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浜名瀬志乃の学び舎日誌  作者: 火乃香


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86/92

79話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

樹霧之介(きりのすけ)達はしばらく走り込みや素振りを続けていたが志乃(しの)の足の鱗が全て取れて志乃(しの)が動けるようになってからは本格的に武器の使い方を習っていた。

初めに言っていたとおり志乃(しの)は手加減なく樹霧之介(きりのすけ)達を叩き伏せる。

そしてあれからは惣領が関わっているような事件もなく、不気味なくらいに平和だった。

全員が武器を使っての戦闘スタイルが決まって戦えるようになるまでは。

ある日いつものように樹霧之介(きりのすけ)達は志乃(しの)の屋敷がある隠里(かくれざと)に入るが志乃(しの)の姿は無かった。

それでも志乃(しの)に何かあれば眠りにつくはずの管狐(くだぎつね)達は普通に屋敷内を飛び回っているし、ここは志乃(しの)の許可無しに入れないはずだ。

なので何処かにいないかと探すと樹霧之介(きりのすけ)は空の瓶を見つける。

几帳面でいつも整理されているのにそれだけ蓋も無く無造作に床に転がっているのを不思議に思いながらも近くの棚に置いて屋敷を探し、紐声環(ちゅうせいかん)を使ってみるがスマホと共に志乃(しの)の作業机の上に放置されていた。

そして、結局は志乃(しの)を見つける事ができずに樹霧之介(きりのすけ)の家で黒根(くろね)山姥(やまんば)も呼んで相談する。

黒根(くろね)志乃(しの)が消えたじゃと?」

(ほむら)「そんなに焦る事か?何処か出かけているだけだろ?」

(しずく)「だけど私達の修行があるからってこの時間いつもいたわよ。」

真琴(まこと)「それにスマホと紐声環(ちゅうせいかん)を置いて行ったのも気になるわ。」

山姥(やまんば)「誰か出て行くのを見たのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「見てないですね。」

黒根(くろね)「あいつはわしらが寝る時間とかも知っとる。見られずに出て行く事はできるじゃろ。今日屋敷に行っておかしな所はなかったか?」

茂蔵(もぞう)「特に無かったと思うぞ。」

風見(かざみ)「ワイも気づかなかったな。」

(しずく)「あんたは?何か美味しそうと思った物は無いの?」

(ほむら)「鱗の入った袋を見た時だけで他は思ってない。」

(しずく)「何で袋の中に鱗が入っているって知ってるの?あんた、まさか、、」

(ほむら)「中を見ただけでそれ以上は触ってない!」

黒根(くろね)「他に何か気づいた奴はおらんか?」

樹霧之介(きりのすけ)「あ、そう言えば瓶が1つ転がってました。」

黒根(くろね)「瓶?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。いつも整理している志乃(しの)さんが珍しいと思って、棚の上に置いておきました。」

黒根(くろね)「確かにあいつにしては珍しいな。」

???「やっぱり我慢できない!」

そう言うと1匹の管狐(くだぎつね)樹霧之介(きりのすけ)の家に置いてある竹筒の中から飛び出した。

黒根(くろね)「お主、12号か?どうした。」

管狐(くだぎつね)「ご主人、僕達置いて出て行ったんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「それは何故ですか?」

話を続けようとした時もう1匹の管狐(くだぎつね)が出て来てキューキューと鳴き最初に出て来た管狐(くだぎつね)を戻そうとしている。

管狐(くだぎつね)「ヤダヤダ、戻りたくない。そんな事言っても母さんだって納得してないじゃないか。」

それに後から来た管狐(くだぎつね)はキューキューと鳴くだけだが管狐(くだぎつね)同士会話はできているらしい。

管狐(くだぎつね)「ご主人が戻って来なくても良いの?」

後から来た管狐(くだぎつね)は少し迷いながらキューキュー鳴いている。

管狐(くだぎつね)「もうご主人じゃない?なら何でまだ命令聞いてるのさ。」

後から来た管狐(くだぎつね)は必死にキューキューと鳴いている。

管狐(くだぎつね)「命令じゃなくてお願いだったとしても僕は聞けない。聞きたくない!」

後から来た管狐(くだぎつね)はキューと少し悲しそうな声を出して竹筒に戻って行った。

樹霧之介(きりのすけ)「すみません。今の話だとまるで志乃(しの)さんがあなた達、管狐(くだぎつね)との式神の契約を解除したように聞こえました。」

管狐(くだぎつね)「そうだよ。ご主人、もうご主人じゃないかもしれないけど僕達の契約解いてしばらくは屋敷で普通に過ごすようにって言って何処か行っちゃったんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「それって只事じゃないですよね。何処に行ったか分かりませんか?」

管狐(くだぎつね)「行き先は教えてくれなかった。」

黒根(くろね)「お主、契約解除されても何故言葉を話せるんじゃ?」

管狐(くだぎつね)「契約無くても契約して手に入れた特殊能力はそのままみたいだよ。」

黒根(くろね)「お主、喋れたのか。」

管狐(くだぎつね)「僕が喋れるようになったのはご主人が解呪を終わらせた時だよ。だけどすぐに喋らないようにって言われたんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「それっていつですか?」

管狐(くだぎつね)「えっと、そこのお婆ちゃんと会ってすぐだったよ。」

樹霧之介(きりのすけ)山姥(やまんば)さんの事?」

管狐(くだぎつね)「そうそう。」

山姥(やまんば)「他には何かしてなかったか?」

管狐(くだぎつね)「他って?ご主人はいつも何かしてたよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「じゃあ、あの瓶に入っていた物とか分かりませんか?」

管狐(くだぎつね)「瓶?ご主人が最後に触ってたやつかな?」

樹霧之介(きりのすけ)「多分それです。」

管狐(くだぎつね)「分からないけど何か赤っぽい玉が入っていたよ。持って行っちゃったけど。」

樹霧之介(きりのすけ)「赤い玉?それ、どうしてました?」

管狐(くだぎつね)「確か呑み込んでた。その時のご主人悲しそうだったな。」

黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)、その瓶今すぐ持って来てくれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい!」

管狐(くだぎつね)「あの瓶欲しいの?持って来るよ。」

そう言って管狐(くだぎつね)は竹筒に入るとしばらくして瓶を持って戻って来る。

管狐(くだぎつね)「これだよね。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうです。ありがとうございます。(ほむら)、これに惣領の気配は感じますか?」

樹霧之介(きりのすけ)管狐(くだぎつね)から瓶を受け取り(ほむら)に渡すと(ほむら)は瓶を観察し、匂いを嗅いだりしている。

(ほむら)「美味しそうとは思わない。けど、少し血の匂いがする。」

山姥(やまんば)「血?あいつ呪術でもしていたのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「何にせよ良い事をしようとしているとは思えません。探しましょう。」

風見(かざみ)「どうやってだ?」

樹霧之介(きりのすけ)(ほむら)、惣領の場所探せませんか?」

黒根(くろね)「確かにあやつが行きそうなのはそこじゃろうが、あやつも場所は分からないと言っておったぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですが、、」

(ほむら)「それに俺、近づかないと分からない。」

樹霧之介(きりのすけ)「僕は、何もできないんですか?」

管狐(くだぎつね)「ご主人探してくれるの?なら僕大体の場所分かるよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「え?」

真琴(まこと)「そう言えば12号って浜名瀬(はまなせ)さんを探すのは得意なんだっけ?」

黒根(くろね)「じゃがそれは契約していたからじゃないのか?」

管狐(くだぎつね)「契約無くなってから少し分かりづらいけど方向は分かるよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「なら近くまで行けますか?」

管狐(くだぎつね)「うん。付いて来るなって言われてるけど今はご主人、ご主人じゃないから別にいいよね。こっち!」

樹霧之介(きりのすけ)「お願いします。あ、山姥(やまんば)さんも来ますか?」

山姥(やまんば)「私は待っている。この前の事で分かった。今の私は足手纏いになるだけだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりました。」

黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)を見つけたらすぐに帰って来るんじゃぞ。無理に倒そうとかは思わんでいい。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。そのつもりです。」

黒根(くろね)「それと準備は怠るな。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

樹霧之介(きりのすけ)達は志乃(しの)を探す為に動き出す。

一方で樹霧之介(きりのすけ)達が志乃(しの)の屋敷に行く少し前、志乃(しの)磯撫(いそな)での祠がある洞窟近くの海岸に来ていた。

そこには惣領の分身体であるぬっぺふほふもいる。

惣領「やっと来たか、待ちくたびれたぞ。」

志乃(しの)「いつから待っていたかは知らないがお前の体が限界を迎えそうな事は本当だろうな。」

惣領「我の体を心配してくれるのか?」

志乃(しの)「お前がどうなろうとも私には関係ない。」

惣領「悲しいがそうだろうな。お前が心配しているのは我の体が崩壊し、全国にばら撒かれる事。そしてその肉片には様々な呪いが掛かっている。それを妖怪が取り込めば暴れ、魚が食べればその魚を食べた者が呪われる。この国は混乱の世を迎えるのだ。」

志乃(しの)「そうなるくらいなら利用されてやる。」

惣領「良い心掛けだ。」

志乃(しの)「、、さっさと、連れて行け。」

惣領「言われずともそうする。」

惣領が合図をすると海から魚頭の出来損ないが2体現れ志乃(しの)の両肩を掴んで海の底へと運んで行くが志乃(しの)は息ができずに途中で意識を失ってしまった。

志乃(しの)が起きるとそこは岩をくり抜いたような四角い空間だった。

志乃(しの)はその部屋の中央にある岩でできた台に寝かされ、服も持っていた道具も無くなり代わりに一枚の布がかけられていた。

そして起きた志乃(しの)が真っ先に気付いたのは部屋に充満する匂いだった。

これまで一番強く志乃(しの)が食べた人魚と同じ匂いを感じて気分が悪くなる。

周りを見渡すと近くに惣領の分身が立っているが微動だにしない。

惣領「起きたか。」

その声は分身の方からではなかった。

分身の他に人影はないが声の方を向くと一面だけ色が違う不格好な壁があり、声はそこから聞こえたのだ。

よく見るとその壁は岩ではなく肉塊だった。

惣領の体は肥大し、部屋の大半を埋めて壁のようになっていたのだ。

顔や手足がどこにあるかも分からないただの生きた肉塊は話を続ける。

惣領「驚いたか?呪いは我を不死にしたが肉体は膨れ続け、我にも制御できなかった。だが海にいる時だけは静まり遅くなる。」

志乃(しの)「だからこんな所にいたのか。」

惣領「他にも聞きたいことはあるか?」

志乃(しの)「教えてくれるのか?」

惣領「お前と会話できるのも最後だろうからな。」

志乃(しの)「そうか、だが聞くことは、無い。」

志乃(しの)は岩台に座り静かに肉壁を見つめるが握ったその拳は少し震えていた。

惣領「そんな顔をするな。お前は我の可愛い又姪だからこそ、苦しみは最小限にしてやろう。」

分身が操り人形のように何処かぎこちない動きで志乃(しの)の目の前まで来ると手を伸ばす。

惣領「口を開けろ。」

志乃(しの)がゆっくりと口を開けると分身が志乃(しの)の口の中に手を入れる。

志乃(しの)「ウグッ。」

ぐにゃっとした感触と異臭が口に広がり、それが喉の奥まで入り込む。

気持ち悪さを我慢していると分身は小さくなって志乃(しの)に吸い込まれていった。

分身が無くなると志乃(しの)は苦しそうに岩台の上に横たわる。

惣領「まだ拒むか。」

志乃(しの)「違う、私は、、」

惣領「まあよい。心の奥底で拒み続ける感情が残っておるのだろう。」

体内で何かが蠢くような気持ち悪さと足の方から伝わる痛みで志乃(しの)の顔は歪み、呼吸は乱れている。

惣領「苦しみは最小限だと約束した。呪いが馴染むまで眠っていろ。」

志乃(しの)「何を、、」

惣領「清埜(きよの)の名、我が名に伏し、言に従え。」

志乃(しの)「ウ、、」

惣領「眠れ。深く、痛みの届かぬ底まで沈むのだ。」

志乃(しの)「...。」

志乃(しの)が抗う事なく眠りについたその頃、樹霧之介(きりのすけ)達はそれぞれ武器を持ち、準備をして海岸まで来ていた。

樹霧之介(きりのすけ)「ここに志乃(しの)さんがいるんですか?」

管狐(くだぎつね)「ううん。もっとあっち。」

管狐(くだぎつね)は沖の方を向く。

真琴(まこと)「外国にでもいるの?」

管狐(くだぎつね)「分からない。だけど下の方だと思う。」

樹霧之介(きりのすけ)「もしかして海の中ですか?」

(ほむら)「そんな所どうやって行くんだよ。」

(しずく)真琴(まこと)の船で途中まで行って泳げるもので潜るしか無いわよね。」

樹霧之介(きりのすけ)「問題は深さですよね。」

茂蔵(もぞう)「おいらなら変化すればある程度潜れる。先に見てくるか?」

樹霧之介(きりのすけ)「1人で大丈夫ですか?」

茂蔵(もぞう)紐声環(ちゅうせいかん)もあるし、偵察だけだ。1人で危険な場所には近づかない。」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりました。」

(ほむら)「なあ、志乃(しの)の場所はそいつが分かるんだろ。なら俺は陸で待っていたい。」

(しずく)「水苦手な事知っているけどそれは勝手じゃない?」

(ほむら)「分かっている。だけど、、」

樹霧之介(きりのすけ)「理由があるんですよね。」

(ほむら)は黙って頷く。

樹霧之介(きりのすけ)「聞かせてください。」

(ほむら)「俺、初めて来た時、魚の石が美味しそうだって思ったんだ。俺が美味しそうと思った物は惣領が関わっているんだろ。」

(しずく)「そう言えばそうだったわね。」

(ほむら)「だから調べたい。どちらにしろ水の中じゃ俺は役に立たない。だから俺に出来る事をしたいんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「分かりました。なら海と陸で二手に別れましょう。」

(しずく)「いいの?」

樹霧之介(きりのすけ)「どちらにしろ潜れるものは限られます。なら無駄に時間を使うよりその方が効率は良いです。」

真琴(まこと)「ならどう分ける?」

樹霧之介(きりのすけ)「3人ずつで分けましょう。船を作る真琴(まこと)と偵察の茂蔵(もぞう)は海側で良いですか?」

茂蔵(もぞう)「初めからそのつもりだ。」

真琴(まこと)「私も良いわ。」

樹霧之介(きりのすけ)「陸側は(ほむら)と、、」

(しずく)「ねえ、私も陸で(ほむら)と調査させてくれない?」

茂蔵(もぞう)「それだと潜れる奴がいなくなっちまう。」

(しずく)「、、そうよね。」

樹霧之介(きりのすけ)「いえ、(しずく)(ほむら)と行ってください。海には僕が潜ります。」

風見(かざみ)「待て待て、木霊(こだま)は浮いて潜れないんじゃなかったか?」

茂蔵(もぞう)「おいらが引っ張っても良いが、浮力が高いと難しいぞ。」

(しずく)「無理は駄目よ。私が潜るわ。」

樹霧之介(きりのすけ)「大丈夫です。それに(ほむら)を制御できるのは(しずく)でないと。」

(しずく)「本当に良いの?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。実は沖縄でキジムナーに泳ぎを教わったんです。」

(しずく)「そうなの?」

茂蔵(もぞう)「自信あるんだな。ならおいらも全力で手伝うぜ。こっちは大丈夫だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「ええ、お願いします。なので海側は真琴(まこと)茂蔵(もぞう)と僕、陸側は(ほむら)(しずく)風見(かざみ)にお願いします。」

(しずく)「分かったわ。」

(ほむら)「任せろ。」

風見(かざみ)「ワイも頑張るで。」

管狐(くだぎつね)「僕は?」

樹霧之介(きりのすけ)「12号は僕らと来てください。」

管狐(くだぎつね)「分かった。」

役割を決めて海側の4名は真琴(まこと)の船に乗って沖へ向かい、陸を探索する3名は祠のある洞窟へと向かった。

洞窟は丁度引き潮だった事もあってすぐに入る事ができた。

洞窟に入ると(ほむら)は早速クンクンと匂いを嗅ぐ。

(ほむら)「前よりも美味しそうな感じが強い気がする。」

そう言って(ほむら)は洞窟の奥へと入って行く。

(しずく)「ちょっと、気を付けてよね。前みたいになるのは嫌よ。」

(ほむら)「祠は志乃(しの)が札を剥がしてくれただろ。もう何もないんじゃないのか?」

(しずく)「祠はそれでいいかもしれないけど、他に何かあるかもしれないでしょ。」

(ほむら)「怖いのか?」

(しずく)「そんな事ないわ。あんたが心配なのよ。」

(ほむら)「平気だって。」

そう言ってずんずん進む(ほむら)(しずく)風見(かざみ)は付いて行く。

そして祠の横を何事もなく通り過ぎた。

(しずく)「祠通り過ぎたわよ。」

(ほむら)「前は(しずく)の事しか考えてなくて気づかなかったけど美味しそうな感じ、この奥の方にある。」

(しずく)「奥?」

そして(ほむら)達は洞窟の最奥へ辿り着くが暗くて見にくかったので(ほむら)が炎を出して明るくするとそこには片腕の無い魚頭の出来損ないがいた。

風見(かざみ)「おい、こいつって前に茂蔵(もぞう)が言っていた出来損ないって奴じゃないのか?」

(しずく)「何でこんな所に。」

(ほむら)「生きてんのか?こいつ。」

(ほむら)は石を投げつけて反応を見ようとしている。

(しずく)「止めなさいよ。起きたらどうするの。」

(ほむら)「ならどうするんだ?」

(しずく)樹霧之介(きりのすけ)は、今は駄目よね。樹霧之介(きりのすけ)のお父さんの方に連絡しましょう。」

???「何だ、、」

(しずく)紐声環(ちゅうせいかん)を使おうとした時、声が聞こえる。

(しずく)「ほら、あんたが余計な事したから起きたじゃない。」

???「誰だ、お前ら、、」

(ほむら)「お前出来損ないだろ。何でこんな所にいるんだ?」

???「出来損ない?出来損ないだと!お前、船長であるこのわしが出来損ないだと言ったのか!」

(しずく)「どういう事?」

???「、、ああ。思い出した。わしの船はいつも通り漁に出たんだ。波は穏やかだったのに急に船は沈んだ。前触れもなくだ。」

(しずく)「あなたは何なの?」

???「そう言うお前は誰だ。」

(しずく)「私は、、」

???「よく見たら釜が立っている。何だお前ら。あいつの仲間か?もうお前らの言う事なんか聞かないぞ。俺に何をした!何をさせた!思い出したんだ。わしは、わしは、、」

そう言って出来損ないは頭を抱えて混乱しているようだ。

(しずく)が近付こうとしても手を振り回し近付かせないようにする。

(しずく)「落ち着いてください。私は(しずく)と言います。あなたの名前を教えてください。」

(ほむら)「そんな事よりもあいつの場所知っているんだろ。聞き出そうぜ。」

(しずく)「あんたは黙ってなさい!」

???「お前ら、本当にあいつとの仲間じゃないのか?」

(しずく)「ええ。」

風見(かざみ)「それどころかワイらの仲間が捕まっている可能性があるんだ。だから知っている事を話してくれないか?」

???「、、わしは、源吉(げんきち)という。漁師をしていて船が急に波に呑み込まれた。起きたら人工的に彫られたような岩の部屋にいた。そこで肉の塊が話しかけてきた。わしらは魚人間に囲まれていて最初に一番若い奴が反発したんだ。そしたら魚人間は喋る肉塊から肉をひと掴み取ってそいつの口へ入れた。そしたら赤黒い液体が噴出して溶けたんだ。わしらは逃げようとしたが魚人間に捕まった。そいつらの力は強くて逃げられず次々と口に肉を放り込まれた。ある者は最初の若者と同じように溶け、ある者は異様な姿になった。わしは体から鱗が生え、それから自分で体が動かせなくなった。だがしてきたことは覚えている。まずは部屋を片付けた。船員だったものをあの肉に食わせ、子供か人魚を探す様に命じられた。」

(ほむら)「なら何でこんな所で寝ていたんだ?」

(しずく)「黙ってなさいって言ったでしょ。」

(ほむら)「だけど気になるだろ。」

(しずく)「そうだけど、、」

源吉(げんきち)「洞窟の中に祠を見つけたら人魚が封印されている可能性があるとして祠の札を剥がした。そしたらデカいサメが飛び出してわしを食いちぎった。それから覚えていない。」

(しずく)「だから腕が無いの?」

源吉(げんきち)「サメはわしの腹に食いつき真っ二つにした。あれからどんな怪我をしても再生する体になっちまったから下半身がここに飛ばされ、再生したんだろう。、、わしは本当に化け物になっちまったんだな。」

(ほむら)「怪我が治ったら化け物なのか?」

(しずく)「ちょ。」

源吉(げんきち)「多少の怪我は治ってもおかしくはないが死んで生き返れば化け物だろ。」

(ほむら)「なら志乃(しの)も化け物なのか?」

源吉(げんきち)志乃(しの)?誰だそれは。」

(しずく)「止めなさい。この人は浜名瀬(はまなせ)さんを知らないんだから。そんな意味で言ったわけじゃないでしょ。」

(ほむら)「うん、、」

源吉(げんきち)「わし以外にもいるのか?」

(しずく)「あなたとは少し違うけど私達の仲間に不死身の人がいるの。」

風見(かざみ)「そいつが今捕まっているかもしれないんだ。その肉の塊がいた場所ってのを教えてくれないか?」

源吉(げんきち)「不死身の人、わしみたいな奴なのか?」

(ほむら)「お前とは違ってちゃんと人の姿だ。人魚の血が流れているからな。」

(しずく)「あんたは黙りなさい!」

源吉(げんきち)「人魚だと!そいつが捕まっているのか?ならヤバいぞ。」

風見(かざみ)「何がだ?」

源吉(げんきち)「あいつが人魚探しに躍起になっているのはあいつの体が限界だからだ。このまま何もしなければあいつは死ぬ。わしはそれを待っていた。それなのに今人魚を取り込めば完全に復活してしまう。」

(しずく)「他の仲間が助けに向かっているの。場所を教えて。」

源吉(げんきち)「あの悪夢を再び繰り返してはいけない。」

源吉(げんきち)の耳に(しずく)の声は聞こえてないようで一目散に走り出した。

いつの間にか満潮を迎えていたようで出口が塞がっていたが源吉(げんきち)は迷わず飛び込み泳いで行った。

(ほむら)(しずく)、追えないか?」

(しずく)「無茶言わないで、あんな速さを追えるわけないでしょ。それにこうなったのはあんたが余計な事を言ったからなのよ。」

(ほむら)「う。」

風見(かざみ)「それよりどうするんだ?ワイら出れなくなったぞ。」

(しずく)「とにかく今あった事を海に行った樹霧之介(きりのすけ)達に伝えましょう。」

(しずく)は泳げない真琴(まこと)が船の上で待機しているであろうと思い真琴(まこと)紐声環(ちゅうせいかん)へ繋げるとすぐに繋がった。

真琴(まこと)(しずく)?何かあった?」

管狐(くだぎつね)「それご主人も使ってた。声聞こえるやつ。」

管狐(くだぎつね)は最初海の中に入ろうとしたが毛が海水を吸って溺れそうになったので真琴(まこと)と船の上で待っていた。

(しずく)は祠のあった洞窟を(ほむら)の勘を頼って奥まで行ったら片腕の出来損ないを見つけた事、その出来損ないが人の記憶を覚えていて話せた事、そして志乃(しの)の事を聞いて泳いで行ってしまい、自分達は満潮で洞窟から出れない事を話した。

真琴(まこと)「分かったわ。その出来損ないの事は樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)には私から話しておく。そっちは大丈夫そう?」

(しずく)「ここ、結構広いし私達は次の引き潮を待てば大丈夫だとは思う。」

真琴(まこと)「何かあったら直ぐに連絡してね。」

(しずく)「そうさせてもらうわ。そっちも気を付けてね。」

真琴(まこと)「ええ。」

(しずく)「、、それで樹霧之介(きりのすけ)は大丈夫?」

真琴(まこと)「大丈夫って?」

(しずく)「泳げているの?」

真琴(まこと)「ええ、問題なく潜れているわ。」

その時ザブンという音と共に樹霧之介(きりのすけ)の声が聞こえた。

樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)、出来損ないを見つけました。今茂蔵(もぞう)に追ってもらっています。」

真琴(まこと)「それ、片腕だった?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。何で知っているんですか?」

(しずく)「忙しそうだから切るわね。」

真琴(まこと)「ええ。ありがとう、こっちも何かあったら連絡するわ。」

通話が切れて樹霧之介(きりのすけ)真琴(まこと)に質問する。

樹霧之介(きりのすけ)「今の(しずく)ですか?」

真琴(まこと)「そう、そこで色々あったみたい。」

真琴(まこと)(しずく)から聞いた事を樹霧之介(きりのすけ)にも伝えているとイルカに化けた茂蔵(もぞう)が上がってくる。

茂蔵(もぞう)「見つけた。出来損ない追っていったら海の底に空気のある空間があった。」

樹霧之介(きりのすけ)「どのくらいの深さですか?」

茂蔵(もぞう)「結構深いけどおいらなら樹霧之介(きりのすけ)の息が切れる前に連れていける。」

樹霧之介(きりのすけ)「行きましょう。」

真琴(まこと)樹霧之介(きりのすけ)、、」

樹霧之介(きりのすけ)「行ってきます。真琴(まこと)は待っていてください。」

真琴(まこと)「ええ。樹霧之介(きりのすけ)茂蔵(もぞう)も気を付けてね。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

茂蔵(もぞう)「行って来るぜ。」

樹霧之介(きりのすけ)は息を吸い込み茂蔵(もぞう)に掴まると茂蔵(もぞう)は凄い勢いで潜って行った。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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