表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
浜名瀬志乃の学び舎日誌  作者: 火乃香


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

80/92

73話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

陽葵(ひまり)は帰る途中、少し複雑な気持ちだった。

尾火(おび)白焔(はくえん)は師弟同士で尾火(おび)は弟子を信じて自分の仕事を任せて、白焔(はくえん)は鍛冶をできなくなった師匠を支えていた。

志乃(しの)と自分も師弟なのに志乃(しの)は自分に何の連絡もくれず、会おうとせず距離を置こうとしている。

そして今回、約束を破って迷惑をかけて初めて怒鳴られた。

そして志乃(しの)黒根(くろね)と自分の知らない話で盛り上がって余計に遠い存在に感じてしまった。

本当に私は志乃(しの)の傍にいていいのだろうか、志乃(しの)に会って何がしたいのだろうか、そんなこと前は考えすらしなかった。

最初は追いつこうと頑張っていたが時間が経つたびに追いつくことは無理だと悟り、自分は自分の道を行こうと思った。

だけどそれはもっと志乃(しの)と離れる選択だった。

それでも警察官になる夢を打ち明けた時、志乃(しの)は少し安心したような顔をした気がした。

初めから自分とずっと一緒にいる事は無いとは思っていたがその時自分が邪魔だったのではないかと思ってしまった。

それからは勉強しろと言われるたびに自分を遠ざけようとしているように思えて仕方がない。

そして突っ走ってしまった結果がこれだ。

しばらくは勉強に集中しよう、もう迷惑を掛けて嫌われないように。

ハラミ「なあ、大丈夫か?」

陽葵(ひまり)「うん。帰ったら高い缶詰出すね。」

ハラミ「それもだがいつもの元気はどこ行ったんだ?多少の失敗は笑い飛ばしていたじゃないか。」

陽葵(ひまり)「私、浜名瀬(はまなせ)さんに嫌われたかな?」

ハラミ「嫌いなら送るなんて言わないし、あいつは自分含めた人の気持ちに鈍感だ。知っているだろ。」

陽葵(ひまり)「そうだけど、もう少し私を見てほしい。」

ハラミ「それなら警察官になって見てもらえばいいだろ。そうすればあいつも無視できない。」

陽葵(ひまり)「大学卒業してからだから4年以上掛かるよ。」

ハラミ「留年したらもっとかかるな。」

陽葵(ひまり)「そしたら高卒でも警察学校行くもん。」

ハラミ「それであいつと会えるか?あいつは高校を中退したから大学にはいけない。あいつができなかった事をして見返してやろうぜ。」

陽葵(ひまり)「それもそうだね。浜名瀬(はまなせ)さんに高校を中退した事を後悔させよう。」

ハラミ「その粋だ。」

陽葵(ひまり)「そうと決まればこのままジョギングしてから帰ろうかな。」

ハラミ「は!?俺は先に帰るぞ。」

陽葵(ひまり)「いいじゃん付き合ってよ。暗くなったら1人じゃ危ないんだから。」

ハラミ「なら帰ればいいだろ。」

陽葵(ひまり)「ちょっとだけだからさ。お腹空かせて帰った方が缶詰美味しいよ。」

ハラミ「仕方ないな。」

一方、妖ノ郷(あやかしのさと)にある樹霧之介(きりのすけ)の家では志乃(しの)黒根(くろね)と話しながら樹霧之介(きりのすけ)達の帰りを待っていた。

志乃(しの)「遅いな。少し見に行こうか?」

黒根(くろね)「危なくなれば紐声環(ちゅうせいかん)に連絡が来るじゃろう。」

志乃(しの)「それもそうか。」

黒根(くろね)「信じて待とうじゃないか。」

志乃(しの)「ああ。」

黒根(くろね)「それはそうとお主、短刀が無くて大丈夫か?」

志乃(しの)「大丈夫とは?別に無くても戦えるぞ。」

黒根(くろね)「お主今は霊力が少なくて札で止めを刺せんから短刀を使っておるんじゃないのか?」

志乃(しの)「解呪が進んである程度は威力が戻った。急所に直接叩き込めれば十分に倒せる。」

黒根(くろね)「それでも難しいものはいるじゃろ。」

志乃(しの)「その時はその時だ。1週間後に取りに行くからそれまでは何とかするよ。」

黒根(くろね)「そうか。」

樹霧之介(きりのすけ)「ただいま。」

黒根(くろね)「おお、おかえり。」

志乃(しの)「おかえり。」

樹霧之介(きりのすけ)志乃(しの)さん、帰っていたんですね。」

志乃(しの)「ああ。そっちはどうだった?」

樹霧之介(きりのすけ)「今回は少し外見に特徴のある妖怪でした。」

志乃(しの)「どんな?」

樹霧之介(きりのすけ)「服を着た二本足の鹿の体に馬のような頭で片目、片耳に一本の角が生えていました。」

真琴(まこと)「その目も飛び出していて気持ち悪かったわ。」

(ほむら)「あと、腕がいっぱい生えてたよな。」

志乃(しの)「腕が生えていたのか。」

黒根(くろね)「それが無ければ馬鹿(うましか)だと思ったんじゃが。」

風見(かざみ)「それからそいつ倒したらこれが出てきたんだ。」

風見(かざみ)は胡桃大の赤黒い真珠のような玉を出す。

志乃(しの)「なら馬鹿(うましか)がその玉を呑んで腕が増えたのか?」

黒根(くろね)「そうかもしれんの。」

樹霧之介(きりのすけ)「その腕で連続で攻撃してくるので厄介でした。」

(しずく)「それでこの玉持って来て良かったの?」

志乃(しの)「玉だけだったら何もできないだろ。」

(ほむら)「だけど俺、そいつをずっと見ていると口に入れたいって思ってしまうんだ。」

(しずく)「そういうことは早く言いなさい!」

志乃(しの)「それなら精神攻撃をある程度防いでくれるお守りがあるから全員に渡しておく。」

(しずく)「助かるわ。」

志乃(しの)は9号に竹筒から人数分のお守りを出して渡す。

志乃(しの)「それとその玉は私が処分するから次も見つけたら持って来てくれ。」

風見(かざみ)「それならこれ渡しておくな。」

志乃(しの)「私からは風見(かざみ)にこれも渡しておく。」

志乃(しの)風見(かざみ)から玉を受け取ると9号に1つの巾着袋も持って来てもらい、それを風見(かざみ)に渡す。

風見(かざみ)「これは?」

志乃(しの)鎮封布(ちんぷふ)で作った巾着だ。この中に入れておけば簡単な封印状態になるから比較的安全に運べると思う。だから玉を見つけれる風見(かざみ)が持っていてくれないか?」

風見(かざみ)「任せろ!」

樹霧之介(きりのすけ)「それで志乃(しの)さんの方は何かあったんですか?河童(かっぱ)さん待っていたらいきなり走り出したじゃないですか。」

志乃(しの)河童(かっぱ)の奴が私と間違えて陽葵(ひまり)を連れて行っていたみたいで、行った先で水熊(みずくま)を起こしていたんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)水熊(みずくま)、確か植物系の妖怪ですよね。」

志乃(しの)「知っていたか。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。植物系の妖怪はある程度父さんから聞いています。大水を起こすとか聞きましたが大丈夫でした?」

志乃(しの)「長年封印されていて弱っていたからな。」

黒根(くろね)「それなのにこいつは短刀を折ったんじゃ。」

志乃(しの)「うるさい。1週間後に取りに行くんだからいいだろ。」

黒根(くろね)「それまであまり戦うなよ。」

志乃(しの)「無くても戦える。」

黒根(くろね)「それにお主は時間が解決するとは言ったが陽葵(ひまり)とはもう少し話した方が良い。」

志乃(しの)「、、分かってる。」

黒根(くろね)「お主の短刀が戻って来るまでそっちと向き合ったらどうだ?」

真琴(まこと)「何かあったの?」

黒根(くろね)「これはこいつの問題じゃ。真琴(まこと)は手出しするなよ。」

真琴(まこと)「分かったわ。」

志乃(しの)「もういいだろ。私は帰る。」

黒根(くろね)「ちゃんと向き合えよ。」

志乃(しの)「分かってる。」

全員解散し、それぞれ帰って行った。

数日後、志乃(しの)山姥(やまんば)と山に籠って修行していた。

山姥(やまんば)「この数日集中できてないようだが何かあったのか?」

志乃(しの)「別に。」

山姥(やまんば)「お前は隠そうとしていても分かりやすいんだ。話せ。」

志乃(しの)「私が教えてた奴と少し喧嘩しただけだ。」

山姥(やまんば)「それは人間か?」

志乃(しの)「ああ。」

山姥(やまんば)「お前が修行を始めた事と関係はあるか?」

志乃(しの)「別に、あいつが勝手をして私が少し叱っただけだ。」

山姥(やまんば)「それだけか?」

志乃(しの)「叱る時、少し感情的にはなった。」

山姥(やまんば)「お前、呪いを封印した時感情が薄くなったと言ってなかったか?」

志乃(しの)「ああ。だけど少しずつ戻っている気がする。」

山姥(やまんば)「良い事じゃないか。今日はもういいから少しそのお前の弟子と話をしてきたらどうだ?」

志乃(しの)「話す事は無い。」

山姥(やまんば)「天気の話でも何でもいい。行って来い。」

志乃(しの)「ちょ。」

志乃(しの)は半ば強引に山姥(やまんば)妖ノ郷(あやかしのさと)に戻され、そのまま突っ立っているわけにもいかず志乃(しの)は渋々学校前まで行く事にする。

2号で姿を消して待っていたが部活が終わる時間になっても陽葵(ひまり)は出てこなかったので不思議に思い陽葵(ひまり)の家に行く事にした。

陽葵(ひまり)の家に着くと陽葵(ひまり)の母親である美和(みわ)が出迎えてくれ、不安そうな顔をしていたが志乃(しの)を見た途端安心したような顔をする。

美和(みわ)浜名瀬(はまなせ)さん。良かった。」

志乃(しの)「何かあったのか?」

美和(みわ)「分かってきたわけじゃないんですか?」

志乃(しの)「いや、少し陽葵(ひまり)と話そうと思って来ただけだ。」

美和(みわ)「そうなの。陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんが学校辞めたって騒いでたからその事でしょうか?」

志乃(しの)「まあ、そんなところだ。それで陽葵(ひまり)はいるのか?」

美和(みわ)「それが一昨日から行方不明なんです。」

志乃(しの)「どういう事だ?」

美和(みわ)「土曜日の夜帰って来てから勉強を頑張っていたんですが、一昨日の夜に部屋に行ったらいなくなってました。ハラミも一緒にいなくなっていて、靴は無かったので自分から出て行ったんだとは思いますがあれから帰って来なくて。」

志乃(しの)「部屋を見てもいいか?」

美和(みわ)「はい。お願いします。」

志乃(しの)は2階にある陽葵(ひまり)の部屋に行くと微かだがハラミ以外の妖気が残っていたので竹筒から5号を出すとその妖気を辿ってもらう。

それは外に続いていて志乃(しの)は5号を追って行くとそこは小学校だった。

だが小学校には入らず、裏の方にいくと今は使われていない旧校舎があり、窓の一部の鍵が開いていたので5号はそこに入って行った。

3号に灯りを出してもらい志乃(しの)も旧校舎に入り廊下を進むと、途中でハラミが倒れているのを見つけて慌てて駆け寄るが寝ているようでいびきを掻いていた。

ハラミを調べると陽葵(ひまり)の部屋に残っていた妖気とは別の妖気を感じたので妖怪は2体以上いることが分かる。

志乃(しの)「めんどくさい事になったな。」

志乃(しの)はハラミを抱いて保健室のドアを開ける。

???「誰だ?」

首の長い着物を着たおじさんの妖怪が入って来た志乃(しの)を警戒する。

志乃(しの)火間虫入道(ひまむしにゅうどう)。そいつをどうするつもりだ。」

部屋にあるベッドの上で陽葵(ひまり)が寝ている。

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)「何だ。こいつの知り合いか?」

志乃(しの)「嫌がらせの度が過ぎるぞ。」

???「嫌がらせ?こいつは現実が嫌になった可哀そうな子だと言っていなかったか?」

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)枕返(まくらがえ)しの旦那。ち、違うんです。それはこいつの妄言ですって。おい、女。俺が嫌がらせでこいつを眠らせたなんて証拠は無いだろ。」

志乃(しの)「お前は夜なべしている人間の灯りを消して邪魔をしている奴だろ。自分が怠けていたからって他の人を巻き込もうとするな。」

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)「心を入れ替えたかもしれないだろ。」

志乃(しの)「こいつの親から最近夜も勉強を頑張っていたと聞いている。」

枕返(まくらがえ)し「どういう事だ。火間虫入道(ひまむしにゅうどう)。」

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)「へ、へへ。だがもう遅い。もう夢の中に入ったんだ。こいつは一生寝る事しかできないんだ。」

そう言って火間虫入道(ひまむしにゅうどう)は窓から逃げようと走り出すが志乃(しの)結界符(けっかいふ)を持った管狐(くだぎつね)を4体出し、火間虫入道(ひまむしにゅうどう)の目の前に結界を張ると火間虫入道(ひまむしにゅうどう)はそこにぶつかった。

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)「何だこれ。」

志乃(しの)は結界にぶつかって転んだ火間虫入道(ひまむしにゅうどう)を追い詰める。

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)「お、落ち付けよ。俺がいなくなったってあいつが起きるわけじゃないぞ。」

志乃(しの)「知ってはいるが人に危害を加える奴を放ってはおけない。」

火間虫入道(ひまむしにゅうどう)「ま、待て!」

志乃(しの)は問答無用で呪滅符(じゅめつふ)を張り攻撃すると火間虫入道(ひまむしにゅうどう)は白い煙となって消えていった。

それから志乃(しの)陽葵(ひまり)の寝ているベッドへ移動し、ずっと抱いていたハラミを陽葵(ひまり)と同じベッドへ寝かせる。

志乃(しの)「おい。枕返(まくらがえ)し。」

枕返(まくらがえ)し「騙されたとはいえお前の知り合いに危害を加えたんだ。罰は受けよう。」

志乃(しの)「私はこいつを連れ帰りたい。私も眠らせろ。」

枕返(まくらがえ)し「は?俺の術は魂を体から離して夢の世界に閉じ込める。戻れなければお前も死ぬぞ。」

志乃(しの)「こいつが眠って2日経っている。時間が無いんだ。」

魂が体から離れて3日経つと体と魂の繋がりが無くなってしまい、繋がりが無くなると体は死んでしまうのだ。

枕返(まくらがえ)し「そうだが、そこまでしてこいつを助ける理由はあるのか?」

志乃(しの)「助けるのに理由がいるのか?」

枕返(まくらがえ)し「、、そうだな。俺が間違っていた。」

志乃(しの)「それに私は不死だ。心配するな。」

枕返(まくらがえ)し「ありがとう。そんな嘘をついてまで俺の罪悪感を軽くしてくれるんだな。」

志乃(しの)「、、まあいい。始めてくれ。」

志乃(しの)は自分と陽葵(ひまり)の手の甲、ハラミのお腹に還路印(かんろんいん)を書いてから空いているベッドに横たわる。

枕返(まくらがえ)し「ちゃんと戻って来いよ。」

枕返(まくらがえ)しが志乃(しの)の枕に触ると志乃(しの)は眠りにつき、枕返(まくらがえ)しが枕を返すと志乃(しの)は夢を見始める。

そこは志乃(しの)が育った海辺で、志乃(しの)は子供になって魚を干していた。

志乃(しの)「ここからか。」

志乃(しの)は手を止めて歩き出す。

道に出てしばらく歩くと周りの景色が変わって白い空間に御馳走が山積みになっていて中央の方に向かうとその中でハラミが寝っ転がりながら御馳走を食べていた。

志乃(しの)「おい。」

ハラミ「おん?」

志乃(しの)「ここが夢の世界だって事は分かっているな?」

志乃(しの)に言われてハラミは少し考え、思い出す。

ハラミ「、、あ。そうか、俺。勉強中に急に外に出て行った陽葵(ひまり)を追いかけて学校に入ったら眠くなって、、」

志乃(しの)「気づけばいい。陽葵(ひまり)を探しに行くぞ。」

ハラミ「行くのは良いが、、」

ハラミは夢だと気づいて志乃(しの)の方に来たのはいいが名残惜しそうに御馳走の山を見つめる。

志乃(しの)「もう2日経っている。お前も危ないんだからさっさと行くぞ。」

ハラミ「マジか。」

ハラミは志乃(しの)の横に付き、一緒に歩いて行くとコンクリートの道に出て、そこを進むと保育園に着いた。

中に入るとお遊戯会の練習をしていて、それぞれ楽器を持ってタイミングよく鳴らしていた。

その中に陽葵(ひまり)がいなかったので、志乃(しの)は他の所を探していると、少し離れた部屋で陽葵(ひまり)の声が聞こえたので窓から見てみる。

そこでは陽葵(ひまり)が先生に抱きしめられて背中をさすられていた。

陽葵(ひまり)「消えちゃう。消えちゃうの。」

先生「はいはい。大丈夫だよ。先生はここにいるからね。」

志乃(しの)はお遊戯会に使われている楽器の中に鈴があった事を思い出す。

陽葵(ひまり)の父親が鈴の音と共に消えた事で鈴の音が怖いのだろう。

ただ陽葵(ひまり)は泣いて「消えちゃう」や「パパ」としか言っていないので先生は何で陽葵(ひまり)がパニックになっているのか分かってはなさそうだ。

そこに美和(みわ)が駆けつけて陽葵(ひまり)を抱き上げ、宥めると先生に説明をしている。

志乃(しの)もその部屋に入ろうとドアを開けるとそこは外になっていて目の前には小学校があった。

まだ新校舎はまだ無くて旧校舎では子供達が授業を受けている。

学校に入るとハンドベルの音が響いていた。

ハンドベルの音を頼りに音楽室へ行くと1年生だろうか、ハンドベルの練習をしていてその中にも陽葵(ひまり)もいる。

だが顔色は悪く、集中できてないようで間違えてばかりだ。

間違えるたびにからかわれているが作り笑いをして謝っている。

やせ我慢しているのは見て分かるが周りはあまり気にしてい無さそうだ。

それはいつも考え無しに突っ走っている陽葵(ひまり)とは考えられない姿だった。

志乃(しの)が音楽室に入ると先生や生徒が志乃(しの)に注目し、先生が志乃(しの)の目の前まで来てしゃがんで優しく話しかける。

先生「君、どこから来たのかな?見たところまだここにくる年齢じゃないよね。」

志乃(しの)「ん?そう言えばこの姿で来たのか。」

先生「あとここに動物連れて来ちゃだめだよ。」

ハラミ「俺の事見えてんのか。」

志乃(しの)「夢の中だからな。人も妖怪も関係ない。」

先生「大人の人はいる?それともお兄ちゃんかお姉ちゃんがここにいるのかな?」

志乃(しの)陽葵(ひまり)に用がある。」

先生「陽葵(ひまり)ちゃん?陽葵(ひまり)ちゃんは一人っ子だったはずだけど、、」

志乃(しの)は先生の横を通り過ぎて中に入り、陽葵(ひまり)の手を引く。

陽葵(ひまり)「え?誰?私知らないよ。」

志乃(しの)「お前、鈴の音苦手だろ。こんな所にいなくていい。外に出るぞ。」

陽葵(ひまり)「何で知ってるの?」

陽葵(ひまり)は不思議そうな顔をしながらも志乃(しの)に手を引かれて付いて行く。

先生も生徒も何も言わずただそれを眺めているだけだった。

誰もいない教室に入ると志乃(しの)陽葵(ひまり)に質問する。

志乃(しの)「お前、苦手なら苦手と言えばいいだろ。」

ハラミ「そうだそうだ。そんな性格じゃないだろ。お前。」

陽葵(ひまり)「そしたらまたお母さんに迷惑かけちゃうよ。お父さんがいなくなってからお仕事頑張っているのに邪魔はできないもん。」

今の陽葵(ひまり)志乃(しの)に異様に懐くのはこの時期に親に甘えることができなかったからずっと頼れる人を探していたのかもしれない。

そうは思ったがいつまでも一緒にいる事はできない。

志乃(しの)「そうか。だがあまり我慢しすぎるなよ。」

陽葵(ひまり)「大丈夫だよ。ありがとうね。」

これからの事を考えると突き放した方が良いのだろう。

このままでも連れて行けば夢から覚ます事は可能だ。

それでも志乃(しの)は少し考えてから大人の姿に戻り陽葵(ひまり)を抱きしめた。

陽葵(ひまり)「え?」

志乃(しの)「私はお前がいつも笑顔でいるからそれに甘えてお前の気持ちをあまり考えていなかった。それからいつも素直に要求を伝えてくるから本当にしてほしい事なんて考えた事も無かった。ごめん。」

陽葵(ひまり)「、、浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)「それでも私はやらないといけない事があるんだ。だから距離を置きたかった。」

陽葵(ひまり)「何かあるとは思っていたよ。浜名瀬(はまなせ)さんが何も言わないのも私を巻き込みたくないからでしょ。」

志乃(しの)「分かっているなら何で来るんだ。」

陽葵(ひまり)「今動かないと浜名瀬(はまなせ)さんがもっと遠くに行く気がしたの。だけど邪魔をしたくないからもう行かない。勉強に集中する。」

志乃(しの)「すまないな。」

陽葵(ひまり)「ううん。私こそごめん。私の事、嫌いになってないよね?」

志乃(しの)「面倒だと思う事はあるが嫌いになった事は無い。」

陽葵(ひまり)「、、勉強しろとか危ないからって帰らせようとするけど本当の理由は教えてくれないんだよね?」

志乃(しの)「悪いな。」

陽葵(ひまり)「ううん。私が手伝える事はないんだよね。」

志乃(しの)「そうだな。お前は自分の事だけ考えてくれ。」

陽葵(ひまり)「うん。それで浜名瀬(はまなせ)さんが安心できるなら。」

志乃(しの)「ありがとう。」

それから無言の時間が続いて、志乃(しの)陽葵(ひまり)から離れようとするが陽葵(ひまり)志乃(しの)を掴んで放さないので志乃(しの)陽葵(ひまり)が満足するまで動かない事にした。

陽葵(ひまり)「もっとぎゅってして。」

志乃(しの)は更に陽葵(ひまり)を抱き寄せる。

陽葵(ひまり)「頭撫でて。」

志乃(しの)は黙って陽葵(ひまり)の頭を撫でる。

陽葵(ひまり)「優しい言葉が欲しいな。」

志乃(しの)「、、調子に乗るな。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)の頬を引っ張る。

陽葵(ひまり)ひひゃい(いたい)。」

志乃(しの)「やっぱり子供の頬はやわらかいな。」

志乃(しの)は続けて陽葵(ひまり)の両頬を揉んでみる。

陽葵(ひまり)「やめへよ。自分で子供になってすればいいじゃん。」

志乃(しの)「自分と他人とでは違う。」

陽葵(ひまり)「ていうか私も元の大きさに戻りたい。どうすればいいの?」

志乃(しの)「ここは夢の中だ。自分の思った通りの姿になれる。」

陽葵(ひまり)「うーん。想像してもなれないよ。」

志乃(しの)「まあ、ここはお前の小学生の頃の記憶からできている夢の中だ。それに姿が引っ張られているんだろう。外に出れば嫌でも元に戻れる。」

ハラミ「そうだ。外では2日経っているんだろ早く出ようぜ。」

陽葵(ひまり)「ハラミもいたんだ。」

ハラミ「何だそれは。フラフラと外に出るお前を心配して追って来たんだぞ。」

陽葵(ひまり)「ごめんごめん。ありがとう。」

志乃(しの)「学校の廊下で寝ていたがな。」

陽葵(ひまり)「そうなの?」

ハラミ「わざわざ言わなくてもいいだろ。」

志乃(しの)「まあいい。行くぞ。」

陽葵(ひまり)「どこから出れるの?」

志乃(しの)「夢がどこから始まったか分かるか?」

陽葵(ひまり)「、、ごめん。よく覚えてない。」

ハラミ「俺もご馳走追いかけて走り回ったから場所は覚えてない。」

志乃(しの)「なら仕方ない。私の夢から出るか。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんの夢、、」

志乃(しの)「ここで時間を取ってしまったからな。そこまで時間は無いからさっさと出口に向かうぞ。」

陽葵(ひまり)「えー。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)の手を握り小学校から出て道に沿って歩くと波の音が聞こえてきて、周りの景色が変わり海辺の近くの道に出た。

陽葵(ひまり)「ここ、浜名瀬(はまなせ)さんの故郷の海?」

志乃(しの)「育った場所だな。確か家の中に出口があったはずだからそこまで行くぞ。」

陽葵(ひまり)「あれ?浜名瀬(はまなせ)さん、今の私よりも小さいよ。どうしたの?」

志乃(しの)は自身の夢に入った時に子供の姿になっていた。

志乃(しの)「子供の頃に住んでいた場所だから姿もそっちに引っ張られたな。まあいい、行くぞ。」

陽葵(ひまり)「可愛いね。」

志乃(しの)「黙って付いて来い。」

陽葵(ひまり)「はーい。」

陽葵(ひまり)志乃(しの)が育った場所を目に焼き付けておこうと周りを見渡しながら進むが目線を感じてそっちの方を見る。

陽葵(ひまり)「ねえ、あれ何?」

陽葵(ひまり)の指差した方向には白い煙のようなものが2つ、木の陰でうねうねしていた。

志乃(しの)「夢の世界にはあまり来た事が無いから分からないが現実世界に出れば関係ないだろ。」

陽葵(ひまり)「う、うん。」

陽葵(ひまり)は煙の方を気にしながらも志乃(しの)に手を引かれて志乃(しの)が住んでいた家の方へ向かうがその途中で声を掛けられる。

???「お主ら、この辺りに住まう童どもか?」

陽葵(ひまり)「え。誰?」

話しかけてきたのは白銀混じりの髪を持つ長身痩躯の男性で、質素な衣をまとってはいるが、背筋を伸ばしたその姿は武士のような威厳を漂わせ、口は笑っているが目は志乃(しの)の方を真っすぐに見つめている。

志乃(しの)はその顔に見覚えはなかったが声だけは聞いていた。

頭の中に響いた不快な声の主である惣領だ。

ここは夢の中であり、精神の奥深くでもあるため封印されているとはいえ志乃(しの)に付けられた印から夢の中に惣領が実体化したのだろう。

志乃(しの)「走るぞ!」

陽葵(ひまり)「え?何?何で?」

家の扉を開ければ現実世界だ。

だが志乃(しの)が扉に手をかけた瞬間、その男性が開かないように足で扉を押さえてしまった。

惣領「悲しいな。やっと顔を合わせられたというのに。何故逃げようとするのか。」

陽葵(ひまり)「この人誰なの?」

気味の悪い男性にハラミは威嚇をするが志乃(しの)はハラミの顔を手で隠し、それを抑える。

志乃(しの)「お前らには関係ない。隙を作るから早く行け。」

惣領「そやつは友か。お前もまた、親のように他の者を庇うのか。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんの両親を知っているの?」

志乃(しの)「こいつの話を聞くな。」

陽葵(ひまり)「何で?浜名瀬(はまなせ)さんはこの人の事知っているの?」

惣領「我はお前の大叔父であるというのになぜそうも警戒する。」

陽葵(ひまり)「え?」

志乃(しの)「お前が私の両親を殺したからだろ!」

陽葵(ひまり)「え!?」

惣領「我は手を下してはおらぬ。あやつらが勝手に崖下へ消えただけのことよ。」

志乃(しの)「お前が追い詰めたんだ。」

惣領「我はそこまで口にしてはおらぬ。誰がお前に言うた?」

志乃(しの)陽葵(ひまり)に意識がいかないよう話を続けながら扉に掛けている手に力を入れるが、能力も今の姿に引っ張られているのか、大人の男性が押さえる扉はビクともしない。

惣領「あの場には婆もいたと聞いた。途中で見失ったみたいだが。ふむ、やはりお前の母は隠すことだけは上手いらしい。」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん?」

志乃(しの)「お前らだけは逃がす。」

惣領「我が用はただ主1人にある。お前が大人しく従うのであればその後ろの女も猫も、どうでもよい。」

惣領は志乃(しの)に指を刺しながらそう言う。

その言葉に志乃(しの)は扉から手を離し、惣領の方へ一歩踏み出す。

陽葵(ひまり)「駄目だよ!?」

志乃(しの)「これは私の問題だ。お前らは先に行っていろ。」

惣領「殊勝な心掛けだが、誰1人として返すつもりなどないぞ。」

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ