72話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃、陽葵、大河童は土手に並んで座って話し合っていた。
ただ陽葵は体育座りして顔を見られないように膝に埋めて泣いてそれをハラミが慰めている。
大河童「それで、こいつの事なんだがよ。怖い目に遭っているんだ。師匠ならまずは慰めてもいいんじゃないか?」
志乃「こいつは何度も怖い目に遭っているのに私の言う事を聞かないんだ。」
大河童「それはこいつも悪いが、怒鳴らなくてもいいだろ。」
志乃「だが今回はもう少し遅ければ本当に死んでいた。」
大河童「それは、、何もできなかった俺も悪かった。」
志乃「はあ。まあ、お前の言う通りだ。私も少し頭に血が上っていた。」
大河童「落ち着いたようで良かったぜ。おめえに睨みつけられた時、背筋が凍ったからな。」
志乃「お前は何で陽葵を連れてきたんだ?陽葵は否定しなかったのか?」
大河童「今思えば何か言っていた気もするな。聞いてなかったけどな。ガハハ。」
志乃「笑いごとで済まない可能性もあったんだぞ。」
大河童「ハ、ハハ、、それで、あいつは何だったんだ?壺の蓋が開いたら急に出てきたぞ。」
志乃「あいつは水熊。木の妖怪で他の動物の皮を被ってそいつになりすまして生きている。」
大河童「なら他にも潜んでいる可能性があるのか?」
志乃「珍しい妖怪だ。他にはいないだろ。」
大河童「だがなんでこんな所に封印されていたんだ?」
志乃「昔この川は大水を出していなかったか?」
大河童「それなら昔長老に聞いた事があるぞ。穏やかな川なのに時折原因不明の大水が襲ってきたってさ。」
志乃「その原因が水熊で誰かが封印してそれが解けないように地面に埋めたんだろう。」
大河童「それが最近続いた大雨で出てきたってわけか。」
志乃「弱っていたおかげで今回は流される事は無かったがな。」
大河童「今回は?おめえ、もしかして前にも戦った事あるんか?」
志乃「あるぞ。その時は大水が起こって逃げられそうになった。」
大河童「そうか、何度もあんな奴と対峙しているなんて人は見かけによらないんだな。」
志乃「お前はあいつを退治する為に陽葵をここに連れてきたんだろ?」
大河童「壺を見てもらうだけだと思っていたんだ。」
志乃「大体はそれだけで済まないぞ。」
大河童「今回の事でよく分かった。それで少し思ったんだがあいつ、俺だけは襲ってこなかったな。」
陽葵「そう言えば、体を乗っ取るって言うなら体が一番大きい河童さんを狙うよね。」
志乃「水熊は背中から体の中に入るからな。背中に甲羅のある河童は避けたんだろ。」
陽葵「背中から、、」
陽葵は自分の背中を撫でて怪我をしたところを確かめる。
志乃「そう言えばお前は怪我していたんだったな。見せてみろ。」
陽葵「え、うん。」
志乃は陽葵の後ろへ回り4号から受け取った傷薬を背中に塗っていく。
陽葵「くすぐったい。」
志乃「痛くは無いのか?」
陽葵「浜名瀬さんに落とされた時のお尻の方が痛かった。」
志乃「自業自得だ。」
陽葵「いやいや、いきなり落とすのは違うよ。」
志乃「約束を破った罰だ。」
陽葵「罰受けたんなら怒鳴らなくても良かったんじゃないの?私、びっくりしたんだよ。浜名瀬さんが声荒げる事何てあまりなかったから。、、まあ、それだけ危なかったって事だよね。」
志乃「お前は軽い気持ちで妖ノ郷に来たのかもしれないけどな。」
陽葵「、、うん。ごめんなさい。だけど、浜名瀬さんがいなくなって、寂しくて、、」
志乃「どちらにしろ大学へ行けば別々だったんだ。それが少し早まっただけだろ。」
陽葵「心の準備も無しにいきなりいなくなるなんて思わなかったもん。」
志乃「いつまでも一緒というわけにはいかない。」
陽葵「そうだけど、いれる時はいたいよ。浜名瀬さんにとって短い時間かもしれないけど、私にとっては貴重な時間なんだよ。」
志乃「そうだ。私はお前達と同じ時間を生きる事ができない。」
陽葵「同じ時間を生きれないのは浜名瀬さんがそう生きようとしないからだよ。浜名瀬さんは他の人より他の人と生きれるんだからその分楽しい事だってあるはずだよ。なんでそれを避けようとするの?」
志乃は傷薬が塗り終わったので陽葵から手を離し傷薬を片付ける。
志乃「、、終わったぞ。」
陽葵「ねえ、どうなのさ。」
志乃「いいだろ。私の勝手だ。」
陽葵「なら私も勝手にする。」
志乃「それで今回死にかけたんだろ!」
陽葵「う。」
志乃「まあいい。ほら。」
志乃は12号が拾って来た数珠に使った主玉を補充して陽葵に渡した。
陽葵「あ、ありがとう、、それで浜名瀬さんの短刀、折れてたけど直るの?」
志乃「こいつを打った鍛冶師が今どうしているのか分からないから他の奴を探さないとな。」
大河童「それなら知り合いに鍛冶師がいるんだ。今回の詫びと礼に紹介させてくれ。」
志乃「なら頼む。こいつが無いと少し不便なんだ。」
大河童「おう!任せろ。」
陽葵「えっと。私は?」
志乃「帰れ。」
大河童「そう言うなって。そいつお前といたいんだろ。だったらしばらくはいいじゃねえか。」
志乃は陽葵の泣き腫らした顔を見て考える。
今回の事件は自分の監督責任でもあるからこのまま帰すのには罪悪感があった。
志乃「仕方ない。帰ったら勉強しろよ。」
陽葵「うん。」
大河童「そうと決まったら行くぞ。途中で温泉もあるから寄るか?」
陽葵が一番酷いが、さっきの戦闘で全員泥だらけになっていた。
陽葵「濡れて気持ち悪かったから入りたい!」
ハラミ「俺は入らなくていいからな。」
大河童「あそこの湯は怪我にも効くんだ、気持ちいいぞ。」
大河童は距離を取ろうとしたハラミを捕まえる。
ハラミ「放せ。俺は怪我してない。」
大河童「こっちだ。付いて来い。」
ハラミ「おい、無視するな!」
ハラミはしばらく暴れていたが無駄だと悟り、途中から静かになっていた。
そしてしばらく歩くと遠くの方から湯気が上がっているのが見える。
大河童「着いたぞ。ここだ。」
そこは岩場の中の天然温泉だった。
陽葵「あれ?仕切りや脱衣所は?」
大河童「あん?そんな物無いぞ。ここに来るのは俺らみたいな妖怪や野生動物くらいだからな。」
陽葵「え。河童さんも入るんだよね?」
大河童「もちろんだ。裸の付き合いと行こうや。」
陽葵「いや、河童さんは裸みたいなものじゃん。」
大河童「だけどあいつは入るつもりみたいだぞ。」
大河童の指差す先を見ると志乃が服を脱ごうとしている。
陽葵は慌てて志乃の所に走って行くと服を押さえた。
陽葵「ちょちょちょ。浜名瀬さん!?」
志乃「どうした?入るんだろ?」
陽葵「駄目だよこんなところで裸になるなんて。」
志乃「別に誰もいないだろ。」
陽葵「河童さんがいるよ!」
志乃「いつも裸みたいな奴がいてもな。あっちも気にしてないと思うぞ。」
陽葵「私が気にするの。」
志乃「分かった。裸でなければいいんだろ。」
志乃が竹筒に合図すると9号が麻でできたノースリーブのワンピースのような物を2着持って来た。
陽葵「何これ?」
志乃「湯浴み着だ。昔はこれを使ってよく黒丸と一緒に水浴びをしていた。」
陽葵「そう言えば修学旅行で樹霧之介のお父さんと水浴びしてたって言ってたような。」
志乃「裸は黒丸にも止められたからな。これならいいだろ。」
陽葵「うん、まあ、、」
大河童「話はまとまったか?俺らは先に入っているぞ。」
大河童は足音を殺してその場を離れようとしているハラミの首元を掴む。
ハラミ「放せ。俺は入らないからな。」
暴れるハラミを連れて大河童が温泉の方へ行くとザパンと大きな音とハラミの悲鳴が聞こえる。
志乃「着替えるか。」
陽葵「うん。」
陽葵が岩陰に行こうとした時、志乃はそのまま着替えようとしたので一緒に岩陰に連れて行って着替える。
陽葵「浜名瀬さんは何でそんなに羞恥心が無いの?」
志乃「いや、見てる奴いないだろ。」
陽葵「それでも駄目。」
志乃「まあいい。乾かさないといけないから先に服を洗う。先に行っていてくれ。」
陽葵「私をこの格好で河童さんと2人にしないでよ。」
志乃「ハラミもいるだろ。」
陽葵「邪魔しないから。」
志乃「分かった。」
志乃は陽葵を連れて近くの川で泥だらけの服を洗い、9号に紐を持って来てもらうとそれに服を掛け、木の枝に結び付けて10号の風を3号の炎で温め温風を作り、服を乾かす。
この場は3号と10号に任せて2人は温泉の方へ行くと諦めて湯船に浮いているハラミと気持ちよさそうに浸かっている大河童がいた。
2人はハラミの念力でお湯を掛けてもらい軽く汚れを落としてから温泉に入る。
陽葵「少し熱いけど気持ちいいね。」
大河童「そうだろう。」
志乃は陽葵の背中を見ていてその視線に陽葵が気が付く。
陽葵「浜名瀬さん何かあった?」
志乃「いや、沁みたりしてないか?」
陽葵「うん、大丈夫。」
志乃「上がったらもう一度薬を塗るぞ。」
陽葵「うん。」
ハラミ「俺のおかげでそれで済んだんだからな。約束忘れるなよ。」
陽葵「分かってるよ。高めの猫缶開けてあげるから。」
ハラミ「忘れるなよ。」
陽葵「しつこい。」
???「おや?先客かい?」
大河童「おお、尾火の旦那。久しぶりだな。」
そこにいたのは片目の老いた妖狐が二本足で立っていた。
尾火「河童の坊主も相変わらずだな。」
大河童「今、あんたの弟子の所に行こうと思ってたところでさ。」
尾火「鍋でも壊れたのか?」
大河童「いや、そこの人間が俺らの川を妖怪から守るために戦ってくれてな。その時にこいつの短刀が折れちまったんだよ。」
尾火は志乃達の方を見て驚いている。
尾火「お前、もしかして破魔凪か?」
志乃「久しぶりだな。」
陽葵「え。誰?知り合い?」
志乃「あの短刀の製作者だ。」
陽葵「ええー!」
大河童「ガハハ!そんな偶然あるんだな。うん?ちょっと待て。尾火の旦那が引退したのは100年以上前だったよな?」
尾火「こいつの短刀を打ったのは230年程前だったか。初めは信じてなかったが本当に不老不死だったんだな。」
大河童「不老不死?本当にそんな人間がいたんだな。」
尾火「その短刀少し見せてくれないか?」
志乃「今か?」
尾火「湯気があれど刀の状態は分かる。」
志乃「分かった。」
志乃は9号から短刀を受け取ると尾火に渡す。
尾火「これは、予想以上にポッキリいったな。」
志乃「すまないな。こいつには何度も助けられているが少し使い方が荒かった。」
尾火「いやいや、手入れも隅々まで行き届いていて大事にされている事はよく分かる。腰をやってしまって直せないのが残念だ。」
志乃「お前の弟子は直せるんだろ?」
尾火「そうだがこれは打ち直さないと無理だな。」
志乃「直らないと少し困るな。」
尾火「あの打刀と脇差はどうした?」
志乃「まあ、そっちを使っても良いが短刀の方が使いやすいんだ。」
尾火「折角赤鍛が打った一振なのにもったいないな。」
大河童「赤鍛って鬼鋼流の始祖だったか?」
尾火「そうだ。赤鍛は鬼との混血だと言われて人間から忌避されていたがその腕は確かで誰も来ない山奥に籠っては認めたものにしかその腕を振るわなかったがある日から技術を残したいと弟子を取るようになった人物だ。わしの3代前の師匠がその機会に弟子入りしてな、、」
大河童「こうなったら長い。のぼせる前に上がるぞ。」
志乃「年を取ると誰でも長話を話すようになるのか。」
大河童「昔の旦那は違ったのか?」
志乃「私の知っているこいつは無口で人と喋るくらいなら火を見ているような奴だった。」
大河童「はあ、今じゃ考えれねえな。」
尾火「槌を振るえなくなってから他の奴と交流する事だけが楽しみになったんだ。少しくらい付き合ってくれてもいいだろ。」
大河童「聞こえてたか。」
尾火「お前はこれまでどうしていたんだ?教えてくれよ。」
志乃「昔は聞こうともしなかったじゃないか。」
尾火「年寄りの道楽だと思ってさ。」
志乃「私はお前より生きているんだが。」
尾火「細かい事は気にするな。」
それからしばらく会話をしていると陽葵がのぼせてきたので、志乃は9号にタオルを持って来てもらい、陽葵の背中に薬を塗ってから陽葵と共に着替えると大河童達と共に鍛冶場に向かう。
尾火「戻ったぞ。」
???「師匠、お帰りなさい。お客さんですか?」
尾火「ああ。河童は知っているだろ。それから、わしが昔刀を打った奴と、その弟子。連れてる猫又は弟子の式神だ。」
???「私は尾火の弟子の白焔といいます。えっと、そちらの方、人間ですよね?師匠が引退したのは100年以上前だったはずでは?」
尾火「こいつは不老不死で赤鍛とも顔見知りなんだ。」
白焔「は!?そんな人間いるんですか?もしかして師匠、ボケが始まってます?」
尾火「失礼な!おい、破魔凪。あれ見せてやれ。」
志乃「良いが。今は浜名瀬志乃と名乗っている。そっちで呼んでくれ。」
尾火「分かった。浜名瀬だな。」
志乃「ああ。」
志乃は9号に打刀と脇差を持って来てもらい白焔に渡す。
白焔「これは、確かに本物みたいですが刀を持っているだけでは?」
尾火「少し分解しても良いか?」
志乃「良いが、そこまでする事か?」
尾火「ボケたと言われたんだぞ。俺はボケてないと、こいつにきっちり教えてやる。」
志乃「お前だって最初は信じなかったじゃないか。」
尾火「そりゃあ、200年以上前に死んだ奴と顔見知りの人間とか信じられるか。」
志乃「そういうものだ。」
尾火「だがお前は茎を見せてくれただろ。」
志乃「そうしないと打ってもらえそうになかったからな。」
尾火は刀を分解し茎を見せるとそこには赤鍛の名の裏に為破魔凪作と刻んであった。
白焔「破魔凪ってさっき師匠が呼んでいましたね。」
尾火「そう、これは堅物と呼ばれていた赤鍛がこいつに打った物だ。」
白焔「なら赤鍛の事、色々知っているんですよね。」
志乃「ああ。」
白焔「少し聞かせてくれませんか?」
尾火「まだ疑っているのか?」
白焔「はい、少し。だけど鬼鋼流の始祖の話を聞きたいという気持ちの方が強いです。」
尾火「まあ、俺も昔はあまり話を聞かなかったからな。改めて聞きたいな。」
志乃「私は短刀を直してもらいたいんだが。」
尾火「打ち直しだろ。半年は掛かるんだから少しくらい誤差だ。」
志乃「半年掛かるのか?」
白焔「普通はそのくらいだ。そんな事も知らないのか?」
志乃「いや、あいつは1週間でやってくれたから今回もそのくらいだと思っていたんだ。」
尾火「赤鍛ならあり得る話だな。」
志乃「半年か、、」
尾火「急ぎなのか?」
志乃「いや、あれば便利だが無いなら無いで戦いようはある。」
尾火「打刀はいらないんだったな。」
志乃「ああ。赤鍛のがあるからこれ以上はいいな。」
尾火「ちょっと待ってろ。」
尾火は鍛冶場の奥へ行くと一振の打刀を持って来た。
白焔「それ、師匠が最後に最高の物を作るって言って打ったやつですよね。」
尾火「これを短刀に加工する。」
白焔「は?何で。」
尾火「こいつは、この赤鍛の刀を超えたくて打った物だ。だが分かった。俺に赤鍛は超えれない。」
白焔「でも師匠。この刀の出来に満足していたじゃないですか。」
尾火「俺はこれを打つのに1年以上掛かっている。1週間じゃ無理だ。」
志乃「確かに私はこれを折って打ち直してもらったが初めから作るのとは違うんじゃないのか?」
白焔「打ち直しってのは一度溶かして鉄を鍛える事から始まる。初めから作るのと変わらないんだ。」
志乃「そうだったのか、そっちには疎くて変な事言った。すまん。」
尾火「いや、お前さんは悪くない。赤鍛がそれほどの人物だという事だ。」
白焔「一応ここも鬼鋼流なんですよね。その技術はもう無いんですか?」
尾火「始祖である赤鍛は鬼の血が入っていて力が強く体力もあった。それを俺らは真似できなかったんだ。」
白焔「生まれから違うのであれば仕方ないんでしょうね。」
尾火「それでも同じような刀は作れる。違っていても良いさ。俺らは俺らができることをすればいい。」
白焔「はい。」
尾火「俺は外装を作る。お前は短刀に仕上げてくれ。1週間で仕上げるぞ。」
白焔「師匠もやるんですか?」
尾火「腰は使えんが俺でもまだできる事はある。」
白焔「分かりました。やりましょう!」
志乃「えっと。そこまでではないんだが、、」
白焔「師匠が腰を痛めてからここまでやる気を出すのは初めてです。破魔凪さんありがとうございます。1週間後にまた来てくださいね。」
志乃「え、あ、うん、、」
尾火「白焔何やってる!準備しろ!」
白焔「はい!」
尾火と白焔は既に志乃の声は聞こえておらず、作業に没頭し始めた。
大河童「こんな尾火の旦那、初めて見る。」
志乃「昔に戻っただけだ。弟子の方も似ているな。」
陽葵「ねえ、浜名瀬さん。前から思っていたんだけど破魔凪って何?」
志乃「私の昔の通り名だ。今は関係ない、忘れろ。」
陽葵「そう言えば黒歴史なんだっけ?」
志乃「本気で記憶消す事を考えた方が良いのか?」
陽葵「あ、嘘嘘。もう言わないから。」
志乃「そうしてくれ。するとしたらお前の霊力を封印してから高校生活の記憶ををまるっと消すか、私を別の人物に置き換えて印象を操作しなくてはいけない。どちらもめんどくさいんだ。」
陽葵「ならやらなきゃいいじゃん。」
志乃「それはお前次第なんだよ。」
ハラミ「そうなると俺はどうなるんだ?」
志乃「お前は普通の猫として暮らすか猫の国に戻さないといけなくなるな。陽葵の両親の記憶も操作しないといけないし、めんどくさいな。」
陽葵「いやいや、消す方に考えないで。」
志乃「次連絡なしに妖ノ郷に入ったら本当に消すからな。」
陽葵「分かったよ。浜名瀬さんは無理そうだからまこ姉にでも連絡して行こうかな。」
志乃「この前みたいに話している途中で切ったりするなよ。」
陽葵「あ、はい。ちゃんと最後まで話を聞いて行ってもいいか聞きます。」
志乃「来るなと言われたら諦めろよ。」
陽葵「う、だけど最後に来ても良いって言われたら?」
志乃「来るなと一言言われたらすぐに諦めろ。」
陽葵「分かったよ。意地悪。」
志乃「お前を守るためだ。それに勉強しなくていいのか?大学に落ちるような事があれば合格するまで妖ノ郷に入らせないしあの札も使わせないぞ。」
陽葵「えー。」
志乃「受かればいいだけだろ。」
陽葵「むー。」
ハラミ「何か唸る事しかできなくなったな。」
大河童「仲直りも出来たみたいだな。そろそろ帰るか?」
志乃「そうするか。」
陽葵「あ、私も何か打ってほしいんだけど頼んだら駄目かな。」
志乃「必要ない。」
陽葵「護身用にさ。浜名瀬さんみたいな短刀欲しいよ。」
志乃「どうやって持ち運ぶんだ?今は銃刀法という物があるんだろ。」
陽葵「それもそうか、せめてハラミが幻覚使えたらな。」
ハラミ「お前が短刀を使って華麗に敵を倒す想像がつかないぞ。」
陽葵「練習すれば私だって。」
志乃「どちらにしろお前に短刀は向いていない。警察官になるなら警棒を習え。」
陽葵「似たようなものでしょ。」
志乃「用途が違う。」
陽葵「なら浜名瀬さんが教えて。」
志乃「今は私も修行しているから時間が無いんだ。」
陽葵「いつなら良いの?」
志乃「さあな。」
陽葵「その修行っていつ終わるの?」
志乃「私も分からないから約束はできない。」
陽葵「むー。」
志乃「膨れるな。そろそろ日が暮れるんだから帰るぞ。」
陽葵「分かったよ。」
志乃達は河童の川で大河童と別れて妖ノ郷に戻った。
樹霧之介の家に行くと樹霧之介は風見が感じた妖気の正体を探りに行っていて、家にいたのは黒根だけだった。
黒根「帰ったか。」
志乃「ああ。」
黒根「それで何故陽葵もおるんだ?」
陽葵「あ、えっと。えへへ。」
志乃「こいつまた勝手にここに来ていたみたいでな。河童が私と間違えて連れて行っていたんだ。」
黒根「まあ、志乃も来る度に叱りはするが対策はせんだからの。」
志乃「今度翠嶺町の出入り口を山姥にハラミの妖力では通れないようにしてもらおうと思う。」
陽葵「それ決定事項なの!?」
志乃「言っても聞かないなら仕方ないだろ。」
陽葵「もう連絡せずに来ないって言ったじゃん。」
志乃「連絡すれば連絡した奴に入れてもらえばいいだろ。」
陽葵「そうだけど、、」
志乃「今回死にかけたんだから自重しろ。」
陽葵「う。」
黒根「何があったんじゃ?」
志乃「水熊が出たんだ。こいつもう少しで皮を取られそうになっていたんだぞ。」
黒根「あいつか。大水が厄介だったな。」
志乃「今回は弱っていたからなかったけどな。」
黒根「その割には遅かったの。」
志乃「短刀を折ってしまってな。河童の知り合いの鍛冶師の所に行っていたんだ。」
黒根「そう言や、前の水熊の時にも刀を折っておったの。」
志乃「逃げられそうになって判断を誤ったんだ。」
黒根「その時の鍛冶師は赤鍛じゃったかの。」
志乃「その技術を継いだ奴に短刀を打ってもらったと言っただろ。河童から紹介された鍛冶師がその短刀を打った奴の弟子だった。」
黒根「おお、それは偶然じゃの。」
志乃「本当にな。」
陽葵「あの、私そろそろ帰るね。」
志乃「なら送るか。」
陽葵「いいよ。ハラミもいるし自分で帰れる。」
志乃「そうか。」
陽葵はハラミを連れて帰って行った。
黒根「何かあったのか?」
志乃「死にかけていたあいつの気持ちも考えずに怒鳴った。」
黒根「約束を守らないあいつも悪いが、お主も軽率だったな。」
志乃「だけど最後の方は元の調子を戻していると思ったんだけどな。」
黒根「あいつはたまに自分の気持ちを隠す事があるからの。そこら辺はお主と似ておる。」
志乃「隠しきれてない事が多いけどな。」
黒根「それでもお主は気づかんことの方が多いじゃろ。」
志乃「うるさい。」
黒根「追わくんて良いのか?」
志乃「時間が解決してくれるだろ。」
黒根「、、そうかのう。」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。




