表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浜名瀬志乃の学び舎日誌  作者: 火乃香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/92

75話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

志乃(しの)が川を下って行くと水虎(すいこ)達がいるのを見つけるが様子がおかしい。

水虎(すいこ)が数体、岩壁に開いた割れ目に集まって何か騒いでいて、志乃(しの)が近づくと水虎(すいこ)達は警戒する。

水虎(すいこ)1「誰だ?」

志乃(しの)浜名瀬(はまなせ)志乃(しの)という。川上の河童(かっぱ)とは知り合いだ。」

水虎(すいこ)2「そう言えば前にあのデカい河童(かっぱ)が気味の悪い妖怪を退治した人間がいると言っていた。確かその人間の名前も志乃(しの)だった。」

水虎(すいこ)1「なら尚更こちらには来てほしくない。」

水虎(すいこ)2「そうだな。帰ってくれ。」

志乃(しの)「何故だ?」

水虎(すいこ)3「お前には関係ない。」

その時割れ目から大きな虎の前足が出てきて集まっている水虎(すいこ)達に爪を伸ばして攻撃しようとし、前足が引っ込むと割れ目から苛立った虎の叫び声が聞こえる。

水虎(すいこ)は虎という字を使うが虎要素は頭の形と膝頭に掌爪の様な物が付いているくらいで、姿は3,4歳くらいの子供の大きさで硬い鱗が全身を覆っている妖怪だ。

それなのに割れ目から覗く完全に虎の姿をした妖怪からも水虎(すいこ)の妖気が感じられる。

おそらくあの玉を呑み込んだことにより虎の姿になってしまったんだろう。

志乃(しの)「それでもあいつをこのままにはできないだろ。」

水虎(すいこ)1「あれは俺達の仲間だ。殺すわけにはいかない。」

水虎(すいこ)3「こちらで対処する。お前は手を出すな。」

志乃(しの)「解決策はあるのか?」

水虎(すいこ)1「分からない。だがお前には関係ない。」

水虎(すいこ)2「昨日、変な玉を口に入れているところを見た。それからああなった。だから吐き出させる。」

志乃(しの)「どうやって?」

水虎(すいこ)2「い、今から考える。」

志乃(しの)は4号から丸薬の入った瓶を受け取る。

志乃(しの)「ここに吐剤がある。」

水虎(すいこ)1「本当か?」

水虎(すいこ)2「止めておけ。毒かもしれない。」

水虎(すいこ)3「お前の手は借りない。どこか行ってくれ。」

ここで無理矢理入っても水虎(すいこ)達と敵対してしまうだけだ。

呪いに掛かっている奴も姿が変わり大きくなったせいで岩の隙間から出てこれないのですぐにどうこうなるわけでもなさそうだ。

志乃(しの)は隠れて見ていようと思い後ろを向いた瞬間、岩が崩れて虎の姿の水虎(すいこ)志乃(しの)に襲いかかる。

???「見つけたぞ。清埜(きよの)。」

体は水虎(すいこ)のものだがその口からは惣領の声が聞こえる。

水虎(すいこ)1「おい。急にどうしたんだ?」

一方で志乃(しの)水虎(すいこ)の前足で胸を押し付けられて起き上がることができない。

惣領「お前、我が印を封じたな。」

惣領が乗り移った水虎(すいこ)が顔を近づけて喋るので志乃(しの)は4号から吐剤を数個受け取り、口に放り込むと顎を思いっきり蹴り上げた。

惣領が乗り移った水虎(すいこ)は蹴られた事で薬を飲み込み、志乃(しの)を押さえる力も弱まったので志乃(しの)は前足から抜け出して距離を取る。

惣領「貴様ァ、、我に蹴りを入れるとは!」

惣領が乗り移った水虎(すいこ)志乃(しの)に反撃されて怒りで力任せに突っ込んで来たので志乃(しの)はそれを避けながら時間を稼いでいると惣領が乗り移った水虎(すいこ)の口から涎が垂れてくる。

惣領「ウッ、グウゥッ。」

それから時間が経つと惣領が乗り移った水虎(すいこ)の動きが止まり、唸り声を上げながら気持ち悪そうにし出した。

水虎(すいこ)3「おい。大丈夫か?」

水虎(すいこ)2「やっぱりあれは毒だったのか?」

水虎(すいこ)1「だけど襲われたのならしかたないのではないか?」

惣領「ウゥ。」

惣領が乗り移った水虎(すいこ)が少し唸った後、口を開けて胃の中のものを外に吐き出し、その中にあの赤黒い玉もあった。

惣領「吐剤か小癪な。我は消える。だが呪いは消えぬ、、いずれ再び、お前を迎えに来よう。」

その言葉通り惣領の声は聞こえなくなったが、しばらくしても水虎(すいこ)の姿が戻る気配はない。

虎の姿の水虎(すいこ)はしばらく吐き続けていたがそれが落ち着くと心配して近付いた水虎(すいこ)達に向かって前足で横から凪払う。

それに当たった1人の水虎(すいこ)は飛ばされたが硬い鱗のおかげで怪我は無さそうですぐに起き上がっていた。

水虎(すいこ)3「何をする。俺らが分からないのか?」

虎の姿の水虎(すいこ)は咆哮を上げると暴れ出し、こちらに攻撃はしてこないが他の水虎(すいこ)達も近づく事ができなくなってしまった。

志乃(しの)封呪符(ふうじゅふ)を貼った棒手裏剣を投げるが頑丈な皮膚はそのままで、棒手裏剣は跳ね返ってしまう。

水虎(すいこ)2「止めろ。暴れていても仲間だ。傷つけるな。」

志乃(しの)「傷つける意図はない。私にも手伝わせてくれ。」

水虎(すいこ)3「武器を投げてそれは信じられない。」

確かに刺さらなかったとはいえ、棒手裏剣を投げたのは早計だった。

だが近付かずに封呪符(ふうじゅふ)を当てるにはそうするしかない。

水虎(すいこ)1「だが、さっきの薬は本当に吐剤だった。こいつに嘘はない。」

水虎(すいこ)3「だがな。」

水虎(すいこ)1「俺達に出来る事は無い。頼ろう。」

水虎(すいこ)3「だが簡単には信じられない。」

志乃(しの)「邪魔さえしなければ1人でやる。」

水虎(すいこ)1「これは俺達の問題だ。全てを任せる事はできない。」

水虎(すいこ)2「そうだな。俺達は何をすればいい?」

水虎(すいこ)3「お前まで。」

志乃(しの)「解呪を試したい。近づきたいんだがあいつの動きを止められないか?」

水虎(すいこ)1「分かった。岩の隙間に追いこもう。」

志乃(しの)「それなら私が出入口を結界で塞いで出れないようにする。」

水虎(すいこ)3「勝手に話を進めるな。」

水虎(すいこ)2「あいつをこれ以上苦しめるのか?」

水虎(すいこ)3「...。」

水虎(すいこ)1「こっちだ。」

どう動くか考えている水虎(すいこ)をおいて、水虎(すいこ)の1人は虎姿の水虎(すいこ)の気を引くために既に動き出していた。

志乃(しの)は岩の隙間の周りに結界符(けっかいふ)を貼って結界をすぐに張れるようにそこで待機する。

虎姿の水虎(すいこ)は本能のままに動くものを追いかけるので、目の前で動く水虎(すいこ)を追いかけて岩の隙間に近付いていくが途中で転び、虎の姿の水虎(すいこ)の前足が迫るがその前に他の水虎(すいこ)が気を引き、今度はそっちが追いかけられる。

2人の水虎(すいこ)は代わる代わる誘導しようとするが、岩の隙間は狭く中に入ろうとはしない。

そして虎姿の水虎(すいこ)は1人の水虎(すいこ)を追いかけていたと思ったら身を翻し、油断しているもう一方の水虎(すいこ)に襲い掛かった。

襲い掛かられた水虎(すいこ)に虎の姿の水虎(すいこ)の前足がのしかかる。

硬い鱗のおかげで爪は刺さってないがこのままでは押しつぶされてしまうだろう。

志乃(しの)が助けに入ろうとした時、どう動くか考えていた水虎(すいこ)が岩の隙間に何かを投げ込むとカランと音が鳴り、それに釣られて岩の隙間に入って行く。

志乃(しの)は慌てて結界を張って出れないように閉じ込めるとそれに気づいた虎の姿の水虎(すいこ)は出せと言うように暴れ出し、その時にパキンと小さな音が聞こえた。

水虎(すいこ)1「良かったのか?あれはお前が大切にしていた物だろう?」

水虎(すいこ)3「別に、、」

志乃(しの)にはそれが何のことなのか分からなかったが自分の事を信じていなかった水虎(すいこ)が自分の大切な物を犠牲にしても作戦に加わってくれた事だけは分かったのでお礼を言う。

志乃(しの)「ありがとう。」

水虎(すいこ)3「仲間のためだ。あいつを楽にしてくれ。」

志乃(しの)「ああ。」

志乃(しの)は虎の姿の水虎(すいこ)が静かになるのを待ってから結界を潜って岩の隙間に入り、封呪符(ふうじゅふ)を使って呪いを消そうとするが奥深くまで呪いが進行しており中々祓えず姿が戻る事は無かった。

それでも自我が戻り始め、唸り声の中に言葉が混じる。

水虎(すいこ)4「だ、れ、、」

結界の外でその様子を見ていた他の水虎(すいこ)達が歓喜の声を上げる。

でも呪いが無くなったわけではないので気は抜けず、志乃(しの)は引き続き呪いを解こうとするが深く絡み合った呪いを解くことは難しい。

封印に切り替えても良いがいつ解けるか分からないものに頼るのは心もとなく、志乃(しの)は悩んでいた。

水虎(すいこ)4「もう、、傷つけたくない。戻れないなら。殺して。」

水虎(すいこ)1「諦めるな。」

水虎(すいこ)2「怪我はない。お前が気に病むな。」

水虎(すいこ)3「戻ったらまた遊ぼう。頑張れ。」

弱気な水虎(すいこ)を他の水虎(すいこ)が結界の外から励まし、それを見た志乃(しの)は1つ考えていた方法を試す事にした。

志乃(しの)封呪符(ふうじゅふ)を片付けて両手を虎の姿の水虎(すいこ)に当てると自身の人魚の呪いを虎の姿の水虎(すいこ)に流して水虎(すいこ)に残る呪いを探る。

人魚の呪いも水虎(すいこ)の中にある呪いも元は同じ呪いなので一緒になろうとする性質を利用しようとしたのだ。

そして志乃(しの)の思惑通りに人魚の呪いが水虎(すいこ)の中にある呪いに触れると人魚の呪いに水虎(すいこ)の中にある呪いが吸い込まれる。

志乃(しの)が人魚の呪いを戻すと共に水虎(すいこ)の姿は戻るが痛みを感じるはずのない志乃(しの)の足に激痛が走り、そこを見てみると鱗が数枚生えていた。

それから結界の外で水虎(すいこ)達が心配する声が聞こえたので志乃(しの)は鱗を隠してから結界を解くとすぐに水虎(すいこ)達は呪いに掛かっていた水虎(すいこ)に駆け寄った。

志乃(しの)は痛みで立てず、岩壁にもたれ掛かろうと座ったまま移動すると割れたビー玉が手に当たる。

それは呪いで暴れていた水虎(すいこ)が割れ目に入る時に投げ入れられた物だった。

志乃(しの)が欠片の1つを拾い上げると水虎(すいこ)の1人が話しかける。

水虎(すいこ)3「それ。前に川から流れて来たから拾ったやつ。」

志乃(しの)「何で投げ入れたんだ?」

水虎(すいこ)3「あいつ、これ欲しがっていた。だから興味持つと思った。」

志乃(しの)「そうか。大切な物だったのか?」

水虎(すいこ)3「ただ綺麗だっただけ。」

水虎(すいこ)2「こいつ嘘つき。拾った時、皆に自慢してた。」

水虎(すいこ)1「そう、宝物にするって言ってた。」

水虎(すいこ)3「お前らうるさい。」

水虎(すいこ)4「ありがとう。」

水虎(すいこ)3「うるさい!」

仲良さげな水虎(すいこ)達を見て志乃(しの)はこれ以上惣領が何かする前に止めないといけないと再認識させられた。

だが、今の志乃(しの)ができることは1つしかない。

あれは最後の手段としてとっておきたい、使いたくはないと考えていると水虎(すいこ)が話しかけてくる。

水虎(すいこ)1「大丈夫か?」

志乃(しの)「何がだ?」

水虎(すいこ)1「座り込んで考え事してる。」

志乃(しの)「少し疲れただけだ。ここでもう少し休ませてもらってもいいか?」

仲間が呪いから解放された直後で、他の不安を与えたくない志乃(しの)は痛みを顔には出さないようにしていた。

水虎(すいこ)1「構わない。もし何かあれば言ってくれ。」

志乃(しの)「ありがとう。」

足の痛みが徐々に和らいでくると志乃(しの)は立ち上がり、その時にカラカラと軽い音がして地面に何かが落ちた。

それは志乃(しの)に生えていた鱗で、痛みが治まると共に鱗も剥がれ落ちたのだ。

水虎(すいこ)4「これなんだ?」

水虎(すいこ)の1人がその青緑色をした鱗を拾い上げて日の光に当てると海のようにキラキラと輝いている。

水虎(すいこ)4「俺達の鱗じゃない。」

水虎(すいこ)3「綺麗だ。欲しい。」

水虎(すいこ)4「俺が見つけた。」

水虎(すいこ)3「俺、お前に宝を壊された。」

そう喧嘩する2人を見てまだ落ちていた鱗を拾って差し出す。

水虎(すいこ)3「くれるのか?」

水虎(すいこ)4「もしかしてこれ、お前の鱗か?」

水虎(すいこ)3「人間にも鱗、あるのか?」

水虎(すいこ)2「そうなのか?」

水虎(すいこ)4「見せてくれ。」

志乃(しの)「人間に鱗は無い。」

水虎(すいこ)3「ならこれは何の鱗だ?」

正直に仲間の呪いを吸い取って自分の足にできたものだと説明しても信じはするだろうが呪いを吸い取ったという部分の説明が面倒くさい。

志乃(しの)は何と答えれば良いのか分からず黙ってしまった。

水虎(すいこ)1「恩人を困らせるな。」

水虎(すいこ)3「お前は興味ないのか?」

水虎(すいこ)1「知りたい。だけど、言いたくないなら聞かなくてもいい。」

水虎(すいこ)3「そうだな。すまなかった人間。」

志乃(しの)「分かってくれたのならいい。」

水虎(すいこ)3「これ、新しい宝にする。」

水虎(すいこ)4「俺もする。俺の方が大きい。」

水虎(すいこ)3「俺の方が綺麗だ。」

それぞれに持っていても喧嘩するのかと思いながら志乃(しの)は外に出て妖ノ郷(あやかしのさと)への入り口へと向かう。

岩壁の割れ目から水虎(すいこ)達も出て来て手を振ってくれたので志乃(しの)も振り返し、妖ノ郷(あやかしのさと)へと戻った。

妖ノ郷(あやかしのさと)へ入ると丁度樹霧之介(きりのすけ)黒根(くろね)妖ノ郷(あやかしのさと)の巡回から帰って来ていて鉢合わせる。

黒根(くろね)「なんじゃ。短刀取りに行くだけなのに時間が掛かったな。」

志乃(しの)「少し問題があってな。」

樹霧之介(きりのすけ)「短刀、できてなかったんですか?」

志乃(しの)「いや、それは大丈夫だ。」

志乃(しの)は9号に短刀を持って来てもらうと2人に見せる。

志乃(しの)「前よりも切れ味も上がって使いやすくなってる。」

黒根(くろね)「うん?その切れ味はどこで試したんじゃ。」

志乃(しの)「え?まあ、、」

志乃(しの)は目を逸らす。

黒根(くろね)「すぐ治るからと言ってあまり自分を傷つけるな。」

志乃(しの)「腕だけだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「もしかして自分の腕、切ったんですか!?」

黒根(くろね)「短刀を取りに行くと言った時点で樹霧之介(きりのすけ)をつけるべきじゃったな。」

志乃(しの)「昔もしていただろ。」

黒根(くろね)「その時は痛みがあったから自重する事もあったが、無い今は躊躇なくするじゃろ。」

志乃(しの)「昔も自重した事はない。」

樹霧之介(きりのすけ)「余計に駄目じゃないですか!」

黒根(くろね)「まったく、普通痛ければ本能的に避けるもんなんじゃがな。」

志乃(しの)「普通じゃないからな。」

黒根(くろね)「そういう事を言いたいんじゃない。」

志乃(しの)「分かってる。」

黒根(くろね)「何をカリカリしておるんじゃ。」

樹霧之介(きりのすけ)「ですが志乃(しの)さん。機嫌が悪いというより顔色悪くないですか?」

黒根(くろね)「そうなのか?」

志乃(しの)「そんな事ない。」

黒根(くろね)「こいつが体調悪いことなんて呪いにかかった時くらいじゃが、何かあったのか?」

志乃(しの)「別に。」

樹霧之介(きりのすけ)山姥(やまんば)さんなら呪いの事分かりますよね。僕、呼んでくるので父さんは志乃(しの)さんを見張ってて下さい。」

そう言って樹霧之介(きりのすけ)黒根(くろね)志乃(しの)に渡して走って行った。

志乃(しの)黒丸(くろまる)が外出れないから呼びにいくのは分かるが、紐声環(ちゅうせいかん)は使わないのか?」

黒根(くろね)「まあ、良いじゃろ。それで何があったんじゃ?」

志乃(しの)水虎(すいこ)が喧嘩していたからその仲裁をしただけだ。」

黒根(くろね)「それだけか?」

志乃(しの)「それだけだ。樹霧之介(きりのすけ)は心配性だな。誰に似たんだか。」

黒根(くろね)「お主が心配かけるような事をするからじゃろ。」

志乃(しの)「...。」

そんな事を話しているとすぐに樹霧之介(きりのすけ)山姥(やまんば)を連れて走って来て、その頃には志乃(しの)の足の痛みも無くなっていた。

樹霧之介(きりのすけ)「ちゃんと待っていてくれたんですね。」

志乃(しの)「何もないからな。」

山姥(やまんば)「それで、お前は何をしたんだ?」

志乃(しの)「何もしてない。」

山姥(やまんば)「まあ、少し見せてもらうぞ。」

志乃(しの)「ああ。」

山姥(やまんば)志乃(しの)の額に手を当てる。

山姥(やまんば)「、、特に変わりないな。」

樹霧之介(きりのすけ)「歩き方が変だと思ったんですが、、」

山姥(やまんば)「足か。見ても良いか?」

志乃(しの)「好きにしてくれ。」

山姥(やまんば)志乃(しの)の袴を捲ってみる。

山姥(やまんば)「何もないな。」

志乃(しの)「心配し過ぎなんだよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「違うのなら良いんです。山姥(やまんば)さんも付き合ってくれてありがとうございます。」

何も無いと分かっても樹霧之介(きりのすけ)はまだ怪訝な顔をしている。

山姥(やまんば)「いいさ。またあれば呼んでくれ。直接来なくても紐声環(ちゅうせいかん)で呼んでくれればいい。」

樹霧之介(きりのすけ)「あ。」

黒根(くろね)「その様子じゃと忘れておったな。」

樹霧之介(きりのすけ)「気づいてたのなら教えてくれても良かったじゃないですか。」

志乃(しの)「言う前に走って行ったのはお前だぞ。」

黒根(くろね)「お主が心配かけるからじゃぞ。」

志乃(しの)「だから水虎(すいこ)達の仲裁をしただけだって。」

樹霧之介(きりのすけ)「何か揉めていたんですか?」

志乃(しの)「くだらない事だ。」

山姥(やまんば)「まあ、こいつが心配なのは分かるが何もないんだ。そこまで追求しなくていいんじゃないか?」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですけど、、」

黒根(くろね)「最近変な妖怪が増えていてより不安になっとるんじゃ。」

志乃(しの)「最近は私も手伝えてないからな。」

樹霧之介(きりのすけ)「それ自体は大丈夫です。真琴(まこと)達も成長してますし、父さんも相談に乗ってくれてますから、志乃(しの)さんは修行に集中してください。」

志乃(しの)「悪いな。」

樹霧之介(きりのすけ)「いえ。僕は大丈夫です。」

黒根(くろね)「心配をかける奴がもう少し大人しくしていればもっと良いんじゃがな。」

志乃(しの)「何で私だけなんだ。」

山姥(やまんば)「妖怪達が暴れている原因を作っている奴が狙っているのがお前だからだろ。」

志乃(しの)「まあ、私はそれを解決する方法を考える事に集中するよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。頑張ってください。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)も気を付けろよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)が屋敷に戻ろうとすると山姥(やまんば)が声を掛けてくる。

山姥(やまんば)志乃(しの)。昨日教えた術式なんだが、潮埜(しおの)が改良したものがある事を思い出したんだ。」

志乃(しの)「そうなのか?」

山姥(やまんば)「ああ。帰って来たばかりで悪いが、今から来れるか?」

志乃(しの)「大丈夫だ。」

志乃(しの)山姥(やまんば)が立ち去るとそこには1枚の青緑色をした鱗が落ちていた。

志乃(しの)の袴についていた鱗が山姥(やまんば)が捲った時に落ちたのだろう。

落ちた場所が土の上だったので音もなく、志乃(しの)山姥(やまんば)も気付いては無かった。

樹霧之介(きりのすけ)はそれを拾って黒根(くろね)と見てみる。

樹霧之介(きりのすけ)「なんの鱗でしょうか?」

黒根(くろね)「見た事ないのう。水虎(すいこ)も鱗は生えているがもう少しくすんだ色じゃったはずじゃ。」

樹霧之介(きりのすけ)「この鱗は澄んでいて綺麗ですね。志乃(しの)さんに聞いたら分かりますかね?」

黒根(くろね)「あいつは術の事を考えている間は何を話しても無駄じゃ。戻って来てからでいいじゃろう。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですね。」

樹霧之介(きりのすけ)はその鱗を紐声環(ちゅうせいかん)の袋に入れて家へ帰った。

それから志乃(しの)は一晩中山姥(やまんば)と術を試していたみたいで帰ったのは朝だった。

帰ってすぐに寝た志乃(しの)がお昼頃に起きて屋敷で作業をしていると9号が志乃(しの)を呼びに来た。

樹霧之介(きりのすけ)が怪我をして帰っていたらしい。

志乃(しの)は慌てて樹霧之介(きりのすけ)の家に向かう。

ドアを開けるとそこには真琴(まこと)達に囲まれ、中央に座る樹霧之介(きりのすけ)は思っていたよりも元気そうだった。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)が怪我をしたと聞いたが大丈夫なのか?」

真琴(まこと)浜名瀬(はまなせ)さん。怪我はそこまで深くはないわよ。」

志乃(しの)「何があったんだ?」

黒根(くろね)「お主、自分の事は話そうとしないのにこちらの事は聞くんじゃな。」

志乃(しの)「言い難い事なら別にいいぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「父さん意地悪言わないでください。今回逃がしてしまったので志乃(しの)さんにも一応伝えておきましょう。」

黒根(くろね)「そうじゃな。」

志乃(しの)「それより先に怪我の具合が気になる。」

真琴(まこと)「それなら斬られたけど紐声環(ちゅうせいかん)が盾になってくれたおかげでほとんど怪我はないわ。」

志乃(しの)「そうか。あれの中は金属だからな、良かった。」

樹霧之介(きりのすけ)「ですが外の布は斬られてしまいました。」

樹霧之介(きりのすけ)は斬られて中の金属が見えている紐声環(ちゅうせいかん)を首から外す。

志乃(しの)「これなら私が直そう。話しを聞いている間に直るだろう。」

樹霧之介(きりのすけ)「助かります。」

志乃(しの)は9号に裁縫道具を持って来てもらって紐声環(ちゅうせいかん)を直し始める。

志乃(しの)「それで何で樹霧之介(きりのすけ)は斬られたんだ?木の根で防げなかったのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「それが、相手の姿が急に消えたんです。」

風見(かざみ)「ワイの探知も掻い潜ったんだ。」

志乃(しの)「どんな奴だったんだ?」

(ほむら)「骸骨だったぞ。」

(しずく)「そうね。剣を持って布を纏っていたわ。」

志乃(しの)狂骨(きょうこつ)とは違うのか?」

風見(かざみ)「妖気が全然違った。どちらかといえば鬼に似ていたぞ。」

志乃(しの)「鬼?鬼で姿を消して攻撃する奴はいるがちゃんと肉は付いている。」

樹霧之介(きりのすけ)「ですが見た目を変える物があるじゃないですか。」

風見(かざみ)「呪いの気配もしたから可能性は高いと思う。」

志乃(しの)「なら、隠形鬼(おんぎょうき)か?」

樹霧之介(きりのすけ)「それはどんな妖怪なんですか?」

志乃(しの)「気配を消しての奇襲が得意な奴だ。」

風見(かざみ)「それでワイも分からなかったのか。」

志乃(しの)「ああ。お前達が逃がしてしまうのも分かる。だがあいつを追い詰めれるくらいに強くなったんだな。」

樹霧之介(きりのすけ)「あ、いえ。追い詰められたのは僕達の方です。」

志乃(しの)「どういう事だ?」

樹霧之介(きりのすけ)「僕達は防戦一方で、、」

茂蔵(もぞう)樹霧之介(きりのすけ)に攻撃した後いなくなったんだ。」

志乃(しの)「その攻撃って、この紐声環(ちゅうせいかん)が斬られた時か?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)「勝てる勝負を放っていなくなったのか。」

真琴(まこと)浜名瀬(はまなせ)さんにも理由分からないの?」

志乃(しの)「ああ。これだけではな。」

志乃(しの)は直しかけの紐声環(ちゅうせいかん)を見つめる。

しばらくの沈黙の後樹霧之介(きりのすけ)は思い出したように話し出した。

樹霧之介(きりのすけ)「そう言えばその中に鱗を入れていました。」

志乃(しの)「鱗?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。昨日志乃(しの)さんが帰って来てその後いなくなった時に見つけたんです。」

黒根(くろね)「あれか、確か澄んだ青緑色をしておったの。」

樹霧之介(きりのすけ)「今そこに入っていませんか?」

志乃(しの)「無い、な。」

黒根(くろね)「お主がいた場所に落ちておったんじゃ。何の鱗か心当たりないか?」

心当たりがあるどころかその正体を志乃(しの)は知っている。

その事を話すかどうか、志乃(しの)は考える。

黒根(くろね)志乃(しの)。手が止まっておるぞ。知っておるんじゃな。」

志乃(しの)「あ、いや、、」

樹霧之介(きりのすけ)「もしかして無くしたら不味い物でした?」

志乃(しの)「無くなったこと自体は平気だ。ただ、、」

黒根(くろね)「ただ、なんじゃ。はっきりせい。」

志乃(しの)は観念して昨日水虎(すいこ)の所であったことを話す。

痛みがあった事は話さなかったが、呪いを吸い取って鱗が生えた事は正直に話した。

黒根(くろね)「お主、またそんな危険なことしおったんか!」

志乃(しの)山姥(やまんば)に調べてもらった時何ともなかったんだ。今は私の中の呪いに完全に同化したから平気だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「それでももし、同化しなかったら?呪いの効果が表れていたらどうしたんですか!」

志乃(しの)「その時は封印すればいい。」

樹霧之介(きりのすけ)「あの時、顔色悪かったの、気のせいじゃないですよね?何か副作用とか無かったんですか?」

志乃(しの)「足に鱗が生えただけだって。」

樹霧之介(きりのすけ)「それがもう異常なんですって!」

茂蔵(もぞう)「まあ、落ち着けって。今は何ともないって言っているんだし、終わり良ければ全て良しって言うじゃないか。」

樹霧之介(きりのすけ)「でも、、」

志乃(しの)「だから言いたくなかったんだ。」

黒根(くろね)「お主はもう少し反省しろ!」

志乃(しの)「だがこうしなければ水虎(すいこ)に掛かった呪いは消えなかった。」

黒根(くろね)「、、もうよい。」

真琴(まこと)「だけど樹霧之介(きりのすけ)。まだ隠形鬼(おんぎょうき)が消えた理由が分からないわよ。」

樹霧之介(きりのすけ)隠形鬼(おんぎょうき)の事はこちらで何とかしましょう。志乃(しの)さんは絶対に手を出さないでくださいね。」

志乃(しの)「分かったよ。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ