第11話 移動は空飛ぶアレです
「依頼内容は分かったからシャナールに伝えておくわね」
「うん。よろしく」
仕事の内容を確認してエドを立派な真の魔王にすることに決めた私はエドが帰ったらさっそくカシムとキリルの宮殿に忍び込もうと決意する。
しかしエドは用事が終わったというのに帰ろうとしない。
どうしたんだろ?
まだ何か用事があるのかな?
「どうしたの? エド。まだ何か用があるの?」
「ミアはこの国に来るのは初めてなの?」
「そうよ。私はお父様が亡くなって商会の会長になったから異種族の国を回る旅に出たんだもん。それまではずっと「商人の町」にいたからこの国に来たのは初めてよ」
「それなら俺のお気に入りのこの国の場所を案内してあげる。ミアとデートしたいから」
「デ、デートって!? あ、ちょっと!?」
エドは私の手を取るとテントを出る。
ちょっと待ってよ! 私はまだエドとデートするって言ってないわよ!
テントを出たエドは手を空に向けて伸ばすと何やら呪文を唱える。
すると空の彼方から何かが猛スピードで飛んできた。
その飛来物は私とエドの前にふわりと降りてくる。
よく見るとそれは美しい図柄の少し大きな絨毯だ。
「え? これって、絨毯よね……?」
「そう。移動の時に俺がよく使っている『空飛ぶ絨毯』さ。これに乗って行こう」
空飛ぶ絨毯って本当に存在したんだ!
これは乗ってみたいかも!
本の中の話でしか知らなかった空飛ぶ絨毯を目の前にして私は興奮してしまう。
もし商品化できるならマクシオン商会でもこの空飛ぶ絨毯を取り扱いたいわ。
そのためにも自分で乗って乗り心地を体験するのも重要よね。
空飛ぶ絨毯は私の商人魂にも火を点ける。
「これに乗せてくれるならエドとデートしてもいいわ」
「それなら決まりだね。さあ、乗って」
エドが先に乗り私もその後に絨毯に乗って座ってみる。
座り心地もふかふかで気持ちの良い絨毯だ。
「乗り慣れないと危ないから俺がミアを抱いててあげる」
「…っ!」
エドは私の背中側に周り私を抱き締めるように私の身体に腕を回した。
そしてエドが再び呪文を唱えるとゆっくりと絨毯が空中に浮かび上がる。
うわ! 本当に浮いてる!
空飛ぶ絨毯に初めて乗って自分の身体が浮かび上がると私は感動してしまう。
この世界が異世界であることを実体験するのは楽しいことだ。
「じゃあ、行こう」
エドの言葉を理解できるのか分からないが空飛ぶ絨毯はグングンと高度を上げて王都の空へと舞い上がる。
風が心地よく顔に当たり最高の気分だ。
この絨毯って魔力がないと使えないのかな。
もしそうなら商品として取り扱っても魔族にしか売れないわよね。
「ねえ、エド。この絨毯は魔力を持った者しか使えないの?」
「そうだよ。魔力があって風の属性の魔法を覚えてないと使えないよ」
ふ~ん、やっぱり魔族相手にしか売買はできないか。
それにしても属性に左右されるって言っても魔法って便利よね。
もしかして「透明人間」になれる魔法もあったりして。
「魔法って便利だけど魔法で「透明人間」になれたりするの?」
「透明人間? う~ん、そんな魔法は聞いたことないけど。そもそも透明人間って何の属性になるの?」
「え? 透明人間の属性?」
「魔法の基本はこの世界で存在している物質の属性の力を必要とするんだ。透明人間って透明なんでしょ? 透明ってことは何もないってことだから魔法で透明人間になるのは無理なんじゃないかな」
透明人間の属性なんて考えたことなかったわ。
でも私の身体は透明になるけど存在はするのよね。
う~ん、そう考えると私の「透明人間」になれる能力って魔法よりすごいかも。
無いのにあるってことだもんね。
やっぱり私は能力はこの世界で最強だわ!
自分の能力に改めて自信を持った私はエドに尋ねる。
「ところでこの絨毯でどこに向かっているの?」
「王都の近くの俺のお気に入りの場所。ミアも気に入ると思う」
エドのお気に入りの場所か。
それは楽しみね。
空飛ぶ絨毯は王都の外に向かって飛んで行った。




