現実に追加コンテンツは無いが世界は広い
美夜が近所でサングラス(ケース入り)を拾ったので、交番に届けた日の事。
「はい、ではお預かりしますねー」
「よろしくお願いします」
ちょっと良いサングラスだったので「すぐに落とし主が来るんじゃないかな」というような雑談をしながら書類に必要事項を書き、美夜は交番を後にする。
「あそこのお巡りさん、カッコいいよね」
「だよねー? 爽やかだし!」
「あんなカッコいい人いるんだねー!」
そばを通った女子高生たちがキャッキャと話している。
確かにイケメンだ。通り過ぎる奥様たちにも挨拶する好青年。この前は思春期真っ只中であろう男の子たちと仲良く喋っているのを見た。地域密着型の良い人である。
……でも多分、あの人Mなんだよね……。
美夜は遠い目をした。
日の目を見なかった追加コンテンツ。
そこで親友が何故か余計に増やした眼鏡キャラの中に、彼がいた。
主人公が住んでいるアパートの近くの交番勤務、長曽根要。見た目は爽やかな好青年、抱えているのはマゾヒズム。勤務中はちょっとキツめのベルトだけで我慢している悩める青年(24歳・警察官・メタリックフレーム)である。
美夜が今でも思い出すのは、この設定を読んですぐ親友に電話してしまったことだ。
『何故乙女ゲーあるあるの俺様キャラでなくMにしたの』
『だって俺様って下手に書くとただのモラハラ男かヤンデレになるじゃん。【俺のことだけ見てろ】と【俺のことだけ見てればいいんだよ?】との違いが難しいなら【俺の眼鏡だけ壊して!】のほうがいいかなって』
『何その突飛な解決方法。てかM男は書けるの』
『SとMに一番必要なのは相手が求めることを的確に判断する能力だって姉ちゃんが言ってた』
『お姉さん!!』
追加コンテンツが無くて本当に良かった。下手したら親友の姉の実体験が混ざる。
まあ、現実に長曽根氏はいた訳だが。創造神強い。
決めつけるのはどうかと思うのだが、今までの人々の様子からして十中八九、彼の性癖は親友が考えた設定のままだろう。ノーマルな美夜は遠くから彼だけの女王様が現れることを祈る。
よく考えたら一緒に設定されていた直営店舗の店長もロマンスグレーな斑目さん(47歳・べっ甲フレーム)で、実在している。
きっと会ってないだけで、ドジっ子国立大学生(20歳・ハーフリム)もいるんだろうなあ……と考えながら美夜は帰路に着くのだった。
追加設定より抜粋
【長曽根要→主人公が眼鏡を拾いまくって話す機会が増える】
【加賀見廻→たまたま入ったかんざし屋の店員が創と同じ顔でビビる】
【斑目良一→直営店の店長なので前からよく話してた】
【米良芳直→大学受験で遅刻寸前のところを主人公に救われ後に再会】
美夜「……受験生助けた覚えないけど、きっと違う人が助けてくれてるよね! うん!」




