75話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃が川を下って行くと水虎達がいるのを見つけるが様子がおかしい。
水虎が数体、岩壁に開いた割れ目に集まって何か騒いでいて、志乃が近づくと水虎達は警戒する。
水虎1「誰だ?」
志乃「浜名瀬志乃という。川上の河童とは知り合いだ。」
水虎2「そう言えば前にあのデカい河童が気味の悪い妖怪を退治した人間がいると言っていた。確かその人間の名前も志乃だった。」
水虎1「なら尚更こちらには来てほしくない。」
水虎2「そうだな。帰ってくれ。」
志乃「何故だ?」
水虎3「お前には関係ない。」
その時割れ目から大きな虎の前足が出てきて集まっている水虎達に爪を伸ばして攻撃しようとし、前足が引っ込むと割れ目から苛立った虎の叫び声が聞こえる。
水虎は虎という字を使うが虎要素は頭の形と膝頭に掌爪の様な物が付いているくらいで、姿は3,4歳くらいの子供の大きさで硬い鱗が全身を覆っている妖怪だ。
それなのに割れ目から覗く完全に虎の姿をした妖怪からも水虎の妖気が感じられる。
おそらくあの玉を呑み込んだことにより虎の姿になってしまったんだろう。
志乃「それでもあいつをこのままにはできないだろ。」
水虎1「あれは俺達の仲間だ。殺すわけにはいかない。」
水虎3「こちらで対処する。お前は手を出すな。」
志乃「解決策はあるのか?」
水虎1「分からない。だがお前には関係ない。」
水虎2「昨日、変な玉を口に入れているところを見た。それからああなった。だから吐き出させる。」
志乃「どうやって?」
水虎2「い、今から考える。」
志乃は4号から丸薬の入った瓶を受け取る。
志乃「ここに吐剤がある。」
水虎1「本当か?」
水虎2「止めておけ。毒かもしれない。」
水虎3「お前の手は借りない。どこか行ってくれ。」
ここで無理矢理入っても水虎達と敵対してしまうだけだ。
呪いに掛かっている奴も姿が変わり大きくなったせいで岩の隙間から出てこれないのですぐにどうこうなるわけでもなさそうだ。
志乃は隠れて見ていようと思い後ろを向いた瞬間、岩が崩れて虎の姿の水虎が志乃に襲いかかる。
???「見つけたぞ。清埜。」
体は水虎のものだがその口からは惣領の声が聞こえる。
水虎1「おい。急にどうしたんだ?」
一方で志乃は水虎の前足で胸を押し付けられて起き上がることができない。
惣領「お前、我が印を封じたな。」
惣領が乗り移った水虎が顔を近づけて喋るので志乃は4号から吐剤を数個受け取り、口に放り込むと顎を思いっきり蹴り上げた。
惣領が乗り移った水虎は蹴られた事で薬を飲み込み、志乃を押さえる力も弱まったので志乃は前足から抜け出して距離を取る。
惣領「貴様ァ、、我に蹴りを入れるとは!」
惣領が乗り移った水虎は志乃に反撃されて怒りで力任せに突っ込んで来たので志乃はそれを避けながら時間を稼いでいると惣領が乗り移った水虎の口から涎が垂れてくる。
惣領「ウッ、グウゥッ。」
それから時間が経つと惣領が乗り移った水虎の動きが止まり、唸り声を上げながら気持ち悪そうにし出した。
水虎3「おい。大丈夫か?」
水虎2「やっぱりあれは毒だったのか?」
水虎1「だけど襲われたのならしかたないのではないか?」
惣領「ウゥ。」
惣領が乗り移った水虎が少し唸った後、口を開けて胃の中のものを外に吐き出し、その中にあの赤黒い玉もあった。
惣領「吐剤か小癪な。我は消える。だが呪いは消えぬ、、いずれ再び、お前を迎えに来よう。」
その言葉通り惣領の声は聞こえなくなったが、しばらくしても水虎の姿が戻る気配はない。
虎の姿の水虎はしばらく吐き続けていたがそれが落ち着くと心配して近付いた水虎達に向かって前足で横から凪払う。
それに当たった1人の水虎は飛ばされたが硬い鱗のおかげで怪我は無さそうですぐに起き上がっていた。
水虎3「何をする。俺らが分からないのか?」
虎の姿の水虎は咆哮を上げると暴れ出し、こちらに攻撃はしてこないが他の水虎達も近づく事ができなくなってしまった。
志乃は封呪符を貼った棒手裏剣を投げるが頑丈な皮膚はそのままで、棒手裏剣は跳ね返ってしまう。
水虎2「止めろ。暴れていても仲間だ。傷つけるな。」
志乃「傷つける意図はない。私にも手伝わせてくれ。」
水虎3「武器を投げてそれは信じられない。」
確かに刺さらなかったとはいえ、棒手裏剣を投げたのは早計だった。
だが近付かずに封呪符を当てるにはそうするしかない。
水虎1「だが、さっきの薬は本当に吐剤だった。こいつに嘘はない。」
水虎3「だがな。」
水虎1「俺達に出来る事は無い。頼ろう。」
水虎3「だが簡単には信じられない。」
志乃「邪魔さえしなければ1人でやる。」
水虎1「これは俺達の問題だ。全てを任せる事はできない。」
水虎2「そうだな。俺達は何をすればいい?」
水虎3「お前まで。」
志乃「解呪を試したい。近づきたいんだがあいつの動きを止められないか?」
水虎1「分かった。岩の隙間に追いこもう。」
志乃「それなら私が出入口を結界で塞いで出れないようにする。」
水虎3「勝手に話を進めるな。」
水虎2「あいつをこれ以上苦しめるのか?」
水虎3「...。」
水虎1「こっちだ。」
どう動くか考えている水虎をおいて、水虎の1人は虎姿の水虎の気を引くために既に動き出していた。
志乃は岩の隙間の周りに結界符を貼って結界をすぐに張れるようにそこで待機する。
虎姿の水虎は本能のままに動くものを追いかけるので、目の前で動く水虎を追いかけて岩の隙間に近付いていくが途中で転び、虎の姿の水虎の前足が迫るがその前に他の水虎が気を引き、今度はそっちが追いかけられる。
2人の水虎は代わる代わる誘導しようとするが、岩の隙間は狭く中に入ろうとはしない。
そして虎姿の水虎は1人の水虎を追いかけていたと思ったら身を翻し、油断しているもう一方の水虎に襲い掛かった。
襲い掛かられた水虎に虎の姿の水虎の前足がのしかかる。
硬い鱗のおかげで爪は刺さってないがこのままでは押しつぶされてしまうだろう。
志乃が助けに入ろうとした時、どう動くか考えていた水虎が岩の隙間に何かを投げ込むとカランと音が鳴り、それに釣られて岩の隙間に入って行く。
志乃は慌てて結界を張って出れないように閉じ込めるとそれに気づいた虎の姿の水虎は出せと言うように暴れ出し、その時にパキンと小さな音が聞こえた。
水虎1「良かったのか?あれはお前が大切にしていた物だろう?」
水虎3「別に、、」
志乃にはそれが何のことなのか分からなかったが自分の事を信じていなかった水虎が自分の大切な物を犠牲にしても作戦に加わってくれた事だけは分かったのでお礼を言う。
志乃「ありがとう。」
水虎3「仲間のためだ。あいつを楽にしてくれ。」
志乃「ああ。」
志乃は虎の姿の水虎が静かになるのを待ってから結界を潜って岩の隙間に入り、封呪符を使って呪いを消そうとするが奥深くまで呪いが進行しており中々祓えず姿が戻る事は無かった。
それでも自我が戻り始め、唸り声の中に言葉が混じる。
水虎4「だ、れ、、」
結界の外でその様子を見ていた他の水虎達が歓喜の声を上げる。
でも呪いが無くなったわけではないので気は抜けず、志乃は引き続き呪いを解こうとするが深く絡み合った呪いを解くことは難しい。
封印に切り替えても良いがいつ解けるか分からないものに頼るのは心もとなく、志乃は悩んでいた。
水虎4「もう、、傷つけたくない。戻れないなら。殺して。」
水虎1「諦めるな。」
水虎2「怪我はない。お前が気に病むな。」
水虎3「戻ったらまた遊ぼう。頑張れ。」
弱気な水虎を他の水虎が結界の外から励まし、それを見た志乃は1つ考えていた方法を試す事にした。
志乃は封呪符を片付けて両手を虎の姿の水虎に当てると自身の人魚の呪いを虎の姿の水虎に流して水虎に残る呪いを探る。
人魚の呪いも水虎の中にある呪いも元は同じ呪いなので一緒になろうとする性質を利用しようとしたのだ。
そして志乃の思惑通りに人魚の呪いが水虎の中にある呪いに触れると人魚の呪いに水虎の中にある呪いが吸い込まれる。
志乃が人魚の呪いを戻すと共に水虎の姿は戻るが痛みを感じるはずのない志乃の足に激痛が走り、そこを見てみると鱗が数枚生えていた。
それから結界の外で水虎達が心配する声が聞こえたので志乃は鱗を隠してから結界を解くとすぐに水虎達は呪いに掛かっていた水虎に駆け寄った。
志乃は痛みで立てず、岩壁にもたれ掛かろうと座ったまま移動すると割れたビー玉が手に当たる。
それは呪いで暴れていた水虎が割れ目に入る時に投げ入れられた物だった。
志乃が欠片の1つを拾い上げると水虎の1人が話しかける。
水虎3「それ。前に川から流れて来たから拾ったやつ。」
志乃「何で投げ入れたんだ?」
水虎3「あいつ、これ欲しがっていた。だから興味持つと思った。」
志乃「そうか。大切な物だったのか?」
水虎3「ただ綺麗だっただけ。」
水虎2「こいつ嘘つき。拾った時、皆に自慢してた。」
水虎1「そう、宝物にするって言ってた。」
水虎3「お前らうるさい。」
水虎4「ありがとう。」
水虎3「うるさい!」
仲良さげな水虎達を見て志乃はこれ以上惣領が何かする前に止めないといけないと再認識させられた。
だが、今の志乃ができることは1つしかない。
あれは最後の手段としてとっておきたい、使いたくはないと考えていると水虎が話しかけてくる。
水虎1「大丈夫か?」
志乃「何がだ?」
水虎1「座り込んで考え事してる。」
志乃「少し疲れただけだ。ここでもう少し休ませてもらってもいいか?」
仲間が呪いから解放された直後で、他の不安を与えたくない志乃は痛みを顔には出さないようにしていた。
水虎1「構わない。もし何かあれば言ってくれ。」
志乃「ありがとう。」
足の痛みが徐々に和らいでくると志乃は立ち上がり、その時にカラカラと軽い音がして地面に何かが落ちた。
それは志乃に生えていた鱗で、痛みが治まると共に鱗も剥がれ落ちたのだ。
水虎4「これなんだ?」
水虎の1人がその青緑色をした鱗を拾い上げて日の光に当てると海のようにキラキラと輝いている。
水虎4「俺達の鱗じゃない。」
水虎3「綺麗だ。欲しい。」
水虎4「俺が見つけた。」
水虎3「俺、お前に宝を壊された。」
そう喧嘩する2人を見てまだ落ちていた鱗を拾って差し出す。
水虎3「くれるのか?」
水虎4「もしかしてこれ、お前の鱗か?」
水虎3「人間にも鱗、あるのか?」
水虎2「そうなのか?」
水虎4「見せてくれ。」
志乃「人間に鱗は無い。」
水虎3「ならこれは何の鱗だ?」
正直に仲間の呪いを吸い取って自分の足にできたものだと説明しても信じはするだろうが呪いを吸い取ったという部分の説明が面倒くさい。
志乃は何と答えれば良いのか分からず黙ってしまった。
水虎1「恩人を困らせるな。」
水虎3「お前は興味ないのか?」
水虎1「知りたい。だけど、言いたくないなら聞かなくてもいい。」
水虎3「そうだな。すまなかった人間。」
志乃「分かってくれたのならいい。」
水虎3「これ、新しい宝にする。」
水虎4「俺もする。俺の方が大きい。」
水虎3「俺の方が綺麗だ。」
それぞれに持っていても喧嘩するのかと思いながら志乃は外に出て妖ノ郷への入り口へと向かう。
岩壁の割れ目から水虎達も出て来て手を振ってくれたので志乃も振り返し、妖ノ郷へと戻った。
妖ノ郷へ入ると丁度樹霧之介と黒根が妖ノ郷の巡回から帰って来ていて鉢合わせる。
黒根「なんじゃ。短刀取りに行くだけなのに時間が掛かったな。」
志乃「少し問題があってな。」
樹霧之介「短刀、できてなかったんですか?」
志乃「いや、それは大丈夫だ。」
志乃は9号に短刀を持って来てもらうと2人に見せる。
志乃「前よりも切れ味も上がって使いやすくなってる。」
黒根「うん?その切れ味はどこで試したんじゃ。」
志乃「え?まあ、、」
志乃は目を逸らす。
黒根「すぐ治るからと言ってあまり自分を傷つけるな。」
志乃「腕だけだ。」
樹霧之介「もしかして自分の腕、切ったんですか!?」
黒根「短刀を取りに行くと言った時点で樹霧之介をつけるべきじゃったな。」
志乃「昔もしていただろ。」
黒根「その時は痛みがあったから自重する事もあったが、無い今は躊躇なくするじゃろ。」
志乃「昔も自重した事はない。」
樹霧之介「余計に駄目じゃないですか!」
黒根「まったく、普通痛ければ本能的に避けるもんなんじゃがな。」
志乃「普通じゃないからな。」
黒根「そういう事を言いたいんじゃない。」
志乃「分かってる。」
黒根「何をカリカリしておるんじゃ。」
樹霧之介「ですが志乃さん。機嫌が悪いというより顔色悪くないですか?」
黒根「そうなのか?」
志乃「そんな事ない。」
黒根「こいつが体調悪いことなんて呪いにかかった時くらいじゃが、何かあったのか?」
志乃「別に。」
樹霧之介「山姥さんなら呪いの事分かりますよね。僕、呼んでくるので父さんは志乃さんを見張ってて下さい。」
そう言って樹霧之介は黒根を志乃に渡して走って行った。
志乃「黒丸が外出れないから呼びにいくのは分かるが、紐声環は使わないのか?」
黒根「まあ、良いじゃろ。それで何があったんじゃ?」
志乃「水虎が喧嘩していたからその仲裁をしただけだ。」
黒根「それだけか?」
志乃「それだけだ。樹霧之介は心配性だな。誰に似たんだか。」
黒根「お主が心配かけるような事をするからじゃろ。」
志乃「...。」
そんな事を話しているとすぐに樹霧之介が山姥を連れて走って来て、その頃には志乃の足の痛みも無くなっていた。
樹霧之介「ちゃんと待っていてくれたんですね。」
志乃「何もないからな。」
山姥「それで、お前は何をしたんだ?」
志乃「何もしてない。」
山姥「まあ、少し見せてもらうぞ。」
志乃「ああ。」
山姥は志乃の額に手を当てる。
山姥「、、特に変わりないな。」
樹霧之介「歩き方が変だと思ったんですが、、」
山姥「足か。見ても良いか?」
志乃「好きにしてくれ。」
山姥は志乃の袴を捲ってみる。
山姥「何もないな。」
志乃「心配し過ぎなんだよ。」
樹霧之介「違うのなら良いんです。山姥さんも付き合ってくれてありがとうございます。」
何も無いと分かっても樹霧之介はまだ怪訝な顔をしている。
山姥「いいさ。またあれば呼んでくれ。直接来なくても紐声環で呼んでくれればいい。」
樹霧之介「あ。」
黒根「その様子じゃと忘れておったな。」
樹霧之介「気づいてたのなら教えてくれても良かったじゃないですか。」
志乃「言う前に走って行ったのはお前だぞ。」
黒根「お主が心配かけるからじゃぞ。」
志乃「だから水虎達の仲裁をしただけだって。」
樹霧之介「何か揉めていたんですか?」
志乃「くだらない事だ。」
山姥「まあ、こいつが心配なのは分かるが何もないんだ。そこまで追求しなくていいんじゃないか?」
樹霧之介「そうですけど、、」
黒根「最近変な妖怪が増えていてより不安になっとるんじゃ。」
志乃「最近は私も手伝えてないからな。」
樹霧之介「それ自体は大丈夫です。真琴達も成長してますし、父さんも相談に乗ってくれてますから、志乃さんは修行に集中してください。」
志乃「悪いな。」
樹霧之介「いえ。僕は大丈夫です。」
黒根「心配をかける奴がもう少し大人しくしていればもっと良いんじゃがな。」
志乃「何で私だけなんだ。」
山姥「妖怪達が暴れている原因を作っている奴が狙っているのがお前だからだろ。」
志乃「まあ、私はそれを解決する方法を考える事に集中するよ。」
樹霧之介「はい。頑張ってください。」
志乃「樹霧之介も気を付けろよ。」
樹霧之介「はい。」
志乃が屋敷に戻ろうとすると山姥が声を掛けてくる。
山姥「志乃。昨日教えた術式なんだが、潮埜が改良したものがある事を思い出したんだ。」
志乃「そうなのか?」
山姥「ああ。帰って来たばかりで悪いが、今から来れるか?」
志乃「大丈夫だ。」
志乃と山姥が立ち去るとそこには1枚の青緑色をした鱗が落ちていた。
志乃の袴についていた鱗が山姥が捲った時に落ちたのだろう。
落ちた場所が土の上だったので音もなく、志乃も山姥も気付いては無かった。
樹霧之介はそれを拾って黒根と見てみる。
樹霧之介「なんの鱗でしょうか?」
黒根「見た事ないのう。水虎も鱗は生えているがもう少しくすんだ色じゃったはずじゃ。」
樹霧之介「この鱗は澄んでいて綺麗ですね。志乃さんに聞いたら分かりますかね?」
黒根「あいつは術の事を考えている間は何を話しても無駄じゃ。戻って来てからでいいじゃろう。」
樹霧之介「そうですね。」
樹霧之介はその鱗を紐声環の袋に入れて家へ帰った。
それから志乃は一晩中山姥と術を試していたみたいで帰ったのは朝だった。
帰ってすぐに寝た志乃がお昼頃に起きて屋敷で作業をしていると9号が志乃を呼びに来た。
樹霧之介が怪我をして帰っていたらしい。
志乃は慌てて樹霧之介の家に向かう。
ドアを開けるとそこには真琴達に囲まれ、中央に座る樹霧之介は思っていたよりも元気そうだった。
志乃「樹霧之介が怪我をしたと聞いたが大丈夫なのか?」
真琴「浜名瀬さん。怪我はそこまで深くはないわよ。」
志乃「何があったんだ?」
黒根「お主、自分の事は話そうとしないのにこちらの事は聞くんじゃな。」
志乃「言い難い事なら別にいいぞ。」
樹霧之介「父さん意地悪言わないでください。今回逃がしてしまったので志乃さんにも一応伝えておきましょう。」
黒根「そうじゃな。」
志乃「それより先に怪我の具合が気になる。」
真琴「それなら斬られたけど紐声環が盾になってくれたおかげでほとんど怪我はないわ。」
志乃「そうか。あれの中は金属だからな、良かった。」
樹霧之介「ですが外の布は斬られてしまいました。」
樹霧之介は斬られて中の金属が見えている紐声環を首から外す。
志乃「これなら私が直そう。話しを聞いている間に直るだろう。」
樹霧之介「助かります。」
志乃は9号に裁縫道具を持って来てもらって紐声環を直し始める。
志乃「それで何で樹霧之介は斬られたんだ?木の根で防げなかったのか?」
樹霧之介「それが、相手の姿が急に消えたんです。」
風見「ワイの探知も掻い潜ったんだ。」
志乃「どんな奴だったんだ?」
焔「骸骨だったぞ。」
雫「そうね。剣を持って布を纏っていたわ。」
志乃「狂骨とは違うのか?」
風見「妖気が全然違った。どちらかといえば鬼に似ていたぞ。」
志乃「鬼?鬼で姿を消して攻撃する奴はいるがちゃんと肉は付いている。」
樹霧之介「ですが見た目を変える物があるじゃないですか。」
風見「呪いの気配もしたから可能性は高いと思う。」
志乃「なら、隠形鬼か?」
樹霧之介「それはどんな妖怪なんですか?」
志乃「気配を消しての奇襲が得意な奴だ。」
風見「それでワイも分からなかったのか。」
志乃「ああ。お前達が逃がしてしまうのも分かる。だがあいつを追い詰めれるくらいに強くなったんだな。」
樹霧之介「あ、いえ。追い詰められたのは僕達の方です。」
志乃「どういう事だ?」
樹霧之介「僕達は防戦一方で、、」
茂蔵「樹霧之介に攻撃した後いなくなったんだ。」
志乃「その攻撃って、この紐声環が斬られた時か?」
樹霧之介「はい。」
志乃「勝てる勝負を放っていなくなったのか。」
真琴「浜名瀬さんにも理由分からないの?」
志乃「ああ。これだけではな。」
志乃は直しかけの紐声環を見つめる。
しばらくの沈黙の後樹霧之介は思い出したように話し出した。
樹霧之介「そう言えばその中に鱗を入れていました。」
志乃「鱗?」
樹霧之介「はい。昨日志乃さんが帰って来てその後いなくなった時に見つけたんです。」
黒根「あれか、確か澄んだ青緑色をしておったの。」
樹霧之介「今そこに入っていませんか?」
志乃「無い、な。」
黒根「お主がいた場所に落ちておったんじゃ。何の鱗か心当たりないか?」
心当たりがあるどころかその正体を志乃は知っている。
その事を話すかどうか、志乃は考える。
黒根「志乃。手が止まっておるぞ。知っておるんじゃな。」
志乃「あ、いや、、」
樹霧之介「もしかして無くしたら不味い物でした?」
志乃「無くなったこと自体は平気だ。ただ、、」
黒根「ただ、なんじゃ。はっきりせい。」
志乃は観念して昨日水虎の所であったことを話す。
痛みがあった事は話さなかったが、呪いを吸い取って鱗が生えた事は正直に話した。
黒根「お主、またそんな危険なことしおったんか!」
志乃「山姥に調べてもらった時何ともなかったんだ。今は私の中の呪いに完全に同化したから平気だ。」
樹霧之介「それでももし、同化しなかったら?呪いの効果が表れていたらどうしたんですか!」
志乃「その時は封印すればいい。」
樹霧之介「あの時、顔色悪かったの、気のせいじゃないですよね?何か副作用とか無かったんですか?」
志乃「足に鱗が生えただけだって。」
樹霧之介「それがもう異常なんですって!」
茂蔵「まあ、落ち着けって。今は何ともないって言っているんだし、終わり良ければ全て良しって言うじゃないか。」
樹霧之介「でも、、」
志乃「だから言いたくなかったんだ。」
黒根「お主はもう少し反省しろ!」
志乃「だがこうしなければ水虎に掛かった呪いは消えなかった。」
黒根「、、もうよい。」
真琴「だけど樹霧之介。まだ隠形鬼が消えた理由が分からないわよ。」
樹霧之介「隠形鬼の事はこちらで何とかしましょう。志乃さんは絶対に手を出さないでくださいね。」
志乃「分かったよ。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




