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正気と狂気は紙一重(個人の見解)

『いいのよ、顔良し性格良し眼鏡似合う男共が好意をもってくれるんだもんね。選ぶのに時間がかかるのは当然よね』



『ちょっと二人の間で悩んで、どっちにも粉かけるのは、まぁ男のほうは複雑かもしれないけど気持ちは分からなくないからそれも許せる。まだ付き合ってないし』










『ただし逆ハー、てめーはダメだ』




 ……という、多少ぶっ飛んだところはあるが基本的に誠実さがウリの親友が、こっそり入れた隠しルート。

 六人それぞれの【必須イベント】を全て回収し続けていると、メガミの夜の台詞が豆知識でなくなっていく。


『おぬし、そろそろひとりの眼鏡を選んだらどうじゃ?』


 それを無視して更に【必須イベント】を選んでいくと、ある時攻略対象と話している途中で突然、画面が灰色に変わる。


『おぬしそれほど眼鏡が好きなのじゃな……ならば眼鏡と共に生きるがよい……』


 そして、眼鏡だけの立ち絵になる。


 攻略対象の声が聞こえなくなり、代わりに眼鏡が話し出す。

 人が認識できず眼鏡とばかり話す主人公は、病室でいくつもの眼鏡を傍に置き、楽しく生きていくことになる……という【眼鏡と幸せエンド】、友人B命名【病院ルート】なのである。



 ……多少、ではないな。相当ぶっ飛んでいる。

 一応乙女ゲーム作ってるんだよね? ホラーじゃないよね? と思わず確認したのは今では良い思い出だ。

 フリーゲームだし、ルートとして公言しているわけでもないから許されるだろう、などと言っていたが、結構な人数の心を折ったらしい。隠しルートがまさかのバッドエンドだから。

 ただ、ざまぁ好きやネタ好きの一部の人々からは高評価だった。



 本当に病院暮らしになるような発狂をするのかは疑問だが、わざわざ試してみる必要はないだろうし、最初の出会いやメガミが実際にあった以上、危険は回避するに越したことはない。

 誰かが勘違いでやろうとしていたら、やはり止めるだろう。止めずに何かあったら後味悪すぎる。


 美夜の話を聞いているうちに、静の顔がどんどん青くなっていく。

 ちなみに業務時間中なのだが、静の顔色が悪いので休ませてきます、とそれぞれの部長に許可をとって休憩室に残っていた。


「救済としては二周目だと画面灰色になった時に二択が現れて、正しいほうを選択できれば色が戻ってなおかつウェリントンな眼鏡をつけたショタ姿のメガミ様が見えるようになる【メガミルート】が解放されるんだけど……そこ狙う?」

 静は勢いよく首を横に振った。まあそうだろう、現実で二周目とか無理だし。


 『破滅と知りながらもう一回やる気概に免じて』とか言っていたルートだったが、友人Bが変なテンションで作業していたことしか覚えていない。『イケオジ声の合法ショタの語尾【じゃ】って酷い! 年下少ないって確かに言ったけどそうじゃないんだ! ありがとうございます!』とかなんとか。


 荒ぶる親友たちのことを思い出している間に、静はさらに体を丸くし、俯いていた。

「あたし……ゲーム隅々まで調べるの大好きで……隠し要素とか探すのが楽しくて……メガネクもフリーなのに謎要素多くてめっちゃハマって……」

 乙女ゲーム好きではなくて攻略班だったらしい。しかもネットの掲示板に頼らず自分で攻略する一匹狼か。

「隠しルートがあるってことだけ見ちゃって……絶対に自分で辿り着いてやるんだ、って思って、やっと全必須イベント特定したところまでは覚えてるんです……それ思い出したのが、入社式で鉱太くん見た時で」

 前世を思い出したのは美夜より静のほうが先だった。

「いつ死んだんだろ、とか、なんでこんなとこに、とか考えて頭ぐちゃぐちゃになっちゃって……これは神様が、あたしがやり残したことをさせてくれようとしてるんだ、って」

「ああ、なるほど……」

「よく考えたらそんな訳ないですよね……あたしモブだし……でも必須イベに近いことがあたしでも出来ちゃって……」

 ゲーム内容と近いことが続けて出来てしまい、最早「やらなければならない」という強迫観念だったようだ。なるほど、だから「やり遂げなきゃ」と言ったわけだ。

 なお、美夜が創ルートに入っていると勘違いしたのは名前呼びだったから。ゲームでは個人ルートに突入しない限り創が主人公の名前を呼ぶことは無かった。取引先なのでそこはシビアに作っていた。……まぁゲームの中の話である。現実は双子の兄の存在でだいぶ差異があるし。

 しかし良かった、静の頭が完全なお花畑だったら本当にどうしようかと思っていた。

「あたしまだ大丈夫でしょうか……病院は嫌だ……」

「まぁ、メガミの声が聞こえてたわけじゃないし、実際本当に視界灰色になるかはわからないから。とりあえず今からやめれば平気だよ、うん」


 ……よく考えると【メガミの声が毎晩聞こえる】というのは幻聴がすると病院に駆け込むレベルではないだろうか。美夜はそういうものだと放置していたが、普通やばいのでは。

 まさかメガミの豆知識ってこの病院ルートへのフラグ……?

 ただ眼鏡要素を増やすためのネタだと思っていたが、親友はどこまで考えて設定したのだろうか。少し怖くなった。


「どうしよ、あたしホント痛い態度とってたんですけど……眼鏡わざと割ってるし……」

「あー、竟次くんなら眼鏡割りに耐性あるから……もし何なら私からもお詫びしとく? うちの後輩でしたごめんって言ったら気にしないでくれるかも」

「先輩どれだけあの人の眼鏡割ったんですか……でもお願いしていいですか……大丈夫です、もう誰も攻略しないんで。全員と距離とります」


「え。高那さん、境君といい感じだったのに?」


 その言葉に、静はぽかんと美夜を見上げる。

「だってそれはあたしが攻略してたからで」

「いや、必須イベントだけだと好感度足りないから。【病院ルート】は好感度関係ないし。だから、境君のあの好意は、純粋に高那さんへのものよ?」


 確か鉱太は静のことを「静ちゃん」と呼んでいた。本当にシナリオ通りなら、好感度不足で名前呼びイベントも発生しないはずなのだ。

 彼は人との距離は近く、口調も軽いがちゃんと礼節は弁えている社会人である。会社の人間はしっかり名字呼びだ。

 それが静だけ名前呼びというのは――まあそういうことだ。


 静は目を瞬かせ……一瞬で顔を赤くした。

 青い顔よりマシだな、と美夜は頷く。

「――先輩!」

「あれ、境君」

 噂をすれば影というか、鉱太が休憩室に入ってきた。

「静ちゃん大丈夫っすか? 結構長い時間だから心配で……」

「うん、だいぶ落ち着いたみたいだけど……そうだ、部長たちに報告してくるから、それまでちょっと高那さんと一緒にいてもらっていい?」

「了解っす!」

「えっ」


 慌てる声が聞こえたが無視した。この場合美夜がモブなので速やかに去るのだ。

 もし静に早退が許されるなら、鉱太に送ってもらうことにしよう。

親友「怖がらせといて何だけど、そこまで考えてなかったわ。すまんな」



転生者問題はこれで解決です。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、メリーバッドエンドじゃん……! リアルで考えたら、一からやり直せるバッドエンドよりよっぽどタチの悪いメリーバッドエンドじゃんんん! こっわ!こっわー! ……でもメガミルートは気になる…
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