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しかし回り込まれてしまった

短いですがラブコメもメガネ要素も詰めたので……。

 美夜が自分の部署の繁忙を切り抜けたのは、予定していた一週間などとうに越えて二か月以上過ぎた辺りだった。

 季節はとっくに秋である。その間に先輩の和田が静かに怒って「自部署に持ち込まれるデータの三割は無駄」というレポートを作って上に叩きつけていた。そのレポートを作成する情熱は本当に尊敬する。

 まあ美夜も終わったと思ったら突然持ち込まれる謎データの作成依頼には遠い目をしてしまったが……。

 なんとか捌ききり、部署に平和が戻った。




 そしてやってくるヘルプ要請。




 ……会社員なんてそんなものだ。むしろ繁忙が終わるまで待っててくれただけ優しいほうだ。酷い時は「そんな仕事ほっといて手伝って」と言わんばかりの要請が来るから。そんな仕事とは何だと和田が怒り狂うだけなのに。

 恐る恐る「また来れる?」と要請が入ったのは、創の会社とのコラボ企画の部署である。

 すでに試作段階に入っていると聞いていたので、正直もう美夜のような事務員必要ないのでは? とも思ったのだが、美夜は平社員なので黙ってヘルプに入るのだった。






「ああ、野島さん。ヘルプ大変だったんだね、お疲れ様」

 やって来たクライアント達は美夜を見て破顔し労ってくれた。

 ……なるほど、取引先には美夜が他部署の応援で抜けてたことになっていたらしい。よく考えたらヘルプの社員で対応してますなどと言ったら失礼だ。

 うっかり美夜(の眼鏡破壊伝説)をネタに親交を深めてしまった上司達からすれば、確かにこれは戻らないと駄目だったな。

「大変申し訳ございませんでした。おかげ様でなんとか向こうも落ち着きました」

 その辺の裏事情は一切顔に出さず挨拶する。

 来る前に進捗具合は教えてもらっていたのだが――今日は試作品のチェックだ。本当に美夜は必要ないくらい進んでいる。

 こちらの上司が試作品を机の上に出す。そのデザインを見て美夜はちょっと懐かしい気分になった。


 友人Aがスチルで描いた眼鏡と同じデザインだった。


 『ブランド会社とのコラボなんだからもちろん眼鏡作るでしょ。創と主人公がイチャイチャできる絶好のチャンスだね!』『え……私に眼鏡デザインしろと……?』と親友の無茶ぶりに応えた友人A。

 試作品バージョンと完成品バージョン両方描いた彼女は頑張ったよ。『私今からでもデザイン勉強してそっち行こうかな……』とか混乱するくらいきっちりしていたものな。

 ……改めて思うがみんな揃って眼鏡に侵されすぎではないだろうか。


「ユニセックスで作っており……ケースと眼鏡拭きはこちらで……」

 ワイワイと眼鏡を手に取りながら話している姿を遠くから見つつ彼らの言葉をメモする美夜。

「――野島さん、君も手に取って意見をくれませんか」

 創がこちらに声をかけてきたが、美夜はにっこり微笑んで。

「万が一でも折ったら困りますので、近づかないでおきます」

 しっかり断った。

 しばしの沈黙の後――会議室に何人もの笑い声が響いた。

 笑い事じゃないのだ上司達よ。見本品折ったりしたら目も当てられないではないか。アレは形状記憶素材ではなかったはずである。

 クライアントたちも美夜の破壊神ぶりは知っているのだし、これが一番平和である。


 あと万が一でも眼鏡ごと転びそうになって創に抱き留められ、【眼鏡も君も無事かい? ……良かった】などと微笑まれるイベントが起きるのは回避したい。これ大事。


 そのままメモ帳に視線を落としていたのだが――目の前に影ができ、顔を上げると創が試作品を持って立っていた。

「へっ?」

「じっとしていて」

 ぽかんと見上げたままの美夜の顔に、創はそっと眼鏡をかける。

「――うん、野島さんの顔にも似合う眼鏡ですね」

 満足そうに頷き、再び眼鏡を取って……そのまま上司達の輪に戻っていった。



 ……今のはエンディング後の謎のイチャイチャタイムの内容だったかなぁ……?

 ゲームでは二人きりで完成品を主人公にそっとかけ、もっとくだけた話し方をしていたが。

 何故ここで発生するのか。そんな流れどこにあった。

 もうひとり、輪に加わってない同僚をちらりと見ると、ただ肩をすくめられた。何その反応?

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― 新着の感想 ―
[一言] ウキウキイベントの連打っぽいのに「今回の眼鏡濃度高くてタイトルに偽りなしやな!」という謎の満足感に満たされています……。
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