第十四部 ヴァルガロスに降った光
オルビスの街は相変わらず賑やかで、光の帯が空を流れていた。
エーテルの腕から解放されたミラとルークは、次なる標的を見つける。
二人の視線の先――
そこにいたのは、気品ある佇まいで微笑む風夏だった。
ミラが小さくささやく。
「……あの人、やさしそう」
ルークもこくこくうなずく。
「なんか安心する」
そして次の瞬間。
「風夏さーん!」
二人同時に駆け出した。
風夏は一瞬きょとんとしたが、すぐにしゃがみこむ。
「どうしましたの?」
ミラはぎゅっと袖を掴み、ルークは反対側から抱きつく。
「一緒に歩こ!」
「手つないで!」
風夏の表情が一気に柔らぐ。
「まぁ……ふふ、もちろんですわ」
左右の小さな手を包み込むように握る風夏。
その光景を見た瞬間——
かや「ちょっと!?さっきまでエーテル独占してたのに次は風夏!?」
朔姫「標的を変えるのが早すぎる…!」
華陽「完全に可愛いものレーダー働いてるな」
凛「風夏は母性強すぎるから捕まるよ」
夜叉と難波は静かに頷いた。
――あれは抗えない。
風夏は穏やかに歩きながら微笑む。
「二人とも、転ばないように気をつけてくださいね」
ミラ「風夏さんあったかい〜」
ルーク「なんかいい匂いする!」
風夏「まぁ……ふふ」
完全に保護者モード突入。
それを見てエーテルがぼそり。
「次の依存先が決まったな」
かや「成長じゃなくて乗り換えじゃないそれ!?」
だがミラは振り返って無邪気に言う。
「だって風夏さん、お母さんみたいだもん!」
——空気、再び止まる。
風夏「……え?」
かや(さっきの“パパみたい”フラッシュバック)
朔姫「また地雷踏んだぁぁぁ!」
華陽「この子たち無意識で世界壊すタイプだ!」
風夏は少し照れながら、優しく笑う。
「ふふ……そんなふうに思っていただけるなんて光栄ですわ」
ミラとルークはさらに密着。
完全に風夏争奪戦スタート?
オルビス中央広場。
風夏に捕獲されたミラとルークを中心に、わちゃわちゃしていたその時——
背後から重厚な足音。
「……久世一行」
低く響く声に、全員が振り向く。
そこに立っていたのは、銀河戦線で名を轟かせる戦士集団。
スター・レギオンだった。
先頭の指揮官が静かに頭を下げる。
「エーテル殿。再び無事な姿を見られて光栄だ」
エーテルは軽く頷く。
「そっちも生きてたか。銀河はまだ荒れてるか?」
「あなたが去ってからも戦場は絶えません。しかし希望は増えました」
その空気に圧倒されて、ミラが小声で。
「……この人たちつよそう」
ルーク「ラスボス感ある」
朔姫「味方だよ味方!」
すると今度は、上空から光のゲートが開く。
ド派手に降り立つ影。
「エェェェーテルゥゥゥ!!」
全員の鼓膜が死ぬ。
宇宙空軍総司令アストラだった。
走ってきてそのまま抱きつく勢い。
「どこ行ってたのよもう!!連絡もないし心配したんだからぁぁ!」
エーテル「近い」
アストラ「冷たい!そこが好きだけど!」
かや「距離感おかしい人また来た!」
凛「銀河のトップがこれでいいのか…」
スター・レギオンが微妙に視線を逸らす。
慣れてる様子だった。
だが——
次の瞬間。
広場の端から殺気MAXの怒号。
「クゼェェェェェ!!!!!!!!」
全員ビクッ。
振り向くとそこには。
ボロボロのマント
煤だらけの顔
目の下にクマ
完全に遭難帰りの男。
道明だった。
「お前らァァァ!!!!!」
走ってきてエーテルの胸ぐらを掴む。
「別の星に置き去りにしてワープとかどういう判断だコラァ!!」
エーテル「生きてたか」
「それ感想か!?」
かや「うわぁ……これは怒ってる」
朔姫「そりゃそうだよ!!」
道明は叫ぶ。
「砂嵐!原生獣!酸の雨!三日間洞窟生活だぞ!?」
難波「それ生存してるのがバケモンだろ」
夜叉「むしろ誇れ」
道明「誇れるかぁぁ!!」
スター・レギオン「面白いやつだな」
一瞬で認定された。
エーテルは静かに肩を叩く。
「悪かった」
道明「軽っ!!!」
「だが生きて戻ったなら戦力だ。歓迎する」
道明「使う気満々じゃねぇか!!」
ミラとルークがひそひそ。
「この人うるさいけど強そう」
「たぶん生存力最強タイプ」
道明「褒めてねぇだろそれ!」
広場は一気に再会パーティ状態になる。
銀河最強戦士団
宇宙空軍トップ
置き去りサバイバー戦友
全勢力集合。
かやがエーテルを見る。
「……なんか私たち、宇宙の中心みたいになってない?」
エーテル「巻き込まれ体質だ」
朔姫「規模が銀河なんよ」
オルビス中央広場。
銀河でも最大級の交易都市だけあって、今日も観光客と住民でごった返していた。
屋台の香り、空を走る浮遊バス、ホログラム広告。
いつも通りの平和な日常——
だったはずなのに。
まず人々が気づいたのは、空気の変化だった。
「……え、なんか寒くない?」
「いや、暑いだろ……てか重い」
「胸がざわざわするんだけど」
次の瞬間。
銀色の装甲をまとった戦士たちが一直線に並ぶ。
スター・レギオン。
その存在感だけで、広場のざわめきが一気に消えた。
観光客A
「な、なにあれ……映画の撮影?」
住民B
「違う……あれ本物だ……銀河戦争の英雄部隊だぞ……」
子ども
「ママ……こわい……」
だが恐怖が頂点に達したその時——
上空に光のゲートが開き、派手すぎる降臨。
アストラの登場。
「エェェェテェェェルゥゥゥ!!」
広場が揺れる。
観光客C
「今の叫び何!?」
住民D
「え……あの人……宇宙空軍総司令だよね……?」
「テレビでしか見たことない存在なんだけど!?」
「なんで泣きそうな顔で走ってきてるの!?」
そして極めつけ。
煤だらけでキレ散らかしながら突進してくる
道明。
「クゼェェェェ!!!!」
完全に戦争映画の開幕音。
住民E
「敵襲!?敵襲なの!?」
観光客F
「助けてぇぇぇ!」
屋台の店主が悲鳴をあげながらシャッターを下ろす。
だが——
その全ての中心に、静かに立つ存在。
光をまとったエーテル。
騒音も威圧も怒号も、全部その周囲で止まっているかのようだった。
観光客が震えながら囁く。
「……あの人が中心……?」
「誰……神様?」
「いや……もっとやばい気がする……」
子どもが目を輝かせる。
「ねえママ!あの人がボスだよね!」
母親
「見ちゃだめ……でも……見ちゃう……」
住民の老人が震え声で言う。
「伝承に出てくる存在だ……
宇宙を創り直した守護者……」
「まさか本当に実在していたとは……」
一方その頃、本人たち。
かや「ねえ……周りめっちゃ固まってない?」
朔姫「観光地壊滅してるよこれ」
凛「完全に事件現場」
難波「ワシら悪役集団みたいだぞ」
夜叉「黙って立ってるだけで災害」
道明「いや俺は被害者だからな!?」
アストラ「みんながエーテルに惚れるのも無理ないわよね!」
スター・レギオン「街がパニックになっていますが」
エーテル「……またやりすぎたか」
その一言でさらにざわめきが爆発。
「やりすぎたって何!?」
「今の状況で“また”って何!?」
「日常でこれ起きてる人たちなの!?」
オルビスの住民たちは悟った。
今日この街に現れたのは——
観光客ではない。
英雄でもない。
宇宙の歴史そのものだった。
オルビスでの大騒動をくぐり抜け、エーテルたちは宇宙船へ戻ってきた。
ハッチが開く。
静かな船内――のはずだった。
「……なんだこれは」
最初に目に入ったのは、床を転がる変な球体。
細い手足がにょきっと生えていて、くるくる回転している。
「おかえり諸君〜!」
妙に陽気な声。
道明が固まる。
「……誰だ」
球体がピタッと止まる。
「失礼だな!私は進化した天才科学者レオンだ!」
「進化ってレベルじゃねぇだろ」
その横では――
火花。
ガガガガッという金属音。
工具とホログラムに囲まれて、何か巨大な装置を分解・再構築しているイリス。
「そこじゃない、そこ!構造的に美しくないでしょ!」
「うわっ火花飛んだ!」
「気にしないで、成功の音だから」
成功の音が爆発寸前なのだが誰も突っ込まない。
道明が呆然。
「……俺が置いていかれてる間に何が起きた」
ジンが肩を叩く。
「通常運転だ」
「通常とは?」
レオンが腕(細すぎる)を広げる。
「私は全形態可変式ハイパー天才球体生命体になった!」
朔姫「自分で言うな」
華陽「むしろ弱体化してない?」
イリスが振り向きもせず言う。
「黙ってなさい、今レオンを“どんな姿にもなれる存在”にしてる最中なの」
風夏「つまり失敗作量産中ですね」
「違うわよ完成前の芸術よ!」
バチィッ!
また火花。
難波「船燃えるぞ」
エーテルは静かに眺めてから一言。
「……相変わらずだな」
その声にイリスが止まる。
ゆっくり振り返る。
「……戻ったのね、創生の面倒主」
ルミナがぴょんっと前に出る。
「イリスー!この人ね、道明!」
「知ってるわ、写真で見た」
道明「写真?」
レオン「私はアルバム係だ」
「誰に頼んだ」
イリスがようやく装置から離れて道明をじっと見る。
「ふーん……肉体は頑丈そうね」
道明「改造すんなよ」
「しないわよ、今は」
“今は”が怖い。
かやが苦笑しながら言う。
「久世……じゃなくてエーテル、この船やっぱり騒がしいね」
「静かだった試しがない」
ミラが小声でルークに。
「この人たち宇宙守ってるんだよね?」
「守護者なのに一番危険だと思う」
その時レオンが急に変形する。
球体から細長い姿になり、ピョンと道明の前へ。
「歓迎のハグ!」
「来るなァ!!」
逃げる道明、追うレオン。
夜叉「始まったな」
凛「平和だね」
エーテルはその光景を見ながら、ほんの少しだけ笑った。
宇宙を救う旅の途中。
この騒がしさだけは、何一つ変わらなかった。
宇宙船の中がようやく少し落ち着いた頃だった。
イリスは再び改造に戻り、
華陽と朔姫はミラたちと何か話していて、
エーテルとかやは窓際で星を眺めていた。
その時――
「う……うぅ……」
床に転がるレオン。
ピク…ピク……
道明「……ん?」
レオンが弱々しく手を伸ばす。
「道明……頼む……」
「なんだ急に」
「俺の……エネルギーが……」
皆が振り向く。
レオンの体がカタカタ震えだす。
「このままじゃ……停止……」
道明「医療班呼ぶか?」
「違う……」
レオンが震える手で――
股間部分を押す。
ニュッ。
電池が飛び出す。
ピカーン(地味に光ってる)
道明「」
完全停止。
時間が止まる。
朔姫「……来た」
華陽「伝統芸」
風夏「被害者第二号ですね」
道明「は?」
レオン(瀕死ボイス) 「久世の時と……同じだ……
エーテルは……黙って替えてくれた……」
道明「聞いてねぇ!!」
レオン「頼む……俺の命は……君の手に……」
電池がプルプル揺れてる。
凛「早くしないとブラックアウトしますよ」
夜叉「替えてやれ」
「お前ら軽すぎだろ!!」
かや「道明さん頑張って!」
「応援すな!!」
道明は人生最大級の葛藤をする。
宇宙を救った男。
数々の戦場を越えた男。
だが――
これは未知の戦場。
「くっ……!」
恐る恐る電池を掴む。
「あっ…そこ……優しく……」
「黙れ!!」
バチッ!
交換完了。
レオンの目が光る。
「復☆活!」
元気に跳ね起きるレオン。
「いやぁ〜助かった助かった!」
道明「……俺は何をさせられた」
肩を落とす道明。
エーテルが静かに近づく。
「……通過儀礼だ」
「やめろそんな儀礼」
華陽「これで正式メンバーですね」
朔姫「ようこそ地獄へ」
レオンが親指を立てる(細すぎる)。
「次は夜叉だな!」
夜叉「破壊するぞ」
レオン「冗談です」
レオンは復活してピョンピョン跳ねたあと、
ふと視線を動かした。
そこにいたのは――
無垢そのものの存在。
ルミナ。
「……お?」
レオンの目が怪しく光る。
「そうだ……!」
かや「嫌な予感しかしないんだけど」
朔姫「レオン、その顔やめろ」
レオンはフラフラとルミナに近づく。
「ルミナちゃん……」(イケボ)
ルミナ「なぁにレオン?」
「もしね……もしレオンがまた倒れたら……」(イケボ)
「うん?」
「エネルギー交換……お願いできるかな……?」(イケボ)
首をかしげるルミナ。
「えねるぎー?」
「そうそう、ここから出てくる大事なやつ」
そう言ってレオンは――
股間を指差す。
ニュッ。
一同。
「やめろおおおおお!!」
間に合わない。
ルミナは真剣な顔になる。
「わかった!助ける!」
エーテル「待てルミナそれは——」
遅い。
ルミナ、両手で掴む。
「よいしょ!」
ミチィ……ギチギチ……
レオン「ちょっ……それ引き抜くタイプじゃな——」
ブチッ!!
「ぎゃああああああああ!!!!!」
電池どころか
接続部ごと引き抜かれる。
火花バチバチ。
レオンの目がぐるんぐるん回る。
「シ…システム損傷……人生初の致命傷……」
その場で崩れ落ちるレオン。
夜叉「殺したな」
華陽「完全に」
風夏「これはもう修理案件ですね…」
ルミナ「え……壊れた?」
かや「壊れたってレベルじゃないよ!!」
エーテルは静かにレオンを持ち上げる。
「……ルミナ、よく聞け」
「うん…」
「それは“抜くもの”ではない」
「じゃあ?」
「交換するものだ」
ルミナ「……むずかしい」
レオン(瀕死) 「誰だよ……子どもに任せようって言ったの……」
道明「お前だ」
イリスが工具を持って近づく。
「はーい患者さーん、分解しまーす」
レオン「やだあああああ!!」
「安心しなさい、もっとすごいのにしてあげるから」
「それが一番怖い!!」
イリスはゴーグルを直しながら言った。
「はい、もう完成よ」
レオン「……嫌な予感しかしねぇんだけど」
イリスがスイッチを押す。
カシュン。
レオンの脇腹、背中、胸、そして――
どこからともなく小さな取っ手がニュッと飛び出す。
「な、なにこれ!?」
イリス「埋め込み式・多点展開型手回し発電機」
かや「電池じゃなくなってる……」
「もう引き抜かれて壊される心配ないでしょ?」
レオン「いやそれ以前に人力じゃねぇか!!」
イリスは得意げに続ける。
「どこからでも出せるから、好きな位置で回せるわ」
朔姫「どこからでもって言い方やめて」
夜叉「嫌な想像しかしない」
試しにイリスが回す。
ガリガリガリガリ!!
レオン「うおおおおお元気出てきたぁぁぁぁ!!」
目がキラーンと光る。
風夏「すごい…普通に発電してます…」
エーテル「完全に非常用動力だな」
レオンは絶望する。
「俺……未来型ロボじゃなくて非常用設備になってない?」
イリス「安心して」
「最大出力にするとビームも出るわよ」
レオン「急に強くなるな!」
誰も回してくれなくなったレオンは、しょんぼりしながら自分で取っ手を回していた。
ガリ…ガリ…ガリ……
レオン「はぁ……人生って電力だな……」
エーテル「ロボの悟りみたいに言うな」
かや「自分で発電してる姿が哀愁すごいよ」
そんな中――
レオンの視線が、きらきらした存在に止まる。
ルミナ。
エーテルの娘で、純粋無垢の塊。
レオン(ひらめいた)
「……なぁルミナちゃん」
ルミナ「なぁに?まるいおじちゃん」
レオン「おじちゃんじゃねぇ!」
咳払いしてから、妙に優しい声になる。
「その……この取っ手さ……」
ニュッ(例の位置から出現)
「くるくる回すとね、レオン元気になるんだ」
ルミナ「へぇー!」
レオン(よし来た)
「だからさ……ちょっと回してみない?」
一瞬、空気が止まる。
かや「……レオン?」
風夏「そのお願いはだめです」
朔姫「完全アウト」
夜叉「処刑でいいか」
レオン「まだ何もしてねぇだろ!!」
ルミナは首をかしげる。
「これ回すと元気になるの?」
レオン「そうそう!ヒーロー充電みたいなもん!」
エーテル「やめておけ」
だが――
ルミナは純粋だった。
「じゃあルミナやる!」
ガシッ
全員「やめろぉぉぉ!!」
ガリガリガリガリガリ!!!
レオン「うおおおおおおフルパワァァァァ!!」
目がビカァァァン!!!
宇宙船の電力メーター振り切れる。
ジン「エネルギー急上昇!?何が起きた!?」
イリス「発電所できてる!?」
レオン「ルミナちゃん最高ぉぉぉ!!!」
エーテル即座に引き剥がす。
「教育に悪い!」
ルミナ「え?だめだったの?」
かや「だめだよ!それは特別な非常用だから!」
レオン「非常用扱いひどくね!?」
夜叉「次やったらスクラップ」
レオン「ロボに対する言葉じゃねぇ!」
その後、正式ルールが追加された。
【レオン発電は大人のみ許可】
【子供接触禁止】
なおレオンは泣いた。
「希望の未来を断たれた……」
イリスは満足そうに腕を組んでいた。
「ふふ、レオンはまだ未完成よ?」
レオン「まだ何が残ってんだよ……」
イリス「まずこちら」
レオンの脇腹がスライドする。
ニュッ
――家庭用コンセント。
かや「え」
朔姫「え??」
ジン「宇宙船いらんくなるぞそれ」
イリス「スマホ、タブレット、調理器具、なんでも直結可能よ」
レオン「俺、延長コード枠!?」
エーテル「便利ではある」
レオン「扱いが雑すぎるだろ守護存在!!」
さらに背中が開く。
ゴゴゴ……
湯気ぶわぁぁぁ。
レオン「熱っ!?!?」
イリス「簡易温泉モード」
風夏「……入れるんですか?」
イリス「もちろん」
朔姫「人型じゃないのに!?」
レオン「俺が風呂!?俺が湯船!?!?」
イリス「自動沸かし・温度調整・成分再現付きよ」
ジン「温泉旅館泣くぞ」
かや「すご……これ家に一台ほしい……」
レオン「欲しがるな!!尊厳どこだ!!」
そして最後の仕上げ。
イリスは胸元を開いて、誇らしげに言った。
「エネルギー余剰時は——」
ピカァァァン
「宇宙船全体に給電可能」
警告ランプが一斉に緑へ。
ジン「燃料消費ゼロ運転になったぞ!?!?」
エーテル「文明が一段階跳ねたな」
レオン「俺、発電所兼温泉兼充電スポット!?」
風夏「便利ですね(にこやか)」
レオン「その笑顔が一番こえぇよ!」
その日からレオンはこう呼ばれた。
移動発電機
生きるコンセント
温泉ロボ
非常用インフラ
正式名称:レオン(元・天才科学者)
その朝は、静かすぎた。
いつも聞こえるはずの
「ブゥゥゥン……」というレオンの発電音がない。
宇宙船の照明が――消える。
ピタ。
空調停止。
調理ユニット停止。
温泉停止。
ジン「……嫌な予感しかしない」
朔姫「え、ちょ、重力制御ランプ消えてない?」
凛「まさか……」
レオン「」
――完全沈黙。
風夏「レオン?」
無反応。
イリスが慌ててパネルを開く。
イリス「……中枢エネルギー焼き切れてる」
難波「つまり?」
イリス「文明終了」
全員「は???」
次々と起こる地獄。
・シャワー出ない
・ご飯作れない
・通信できない
・船ゆっくり漂流開始
レオン「ごめんな……俺がインフラやりすぎた……」
かや「責めてないよ!?むしろ頼りすぎた私たちが!!」
ジン「レオン一機に文明依存してたのヤバすぎだろ!」
そしてついに完全停止。
宇宙船、ただの鉄の箱。
真っ暗。
沈黙。
絶望。
その時だった。
淡い光が船内に広がる。
ふわ……っと。
エーテルの身体から銀河のような創生エネルギーが流れ出る。
エーテル「問題ない」
ルミナも両手を広げる。
ルミナ「パパの力、つかえるよ」
空間が震え、
光が配線を走り、
エネルギーが“電気”の性質へと変換されていく。
バチッ……バチバチ……!
照明復旧。
システム再起動。
重力安定。
調理ユニット復活。
ジン「……え?」
朔姫「え???」
華陽「え?????」
イリス「創生エネルギーを……電力規格に変換してる……」
凛「神か?」
難波「神だな」
エーテルは普通に言う。
「宇宙が生まれる前は、エネルギーの区別などなかった」
ルミナ「電気も、光も、生命も、ぜんぶ同じだよ?」
かや「スケールが違いすぎる……」
レオンがゆっくり目を開ける。
レオン「……俺いらなくね?」
エーテル「必要だ」
ルミナ「レオンのお風呂すき」
レオン「そこかよ!!!」
温泉ユニットが再起動し、
宇宙船の奥にある露天風呂型スペースから湯気が立ちのぼる。
ゴォォ……と音を立てて湯が満ちていく。
ミラ「わぁ……星のお風呂……!」
ルーク「光ってる……あったかい……!」
エーテルは静かに湯へ入る。
創生エネルギーの余波で、湯が淡く銀色に輝く。
エーテル「……落ち着く」
ミラとルークもばしゃっと入る。
ミラ「ひろーい!!」
ルーク「宇宙なのにあったかい!!」
そこへルミナが飛び込む。
ルミナ「パパー!」
エーテル「こら、走るな」
ルミナ「えへへ!」
さらにかやも入ってくる。
かや「ほんとに温泉になってる……宇宙船なのに……」
エーテル「レオンとイリスの技術だ」
かや「神とロボの合作って何それ……」
平和そのもの。
湯気。 笑い声。 銀河色の湯。
――その時。
ガコン。
嫌な機械音。
全員「……?」
ゆっくりと湯船の縁が開く。
そこからせり上がる球体。
細い手足。
そして誇らしげな声。
レオン「ふふふ……」
レオン「ついに完成した……」
かや「嫌な予感しかしない」
ルミナ「まるいの出てきた!」
レオンの胴体が変形。
ボコッと開いて――
ジェット噴射型・自動洗浄モード起動。
ブォォォォォ!!!!
温水シャワー乱射。
泡噴射。
マッサージ水流。
全方向攻撃。
ミラ「きゃああああ!」
ルーク「うわあああ!」
かや「ちょっとレオン何してんの!?」
ルミナ「たのしーーー!!」
エーテル「……制御しろ」
レオン「安心しろ久世!!」
レオン「全身同時洗浄!除菌!マッサージ!毛穴ケア!」
レオン「完璧な風呂体験だ!!」
次の瞬間。
水圧が限界突破。
ドゴォォォン!!
全員吹き飛ぶ。
湯が宇宙船内に洪水。
凛(遠くから)「またレオンかーーー!!!」
夜叉「破壊神かあいつは」
イリス「改造しすぎた……」
泡だらけになった湯船で。
ミラ「……たのしかった」
ルーク「またやろう」
ルミナ「レオンすごーい!」
かや「いや教育に悪い!」
エーテル「……後で調整だ」
レオン「えっ」
宇宙船の通路。
ルミナは当然のようにエーテルの腕にしがみついて歩いている。
ルミナ「パパ、どこ行くの?」
エーテル「操縦室だ」
ルミナ「じゃあ一緒!」
エーテル「……最初から離れていないだろう」
かや「もう完全に親子だよね」
朔姫「血は繋がってなくてもこれは父娘」
華陽「いや創生レベルで繋がってる」
食堂。
テーブルに並ぶ宇宙料理。
ルミナが勢いよく食べて――
ほっぺにソースべったり。
ルミナ「おいしー!」
エーテル「……動くな」
指でそっと拭う。
親指でぬぐって、布で仕上げ。
エーテル「口元が汚れている」
ルミナ「えへへ、パパありがと」
かや(尊死)
風夏(静かに拝む)
夜叉「……守護神ってこんなんだったか?」
夜。
小さなベッド。
エーテルが本を開く。
ルミナ「今日はこのおはなし!」
エーテル「星渡りの守護竜か……」
低く穏やかな声で読み聞かせ。
宇宙船の振動と相まって、子守歌みたいに響く。
ルミナはいつの間にかまぶたが重くなり――
ルミナ「……パパ……つづき……」
エーテル「明日だ」
ルミナ「うん……」
数時間後。
物音。
エーテルの寝室の扉がそっと開く。
小さな影。
ルミナ「……こわい」
エーテル「来たか」
当然のように布団を開ける。
ルミナは転がり込む。
エーテルの胸に顔を埋めてぎゅっと掴む。
ルミナ「ここがいちばんあんしん」
エーテル「……離れるな」
翌朝。
かやが様子を見に来ると――
エーテルの腕の中で爆睡するルミナ。
片腕で守るように抱きしめたまま、微動だにしない神。
かや「……勝てない」
朔姫「完全敗北だね」
華陽「父性の化身」
エーテルは宇宙を創った存在なのに、
今一番大切なのは――小さな娘のぬくもり。
銀河より重いものを抱いている。
宇宙船がワープを抜ける。
窓の外に見えたのは、荒れ果てた巨大都市。
高層ビルは半壊、ネオンは割れ、空には常に砂塵が舞っている。
ジン「ここが……ギャングの星」
風夏「空気が重いですね……」
ルーク「なんか怖そう……」
エーテルは静かに目を細める。
エーテル「この星は異質だ。エネルギーが遮断されている」
イリスが端末を見る。
イリス「創生エネルギー、宇宙技術、能力系……全部ロックされてる」
華陽「つまり?」
イリス「筋肉と反射神経だけ」
夜叉「……戦場じゃねぇか」
着陸した瞬間。
身体がずしっと重くなる。
かや「うわ……力が抜ける感じ」
朔姫「瞬発力も消えてる……」
難波「俺の怪力も抑えられてやがる」
エーテルも拳を握る。
創生の光は一切出ない。
ただの“肉体”。
エーテル「完全に人間の身体能力のみだな」
夜叉(それでも異常にでかいけどな)
路地裏。
すぐに囲まれる。
全身傷だらけのギャングたち。
ギャングA「観光か?ここは強い奴が全てだ」
ギャングB「金か命か、筋力で決めろ」
朔姫が前に出ようとするが――
エーテルが手で制する。
エーテル「俺が行く」
かや「エーテル……能力使えないよ?」
エーテル「関係ない」
ギャングのボス級が出てくる。
身長2m超、鋼のような筋肉。
ボス「この星じゃ“神様”も殴られる側だぜ?」
拳を振り下ろす。
ドゴォン!!!
地面が割れる。
だが――
エーテルは半身でかわし、肘を叩き込む。
骨が鳴る音。
ボスの巨体が吹っ飛ぶ。
沈黙。
ギャングたち「……は?」
エーテル「能力がなくても、俺は戦場を生き抜いてきた」
夜叉「久世時代そのまんまだな」
そこから完全肉弾戦。
・夜叉は技術だけで制圧
・難波は力比べで圧倒
・朔姫と凛はスピードと連携
・かやは先読みで完璧回避
エーテルは中央で一人無双。
殴る、投げる、関節極める。
一切のエネルギーなし。
ただの“戦鬼”。
最後に残ったギャングたちが震える。
ギャング「こ…この星で能力なしでここまで強い奴……伝説だぞ……」
エーテル「力に頼る世界ほど、基礎が物を言う」
かや「やっぱり戦国最強は伊達じゃないね」
ジンが小声で言う。
ジン「この星でエーテル様は……最上位捕食者です」
夜叉「能力縛られてこれかよ」
ギャングの星・ヴァルガロス。
あの一戦から、空気が変わった。
路地裏の落書きに描かれるのは――
翼を背負った戦鬼のシルエット。
その下に書かれる文字。
《ETHER FAMILY》
酒場。
ギャングたちがひそひそ話す。
「聞いたか…能力ゼロでボス連中潰した集団」
「中心にいるのが“エーテル”だ」
「仲間も全員異常」
「近づくな、関わるな、だが逆らうな」
市場通りを歩くエーテルたち。
自然と人が道を空ける。
誰も絡まない。
誰も視線を外さない。
敬意と恐怖が混ざった沈黙。
ルミナがかやの手を引いて歩いていると――
ギャングの若手が慌てて頭を下げる。
「お、お嬢!」
「道、通してください!」
「危ないんで近寄らせません!」
一斉に人払い。
ルミナ「え?なにこれ?」
夜叉「もうこの星の姫扱いだな」
難波「そりゃあの化け物の娘だしな」
ギャング達(小声)
「エーテルの娘だぞ……」
「星で一番触れちゃいけねぇ存在だ……」
裏社会の噂。
・エーテルに喧嘩売った組織は翌日消える
・娘に近づいた奴は二度と路地に立てない
・仲間に手出し=死刑
誰も実際は見てない。
でも全員信じてる。
そしてついに呼び名が定着する。
「エーテルファミリー」
星の支配者でもない。
軍でもない。
だが誰も逆らえない存在。
ルミナは完全に象徴になる。
「お嬢が笑ったぞ!」
「今日は星が平和だ!」
「お嬢が転んだ!?医者呼べ!」
ルミナ「ちょっと!?大げさすぎ!」
エーテル(苦笑)「……なんでこうなる」
かや「完全に一家で伝説化してるね」
ヴァルガロスにはただ一人、
この星の裏社会をまとめ上げてきた存在がいた。
名は――クロウ・ヴァルガン。
能力なしの肉体だけで数百のギャングをねじ伏せ
この星を力で統一した怪物。
彼だけはエーテルファミリーを見て、恐怖じゃなく“怒り”を抱いた。
玉座代わりの鉄椅子でクロウは笑っていた。
「能力も使えねぇ星で“伝説扱い”?」
「ふざけるな」
「この星で強さを決めるのは拳だけだ」
「俺が王だ」
部下が震えながら言う。
「で、ですが頭領……エーテルは……」
クロウは机を叩き割る。
「だから潰すんだよ」
「神だの創生だの関係ねぇ」
「この星じゃ“殴って立ってる奴”が勝者だ」
その夜。
ヴァルガロス全域のギャングが動く。
路地、ビル屋上、地下闘技場。
武器は禁止。
拳だけ。
まさにこの星のルールでの総力戦。
エーテルファミリーが歩いていると、空気が変わる。
いつもの道が――静かすぎる。
次の瞬間。
四方八方から数百人が飛び出す。
「囲めえええ!!」
「頭領の命令だ!!」
夜叉が低く言う。
「来たな」
難波が首を鳴らす。
「星ごと敵に回したか」
かやがルミナを抱き寄せる。
「大丈夫、守る」
ルミナ「……いっぱいだね」
エーテルは一歩前に出る。
「数じゃ勝てんぞ」
そして屋根の上から降りてくる影。
クロウ・ヴァルガン。
全身傷だらけの王。
「お前がエーテルか」
「いい面構えだ」
「だがこの星で“王”は俺だけだ」
次の瞬間。
クロウが地面を踏み抜いて突進。
拳が音速を超える。
夜叉が受け止めるが――吹き飛ばされる。
「なに……!」
難波が殴り返す。
クロウは笑いながら受け止める。
「重てぇなぁ!だが足りねぇ!」
星最強クラス同士の肉弾戦。
建物が崩れ、地面が割れる。
周囲のギャングたちは戦慄。
「頭領が……押してる……?」
クロウが叫ぶ。
「見ろおお!!」
「能力なしの世界で誰が最強か!!」
その瞬間。
エーテルが一歩踏み出す。
ただ、拳を握る。
創生エネルギーは使わない。
“純粋な肉体”だけ。
一撃。
空気が割れる。
クロウの身体が地面を何十メートルも滑って止まる。
完全に沈黙。
エーテルが静かに言う。
「この星のルールに従った」
「拳で決めた」
「もう一度来るか?」
クロウは……笑った。
血を吐きながら笑った。
「はは……ははは……」
「負けだ」
「完全にな」
その場で膝をつく。
ギャング王が頭を下げる。
「ヴァルガロスは――エーテルファミリーに従う」
一斉に周囲のギャングたちも膝をつく。
「お嬢万歳!!」
「エーテル様!!」
こうしてヴァルガロスは正式に――
エーテルファミリーの星になる。
恐怖ではなく、力で認められた支配。
ヴァルガロスがエーテルファミリーの星になって数日。
街は異様に平和だった。
ギャングたちは抗争をやめ、
なぜか治安パトロールを始めている。
理由はひとつ。
「お嬢が通るぞーーー!!!」
ルミナである。
市場を歩けば道が割れるように人が避ける。
ギャング達が直立不動。
「おはようございますお嬢!!」
ルミナ「おはよー!」
その瞬間。
全員悶絶。
「か、かわいい……今日も生きててよかった……」
かやが苦笑い。
「完全にアイドルじゃん……」
華陽「いや、王族」
夜叉「いや、神格」
屋台のおっちゃんが震えながら差し出す。
「お、お嬢……これ今日の最高級ミート串です……タダで……」
ルミナ「え!いいの?」
「むしろ受け取ってください!!!」
ルミナが一口食べる。
「おいしい!」
その瞬間。
周囲のギャング全員が拳を突き上げる。
「よっしゃああああ!!!」
「今日の飯三杯いける!!」
その時。
路地裏でチンピラ三人組が揉めていた。
「てめぇぶつかっただろ!」
「はぁ!?そっちが――」
ルミナが近づく。
「どうしたの?」
空気が凍る。
チンピラ達、顔面蒼白。
「お、お嬢!?!?!?」
ルミナ、首をかしげる。
「けんか、だめだよ?」
沈黙。
次の瞬間。
三人同時に土下座。
「すみませんでしたああああ!!!!」
「もう二度と争いません!!」
「俺たち更生します!!」
夜叉「言葉だけで制圧しやがった……」
難波「核兵器かよ」
その後も――
・ルミナが転びそうになる
→周囲のギャングがスライディングでクッション化
・ルミナが喉乾いた
→ドリンク100本集まる
・ルミナが眠そう
→即席ふかふかベッド出現
エーテルが呆然。
「……いつの間にこの星、娘中心国家になった?」
ルミナ「えへへ」
そして極めつけ。
巨大な不良集団が別の星から乗り込んでくる。
「この星は俺たちがもらう!」
次の瞬間。
ルミナが前に出る。
「ここ、だめ?」
沈黙。
敵ボス、震え出す。
「……え、エーテル様の……娘?」
周囲が一斉に頷く。
敵集団。
その場で武器捨てる。
「撤退ーーーー!!!!」
かや「戦ってすらないんだけど!?」
華陽「外交兵器」
凛「存在が抑止力」
ルミナは無邪気に振り返る。
「へいわだね!」
エーテル(遠い目) 「そうだな……」
こうしてヴァルガロスは今日も平和。
理由:
お嬢が可愛いから。
ヴァルガロスの空に、巨大な宇宙船が影を落とす。
エーテルたちは搭乗準備を終えていた。
港には――
ありえない人数のギャングたち。
黒スーツ、傷だらけの戦士、元敵対組織、全勢力。
全員が整列している。
「お嬢が……行っちまう……」
「いやだ……この星の希望が……」
「太陽よりまぶしい存在が……」
ルミナが不思議そうに見上げる。
「みんな、どうしたの?」
その一言で半数が泣く。
エーテルが前に出る。
「この星は、お前たち自身で守れ」
静寂。
ギャングの頭領たちが拳を胸に当てる。
「エーテル様の名にかけて!」
「お嬢の笑顔に恥じぬ生き方を誓います!!」
かや(小声) 「宗教になってない?」
華陽 「なってるね」
ルミナが手を振る。
「またねー!」
全員号泣。
「おおおおおおじょおおおお!!!!」
「帰ってきてくださいいつでも!!」
宇宙船がゆっくり浮上。
窓から見えるのは――
跪く星そのもの。
ルミナ、少ししょんぼり。
「みんなさびしそうだったね」
エーテルが頭を撫でる。
「大丈夫だ。あの星はもう折れない」
ジンが操縦席から言う。
「次の星へワープ準備完了」
エンジンが唸る。
かやが小さく呟く。
「行く先々で伝説残してる気がするんだけど……」
難波「災害指定でいい」
夜叉「銀河自然現象だな」
ワープ光に包まれる宇宙船。
その背後で――
ヴァルガロス全土が一斉に敬礼していた。
そして後日。
銀河ニュースの片隅。
『謎の少女来訪後、犯罪率0%を維持する星ヴァルガロス』
『通称:お嬢の奇跡』
エーテル(遠い目) 「……旅するたびに世界変えてないか?」
ルミナ「えへへ?」
こうして一行は次の星へ。
伝説を置き土産にしながら。




