76話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
樹霧之介達は隠形鬼と戦った森に来ていた。
焔「なんか匂うな。」
前に来た時とは違い、森には薄っすらと異臭が漂っていた。
茂蔵「本当だ。変な匂い。」
真琴「ねえ、それより樹霧之介が斬られたのって確かここよね。」
樹霧之介「はい。風見、何か感じますか?」
風見「今のとこ、何も感じないな。」
樹霧之介「そうですか。」
樹霧之介は下を向いて鱗を探してみるが見当たらない。
焔「なあ、鱗なら光るだろ。俺の炎で照らしてやろうか?」
樹霧之介「、、いえ、気にはなりますがその事はもういいんです。それよりも隠形鬼がどこに行ったか探りましょう。」
茂蔵「だけど、分かるのか?」
樹霧之介「負けっぱなしではいられません。それに他の場所で悪さする可能性もあります。」
真琴「もしかして浜名瀬さんに言われた事気にしてるの?」
茂蔵「おいら達には勝てないような事言っていたもんな。」
樹霧之介「それはいいんです。相性が悪いのは事実なんですから。」
風見「ワイが感知できれば戦えるのに、ごめん、、」
樹霧之介「風見は悪くないです。あれは、教えてもらっても反応できるような動きではないですから、、」
真琴「剣術使う妖怪なんて初めてだったものね。」
焔「なあ、見つけてどうするんだ?今のままでは勝てないんだろ?秘策はあるのか?」
樹霧之介「志乃さんは気配を消して奇襲すると言っていました。実体が消えてないのであれば周りに罠を仕掛けておけば引っ掛かるはずです。」
真琴「あの時は罠張る時間も無かったものね。」
雫「だけどそう簡単に引っ掛かるの?もしそれが浜名瀬さんなら罠を飛び越えそうだけど。」
焔「何で志乃と比べるんだ?」
雫「身近にいて刃物を使って戦うのが浜名瀬さんだけだからよ。」
焔「だけどあいつは特別だろ。比べても良いのか?樹霧之介もそう思うだろ。」
樹霧之介「いえ、雫の意見はもっともです。相手がしてきそうなことを考えて動かないといけません。情報が少ないので志乃さんを参考に考えましょう。」
風見「隠形鬼は探さなくても良いのか?」
樹霧之介「作戦立ててからでないと見つけても対応できないのでそっちから始めましょう。」
風見「分かった。」
???「見つけた。」
茂蔵「今誰か何か言ったか?」
風見「あいつの妖気を感じる。注意しろ。」
隠形鬼「鱗を持っていた木霊の小僧。お前に聞きたいことがある。」
隠形鬼はいつの間にか樹霧之介の後ろに回り樹霧之介の首に手を当てている。
聞きたいことがあると言っていた通り、殺す気はなさそうだ。
樹霧之介は近くの木の枝を操って隠形鬼を捕らえようとするが隠形鬼はそれをするりと抜け、樹霧之介から離れる。
樹霧之介「あなたに教える事はありません。逆にあなたの目的を話してもらいます。」
隠形鬼「威勢だけはいい。だが無防備に突っ立っている奴の言う事ではないな。」
その言葉と共に目の前の隠形鬼は消え、再度樹霧之介の後ろに現れる。
だがすぐに地面から木の根が生えて隠形鬼を絡めとった。
そこに真琴と焔が攻撃を仕掛ける。
樹霧之介「後ろにしか現れないあなたも大概ですよ。」
隠形鬼「ふん。」
隠形鬼は木の根を剣で斬って脱出すると2人の攻撃を避けてまた気配を消した。
どこから来てもいいように樹霧之介と虎に変化した茂蔵、真琴と焔、雫と風見で背中合わせになる。
樹霧之介「あなたは鱗の事を聞いてどうするんですか。」
???「それは我が命じたのだ。」
木の後ろから肉の塊に手足が付いたようなものが出てくる。
そしてそいつからあの異臭がしているようだ。
風見「こいつ妖力を感じないぞ。」
???「当然だ。我はそのようなものではない。」
樹霧之介「あなたは誰ですか?」
???「誰でもよかろう。それよりもあの鱗だ。貴様が持っていたあれの事を話してもらおうか。」
樹霧之介「何をそんなに必死になっているんですか?」
???「あの鱗1枚で、我の体の一部が戻った。ほんの少しだったが持ち主を取り込めば、我は再び人に還れるはずなのだ。」
樹霧之介「あなた、惣領と呼ばれてた人ですか?」
惣領「ほう、それを知っているとは。貴様、清埜と何らかの縁があるな?」
樹霧之介「それは、、」
惣領「気分が良かったゆえ久方ぶりに分身を遣わせてみたが、まさかこれほどの収穫があるとはな。貴様にはあやつをおびき寄せるため、手を貸してもらおうか。」
樹霧之介「誰があなたの言うことなんて聞くものですか!」
惣領「貴様らがここに在る。それだけで我には十分だ。」
樹霧之介「何をする気か知りませんが僕らを舐めないでください。」
樹霧之介は惣領に木の根を巻きつけ締め上げるがビクともしない。
惣領「それが貴様の限界か?」
真琴「そいつは分身なんでしょ。手加減なんていらないわよね。」
真琴が惣領の上に紙を出し、それに重いと硬いの文字を付与し、ギロチンの刃のように振り下ろす。
それは樹霧之介が巻きつけた根ごと惣領を真っ二つにし、赤黒い粘液をまき散らして肉塊と化した。
茂蔵「あんな事言っておきながらあっけないな。」
そう言いながら茂蔵は肉塊に近付く。
樹霧之介「まだ隠形鬼が残っています。警戒を解かないでください。」
茂蔵「悪い。」
茂蔵が樹霧之介の方を振り返ると赤黒い粘液が動き出す。
それに気づいた樹霧之介が叫ぶ。
樹霧之介「離れてください!」
樹霧之介が叫んだことにより茂蔵は肉塊の異常に気づき、赤黒い粘液が茂蔵に触れる前に跳んで避ける事ができた。
赤黒い粘液は肉塊に吸い込まれ、肉塊がぐにょぐにょと動き、集まると顔のない頭部が再び形成され、腕が、足が、ねじれるように生えてくる。
惣領「分身であろうと、我は消えぬ。それよりも貴様ら忘れているものはないか?」
その時、後ろに誰もいなくなった樹霧之介の背後に隠形鬼が現れて樹霧之介に蹴りを入れる。
樹霧之介は咄嗟に腕で防御したものの飛ばされ、惣領の近くの木にぶつかった。
そこに惣領が近付き、立とうとしていた樹霧之介の肩を掴む。
その手には弾力は無く、樹霧之介の肩を包み込むようなねっとりとした気持ち悪さがある。
樹霧之介は立ってその手を振り払おうと足に力を入れようとすると全身に痛みが走った。
樹霧之介「いっ!」
惣領「痛かろう。妖にとって霊力は毒、それを直に流したのだ。立てぬのも道理よ。」
茂蔵「止めろ!」
虎に変化した茂蔵が惣領に飛び掛かり爪と牙を立てるがそれは肉塊の中に吸い込まれていく。
離れようとしても肉塊は茂蔵を包み込み、口や鼻も塞ごうとしたところで風見が風の鎧を茂蔵に付与したがそれはすぐに消えてしまった。
真琴と焔は茂蔵を助けようとするが目の前に隠形鬼が現れ、2人を行かせないようにする。
樹霧之介「仲間を離してください!」
惣領「仲間の名を呼ばぬか。ふっ、清埜が少しは知恵を授けたか。」
樹霧之介「あなたには関係ありません!」
惣領「貴様の名を聞こう。応じるならば、多少は考えてやらんでもない。」
雫「駄目よ!こいつが名前を聞くって事は言霊を使えるって事でしょ。」
樹霧之介が考えている間にも茂蔵は口と鼻を塞がれて息ができずにぐったりとして、変化も解ける。
樹霧之介「僕は、、」
樹霧之介は小声で何かを呟く。
惣領「声が小さく聞こえぬ。我が耳に届くようにせよ。」
樹霧之介「、、、」
それでもぼそぼそと話す樹霧之介の声を聞こうと惣領が前屈みになった時、樹霧之介は惣領の後ろから木の根を伸ばして茂蔵を掴み、引っ張り出す。
そのまま雫の方に投げると雫は茂蔵をキャッチする。
樹霧之介「結界を!」
その声に応えて雫が結界を張り、その中に茂蔵と共に避難した。
惣領「小癪な真似を、、まあいい。」
惣領は自身の体から赤黒い胡桃大の真珠のような玉を出す。
樹霧之介「それは!?」
惣領「知っておるはずだ。貴様らがこれを呑んだ妖どもを狩って回ったのだからな。この呪いを解けたのは奴だけだ。そして、あやつは仲間を見捨てられぬ。ならば、ここに現れるのも道理というもの。」
樹霧之介はその場から離れようとするが惣領の肉塊は今度は樹霧之介を捕らえる。
惣領は樹霧之介の口に玉を近付け、樹霧之介は口を懸命に閉じる。
真琴は紙を飛ばし樹霧之介の口を塞ぐが惣領が触れるとそれはただの紙となり、はらりと落ちた。
紙の無くなった樹霧之介の口に惣領は玉を押し込み、口を塞ぐと樹霧之介は玉を呑み込んでしまう。
真琴「樹霧之介!」
惣領「それがこやつの名か。だが今となっては意味を持たぬな。」
樹霧之介「ウ、グゥ、、」
樹霧之介は苦しそうにその場でうずくまり、手の先から木の姿に変わっていく。
惣領はその場を離れ、姿を消すと同時に隠形鬼も消えた。
真琴と焔は樹霧之介の方に駆け寄る。
樹霧之介「近付かないでください!」
樹霧之介がそう怒鳴ると全身が木に変わり、大きくなる。
真琴と焔はそれに飲み込まれそうになったのですぐに後ろに下がるが周りの木がザワザワと不自然に動いたかと思うと樹霧之介を守るように巻き付き、さらに巨大になって、それと共に周りの木以外の物も巻き込み取り込まれていった。
真琴「逃げるよ!」
その声に結界内にいた雫と茂蔵も出てきてその光景に驚き、走り出す。
樹霧之介は雲に届くくらいの大きさとなると巨大化は止まったが近付く生物はみな木の根に捕まり、取り込まれていった。
そのため、真琴達は樹霧之介に近付く事ができずに眺める事しかできない。
茂蔵「なあ、どうするんだ?」
焔「志乃、呼ぶのか?」
雫「だけど、あいつの目的は浜名瀬さんなんでしょ?呼んでも良いの?」
焔「だけどさ、他に何とかできる奴いるのか?」
その言葉に全員が黙るが、しばらくして真琴が話し出す。
真琴「ねえ、あの肉団子のような奴。あいつ捕まえて樹霧之介を元に戻す事はできないかな?」
茂蔵「どうやって捕まえるんだ?あいつに触れば飲み込まれるぞ。」
真琴「私の紙で包むことができれば、、」
風見「あいつ多分、妖力を無効化できるぞ。ワイの鎧も真琴の紙だって無効化されたじゃないか。」
真琴「あ、、」
その時真琴は惣領が触った紙がただの紙に変わった事を思い出す。
焔「それに隠形鬼はどうするんだ?あいつ1人で俺と真琴止められたんだぞ。」
雫「こうしている間にもどこかで見ているかも、、」
真琴「私達がこうして話していられるのは浜名瀬さんを呼ぶために見逃されたから、、なのかもね。」
風見「浜名瀬はともかく。おやっさんには相談しようぜ。」
真琴「そうね。」
真琴が紐声環で黒根に繋ぐ。
真琴「樹霧之介のお父さん。」
黒根「なんじゃ?何かあったのか?」
真琴「うん。それでそこに浜名瀬さんいる?」
黒根「ここにはおらん。さっき山姥といつもの山に行ったがどうした?」
真琴「それなら都合がいいわ。あの、、」
樹霧之介が、通話先にいる黒根の息子があの玉を吞み込んで今暴れている事をどう伝えようか言葉が詰まる。
黒根「どうした?」
真琴「ごめんなさい、、私、何もできなかった、、」
黒根「何があった?まさか樹霧之介の身に何かあったんか?」
真琴「うん、、」
雫「樹霧之介が例の玉を呑み込んで今暴れてるの。」
言い出しにくそうな真琴の代わりに雫が横から説明する。
黒根「な、、なぜそうなったんじゃ?」
真琴「私達が浜名瀬さんと繋がりがある事を知って、浜名瀬さんをおびき寄せる為らしいの。」
黒根「あの鱗で知られたのか?」
真琴「あの鱗の事を聞きに私達を探していたのはそうなんだけど、肉団子に手足の生えたような奴が出てきたの。それに樹霧之介が惣領かって聞いたから。」
黒根「樹霧之介も迂闊じゃったな。」
茂蔵「それより、樹霧之介が大樹になっちまったんだ。どうしよう。」
黒根「志乃なら解呪できじゃろうがあいつはまだ解呪した後の反動を全て話していない感じじゃったし、志乃を狙う奴らもいるなら呼ばん方が良い。他にできそうな事といえば封印じゃが、志乃以外でできそうな奴は山姥かの。」
雫「元巫女みたいだし、できはしそうよね。」
真琴「だけどそれでいいの?樹霧之介、戻さなくても、、」
黒根「今は仕方がない。惣領を倒せれば解けるかもしれんし、安全な場所で志乃に解呪してもらってもいい。とにかく今は志乃を出さずにこの場を鎮めるんじゃ。」
真琴「そうね。」
黒根「山姥にはこっちから連絡する。お主らは被害が広がらんように樹霧之介を見張っておいてくれ。」
真琴「分かったわ。」
焔「そうは言ってもどうするんだ?俺らだって近付けば取り込まれるぞ。」
雫「外側は普通の木を操っているだけみたいだし、外側を燃やして小さくする事はできそう?」
風見「それならワイ、樹霧之介の本体がいる場所分かるで。」
焔「じゃあ、山姥が来る前に封印しやすい大きさにしようぜ。」
惣領「それではつまらん。清埜を呼ばないとなると貴様らはもはや不要だ。」
その言葉と共に焔の後ろに隠形鬼が現れ、首に向かって剣を振るうがそれは風見の風の鎧で防いだ。
風見「こいつ殺る気だぞ。」
惣領「我は木霊を操る。貴様には、こやつらの処理を任せる。」
真琴「樹霧之介に何をする気!?」
惣領「命尽きる者に語る意味はない。」
その時棒手裏剣が飛んできて惣領に当たると光と共に惣領の体が少しだけ縮んだ。
惣領「ぐ。封呪符か生意気な。」
志乃「これ以上お前に勝手をさせるわけないだろ。」
真琴「浜名瀬さん!?何で?」
惣領「呼ばずとも寄ってくるか。愚かだが都合がいい。」
志乃「好き勝手してくれたな。」
惣領「清埜の名、我が名に伏し、言に従え。」
雫「そうか、浜名瀬さんは名前を知られているから。」
惣領「動くな。」
志乃はそれに従う事なく、惣領に短刀を振り下ろす。
惣領「ふっ。流石に今は効かぬか。」
真琴「良かった、、」
その時真琴の紐声環に黒根から着信が入る。
黒根「おい、そっちに志乃は行っていないか?」
真琴「いるわ。今、惣領と対峙してる。」
黒根「遅かったか。山姥は封印の準備に時間が掛かると言っていた。志乃!それまで手を出すなよ。」
志乃「時と場合による。」
黒根「ああもう、お前は!」
山姥「早めに準備を終わらせる。」
黒根「すまん、頼む。」
そして通話は切れた。
真琴「それで浜名瀬さんはなんで来たの?」
志乃「山で修行中、樹霧之介の異常な妖気に5号が反応したんだ。山姥が紐声環で何か話している隙にこっちに来た。」
真琴「ここ、あの山にも近かったのね。」
志乃「それでお前、ぬっぺふほふか?」
惣領「昔そのような名で呼ばれた事もあったな。」
志乃「その姿で呪いをばら撒いていたのか。」
惣領「そうだ。本体が動けぬゆえ我は肉を裂き、分身を生み出した。そして肉饅頭を不老不死の妙薬として分け与えた。我の呪いは未完成のままだが収穫はあった。十分にな。」
そう言って大樹になった樹霧之介の方を見た。
志乃「あいつを元に戻せ。」
惣領「それは貴様がやればいい。水虎の呪いを解いたのも貴様だろう?」
志乃「何が目的だ。」
惣領「貴様、呪いで人魚になりかけたな?」
志乃「、、知らないな。」
惣領「そんなことはない。あの呪いは妖の姿を歪め、人を妖へと堕とすもの。人魚の血を引く貴様が変わらぬはずがなかろう。」
志乃「なら何故お前は妖怪にならない。」
惣領「我が呪いの大本、その源であるがゆえに小さな呪いの不利な効果など意のままに打ち消せる。お前もそうだろう?今人の姿でいられるのはお前の中の呪いがその効果を打ち消したからだ。」
志乃「不利と感じているなら何故その呪いを使う。」
惣領「我が呪いに足りぬのは人魚だ。 探しても見つからぬなら創るまで。だが今まではどれも失敗作だった。呪いに耐えられず我が望む人魚とは程遠いものばかり、、」
志乃「何故お前は不死を望む。」
惣領「どれほど才を誇ろうと、死ねばただの屍。その可能性が消えれば、我が天下に曇りはない。」
志乃「今は戦は無い。お前の活躍の場などないぞ。」
惣領「戦が無ければ、火種を撒けばよい。舞台が欲しければ、我が手で開幕させるまでだ。」
茂蔵「ウワァ!」
志乃が惣領を引き留めている間、真琴達は隠形鬼の相手をしていたが茂蔵が隠形鬼の攻撃を受けてしまった。
樹霧之介がいた時も防戦一方だったのに樹霧之介がいなくなった今、それも崩れそうになっていたのだ。
志乃「在るものを探そうとするな。無いものを感じろ。お前にはできるはずだ。」
志乃は風見に向かってそう言うと風見は少し戸惑っていたが目を瞑る。
そして目を瞑った風見に隠形鬼が攻撃を仕掛けるがその前に風見は自身に風の鎧を付与する。
隠形鬼「ほう。よく分かったな。」
風見「ワイは風の動きが分かる。例え吹いていなくても空気の流れはある。だが体中にはその流れは少ない。骸骨であるお前はその頭蓋骨の中くらいしか流れの無い場所はないが逆に他と区別がつくんだ。その流れの無い場所が分かればお前の位置は分かる。」
隠形鬼「なら何故最初からそうしない。」
風見「妖気と気配を探してたんだ。空気の流れで場所が分かるなんて思いつかなかった。」
茂蔵「カッコつけて説明したのにカッコついてないな。」
焔「その説明も長いうえによく分からないしな。」
風見「うるさいな!」
茂蔵と焔がヒソヒソ言った言葉を風見は聞いていたようで顔を真っ赤にして叫ぶ。
惣領「安心するのはまだ早いというのに。」
風見達の様子を見て肩の力を抜く志乃に向かって惣領は言い放つと惣領の体は赤黒い液体となって地面に溶け込み、その後に樹霧之介の大樹の枝が鈍く軋むような音をたてた。
何度かその音が聞こえた後に大樹の根が何本も地面から突き出るとそれは周りの木々を薙ぎ倒し、志乃達にも襲い掛かるが志乃はそれを結界で防いだ。
惣領「移動はできないがこの圧倒的な力よ。実に素晴らしい。」
その声は樹霧之介の大樹の方から聞こえた。
真琴「どういう事?樹霧之介は?」
惣領「奴は抵抗したが、やがて我が術中に沈んでいった。今は身を明け渡し眠っておる。救いたいのなら清埜、お前自身が来るがよい。」
茂蔵「罠だ!」
真琴「そうよ。樹霧之介のお父さんも手を出すなって言っていたでしょ。」
志乃「時と場合によると答えた。」
惣領「外野の声が耳障りだな。」
真琴達の足元の地面が盛り上がるとそこから根が生え、襲ってきた。
焔「おい、これ攻撃していいのか?」
風見「本体とは違う。燃やしてくれ。」
焔「分かった。焔爪!」
焔は炎の爪で木の根を焼き切り、茂蔵は熊に変化して爪で木の根を引き裂くがすぐに再生して襲ってきてきりがない。
唯一焔の炎で焼いた場所の再生は遅いが時間が経てば再生している。
真琴は紙で木の根を切るには時間が掛かるので紙で木の根をガードして雫と風見を守っていた。
そして木の根に集中すると隠形鬼が攻撃してくるがそれは風見の風の鎧で防御する。
志乃の方には攻撃が来ないのでこちらに来いという事だろう。
志乃は少し考えて大百足を呼ぶ。
大百足は呼ばれるとすぐに地中に潜り、しばらくすると出てきた根の一部が黒く変色して崩れていった。
焔「どうなってるんだ?」
志乃「本体とは繋がっていないみたいだから毒を流させてもらった。」
真琴「大百足ってそんな事も出来たのね。」
惣領「小癪な。隠形鬼、速やかに片付けろ。」
隠形鬼の攻撃が激しくなり防御は風見ができるが反撃まではできてない。
風見「浜名瀬。少し手伝ってくれないか?」
志乃「私は隠形鬼には手を出すなと言われているからな。口は出させてもらったが約束だ。そっちは何とかしてくれ。」
真琴「最初から手を出さなかったのはそういう事?」
志乃「私は先に樹霧之介の方へ行く。」
真琴「あ、ちょっと!」
志乃が樹霧之介の大樹の方に走り出そうとした時、木の陰から縄を担いだ山姥が飛び出し、志乃を止めた。
山姥「お前、何を考えている!」
志乃「もう来たのか。」
山姥「何をしようとしていたかを聞いている。」
志乃「樹霧之介からあの玉を出そうと思っている。」
山姥「どうやって。」
志乃「、、吐剤は使えそうにないから斬るしかないだろうな。」
山姥「お前にできるのか?」
志乃「やるしかないだろ。惣領が中にいれば封印もしにくい。」
山姥「無理に解呪しようとは考えていないんだな。」
志乃「私のせいで樹霧之介が苦しんでいるんだ。本当は解呪してやりたいさ。だけど惣領の思惑通りに動きたくもない。」
山姥「お前のせいではないが、、分かった。そう思っているのであれば手伝おう。」
志乃「まずは本体の所まで行きたい。外殻は大百足と3号、10号に頼もうと思う。」
山姥「根の攻撃もお前の大百足が何とかしてくれるだろう。他に問題があるのか?」
志乃「樹霧之介の攻撃が黒丸よりならそれで何とかなるだろうが柚子の技も使えるとなると少し面倒だ。」
山姥「何かあるのか?」
志乃「あいつは攻撃には使わなかったが、匂いを使って様々な効果を生み出す事ができた。」
山姥「もしかしてその中に相手の行動を制限するものがあるのか?」
志乃「柚子は他人を癒す事にしか使っていなかったがな。」
山姥「防ぐ方法は?」
志乃「私は10号の風で飛ばそうとは思うがそっちの方まで気遣えるか分からない。」
山姥「そういう事か。こっちは封印の準備しながら自分で結界を張って防ぐから気にするな。」
志乃「分かった。それでその縄で封印するのか?」
山姥「そうだ。お前のせいでそこまで長くできなかったがな。」
志乃「悪かった。外皮を削るのも任せてくれ。」
山姥「それくらいやってもらわないとな。これで囲めるくらいまで小さくしろよ。」
志乃「ああ。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




