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浜名瀬志乃の学び舎日誌  作者: 火乃香


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83/92

76話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

樹霧之介(きりのすけ)達は隠形鬼(おんぎょうき)と戦った森に来ていた。

(ほむら)「なんか匂うな。」

前に来た時とは違い、森には薄っすらと異臭が漂っていた。

茂蔵(もぞう)「本当だ。変な匂い。」

真琴(まこと)「ねえ、それより樹霧之介(きりのすけ)が斬られたのって確かここよね。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。風見(かざみ)、何か感じますか?」

風見(かざみ)「今のとこ、何も感じないな。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうですか。」

樹霧之介(きりのすけ)は下を向いて鱗を探してみるが見当たらない。

(ほむら)「なあ、鱗なら光るだろ。俺の炎で照らしてやろうか?」

樹霧之介(きりのすけ)「、、いえ、気にはなりますがその事はもういいんです。それよりも隠形鬼(おんぎょうき)がどこに行ったか探りましょう。」

茂蔵(もぞう)「だけど、分かるのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「負けっぱなしではいられません。それに他の場所で悪さする可能性もあります。」

真琴(まこと)「もしかして浜名瀬(はまなせ)さんに言われた事気にしてるの?」

茂蔵(もぞう)「おいら達には勝てないような事言っていたもんな。」

樹霧之介(きりのすけ)「それはいいんです。相性が悪いのは事実なんですから。」

風見(かざみ)「ワイが感知できれば戦えるのに、ごめん、、」

樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)は悪くないです。あれは、教えてもらっても反応できるような動きではないですから、、」

真琴(まこと)「剣術使う妖怪なんて初めてだったものね。」

(ほむら)「なあ、見つけてどうするんだ?今のままでは勝てないんだろ?秘策はあるのか?」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さんは気配を消して奇襲すると言っていました。実体が消えてないのであれば周りに罠を仕掛けておけば引っ掛かるはずです。」

真琴(まこと)「あの時は罠張る時間も無かったものね。」

(しずく)「だけどそう簡単に引っ掛かるの?もしそれが浜名瀬(はまなせ)さんなら罠を飛び越えそうだけど。」

(ほむら)「何で志乃(しの)と比べるんだ?」

(しずく)「身近にいて刃物を使って戦うのが浜名瀬(はまなせ)さんだけだからよ。」

(ほむら)「だけどあいつは特別だろ。比べても良いのか?樹霧之介(きりのすけ)もそう思うだろ。」

樹霧之介(きりのすけ)「いえ、(しずく)の意見はもっともです。相手がしてきそうなことを考えて動かないといけません。情報が少ないので志乃(しの)さんを参考に考えましょう。」

風見(かざみ)隠形鬼(おんぎょうき)は探さなくても良いのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「作戦立ててからでないと見つけても対応できないのでそっちから始めましょう。」

風見(かざみ)「分かった。」

???「見つけた。」

茂蔵(もぞう)「今誰か何か言ったか?」

風見(かざみ)「あいつの妖気を感じる。注意しろ。」

隠形鬼(おんぎょうき)「鱗を持っていた木霊(こだま)の小僧。お前に聞きたいことがある。」

隠形鬼(おんぎょうき)はいつの間にか樹霧之介(きりのすけ)の後ろに回り樹霧之介(きりのすけ)の首に手を当てている。

聞きたいことがあると言っていた通り、殺す気はなさそうだ。

樹霧之介(きりのすけ)は近くの木の枝を操って隠形鬼(おんぎょうき)を捕らえようとするが隠形鬼(おんぎょうき)はそれをするりと抜け、樹霧之介(きりのすけ)から離れる。

樹霧之介(きりのすけ)「あなたに教える事はありません。逆にあなたの目的を話してもらいます。」

隠形鬼(おんぎょうき)「威勢だけはいい。だが無防備に突っ立っている奴の言う事ではないな。」

その言葉と共に目の前の隠形鬼(おんぎょうき)は消え、再度樹霧之介(きりのすけ)の後ろに現れる。

だがすぐに地面から木の根が生えて隠形鬼(おんぎょうき)を絡めとった。

そこに真琴(まこと)(ほむら)が攻撃を仕掛ける。

樹霧之介(きりのすけ)「後ろにしか現れないあなたも大概ですよ。」

隠形鬼(おんぎょうき)「ふん。」

隠形鬼(おんぎょうき)は木の根を剣で斬って脱出すると2人の攻撃を避けてまた気配を消した。

どこから来てもいいように樹霧之介(きりのすけ)と虎に変化した茂蔵(もぞう)真琴(まこと)(ほむら)(しずく)風見(かざみ)で背中合わせになる。

樹霧之介(きりのすけ)「あなたは鱗の事を聞いてどうするんですか。」

???「それは我が命じたのだ。」

木の後ろから肉の塊に手足が付いたようなものが出てくる。

そしてそいつからあの異臭がしているようだ。

風見(かざみ)「こいつ妖力を感じないぞ。」

???「当然だ。我はそのようなものではない。」

樹霧之介(きりのすけ)「あなたは誰ですか?」

???「誰でもよかろう。それよりもあの鱗だ。貴様が持っていたあれの事を話してもらおうか。」

樹霧之介(きりのすけ)「何をそんなに必死になっているんですか?」

???「あの鱗1枚で、我の体の一部が戻った。ほんの少しだったが持ち主を取り込めば、我は再び人に還れるはずなのだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「あなた、惣領と呼ばれてた人ですか?」

惣領「ほう、それを知っているとは。貴様、清埜(きよの)と何らかの縁があるな?」

樹霧之介(きりのすけ)「それは、、」

惣領「気分が良かったゆえ久方ぶりに分身を遣わせてみたが、まさかこれほどの収穫があるとはな。貴様にはあやつをおびき寄せるため、手を貸してもらおうか。」

樹霧之介(きりのすけ)「誰があなたの言うことなんて聞くものですか!」

惣領「貴様らがここに在る。それだけで我には十分だ。」

樹霧之介(きりのすけ)「何をする気か知りませんが僕らを舐めないでください。」

樹霧之介(きりのすけ)は惣領に木の根を巻きつけ締め上げるがビクともしない。

惣領「それが貴様の限界か?」

真琴(まこと)「そいつは分身なんでしょ。手加減なんていらないわよね。」

真琴(まこと)が惣領の上に紙を出し、それに重いと硬いの文字を付与し、ギロチンの刃のように振り下ろす。

それは樹霧之介(きりのすけ)が巻きつけた根ごと惣領を真っ二つにし、赤黒い粘液をまき散らして肉塊と化した。

茂蔵(もぞう)「あんな事言っておきながらあっけないな。」

そう言いながら茂蔵(もぞう)は肉塊に近付く。

樹霧之介(きりのすけ)「まだ隠形鬼(おんぎょうき)が残っています。警戒を解かないでください。」

茂蔵(もぞう)「悪い。」

茂蔵(もぞう)樹霧之介(きりのすけ)の方を振り返ると赤黒い粘液が動き出す。

それに気づいた樹霧之介(きりのすけ)が叫ぶ。

樹霧之介(きりのすけ)「離れてください!」

樹霧之介(きりのすけ)が叫んだことにより茂蔵(もぞう)は肉塊の異常に気づき、赤黒い粘液が茂蔵(もぞう)に触れる前に跳んで避ける事ができた。

赤黒い粘液は肉塊に吸い込まれ、肉塊がぐにょぐにょと動き、集まると顔のない頭部が再び形成され、腕が、足が、ねじれるように生えてくる。

惣領「分身であろうと、我は消えぬ。それよりも貴様ら忘れているものはないか?」

その時、後ろに誰もいなくなった樹霧之介(きりのすけ)の背後に隠形鬼(おんぎょうき)が現れて樹霧之介(きりのすけ)に蹴りを入れる。

樹霧之介(きりのすけ)は咄嗟に腕で防御したものの飛ばされ、惣領の近くの木にぶつかった。

そこに惣領が近付き、立とうとしていた樹霧之介(きりのすけ)の肩を掴む。

その手には弾力は無く、樹霧之介(きりのすけ)の肩を包み込むようなねっとりとした気持ち悪さがある。

樹霧之介(きりのすけ)は立ってその手を振り払おうと足に力を入れようとすると全身に痛みが走った。

樹霧之介(きりのすけ)「いっ!」

惣領「痛かろう。妖にとって霊力は毒、それを直に流したのだ。立てぬのも道理よ。」

茂蔵(もぞう)「止めろ!」

虎に変化した茂蔵(もぞう)が惣領に飛び掛かり爪と牙を立てるがそれは肉塊の中に吸い込まれていく。

離れようとしても肉塊は茂蔵(もぞう)を包み込み、口や鼻も塞ごうとしたところで風見(かざみ)が風の鎧を茂蔵(もぞう)に付与したがそれはすぐに消えてしまった。

真琴(まこと)(ほむら)茂蔵(もぞう)を助けようとするが目の前に隠形鬼(おんぎょうき)が現れ、2人を行かせないようにする。

樹霧之介(きりのすけ)「仲間を離してください!」

惣領「仲間の名を呼ばぬか。ふっ、清埜(きよの)が少しは知恵を授けたか。」

樹霧之介(きりのすけ)「あなたには関係ありません!」

惣領「貴様の名を聞こう。応じるならば、多少は考えてやらんでもない。」

(しずく)「駄目よ!こいつが名前を聞くって事は言霊を使えるって事でしょ。」

樹霧之介(きりのすけ)が考えている間にも茂蔵(もぞう)は口と鼻を塞がれて息ができずにぐったりとして、変化も解ける。

樹霧之介(きりのすけ)「僕は、、」

樹霧之介(きりのすけ)は小声で何かを呟く。

惣領「声が小さく聞こえぬ。我が耳に届くようにせよ。」

樹霧之介(きりのすけ)「、、、」

それでもぼそぼそと話す樹霧之介(きりのすけ)の声を聞こうと惣領が前屈みになった時、樹霧之介(きりのすけ)は惣領の後ろから木の根を伸ばして茂蔵(もぞう)を掴み、引っ張り出す。

そのまま(しずく)の方に投げると(しずく)茂蔵(もぞう)をキャッチする。

樹霧之介(きりのすけ)「結界を!」

その声に応えて(しずく)が結界を張り、その中に茂蔵(もぞう)と共に避難した。

惣領「小癪な真似を、、まあいい。」

惣領は自身の体から赤黒い胡桃大の真珠のような玉を出す。

樹霧之介(きりのすけ)「それは!?」

惣領「知っておるはずだ。貴様らがこれを呑んだ妖どもを狩って回ったのだからな。この呪いを解けたのは奴だけだ。そして、あやつは仲間を見捨てられぬ。ならば、ここに現れるのも道理というもの。」

樹霧之介(きりのすけ)はその場から離れようとするが惣領の肉塊は今度は樹霧之介(きりのすけ)を捕らえる。

惣領は樹霧之介(きりのすけ)の口に玉を近付け、樹霧之介(きりのすけ)は口を懸命に閉じる。

真琴(まこと)は紙を飛ばし樹霧之介(きりのすけ)の口を塞ぐが惣領が触れるとそれはただの紙となり、はらりと落ちた。

紙の無くなった樹霧之介(きりのすけ)の口に惣領は玉を押し込み、口を塞ぐと樹霧之介(きりのすけ)は玉を呑み込んでしまう。

真琴(まこと)樹霧之介(きりのすけ)!」

惣領「それがこやつの名か。だが今となっては意味を持たぬな。」

樹霧之介(きりのすけ)「ウ、グゥ、、」

樹霧之介(きりのすけ)は苦しそうにその場でうずくまり、手の先から木の姿に変わっていく。

惣領はその場を離れ、姿を消すと同時に隠形鬼(おんぎょうき)も消えた。

真琴(まこと)(ほむら)樹霧之介(きりのすけ)の方に駆け寄る。

樹霧之介(きりのすけ)「近付かないでください!」

樹霧之介(きりのすけ)がそう怒鳴ると全身が木に変わり、大きくなる。

真琴(まこと)(ほむら)はそれに飲み込まれそうになったのですぐに後ろに下がるが周りの木がザワザワと不自然に動いたかと思うと樹霧之介(きりのすけ)を守るように巻き付き、さらに巨大になって、それと共に周りの木以外の物も巻き込み取り込まれていった。

真琴(まこと)「逃げるよ!」

その声に結界内にいた(しずく)茂蔵(もぞう)も出てきてその光景に驚き、走り出す。

樹霧之介(きりのすけ)は雲に届くくらいの大きさとなると巨大化は止まったが近付く生物はみな木の根に捕まり、取り込まれていった。

そのため、真琴(まこと)達は樹霧之介(きりのすけ)に近付く事ができずに眺める事しかできない。

茂蔵(もぞう)「なあ、どうするんだ?」

(ほむら)志乃(しの)、呼ぶのか?」

(しずく)「だけど、あいつの目的は浜名瀬(はまなせ)さんなんでしょ?呼んでも良いの?」

(ほむら)「だけどさ、他に何とかできる奴いるのか?」

その言葉に全員が黙るが、しばらくして真琴(まこと)が話し出す。

真琴(まこと)「ねえ、あの肉団子のような奴。あいつ捕まえて樹霧之介(きりのすけ)を元に戻す事はできないかな?」

茂蔵(もぞう)「どうやって捕まえるんだ?あいつに触れば飲み込まれるぞ。」

真琴(まこと)「私の紙で包むことができれば、、」

風見(かざみ)「あいつ多分、妖力を無効化できるぞ。ワイの鎧も真琴(まこと)の紙だって無効化されたじゃないか。」

真琴(まこと)「あ、、」

その時真琴(まこと)は惣領が触った紙がただの紙に変わった事を思い出す。

(ほむら)「それに隠形鬼(おんぎょうき)はどうするんだ?あいつ1人で俺と真琴(まこと)止められたんだぞ。」

(しずく)「こうしている間にもどこかで見ているかも、、」

真琴(まこと)「私達がこうして話していられるのは浜名瀬(はまなせ)さんを呼ぶために見逃されたから、、なのかもね。」

風見(かざみ)浜名瀬(はまなせ)はともかく。おやっさんには相談しようぜ。」

真琴(まこと)「そうね。」

真琴(まこと)紐声環(ちゅうせいかん)黒根(くろね)に繋ぐ。

真琴(まこと)樹霧之介(きりのすけ)のお父さん。」

黒根(くろね)「なんじゃ?何かあったのか?」

真琴(まこと)「うん。それでそこに浜名瀬(はまなせ)さんいる?」

黒根(くろね)「ここにはおらん。さっき山姥(やまんば)といつもの山に行ったがどうした?」

真琴(まこと)「それなら都合がいいわ。あの、、」

樹霧之介(きりのすけ)が、通話先にいる黒根(くろね)の息子があの玉を吞み込んで今暴れている事をどう伝えようか言葉が詰まる。

黒根(くろね)「どうした?」

真琴(まこと)「ごめんなさい、、私、何もできなかった、、」

黒根(くろね)「何があった?まさか樹霧之介(きりのすけ)の身に何かあったんか?」

真琴(まこと)「うん、、」

(しずく)樹霧之介(きりのすけ)が例の玉を呑み込んで今暴れてるの。」

言い出しにくそうな真琴(まこと)の代わりに(しずく)が横から説明する。

黒根(くろね)「な、、なぜそうなったんじゃ?」

真琴(まこと)「私達が浜名瀬(はまなせ)さんと繋がりがある事を知って、浜名瀬(はまなせ)さんをおびき寄せる為らしいの。」

黒根(くろね)「あの鱗で知られたのか?」

真琴(まこと)「あの鱗の事を聞きに私達を探していたのはそうなんだけど、肉団子に手足の生えたような奴が出てきたの。それに樹霧之介(きりのすけ)が惣領かって聞いたから。」

黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)も迂闊じゃったな。」

茂蔵(もぞう)「それより、樹霧之介(きりのすけ)が大樹になっちまったんだ。どうしよう。」

黒根(くろね)志乃(しの)なら解呪できじゃろうがあいつはまだ解呪した後の反動を全て話していない感じじゃったし、志乃(しの)を狙う奴らもいるなら呼ばん方が良い。他にできそうな事といえば封印じゃが、志乃(しの)以外でできそうな奴は山姥(やまんば)かの。」

(しずく)「元巫女みたいだし、できはしそうよね。」

真琴(まこと)「だけどそれでいいの?樹霧之介(きりのすけ)、戻さなくても、、」

黒根(くろね)「今は仕方がない。惣領を倒せれば解けるかもしれんし、安全な場所で志乃(しの)に解呪してもらってもいい。とにかく今は志乃(しの)を出さずにこの場を鎮めるんじゃ。」

真琴(まこと)「そうね。」

黒根(くろね)山姥(やまんば)にはこっちから連絡する。お主らは被害が広がらんように樹霧之介(きりのすけ)を見張っておいてくれ。」

真琴(まこと)「分かったわ。」

(ほむら)「そうは言ってもどうするんだ?俺らだって近付けば取り込まれるぞ。」

(しずく)「外側は普通の木を操っているだけみたいだし、外側を燃やして小さくする事はできそう?」

風見(かざみ)「それならワイ、樹霧之介(きりのすけ)の本体がいる場所分かるで。」

(ほむら)「じゃあ、山姥(やまんば)が来る前に封印しやすい大きさにしようぜ。」

惣領「それではつまらん。清埜(きよの)を呼ばないとなると貴様らはもはや不要だ。」

その言葉と共に(ほむら)の後ろに隠形鬼(おんぎょうき)が現れ、首に向かって剣を振るうがそれは風見(かざみ)の風の鎧で防いだ。

風見(かざみ)「こいつ殺る気だぞ。」

惣領「我は木霊(こだま)を操る。貴様には、こやつらの処理を任せる。」

真琴(まこと)樹霧之介(きりのすけ)に何をする気!?」

惣領「命尽きる者に語る意味はない。」

その時棒手裏剣が飛んできて惣領に当たると光と共に惣領の体が少しだけ縮んだ。

惣領「ぐ。封呪符(ふうじゅふ)か生意気な。」

志乃(しの)「これ以上お前に勝手をさせるわけないだろ。」

真琴(まこと)浜名瀬(はまなせ)さん!?何で?」

惣領「呼ばずとも寄ってくるか。愚かだが都合がいい。」

志乃(しの)「好き勝手してくれたな。」

惣領「清埜(きよの)の名、我が名に伏し、言に従え。」

(しずく)「そうか、浜名瀬(はまなせ)さんは名前を知られているから。」

惣領「動くな。」

志乃(しの)はそれに従う事なく、惣領に短刀を振り下ろす。

惣領「ふっ。流石に今は効かぬか。」

真琴(まこと)「良かった、、」

その時真琴(まこと)紐声環(ちゅうせいかん)黒根(くろね)から着信が入る。

黒根(くろね)「おい、そっちに志乃(しの)は行っていないか?」

真琴(まこと)「いるわ。今、惣領と対峙してる。」

黒根(くろね)「遅かったか。山姥(やまんば)は封印の準備に時間が掛かると言っていた。志乃(しの)!それまで手を出すなよ。」

志乃(しの)「時と場合による。」

黒根(くろね)「ああもう、お前は!」

山姥(やまんば)「早めに準備を終わらせる。」

黒根(くろね)「すまん、頼む。」

そして通話は切れた。

真琴(まこと)「それで浜名瀬(はまなせ)さんはなんで来たの?」

志乃(しの)「山で修行中、樹霧之介(きりのすけ)の異常な妖気に5号が反応したんだ。山姥(やまんば)紐声環(ちゅうせいかん)で何か話している隙にこっちに来た。」

真琴(まこと)「ここ、あの山にも近かったのね。」

志乃(しの)「それでお前、ぬっぺふほふか?」

惣領「昔そのような名で呼ばれた事もあったな。」

志乃(しの)「その姿で呪いをばら撒いていたのか。」

惣領「そうだ。本体が動けぬゆえ我は肉を裂き、分身を生み出した。そして肉饅頭を不老不死の妙薬として分け与えた。我の呪いは未完成のままだが収穫はあった。十分にな。」

そう言って大樹になった樹霧之介(きりのすけ)の方を見た。

志乃(しの)「あいつを元に戻せ。」

惣領「それは貴様がやればいい。水虎の呪いを解いたのも貴様だろう?」

志乃(しの)「何が目的だ。」

惣領「貴様、呪いで人魚になりかけたな?」

志乃(しの)「、、知らないな。」

惣領「そんなことはない。あの呪いは妖の姿を歪め、人を妖へと堕とすもの。人魚の血を引く貴様が変わらぬはずがなかろう。」

志乃(しの)「なら何故お前は妖怪にならない。」

惣領「我が呪いの大本、その源であるがゆえに小さな呪いの不利な効果など意のままに打ち消せる。お前もそうだろう?今人の姿でいられるのはお前の中の呪いがその効果を打ち消したからだ。」

志乃(しの)「不利と感じているなら何故その呪いを使う。」

惣領「我が呪いに足りぬのは人魚だ。 探しても見つからぬなら創るまで。だが今まではどれも失敗作だった。呪いに耐えられず我が望む人魚とは程遠いものばかり、、」

志乃(しの)「何故お前は不死を望む。」

惣領「どれほど才を誇ろうと、死ねばただの屍。その可能性が消えれば、我が天下に曇りはない。」

志乃(しの)「今は戦は無い。お前の活躍の場などないぞ。」

惣領「戦が無ければ、火種を撒けばよい。舞台が欲しければ、我が手で開幕させるまでだ。」

茂蔵(もぞう)「ウワァ!」

志乃(しの)が惣領を引き留めている間、真琴(まこと)達は隠形鬼(おんぎょうき)の相手をしていたが茂蔵(もぞう)隠形鬼(おんぎょうき)の攻撃を受けてしまった。

樹霧之介(きりのすけ)がいた時も防戦一方だったのに樹霧之介(きりのすけ)がいなくなった今、それも崩れそうになっていたのだ。

志乃(しの)「在るものを探そうとするな。無いものを感じろ。お前にはできるはずだ。」

志乃(しの)風見(かざみ)に向かってそう言うと風見(かざみ)は少し戸惑っていたが目を瞑る。

そして目を瞑った風見(かざみ)隠形鬼(おんぎょうき)が攻撃を仕掛けるがその前に風見(かざみ)は自身に風の鎧を付与する。

隠形鬼(おんぎょうき)「ほう。よく分かったな。」

風見(かざみ)「ワイは風の動きが分かる。例え吹いていなくても空気の流れはある。だが体中にはその流れは少ない。骸骨であるお前はその頭蓋骨の中くらいしか流れの無い場所はないが逆に他と区別がつくんだ。その流れの無い場所が分かればお前の位置は分かる。」

隠形鬼(おんぎょうき)「なら何故最初からそうしない。」

風見(かざみ)「妖気と気配を探してたんだ。空気の流れで場所が分かるなんて思いつかなかった。」

茂蔵(もぞう)「カッコつけて説明したのにカッコついてないな。」

(ほむら)「その説明も長いうえによく分からないしな。」

風見(かざみ)「うるさいな!」

茂蔵(もぞう)(ほむら)がヒソヒソ言った言葉を風見(かざみ)は聞いていたようで顔を真っ赤にして叫ぶ。

惣領「安心するのはまだ早いというのに。」

風見(かざみ)達の様子を見て肩の力を抜く志乃(しの)に向かって惣領は言い放つと惣領の体は赤黒い液体となって地面に溶け込み、その後に樹霧之介(きりのすけ)の大樹の枝が鈍く軋むような音をたてた。

何度かその音が聞こえた後に大樹の根が何本も地面から突き出るとそれは周りの木々を薙ぎ倒し、志乃(しの)達にも襲い掛かるが志乃(しの)はそれを結界で防いだ。

惣領「移動はできないがこの圧倒的な力よ。実に素晴らしい。」

その声は樹霧之介(きりのすけ)の大樹の方から聞こえた。

真琴(まこと)「どういう事?樹霧之介(きりのすけ)は?」

惣領「奴は抵抗したが、やがて我が術中に沈んでいった。今は身を明け渡し眠っておる。救いたいのなら清埜(きよの)、お前自身が来るがよい。」

茂蔵(もぞう)「罠だ!」

真琴(まこと)「そうよ。樹霧之介(きりのすけ)のお父さんも手を出すなって言っていたでしょ。」

志乃(しの)「時と場合によると答えた。」

惣領「外野の声が耳障りだな。」

真琴(まこと)達の足元の地面が盛り上がるとそこから根が生え、襲ってきた。

(ほむら)「おい、これ攻撃していいのか?」

風見(かざみ)「本体とは違う。燃やしてくれ。」

(ほむら)「分かった。焔爪(えんそう)!」

(ほむら)は炎の爪で木の根を焼き切り、茂蔵(もぞう)は熊に変化して爪で木の根を引き裂くがすぐに再生して襲ってきてきりがない。

唯一(ほむら)の炎で焼いた場所の再生は遅いが時間が経てば再生している。

真琴(まこと)は紙で木の根を切るには時間が掛かるので紙で木の根をガードして(しずく)風見(かざみ)を守っていた。

そして木の根に集中すると隠形鬼(おんぎょうき)が攻撃してくるがそれは風見(かざみ)の風の鎧で防御する。

志乃(しの)の方には攻撃が来ないのでこちらに来いという事だろう。

志乃(しの)は少し考えて大百足(おおむかで)を呼ぶ。

大百足(おおむかで)は呼ばれるとすぐに地中に潜り、しばらくすると出てきた根の一部が黒く変色して崩れていった。

(ほむら)「どうなってるんだ?」

志乃(しの)「本体とは繋がっていないみたいだから毒を流させてもらった。」

真琴(まこと)大百足(おおむかで)ってそんな事も出来たのね。」

惣領「小癪な。隠形鬼(おんぎょうき)、速やかに片付けろ。」

隠形鬼(おんぎょうき)の攻撃が激しくなり防御は風見(かざみ)ができるが反撃まではできてない。

風見(かざみ)浜名瀬(はまなせ)。少し手伝ってくれないか?」

志乃(しの)「私は隠形鬼(おんぎょうき)には手を出すなと言われているからな。口は出させてもらったが約束だ。そっちは何とかしてくれ。」

真琴(まこと)「最初から手を出さなかったのはそういう事?」

志乃(しの)「私は先に樹霧之介(きりのすけ)の方へ行く。」

真琴(まこと)「あ、ちょっと!」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)の大樹の方に走り出そうとした時、木の陰から縄を担いだ山姥(やまんば)が飛び出し、志乃(しの)を止めた。

山姥(やまんば)「お前、何を考えている!」

志乃(しの)「もう来たのか。」

山姥(やまんば)「何をしようとしていたかを聞いている。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)からあの玉を出そうと思っている。」

山姥(やまんば)「どうやって。」

志乃(しの)「、、吐剤は使えそうにないから斬るしかないだろうな。」

山姥(やまんば)「お前にできるのか?」

志乃(しの)「やるしかないだろ。惣領が中にいれば封印もしにくい。」

山姥(やまんば)「無理に解呪しようとは考えていないんだな。」

志乃(しの)「私のせいで樹霧之介(きりのすけ)が苦しんでいるんだ。本当は解呪してやりたいさ。だけど惣領の思惑通りに動きたくもない。」

山姥(やまんば)「お前のせいではないが、、分かった。そう思っているのであれば手伝おう。」

志乃(しの)「まずは本体の所まで行きたい。外殻は大百足(おおむかで)と3号、10号に頼もうと思う。」

山姥(やまんば)「根の攻撃もお前の大百足(おおむかで)が何とかしてくれるだろう。他に問題があるのか?」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)の攻撃が黒丸(くろまる)よりならそれで何とかなるだろうが柚子(ゆず)の技も使えるとなると少し面倒だ。」

山姥(やまんば)「何かあるのか?」

志乃(しの)「あいつは攻撃には使わなかったが、匂いを使って様々な効果を生み出す事ができた。」

山姥(やまんば)「もしかしてその中に相手の行動を制限するものがあるのか?」

志乃(しの)柚子(ゆず)は他人を癒す事にしか使っていなかったがな。」

山姥(やまんば)「防ぐ方法は?」

志乃(しの)「私は10号の風で飛ばそうとは思うがそっちの方まで気遣えるか分からない。」

山姥(やまんば)「そういう事か。こっちは封印の準備しながら自分で結界を張って防ぐから気にするな。」

志乃(しの)「分かった。それでその縄で封印するのか?」

山姥(やまんば)「そうだ。お前のせいでそこまで長くできなかったがな。」

志乃(しの)「悪かった。外皮を削るのも任せてくれ。」

山姥(やまんば)「それくらいやってもらわないとな。これで囲めるくらいまで小さくしろよ。」

志乃(しの)「ああ。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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