80話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
茂蔵はイルカに化けて出来損ないを追って見つけた空気のある空間に辿り着く。
その茂蔵に掴まって樹霧之介もその空間に入った。
入った場所は岩でできていたが人工的に穴が掘られているようで、廊下のようになっている。
茂蔵「樹霧之介、大丈夫か?」
樹霧之介「はい。ありがとうございます。」
茂蔵「それにしてもすげえな。こんな穴掘ったのか?」
樹霧之介「どうやって掘ったんでしょうね。」
2人が廊下を静かに歩いていると急に大きな声が聞こえる。
源吉「うわぁー!止めろ、止め、、」
その声を聞いて2人は廊下の奥へと向かうとクチャクチャと肉の動く音やバキゴリと何かが折れるような砕かれるような音が聞こえる。
その音が聞こえる部屋の入り口を恐る恐る覗くと蠢く色の違う壁、その近くに落ちている銛、数人の出来損ないが見える。
そして樹霧之介が気になったのはその壁の近くにある岩台だった。
その台の上に誰かが寝ている。
そう思った樹霧之介はその部屋に入ってしまった。
茂蔵「おい、待てよ!出来損ないもいるんだぞ!」
茂蔵が止めるのも聞かずに樹霧之介が部屋に入ると一斉に出来損ない達が樹霧之介の方を向く。
生気のない見開かれた魚の目に見られ、樹霧之介は出入り口付近で止まり、樹霧之介の後ろに隠れながら茂蔵も中に入った。
惣領「お前らは、見たことあるな。」
茂蔵「か、壁が喋ったぞ。」
樹霧之介「志乃さんを返してください。」
惣領「志乃?知らぬ名だ。、、いや、待て思い出したぞ。清埜をそう呼ぶものがいたな。そうかお前ら、清埜を追って来たのだな。」
樹霧之介「そうです。」
惣領「清埜は己の意志でここへ来た。その覚悟を踏みにじるのか。」
樹霧之介「聞きましたよ。あなたの体は限界を迎えている。だから志乃さんを利用する為に何か細工をしたんですよね?」
惣領「細工などせぬ。ただ我が身が限界だと事実を述べただけだ。」
樹霧之介「何故それで志乃さんがあなたの元に来るんですか?」
惣領「信用せぬか。まあよい、それなら清埜の口から直接聞くがいい。」
出来損ないが動くと樹霧之介と茂蔵に1人ずつ近づき腕を掴んで志乃の寝ている岩台の近くに運ぶ。
志乃は岩台の上で頭だけが見えるように布が掛けられていた。
だがその布は腹部を中心に血で汚れている。
樹霧之介「この血、、」
惣領「それは我が意志ではない。制御を失った出来損ないが暴れ、銛を突き刺したのだ。」
樹霧之介「志乃さん無事ですか?起きてください。」
樹霧之介が声を掛けるが志乃はピクリともしない。
惣領「慌てるな。清埜、目を開けよ。」
志乃「ウ、、」
惣領の声で志乃は目を開ける前に顔を伏せて咳き込むと赤黒いデコボコした胡桃大の石のような物を吐き出す。
惣領「ふむ、呪いは完全に馴染んだようだな。」
志乃「もう、時間か、、」
惣領「そうだ、だがその前にお前に客だ。お前の口で説明せよ。」
志乃「説明?」
咳き込むときに伏せた顔を上げると樹霧之介と茂蔵が出来損ないに掴まれているのが目に入る。
樹霧之介「志乃さん。」
志乃「何でお前らがここにいる。樹霧之介、お前は潜れないはずだろ。」
樹霧之介「修学旅行の時にキジムナーから教わりました。それよりも何で黙って消えたんですか?」
志乃「止められるからに決まってるだろ。」
樹霧之介「本当にここに来たのは志乃さんの意思なんですか?」
志乃「、、そうだ。」
樹霧之介「なぜですか!?放っておけばいなくなる人の元に何で、わざわざ、、」
志乃「どこで知ったか知らないがそれを待てば地上は混乱に陥るんだぞ。」
樹霧之介「どういうことですか?」
志乃「こいつの中には様々な呪いがある。700年以上集め続けた呪いがだ。」
樹霧之介「本体が無くなれば呪いも消えるはずですよね。」
志乃「こいつの不完全な不死の呪いはその肉を残すだろう。その肉が別の肉体に入ればその肉体を本体としそいつを呪う。こいつみたいな奴が増えるんだ。」
茂蔵「人が肉塊に変わるのか?」
志乃「そうだ。そうなるのであればこいつの呪いを完成させた方がいい。」
樹霧之介「海にばら撒かれても食べる人間なんていません。」
志乃「魚がそれを食べてその魚を人が食べる。そうして呪いは連鎖する。それに妖怪が呪われれば凶暴化するだろう。」
樹霧之介「どちらにしろこいつは戦争を起こして多くの人が犠牲になります。」
志乃「、、そうなったら、頼むよ。」
志乃は諦めたような悲しそうな笑顔で樹霧之介に微笑む。
樹霧之介「嫌です!志乃さんが犠牲にならない方法は絶対あります。諦めないでください!」
志乃「もう、遅いんだ。」
志乃は布越しに自分の体を見つめる。
柚子「あなた、前に話してくれたわよね。私はあの2人みたいになれるのか?って。あなたの夫と息子はどちらもあなたに見守られて亡くなった。決してそんな化け物に食べられて死んだわけじゃない。ここまで来て諦めるの?」
志乃「っ!柚、、これ以上、私の決意を揺らがせないで、、」
柚子「やっぱり、望んでないんじゃない!あなたがどんな姿だって受け入れるわよ。だから、、」
志乃「違う!お前らが外見で判断しない事くらい知ってる。」
柚子「なら何で、、」
志乃「どちらにしろこんな足では移動もできない。」
樹霧之介「そのくらい僕が運びます。」
志乃「その小さな体でか?」
柚子「あなた、そんな事言う人間じゃないでしょ。」
樹霧之介「狸達の時と同じように自分を悪者にしようとしても無駄ですよ。」
茂蔵「それにおいらなら変化すれば運べる。そのくらいで諦めるなんてお前らしくないぞ。」
志乃は俯いて黙り込んでしまう。
樹霧之介「志乃さんは呪いがばら撒かれないようにここに来たんですよね?他に方法は無いんですか?」
志乃「...。」
樹霧之介「僕達に、できる事は無いんですか?」
志乃「もう、私の事は忘れて帰ってくれ。」
樹霧之介「できません!帰るなら志乃さんも一緒です。」
志乃「止めてくれ。」
惣領「もうよいだろう。清埜の言葉で諦めると思うたが我の邪魔となるなら消すしかあるまい。」
2人を掴んでいる出来損ないは志乃から離すと2人の両手を後ろに回し、銛を持った出来損ないが銛を胸に当てる。
樹霧之介「...。」
茂蔵「おわわ。離せ!」
志乃「止めろ!仲間に手を出すな。」
惣領「今から我の糧となるお前が気にする必要はない。やれ。」
惣領の掛け声で銛を突き刺そうとした出来損ないの頭に水の槍が刺さり倒れた。
惣領「ほう、やはり我が血筋だ。起きてすぐにその体を使いこなすか。」
その槍は志乃が放った物だった。
志乃は人魚となり霊力は無くなったが代わりに水を操れるようになったのだ。
志乃は続けて水の槍を2人を掴んでいる出来損ないの頭にも当てて2人を解放するが相手は不死身に近い出来損ない。
最初に倒れた出来損ないは既に動き始めていた。
それを見て樹霧之介は腰に付けた木の棒を伸ばして構え、出来損ないの攻撃を受け流すと相手の武器を叩き落として腕を絡めて背後に回り木の棒を操ってその腕を拘束する。
最後に転ばして足も拘束すればその出来損ないは動けなくなった。
茂蔵も変化で体を大きくすると喧嘩煙管で向かって来た出来損ないを叩き伏せる。
茂蔵が叩き伏せた出来損ないの傷はすぐに治り、また向かってくるが動けない間に樹霧之介が拘束し、部屋にいた出来損ない全員を行動不能にさせた。
惣領「やるではないか。だが甘いな。」
その言葉と同時に肉壁が動き、大きな手のようなものが2本生えて樹霧之介と茂蔵に掴み掛かってきたので応戦しようとしたがその手に触られた途端、樹霧之介は木の棒を操作できなくなり、茂蔵の変化が解かれる。
木を操ったり変化ができなくても戦うことはできるが目の前に伸びる手は大きく、圧倒的な物量の差があり2人は逃げる事しかできない。
しかも狭い部屋では逃げ場はなく、2人は部屋の隅に追い詰められる。
2人が手に掴まれそうになった時、志乃が水の壁を張って2人を守る。
しかもそれは妖力で張った物だったが惣領が触っても消える事は無かった。
惣領「小癪な真似をする。」
志乃「伊達に陰陽師として生きてきたわけじゃない。」
一度に霊力で妖術を打ち消せる数は決まっている。
なので志乃は無数の水の粒を壁にし、消された所から直ぐに補充していた。
時間をかければ突破されるだろうが志乃が張った壁の水の粒は細かく幾重にも重なっているため時間は掛かるだろう。
惣領「こんな真似をして、妖力が持つと思うのか。」
志乃「仲間を守れないなら消えた方がいい。」
惣領「それは我も困る。言霊でねじ伏せても良いがこのままでは抵抗され、そのまま消えかねんな。」
惣領が手を引くと水の壁も消える。
志乃も相当無理をしていたようで息を切らして倒れこむ。
志乃「お前が私の仲間を害するなら私は最後まで抵抗する。」
惣領「分かった、分かった。このようなものがいようとも、我が計画は揺るがぬ。見逃そう。」
樹霧之介「志乃さん!」
樹霧之介は木の棒を構えて立ち上がる。
惣領「我との力の差を知ってなお抗うか。今のお前は清埜が助けなければこの世にいなかったのだぞ。」
樹霧之介「それは、、」
惣領「まあいい。そこで己の無力を噛みしめ、我が復活を見届けよ。」
惣領が合図をすると出来損ない達が入って来て樹霧之介と茂蔵を取り囲む。
志乃「約束は!?」
惣領「危害は加えぬ。事が終われば地上へ返してやろう。」
肉壁から出た手は志乃を掴み持ち上げると布が落ちて志乃の尾鰭が露わになった。
それは青緑の鱗で覆われ海のように見える。
惣領「美しい。ついに我が望みが叶うのだな。」
樹霧之介「駄目です!」
志乃は樹霧之介の声を聞いて震える手を握りしめ、その方向を見て微笑みながら言う。
志乃「今までありがとう。」
柚子「駄目よ!あなたは不死身なんでしょ。またあの時みたいに、、あの時みたいに、またねって言ってよ!」
志乃は柚子が出てくると俯いて反対の方を向き、小さく呟く。
志乃「、、さようなら。」
直後に志乃の体は惣領の肉の塊に呑み込まれ、クチャクチャと肉の動く音やバキゴリと何かが砕けるような音が部屋中に響く。
樹霧之介も茂蔵も出来損ない達に抑え込まれて何もできずにその音をただ聞くしかなかった。
音が止みしばらくすると肉塊が動いて縮み、形を整え始める。
歪んだ肉の山が徐々に人の輪郭を描き出し、腕、脚、顔が現れる。
そこには白銀混じりの髪を持つ長身痩躯の男が裸で立っていた。
惣領「ふふ、ハハハ。幾年を費やし待ち望んだこの瞬間がついに訪れたのだ!」
樹霧之介はその場で泣き崩れ、茂蔵が寄り添っている。
そこに惣領は目を向けた。
惣領「清埜の最後の願いだ。抗わぬならば見逃してやる。去るがよい。」
2人の周りにいる出来損ない達は解散し、惣領も部屋を出て行った。
部屋に残された樹霧之介は塞ぎこんで動かない。
茂蔵「樹霧之介、、」
茂蔵はどう言葉を掛ければいいか分からずに出そうとしたいくつもの言葉を飲み込んだ。
樹霧之介「、、行きましょう。ここに居ても何もできません。」
茂蔵「お、おう、、」
来た時と同じように茂蔵がイルカに化けて樹霧之介はそれに掴まり海上に上がる。
そこでは船に乗った真琴が待っていた。
真琴「樹霧之介!茂蔵!」
樹霧之介「今、戻りました。」
真琴「、、12号が浜名瀬さんの気配が無くなったって泳げないのに海に飛び込もうと暴れて今大人しくなったところなの。その様子だと、やっぱり、、」
樹霧之介「すみません。僕は、何もできませんでした。」
茂蔵「樹霧之介のせいじゃない。」
樹霧之介「でも僕は、、」
真琴「一度陸へ上がろう。体も乾かさないと。」
樹霧之介達が海岸に戻ると祠の洞窟が少し見え始めていた。
茂蔵「雫達、大丈夫かな。」
樹霧之介「一度紐声環で連絡しましょう。こっちの事も伝えないと。」
真琴「、、急がなくてもいいわ。何かあればあっちから連絡してくるでしょ。」
樹霧之介「でも、、」
真琴「引き潮になったら出てくるわ。その間に一度落ち着きましょう。今のあなたで正確に伝えられる?」
樹霧之介「、、はい、そうします、、」
樹霧之介達は海岸で引き潮を待っていると洞窟から雫達が出てくる。
雫「真琴、樹霧之介達も帰っていたのね。」
焔「なあ、志乃は?見つかったのか?」
3人は駆け寄るが、落ち込む樹霧之介達を見て何かを察する。
雫「何があったか聞かせてくれる?」
樹霧之介「...。」
茂蔵「おいらが話そうか?」
焔「なあ、志乃は?」
雫「あんたは黙ってなさい。あの時も余計な事言ったから源吉さんが行ってしまったんでしょ。」
焔「う、、」
茂蔵「あいつは惣領に取り込まれた。」
雫「浜名瀬さんは惣領の体が限界だという事は知らなかったの?」
焔「そうだ。放っておけばいなくなっていたんだぞ。」
茂蔵「それが、そうなると人間が肉の塊になるらしいんだ。」
風見「どういう事だ?」
茂蔵「えっと、なんか惣領の体が妖怪や人間に入って呪われるらしい。」
雫「どういう事?」
樹霧之介「志乃さんが言うには惣領の不完全な不死の呪いは惣領の体が崩壊した後もその肉を残すんだそうです。それを魚が食べてそれをまた人が食べればその人は呪われる。そうならないために、惣領の呪いを完成させるために志乃さんは自ら取り込まれました。」
雫「他に方法は無かったの?」
茂蔵「樹霧之介もあいつにそれを聞いてたんだけどな。」
雫「無かったのね。」
風見「だけどそれなら惣領って奴は完全に復活したのか?」
樹霧之介「はい。人の姿になってどこか行きました。」
茂蔵「おいら達、手も足も出なくて仕方なく戻って来たんだ。」
雫「賢明な判断ね。」
焔「それならこれからどうするんだ?」
真琴「一度帰らない?」
樹霧之介「そうですね。父さん達とこれからの事を相談しましょう。」
樹霧之介達が立ち上がると上から羽音と声が聞こえる。
???「お前らに聞きたい事がある。」
真琴「誰?」
???「俺は玄羽という。お前らこの辺で魚頭の妖怪は見ていないか?」
雫「それを聞いてどうするの?」
樹霧之介「あなた、志乃さんと何か話していた烏天狗ですね。篁音さんとも知り合いですか?」
玄羽「おん?俺はお前を知らないが、、もしかしてあの時覗いていたのはお前か?」
樹霧之介「えっと、はい、、」
玄羽「まあ、あいつや母上と知り合いなら話が早い。烏がこの辺で出来損ないを見たと情報が入ってな。母上から確認して来いと言われたんだ。それで見ているか?」
樹霧之介「あ、はい。見ました。」
玄羽「何処行ったかは分かるか?」
樹霧之介「海の底にある拠点に入って行きました。」
玄羽「拠点を見つけたのか。それは何処だ?」
雫「ねえ、それ話しても良いの?」
樹霧之介「ですが僕達だけで解決できるものではありません。烏天狗の助力が得られればできることも増えるはずです。」
玄羽「何があったんだ?」
樹霧之介は志乃が消えた経緯から海の底での出来事を話した。
玄羽「、、だからこんな空気だったのか。母上に報告しないとな。」
樹霧之介「僕達は妖ノ郷へ戻っています。篁音さんなら場所は分かるはずです。」
玄羽「分かった。」
玄羽は飛び去り、樹霧之介達は妖ノ郷にある樹霧之介の家に戻り黒根と山姥に海であった事を報告する。
山姥「結局、あいつも両親と同じ事を選ぶか。」
黒根「志乃の事は分かった。今考えないといけないのは惣領が何処で何するかじゃな。」
樹霧之介「父さんは志乃さんがいなくなって平気なんですか?」
黒根「あいつが黙っていなくなった時に覚悟はしとった。昔からそうじゃ。1人で抱えて、1人で突っ込んで自分を犠牲にする。あいつの悪いところだ。」
その時、篁音と玄羽が扉を開けて入って来た。
篁音「志乃さんが取り込まれたって本当ですか!?」
そう叫んで入って来たが樹霧之介達の表情と雰囲気で察する。
篁音「こんな事すると分かっていれば無理してでも連れて行けば、なんて今更ですね。」
黒根「ああ、後悔するのは後にしてくれ。今は復活した惣領をどうするかを考えんといかん。」
篁音「そうですね。友人を2人も食べたあいつを野放しにはできません。惣領の姿を教えてください。探しましょう。」
茂蔵「それなら。」
茂蔵が自分が見た惣領の姿に化ける。
雫「ちょっと、何で裸なのよ。」
茂蔵「おいらが見たのがこれだったんだ。」
雫「それでも適当な服着なさい。」
茂蔵が雫に言われて化け直していると真琴のスマホが鳴った。
陽葵「あ、まこ姉。良かった通じた。」
真琴「陽葵どうしたの?」
陽葵「急ぎなのに浜名瀬さんに通じなくて、浜名瀬さんいる?」
真琴「あ、浜名瀬さんはいないわ。私でよければ聞くわよ。」
陽葵「えっと、今ニュースで町で騒いでいた男が急に消えたって話を聞いて、その男が浜名瀬さんの大叔父に似てたから確かめたくて。」
真琴「ん?浜名瀬さんの大叔父が町に現れて消えたの?」
樹霧之介「真琴、志乃さんの大叔父は惣領です。その話詳しく聞かせてください。」
真琴「え!?陽葵、その話樹霧之介達にも聞かせて良い?」
陽葵「うん、良いけど樹霧之介もいるの?」
真琴はスピーカーにして他のものにも聞こえるようにする。
真琴「うん。今その人を探しているの。」
陽葵「良いけど、その人本当に消えたんだよ。」
樹霧之介「順番にお願いできますか?」
陽葵「えっとね、ニュースでは海沿いの町に突如現れた男性が町の人達に話しかけて、それが高圧的で騒ぎ立ててたから警察が出動したの。そしたら途端に苦しみだして体から花が生えて花弁と共に消えたって。多分映像は何処かの動画サイトに載っていると思う。今結構話題だから。」
篁音「花、ですか。」
陽葵「え、今の声野々香のお母さんもいるの?」
篁音「あら、声だけで分かってくれるなんて嬉しいですね。」
陽葵「ねえ、何で浜名瀬さんだけいないの?」
真琴「今は用事があっていないだけよ。それで動画があるのよね。情報ありがとう、見てみるわ。」
陽葵「あ、それとね。私のお父さんが気になる事言ってたの。それで不安になって電話したんだ。」
真琴「気になる事って?」
陽葵「あのね。浜名瀬さん、行方不明だったお父さん探してくれたんだけど、その時に鬼から何か受け取っていたらしいの。」
真琴「何か?」
陽葵「お父さんが言うには瓶に入った花の種でなんか、血を吸わせるとか地獄に堕ちるとか不穏な事言っていたらしくて、今回の事件も花に関係していたから少し気になったんだけど、大丈夫だよね。」
焔「血の匂いのする瓶って、、」
雫「あんたは黙って!」
陽葵「何か心当たりがあるの?」
真琴「大丈夫よ。ありがとう、後はこっちで調べるわ。」
陽葵「、、うん。」
自分は邪魔になると思い陽葵はそのまま通話を切った。
茂蔵「なあ、何で陽葵はニュースの男が惣領だって分かったんだ?」
山姥「志乃が陽葵を助けに行って夢の中で会ったらしい。そいつが惣領だと思ったのなら間違いないだろう。」
真琴「その動画見つけたわ。さきに見てみましょう。」
篁音「そうですね。」
真琴が動画を再生するとそこには茂蔵が化けた男性と同じ男性が写っていた。
動画は誰がスマホで撮影していたらしく警察と揉めている様子で、写ってはいないが警察が何も無いのに倒れている事から出来損ないか操っている妖怪もいるのだろう。
しばらくそんな事が続いていると惣領は急に胸を押さえてふらふらと後ろに下がり、警察が近づこうとした時に大きな声を上げると胸から赤い彼岸花に似た大きな花が一輪咲いて花の咲いた場所から体が赤く染まったかと思うと花弁の形に剥がれ落ちていった。
そして剥がれた花弁は次々と消え、最後には何も残らなかった。
その場にいた全員が静かに動画を見ていて1番に口を開いたのは樹霧之介だった。
樹霧之介「もう遅いって、人魚になったからじゃなく、あの種を呑んだからだったんですね。」
黒根「初めから道連れにするつもりじゃったんじゃな。あいつらしいと言えばあいつらしいが、、」
焔「なあ、そうなると今地獄に志乃がいるのか?」
柚子「あの人はそんな悪い事はしていない。地獄に堕ちていい人じゃない。」
樹霧之介「志乃さんは地獄の入り口の入り口に行ったって言っていました。その方法が分かれば迎えに行けませんか?」
篁音「その後に道具は使い切りでもう無いとも言っていましたよ。」
樹霧之介「陽葵さんのお父さんも行っています。話を聞きに行きます。」
篁音「話の流れからその道具のせいで陽葵さんの父親は行方不明になっていたのですよね。そのような道具を志乃さんが残すとは思えません。」
樹霧之介「それでも、、」
黒根「樹霧之介、これは志乃が望んだ事だ。あいつはいつまでも続く生に苦しんでおった。どんな形であれ、あいつは、、望みを叶えたんじゃ。」
樹霧之介「だけど、あの時の志乃さんは、、」
柚子「もう、止めましょう。志乃は惣領の脅威を消してくれたの。」
茂蔵「おいら、こんな別れは嫌だぞ。そりゃあ、野生で生きていれば急な別れはある。だけど自ら地獄に行くなんて、救われないよ。」
焔「俺も納得できない。」
風見「ワイだってまだ聞きたい事がたくさんあるんだぞ。」
真琴「それに、陽葵には何て言えばいいの?浜名瀬さんがいなくなった事、いつまでも隠す事なんてできないわよ。」
黒根「そうは言われても、わしだって納得はしておらん。」
篁音「今のままでは考えはまとまりません。一度解散してそれぞれ整理しませんか?私も志乃さんが使ったという種の事を調べてみます。」
黒根「そうじゃ。一旦落ち着こう。な。」
それぞれの家へ一度帰る事にし、全員が帰宅した。
帰宅中誰も何も言わなかったが、妖ノ郷にはシトシトと雨が降っていた。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




