我関せずではいられない
~あらすじ~
気づけば親友が創生したメガネゲーの世界に転生していた美夜。順調に眼鏡を破壊し続けていたが、自分の他にも転生者がいるのではないかと気づく。勝手に恋をする分には文句はないので放置しようとした美夜だが、ある日攻略対象のひとりである境鉱太と仲が良い新卒社員が、社内で加賀見創にわざとぶつかる瞬間を見てしまうのであった。
どうなる美夜。どうする美夜!
飛び出して謝りますよクライアントだぞ相手は。
脳内の親友が勝手にあらすじを喋るのを追いやりながら、ほぼ直角に頭を下げる美夜である。
「大変申し訳ありません……っ」
「大丈夫だよ美夜さん。眼鏡も無事だから、そんな焦らないで」
先日から創は美夜のことを「美夜さん」と呼ぶようなったとかそういうのは後回しだ。
幸い(?)にも今日はちょっとした訂正案の話し合いだけで、創以外のクライアントは来ていなかったらしい。こちら側の担当社員も離れていた時で、目撃者は美夜だけだった。
しかし、あのぶつかり方は無い。故意が丸わかりの、いかにも待ち伏せしてましたという感じだった。
何故創は気にしないのだろうか。……あれか、昔からモテすぎてこんなことは日常茶飯事なのか。常に女に付け狙われてたのか。さすがイケメン。
「美夜さん、何か失礼なこと考えてない?」
「ないです」
面白半分、疑惑半分で美夜を見下ろす創の視線はスルーする。
丁度担当者も戻ってきたので、再度頭を下げ彼女――件の当たり屋のような社員――を引っ張ってその場を離れた。
誰もいない休憩室にたどり着き、ようやく彼女の手を放す。
「高那さん、さすがに取引先の人に故意にぶつかりに行くのはダメです。事故だってだいぶ肩身狭いのに、下手したら会社の問題になります」
「……申し訳ありません」
視線を下げたまま謝る彼女――高那静。
ちゃんと話すのはこれが初めてだ。出来れば忘年会とかで話したかった。
しかし何故今まで変な噂もなかったはずの彼女が、あんな真似をしたのか。
転生者、というワードが頭をよぎるが、さすがに本人に聞くのも嫌だ。下手したら美夜が変な人と言われかねない。
「……えっと、とりあえず今回のことは向こうも気にしないでいただいてるみたいだし、もういいけど、これからは」
「――先輩、【メガネク】ってご存じですか」
突然挟まれた問いかけに、思わず言葉を詰まらせてしまった。
【メガネク】はネットでつけられたメガネゲームの略称である。『こんなネタゲーに略称が!?』『メガネクエストかな?』と友人たちが驚いていた。
というか、それを知っているというのは、やはり。
「知ってるんですね……そっか、やっぱり先輩は創ルートだったのか……」
「ちょっと待って」
そこは聞き捨てならない。美夜は誰かのルートに入った覚えもないし、入る気もない。
訂正しようとするが、静はキッと美夜を睨みつける。そして。
「先輩には悪いですけど、あたしはやり遂げなきゃならないんです……隠しルートを!」
今度こそ、美夜は動きを止めた。
「メガ・ネクスト・ラブ」は最初から説明欄に、ルートを提示してあった。
攻略者それぞれのハッピーエンドとトゥルーエンド、攻略失敗のお友達エンド、そしてお仕事エンドである。
しかし、攻略サイトが出来た時から、まことしやかに囁かれる噂があった。
メガネクには隠しルートがある、と。
序盤から中盤において六人のイベントシナリオがあまり被らないこと、途中まで複数人のルート選択を保持できたのを確認していたことから、【必須イベントだけ選んで六人全員を攻略出来るルート】があるのではないかと予想されたらしい。
攻略サイトでは初期、その隠しルート探しで大変盛り上がっていた。【好感度大量ゲットイベント】と【必須イベント】が異なるということもルート探しの最中に発見されていた。攻略班の情熱はすごい。……あっという間に鎮火したのだが。
つまり転生者の影は全部彼女ということか。
……「やり遂げなきゃ」ってどういうこと? イベント回避するだけの美夜でもストレスだったのに、今まで全必須イベント回収してたのこの子? 強制でも何でもないのにどうしてそんなことしてるの?
いや、そもそもあのルートは。
「え……っと、高那さん、攻略サイト読んだ……?」
「逆ハーらしいですね。そこは関係ないです! ちゃんとあたしは自分でたどり着きます!」
あ、この子読んでないわ。
ナナメ読みしたか、もしくは攻略班がたどり着く前に転生したかだ。そうでなければ……。
あまりのことに美夜が固まっているうちに、静がその場から去ろうとする。
「――いやいやいやいや」
慌ててもう一度静の腕を掴んだ。
「何ですか! 創には手を出すなって言うんですか!」
「いやだから私はゲームをする気はないのよ! そうじゃなくて」
「それならなおさら関係ないでしょ!」
「そっちは関係ないけど! さすがに後輩が【病院ルート】邁進してたら止めるよ!? そこで放置するほど冷酷じゃないよ私も!」
「――――えっ?」
美夜の言葉に、静は目を丸くした。




