第15話 カシムの秘密
カシムの本名を知ってしまった私は焦るがカシムが部屋に入っていくので慌ててその後について部屋に入り込む。
部屋は豪華な造りにはなっているが少し埃っぽい感じもする。
メイドたちが言っていたように掃除をしていないからかもしれない。
しかしその他におかしな物は一見して部屋の中には見当たらない。
本棚もあるけど人に見つかってはいけない「王家の魔法書」をこんな簡単なところに隠すかな?
カシムはソファに座りテーブルの上にある瓶から飲み物をグラスに注いでくつろいでいる。
その隙に私は本棚に近付き本を確認してみるが「王家の魔法書」という題名の本はない。
う~ん、王家の魔法書の表紙には紋章が描いてあるはずだけどカシムがいる時に本棚から本は取り出せないんだよなあ。
透明人間になっている私が本棚から本を取り出せばカシムから見たら本が勝手に動いていることになってしまう。
たとえ私のことがバレなくても不審に思われて騒ぎ立てられたら大変だ。
透明人間の力って最強だと思ったけどけっこう使い方が不便よね。
こういう時は魔法の方が便利なのかな。
エドにいろいろな魔法を見せてもらったから魔法の方が便利な気もする。
でも魔法でもできないことはあるのだからこういうのを隣の芝生は青く見えるというのかもしれない。
するとカシムがソファから立ち上がり部屋の奥に向かう。
奥には扉がもうひとつある。
「さて、今日も楽しい時間を過ごすか。これがエドにバレたら大変だがな」
ん? エドにバレたら大変って何かしら?
もしかしてそっちの部屋に「王家の魔法書」が隠してあるとか?
私は急いでカシムに近付く。
そしてカシムは奥の扉を開いて中に入ったので私もその後に続いた。
だがその部屋に一歩入った私はあまりの驚きに身体が動かなくなった。
こ、これは!?
その部屋は中央にベッドがあり寝室だと思われる部屋だ。
しかしその寝室は普通の寝室ではなかった。
天井、壁の一面に隙間なくエドの顔を描いた紙が貼ってある。
まるでお気に入りの芸能人の写真やポスターで部屋中を埋め尽くしているような部屋だ。
な、なにこれ! どうしてエドの顔ばかりなのよ!
もしかしてエドに呪いでもかけてるとか?
魔法で人に呪いがかけられるのか不明だがそんなことを疑いたくなるほど不気味だ。
するとカシムは壁に貼られた一際大きなエドの顔を描いた紙にそっと近付きうっとりした瞳でそれを見つめる。
「エド。君が私のことを嫌っているのは知っている。だが私は君を愛してるんだ。ああ、どうして君は私の弟なのだろう。手に入らないのなら君を壊すしかないよね」
カシムの言葉に私は衝撃を受ける。
カシムが実の弟のエドを愛しているなんて信じられない。
だってカシムとエドは異母兄弟の上に男同士なのに!
前世の記憶にBLの知識がある私でもこの事実にはドン引きしてしまう。
確かにこれは他人にバレたりエドにバレたら大変な秘密だ。
「君を壊すのは君が真の魔王になってからにしたいよ。だから早く真の魔王になって欲しいのにいったいどうして「王家の魔法書」が紛失してしまったのか」
その言葉を聞いて私はハッと我に返る。
そうだった。今はカシムの秘密に衝撃を受けてる場合じゃなかったわ。
でも今のカシムの言葉から推測するとカシムはエドに真の魔王になってもらいたいし「王家の魔法書」をカシムが持っているわけではないのね。
エドが真の魔王になった時にエドを壊すと言ってるカシムは危険人物ではあるが「王家の魔法書」を盗んだ犯人ではないようだ。
そのことが分かっただけでも良かったと思おう。
私はカシムに気付かれないように寝室から出た。
う~ん、カシムは別の意味で要注意人物だけど王家の魔法書の紛失については関係ないようね。
ということは、もうひとりのキリルって人が持ってるのかしら。




