」
かや
「セラの後に出てくれて助かったわ」
観客の感想が一気に現実寄り。
「冷静に見るとナポリネスもめちゃくちゃ綺麗だな」
「さっきまで幻覚見てた気がする」
「女神から人類に戻った」
ナポリネス退場時にぽつり。
「……イベントとは、こういうものだ」
完全に進行管理神。
司会が少し間を置いて、ゆっくり告げる。
「そして……最後の出場者です」
ざわ…っと空気が変わる。
「久世庵の太陽――ルミナちゃん!!」
ぱっと現れた瞬間、
会場が一気に明るくなる。
夏の間に焼けた健康的な褐色肌。
そこに映える――真っ白な水着。
眩しさじゃない。
あったかさのある輝き。
まさに
夏そのもの。
観客
「え……天使……?」
「さっき女神見たはずなのに別ベクトルで死ぬ」
「白と褐色の破壊力やばい」
ルミナはニコッと笑って小さく手を振る。
それだけで
ハートが何十個も撃ち抜かれる。
ネメシス(小声)
「反則だよこの妹……」
アーク
「世界は妹属性に弱すぎる」
イリス
「計算ゼロの強さが一番怖いのよ」
ルミナは元気にくるっと一回転。
水着がひらっと揺れて、
夏の光を反射する。
観客、完全陥落。
拍手が止まらない。
エーテル、額に手を当てて遠い目。
「……育て方、間違えたかもしれん」
かや
「いいえ、最高に育ってるわ」
セラ=神域
ナポリネス=理性
ルミナ=夏の暴力
三段構えで会場が崩壊。
司会も半泣き。
「こ、これは……採点が難しすぎます……!」
もう観客の声は一つ。
「優勝はルミナちゃんだろ!!」
「いや全員優勝だけど!!」
「でも夏代表はルミナ!!」
ルミナはきょとん。
「え?あれ?そんなに?」
無自覚が一番強い。
エーテル小声で
「……この家族、イベント出禁にならない?」
ざわざわが収まらない会場に、
ひょこっと横から現れる影。
「はーい、水分補給ですよー」
トレーを持って歩いてくるのは――メクル。
一応、ちゃんと水着姿。
……なんだけど。
静かに、しかし確実に空気が変わる。
男子客たちの視線が
ルミナ → セラ → ネメシス →
そして――
メクルにロックオン。
誰かが小声で言う。
「……でっか」
「水着が仕事してない」
「いや逆に仕事しすぎてる」
メクル本人は完全無自覚。
「? 暑いからちゃんと飲んでね?」
と、にこっと微笑みながらスポドリ配ってるだけ。
そのたびに男子たちのHPが削れていく。
ゴリゴリ削れていく。
ネメシス(ボソッ)
「……この人、戦わずして勝つタイプだ」
アーク
「物理的存在感で場を支配してる」
イリス
「ステータスに“圧”って項目あるわね」
エーテルはというと――
完全に悟った顔。
「……だから裏方に回したんだよ」
かや
「それでも破壊力が隠せてないけどね」
メクルが前を通るたびに、
視線が一斉に動く。
まるで首だけ操られてるみたい。
女子側はというと、
「ルミナ可愛い!」 「セラ様神!」 「ネメシス尊い!」
男子側は、
「メクルさん……」 「水分補給されたい人生だった……」
完全に二極化。
メクルは最後にエーテルの前に来て、
「はい、お父さんも飲んで」
エーテル受け取りながら小声で、
「……君、優勝候補に入ってないのズルだろ」
メクル首かしげる。
「え?私補給係だよ?」
この無自覚モンスター感。
会場はもうカオス。
神々しい
可愛い
中性
夏の象徴
物理的破壊力
全ジャンル揃った水着大会。
司会、汗だくで叫ぶ。
「えーっと!!では!!そろそろ!!
優勝発表に移りたいと思います!!」
(内心:収拾つかねぇ!!)
司会が震える声で発表する。
「えー……今年の水着大会、優勝者には――
“青春煎餅”のモデルになっていただきます!!」
ざわっ!!!
「しかも!!
その煎餅には――」
エーテルがすっと前に出て、静かに言う。
「優勝者の顔、焼き入れる」
会場爆発。
青春煎餅システム
・エーテル特製手焼き煎餅
・優勝者の顔がそのまま刻印
・数量限定・毎年伝説化
・買えた人は一生自慢できるやつ
さらに追撃。
「1位〜3位は」
「少し小さいサイズのぬいぐるみ、量産する」
客たち
「ほしい!!!!」 「推しを家に置けるの!?」 「財布が死ぬ!!!」
ルミナ
「え、私が煎餅になるの?」
ネメシス
「俺、食べられる存在になるの?」
セラ
「……保存用と観賞用と布教用が必要ね」
エーテルは真顔で追い打ち。
「安心しろ。煎餅は食べても魂は減らない」
誰も心配してない。
そしてかやがぼそっと。
「あなた商売上手すぎない?」
エーテル
「生きるためだからな」
会場はもう
推しを食う文化誕生
推しを抱いて寝る文化誕生
司会:
「では……このカオスを制した
今年の優勝者は――!!!」
(ドラムロール)
会場に張りつめる空気。
提灯が揺れ、蝉の声が止まったかのような静寂。
エーテル(腕組み・ふんどし)
「……発表する」
第3位──ネメシス!!!
悲鳴と歓声の嵐。
「男の娘最強ーー!!!」
「可愛さ反則だろ!!」
ネメシス
「え!?俺!?!?ほんとに!?」
エーテル(即抱き上げ)
「誇れ、社会現象」
※ここでネメシスぬいぐるみ(小)生産決定
第2位──セラ!!!
後光レベルの拍手。
「美しすぎる……」
「芸術だろ……」
セラは優雅に一礼。
※ここでセラぬいぐるみ(小)生産決定
そして――
エーテルがゆっくり告げる。
優勝──ルミナ!!!
会場、崩壊。
歓声・涙・土下座が発生。
ルミナ
「えっ……わ、わたし!?」
かやが抱きしめ、
エーテルが誇らしそうに頷く。
エーテル
「夏の主役だな」
ここで特別発表
エーテル
「優勝者ルミナのみ――」
久世庵特製・青春煎餅(ルミナ刻印)限定販売決定
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「買わせろおおおお!!!」
「保存用!観賞用!実食用!!」
即・完・売。
まとめ
ルミナ → 青春煎餅(限定)
セラ → ぬいぐるみ(小)
ネメシス → ぬいぐるみ(小)
青春煎餅が発売された翌日。
ネットにはもう――
「ルミナ煎餅 10万円」
「未開封・超レア」
「今後入手不可!」
エーテル、無言でスマホを置く。
(ピキ……)
久世庵・緊急商品開発会議
参加メンバー
エーテル
琥珀
イリス
ネメシス
ルミナ(なぜかドヤ顔)
エーテル
「……転売ヤー、許すと思うか?」
全員
「「「思わない」」」
イリスの技術投入
イリスが言う。
「青春煎餅に“自然エネルギー認証構造”組み込むわ」
・購入者の気配と心拍を記録
・初めて持った人以外が触ると
味がただの苦煎餅に変化
転売品=激マズ確定。
ネメシス
「地獄すぎる仕様」
エーテルの自然エネルギー追加
さらにエーテルが指を鳴らす。
「ルミナへの“想い”がないと模様が消える」
・本当にイベントで応援した人 → ルミナ刻印くっきり
・金目当て → 無地煎餅
コレクター死亡。
琥珀の販売方式改革
琥珀、静かに言う。
「抽選+本人確認+旅館来館履歴連動」
・来館者のみ購入権
・1人1枚
・再販売不可データ管理
転売ルート壊滅。
とどめ:ネメシス案
ネメシス
「転売した人のだけ……SNSで光ってバレる仕様どう?」
イリス
「できるけど?」
エーテル
「やろう」
転売者の煎餅写真だけ
ピカーッと「転売品」表示
ネット晒し自爆システム完成。
結果
翌日:
「転売煎餅クソまずかった」
「模様消えたんだけど」
「光って特定された助けて」
転売市場:即死。
最終評価
青春煎餅は
思い出付き限定品
転売不可
ファンの宝物化
完全に“心で買う商品”へ昇格。
エーテル(満足げ)
「商売とは、守るものだ」
ルミナ
「パパこわい」
イリス
「経済テロ神」
琥珀
「転売ヤー絶滅確認しました」
夏休みも終わりかけ。
蝉の声も少し弱くなってきた頃――
難波塾は、戦場だった。
机にかじりつく生徒たち。
ノートはもはや黒板レベルの文字量。
誰かがため息をつくたび、空気が張り詰める。
そして前に立つのは――
ナポリネス。
「はい、ここ。“分からない”じゃなくて“考えてない”ね」
一瞬で式を分解。
「この問題は才能じゃない。整理力だ」
チョークが走る走る。
黒板が埋まるスピードが
人間の思考速度を超えている。
生徒A(小声)
「これ…高校受験だよな…大学院じゃないよな…」
生徒B
「ナポ先生の“基礎”がもう異次元なんだけど…」
生徒C
「でも分かる…悔しいけど分かる……」
ナポリネスは容赦しない。
だが――
「いいね、今の考え方は正解だ」
「そこまで辿り着いたならもう合格圏」
「焦らなくていい、君は伸びる」
ちゃんと希望も与える。
鬼だけど、最高の教師。
後方で見守る難波。
(こいつ…神を育ててるんじゃなく
人間を“覚醒”させてるな……)
一人の生徒が限界そうに言う。
「先生……もう無理です……」
ナポリネス、静かに近づいて目を合わせる。
「無理って思った瞬間が、一番伸びる時だ」
「ここ越えたら景色変わるよ」
そして一緒に解く。
最後の式が合った瞬間――
「……解けた」
その生徒、泣く。
周りも息を呑む。
ナポリネス、少しだけ微笑って言う。
「ほら。君、強い」
外では夕焼け。
夏の終わり。
塾の窓から漏れる光の中で、
未来が書き換えられていく。
夏休みが終わっても、難波塾の熱は落ちなかった。
むしろ――
空気はさらに張り詰めていた。
黒板の前に立つナポリネス。
いつもより声は落ち着いている。
「焦らなくていい。焦ると計算が荒れる」
だが問題のレベルは落ちない。
廊下の時計が休憩時間を告げる。
いつもより少し長め。
理由は――
縁側スペース。
エーテルが静かに湯を注いでいる。
湯気が立つ渋茶。
香りは強いが、どこか安心する匂い。
「今日は無料。脳みそ酷使してるからな」
横には団子。
・集中力持続団子
・糖分補給団子
・そして例の“桜愁団子”は少量限定
生徒たちが座る。
「……うま」
「やば、落ち着く」
「さっきの問題、もう一回やれるかも」
団子を食べて、渋茶を飲んで、
再びノートを開く。
誰も帰らない。
難波が苦笑する。
「普通、休憩増やしたら集中切れるんだがな」
エーテル、湯飲みを拭きながら。
「張り詰めっぱなしは折れる」
「少し緩ませて、また締める」
その目は静か。
昔、戦場で兵を見てきた目。
ナポリネスも団子を一つ摘む。
「……糖分は理に適ってる」
そしてすぐ教室へ戻る。
「はい、再開。さっきの応用行くよ」
生徒たちも迷いなく戻る。
夜。
塾の明かりはまだ消えない。
エーテルは縁側で湯を沸かしながら、
そっと呟く。
「頑張れよ」
誰にも聞こえない声。
外は秋の気配。
だが難波塾の中は、
夏より熱い。
縁側で渋茶を飲んでいたエーテルは、
ふと教室から聞こえてきた会話に首をかしげた。
「模試やばかった……」 「偏差値って何……」
エーテル、小声で。
「……なんだそれ」
難波が振り返る。
「模擬試験だよ。本番想定のテスト」
「ほう」
ナポリネスが淡々と付け足す。
「現代人の戦場だ」
エーテルの目が少し輝く。
「戦か」
数分後。
エーテルも机に座らされていた。
問題用紙を見て、
「……文字多くない?」
生徒たち「そこ!?」
試験開始。
エーテルは最初こそ余裕だった。
「ほうほう……この計算は簡単だな」
だが――
現代国語。
「筆者の気持ちを答えよ」
エーテル、完全停止。
「……本人に聞けばよくないか?」
生徒「それを読み取るんです!!」
英語。
“I was surprised when I saw him.”
「なぜ驚いたかを選べ」
エーテル「本人が急に出てきたからだろ」
生徒「選択肢から!!」
社会。
「江戸幕府が成立した理由を述べよ」
エーテル「家康が勝ったから」
難波「雑すぎる!!!」
そして時間終了。
エーテルはペンを置く。
「……これは戦ではないな」
「拷問だ」
結果返却。
生徒たちが震えながら見る中、
エーテルの紙には赤が踊っていた。
国語:壊滅
英語:全滅
社会:理由が短すぎてほぼ×
数学:満点
英語:白紙
ナポリネス、無言で頷く。
「理系神」
難波「極端すぎるだろ」
エーテルは頭を抱える。
「人間はこんなもので評価されるのか……」
「戦国の方が分かりやすかった」
生徒「命かかってるやつと比べないでください!」
でも一人の生徒が笑う。
「でもエーテルさんもできないなら、ちょっと安心しました」
「神でも無理なんだって」
エーテルは少し驚いてから、優しく笑う。
「そうか」
「分からないのは恥じゃないんだな」
その夜。
エーテルは渋茶をいつもより丁寧に淹れながら言う。
「明日から俺も勉強する」
「この戦、最後まで付き合うぞ」
生徒たち「うおおおお!!」
翌日の勉強会。
ナポリネスが黒板に高速で問題を書き出していく。
「このレベルは受験上位層向けだ」
生徒たち、すでに白目。
「無理……」 「数字が敵に見える……」
だが。
後ろの席でエーテルが静かにペンを走らせていた。
カリカリカリ……止まらない。
ナポリネスがちらっと見る。
(……速すぎる)
問題⑤
難関大レベルの極限計算。
ナポリネス「これは発想が要る」
エーテル、即答。
「無限に近づくから構造を分解すればいい」
一行で解いている。
ナポリネス「……」
問題⑧
複雑な確率。
ナポリネス「場合分け地獄だ」
エーテル「いや、空間を折りたたむと一発だ」
生徒「空間!?!?」
黒板に解法を書き出すエーテル。
数式が美しすぎて静まり返る教室。
ナポリネス、初めて声を失う。
「……理論が俺より洗練されている」
最後のラスボス問題。
全国模試でも正答率3%。
ナポリネスが説明しようとした瞬間、
エーテル「解けたぞ」
しかも別解が3通り。
沈黙。
次の瞬間。
生徒たち「うわあああああ!!!!!」
「エーテルさん神!!!!」
「数学の守護神!!!!」
ナポリネス、静かに腕を組む。
「……認めよう」
「この分野では俺の上だ」
エーテル「そうなのか?」
(本人は自覚ゼロ)
そこから地獄と天国が始まる。
エーテルの数学講座。
「数は宇宙と同じ構造をしている」
「流れを感じろ」
生徒「なんか分かる!!」
「急に解ける!!」
偏差値が一気に跳ね上がる教室。
難波、震える。
「塾じゃなくて覚醒イベントじゃねぇか……」
だが国語になると――
「作者の気持ちは多分…悲しい!」
全員「雑!!!!」




