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浜名瀬志乃の学び舎日誌  作者: 火乃香


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71話

この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。

オリジナルの妖怪が登場することもあります。

素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。

志乃(しの)達が陽葵(ひまり)の部屋でペットに病気を運ぶ妖怪をおびき寄せるために血梅香(ちばいこう)を焚いていると部屋外にまで妖怪が来た気配がする。

中までおびき寄せるために囮であるハラミ以外の3人は2号の幻で姿を隠して様子を見ていると黒い小さな影がドアの隙間から部屋の隅を伝ってハラミに素早く近づいて行く。

ハラミはその影に気づくと目で追っていてハラミに飛び掛かろうとした時、ハラミは念力でその影の動きを止める。

ハラミ「おい、こいつなのか?」

志乃(しの)「そうだと思うが、小さいな。」

鼠と狸を足して2で割ったような黒い生物が空中で手足をパタパタ動かし、2本の牙を見せて威嚇する。

志乃(しの)「妖気はちゃんと牛打(うしう)(ぼう)だな。」

牛打(うしう)(ぼう)「クソッ!こんな美味そうな獲物を前に何で。放せ。」

志乃(しの)「お前か?最近ペットを病気にしているのは。」

牛打(うしう)(ぼう)「少し血を貰っただけだ。後のことは知らん。」

志乃(しの)「お前のせいで家族を亡くしている人がいるんだ。」

牛打(うしう)(ぼう)「この辺牛がいないから仕方ないだろ。俺だって栄養が取れなくてこんな体になったのにさ。」

志乃(しの)「そうか。」

志乃(しの)は9号から短刀を受け取って牛打(うしう)(ぼう)を斬ると牛打(うしう)(ぼう)は白い煙となって何も残さず消えた。

陽葵(ひまり)「これで終わり?」

志乃(しの)「まだだ。病気になっている動物を見つけて薬飲ませないと。」

陽葵(ひまり)「元凶がいなくなったのに病気治らないの?」

志乃(しの)「呪いなら解呪される事も多いが、既に罹ってしまった病気は治らない。」

樹霧之介(きりのすけ)「僕達も手伝いましょうか?」

志乃(しの)「だがどこにいるか分かるのか?」

樹霧之介(きりのすけ)風見(かざみ)に手伝ってもらいます。」

陽葵(ひまり)「私も近くにいたら分かるよ。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)達は人に見えないからいいがお前はどうやって飲ませるんだ?」

陽葵(ひまり)「それなら浜名瀬(はまなせ)さんだって。」

志乃(しの)「私は4号に飲ませてもらう。」

陽葵(ひまり)「なら私はハラミに手伝ってもらうもん。」

志乃(しの)「お前にしては頭が回るな。」

陽葵(ひまり)「それ褒めてる?」

ハラミ「俺まだ働かないといけないのか?」

それから志乃(しの)達は3組に別れて病気のペット達に薬を飲ませて回った。

それが終わる頃には夕方になっていてそれぞれ帰路に着く。

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)樹霧之介(きりのすけ)の家に行き、黒根(くろね)に今回の事を話す。

黒根(くろね)牛打(うしう)(ぼう)がそんな変化(へんか)をしていたとはのう。」

志乃(しの)「今までは出てこなかったのか?」

黒根(くろね)「知っている範囲ではおらん。」

樹霧之介(きりのすけ)「他にもこんな変化(へんか)している妖怪がいるんでしょうか。」

黒根(くろね)「そう言えば今回は玉は出てこなかったのか?」

志乃(しの)「出てこなかったな。」

黒根(くろね)「そうか。」

そこで戸が叩かれる。

山姥(やまんば)志乃(しの)はこっちか?」

志乃(しの)「どうしたんだ?」

樹霧之介(きりのすけ)「入って来てください。」

山姥(やまんば)「邪魔するよ。何話してたんだ?」

樹霧之介(きりのすけ)「今日、牛打(うしう)(ぼう)が出たんです。本来より大きさが違ったみたいで話し合っていたんです。」

それを聞いた山姥(やまんば)の顔が強張った。

山姥(やまんば)「それは志乃(しの)も行ったのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「え?はい。」

山姥(やまんば)「あの玉は出てきたのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「いえ。だけど病気が広まって治すのが大変でした。」

山姥(やまんば)志乃(しの)、用事は終わったのか?」

志乃(しの)「ああ。」

山姥(やまんば)「ちょっと来い。」

志乃(しの)「どこ行くんだ?」

山姥(やまんば)「お前の屋敷に行こう。2人で話したい事がある。」

志乃(しの)山姥(やまんば)隠里(かくれざと)にある屋敷に移動し、到着した途端山姥(やまんば)志乃(しの)に向かって怒鳴った。

山姥(やまんば)「馬鹿者!何を考えているんだ。」

志乃(しの)「お前が心配している事は無かっただろ。」

山姥(やまんば)「今回はな。もしそいつがあの玉を呑み込んでいたらお前の居場所がバレて仲間も危険になるんだぞ。」

志乃(しの)「それでも私が動かなければ変に思われる。」

山姥(やまんば)「お前の心配がそれなら私はこの事を話すぞ。」

志乃(しの)「、、分かった。次から気を付ける。」

山姥(やまんば)「今度から修行の時間を増やそう。そうすれば行かなくていいだろう。」

志乃(しの)「なら何かありそうな時は山に籠るか。」

山姥(やまんば)「ああ。そうしてくれ。」

それから数日後、治った禅釜尚(ぜんふしょう)槍毛長(やりけちょう)虎隠良(こいんりょう)を連れてお礼の呪具を持って来た。

この時は黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)の2人が対応し、3人は早々に帰って行った。

樹霧之介(きりのすけ)はその呪具を他の仲間に配る。

復帰して初の作業だったため調子に乗り作り過ぎたようで真琴(まこと)(しずく)(ほむら)茂蔵(もぞう)風見(かざみ)それから樹霧之介(きりのすけ)本人と黒根(くろね)が持っても3つ余った。

樹霧之介(きりのすけ)はそこから2つを持って志乃(しの)が修行している山に行くと、志乃(しの)山姥(やまんば)と地面を見ながら何かをしていた。

樹霧之介(きりのすけ)「今大丈夫ですか?」

志乃(しの)「あ、待て、止まれ。」

樹霧之介(きりのすけ)「え?」

志乃(しの)の注意が遅く、樹霧之介(きりのすけ)が一歩踏み出すと樹霧之介(きりのすけ)の動きが止まる。

樹霧之介(きりのすけ)「え、あれ?動けない。」

次の瞬間中央の石が光ってそれに樹霧之介(きりのすけ)が吸い込まれそうになったので志乃(しの)は慌てて足元の石を蹴って動かすとそれは止まり、樹霧之介(きりのすけ)は尻もちをついた。

樹霧之介(きりのすけ)「何ですか?これ。」

志乃(しの)「石を使った封印術で輪の中に入った妖怪の動きを止めて封印する術なんだが、今はどこまで範囲が広げられるか試していたところだ。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)近づき手を差し出すと樹霧之介(きりのすけ)はその手を掴んで立ち上がり周りを見る。

樹霧之介(きりのすけ)「そう言えば石が輪になってますね。気づきませんでした。」

山姥(やまんば)「気づかれれば避けられる可能性があるからそういう術も同時に掛けるんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「何で石なんですか?」

山姥(やまんば)「山伏は山を渡っているから山にあるものを媒介にする事が多いんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「旅するなら持ち物は最小限にしたいですもんね。」

志乃(しの)「それで何しに来たんだ?」

樹霧之介(きりのすけ)「あ。そうでした。さっき禅釜尚(ぜんふしょう)さん達が来て約束の呪具を持って来てくれたんです。」

志乃(しの)「もうできたのか、紐声環(ちゅうせいかん)。」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。それで志乃(しの)さんにも1つ持っていてほしくて、、」

樹霧之介(きりのすけ)が持って来たのは金属を布でくるんで紐を付けたお守りのような形で中央には捌の文字が書かれている。

志乃(しの)「捌、、こんなに作ってくれなくても良かったのに。」

樹霧之介(きりのすけ)「実は全部で10個持って来てくれたんです。それで山姥(やまんば)さんも1つ持っていてください。」

樹霧之介(きりのすけ)山姥(やまんば)に玖と書かれと書かれた紐声環(ちゅうせいかん)を渡す。

山姥(やまんば)「私もか?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。山姥(やまんば)さんは今妖ノ郷(あやかしのさと)を管理してくれているので何かあった時の連絡に使ってください。」

山姥(やまんば)「あい、分かった。」

樹霧之介(きりのすけ)「それで壱が父さん、僕は弐です。」

樹霧之介(きりのすけ)は自身の首に掛けた紐声環(ちゅうせいかん)を見せる。

樹霧之介(きりのすけ)「それから参が風見(かざみ)で肆が真琴(まこと)、伍が(しずく)で陸が(ほむら)、漆を茂蔵(もぞう)が持っています。捌と玖は見ての通り志乃(しの)さんと山姥(やまんば)さんですね。拾は今のところ使うものがいないので予備として置いておきます。」

志乃(しの)「そうか。」

樹霧之介(きりのすけ)「それで父さんに電話してみてくれませんか?」

志乃(しの)「今か?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい、何か聞きたいこともあるみたいなので動作確認として使ってみてください。」

志乃(しの)「分かった。黒丸(くろまる)は壱だったな。」

これは妖力を使うので志乃(しの)は1号を竹筒から出して黒根(くろね)に繋げてもらう。

志乃(しの)黒丸(くろまる)。」

志乃(しの)が呼びかけると紐声環(ちゅうせいかん)から黒根(くろね)の声が聞こえる。

黒根(くろね)「おお、志乃(しの)か。樹霧之介(きりのすけ)は無事に届けれたんじゃな。」

志乃(しの)「それで聞きたい事って何だ?」

黒根(くろね)「今河童(かっぱ)が来ておってな、変な壺を見つけたから調べてほしいとの事なんじゃ。今時間はあるか?」

志乃(しの)「今封印術の研究していて所々に仕掛けてあるんだ。放置はできないから片付けないと。」

樹霧之介(きりのすけ)「え。もしかしてあれ、他にも仕掛けてあるんですか?」

志乃(しの)「術を張るのに夢中になってしまってな。」

山姥(やまんば)「こいつ、教えた術を詳しく知ろうとして色々試すんだ。本当に血は争えないな。」

樹霧之介(きりのすけ)「もしかして志乃(しの)さんのお母さんもそうだったんですか?」

山姥(やまんば)「懐かしいよ。お互いに教えあった時、あいつも教えた傍からすぐに吸収してな。それを使って新しい術まで作っていた。」

樹霧之介(きりのすけ)「凄い人だったんですね。」

山姥(やまんば)「一度考えだしたら周りを見ずに色々試していたよ。今のこいつのようにな。」

黒根(くろね)「なんじゃ。こいつがたまに何かに集中しとったのは親譲りか。」

志乃(しの)「その話はもういいだろ。それより黒丸(くろまる)河童(かっぱ)の方はいいのか?」

黒根(くろね)「そうじゃ。ちょっと話してくる。」

志乃(しの)「ちなみにその壺は壊れたり妖気が漏れたりしているのか?」

黒根(くろね)「ちょっと待ってくれ、それも聞いてみる。」

それから足音が遠ざかると遠くて内容までは分からないが話し声が聞こえる。

紐声環(ちゅうせいかん)は少し大きく黒根(くろね)は持てないので少し離れた場所に置いてあるようだ。

黒根(くろね)「壺は壊れたりはしておらんようじゃ。ただ札で封がされていて重くて動かせず、壺のある場所が河童(かっぱ)が住む川の近くで危ないものが封印されている物だったら怖いからハッキリさせたいそうじゃ。」

志乃(しの)「そこまで急ぎではないんだな。」

黒根(くろね)「ああ、河童(かっぱ)の方も時間がある時で良いと言っておる。いつなら行けそうじゃ?」

志乃(しの)山姥(やまんば)、修行1日休んでも良いか?」

山姥(やまんば)「でもな、、」

渋る山姥(やまんば)志乃(しの)は小声で話す。

志乃(しの)「あいつは封印された妖怪に干渉できないだろ。」

山姥(やまんば)「そうだな。だが河童(かっぱ)にも注意しろよ。」

志乃(しの)「ああ。呪いの気配だけは常に気を付けるよ。」

山姥(やまんば)「そういう事なら良いだろう。だがこの山を片付けてからにしてほしい。」

そこには積み上げられた石や意味深に並べられた木の枝などがいくつもあった。

志乃(しの)「、、やり過ぎたとは思っている。」

山姥(やまんば)「これは1日掛かるぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「崩せばいいだけじゃないんですか?」

志乃(しの)「術を完全に消さないといけないから少し時間がかかるんだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「なにか手伝いましょうか?」

志乃(しの)「止めておけ、さっきのようになるぞ。」

樹霧之介(きりのすけ)「、、そうですね。間違って封印される可能性がありますもんね。」

黒根(くろね)「なんじゃ。樹霧之介(きりのすけ)を封印しようとしたんか?」

志乃(しの)「事故だったんだ。それより河童(かっぱ)には明後日また来てもらう事はできるか?」

黒根(くろね)「いつでもいいとは言っておる。聞いてみるから少し待っておれ。」

そう言ってまた黒根(くろね)河童(かっぱ)の方に行く。

志乃(しの)「不便だな。」

樹霧之介(きりのすけ)「次から壱を父さんの本体に、拾を家のちゃぶ台に置いておきましょうか。」

志乃(しの)「もしかして今紐声環(ちゅうせいかん)は本体に置いてあるのか?」

樹霧之介(きりのすけ)「はい。」

志乃(しの)「なら黒丸(くろまる)は出たり入ったりしているのか。」

樹霧之介(きりのすけ)「そうだと思います。僕がこっちに来る途中で河童(かっぱ)さんが来たみたいで、父さんだと紐声環(ちゅうせいかん)動かせないから。」

志乃(しの)「なら河童(かっぱ)に移動してもらえばいいのに。」

黒根(くろね)「待たせたな。明後日、昼頃にまた来るそうじゃ。」

志乃(しの)「ならその時間に私もそっちへ行く。」

黒根(くろね)「分かった。そう伝えておく。」

会話が終わると声が聞こえなくなった。

志乃(しの)「さて、発動だけしないようにしないとな。」

樹霧之介(きりのすけ)「頑張ってください。」

志乃(しの)「まあ、自分のした事を片付けるだけだからな。」

山姥(やまんば)「全く、私もうかつに歩けなくなったじゃないか。」

志乃(しの)「なら途中で止めてくれ。」

山姥(やまんば)「それで止まらなかったのはお前だろ。」

樹霧之介(きりのすけ)「それで僕、来た時は平気だったんですが帰り道、何もないですよね?」

志乃(しの)「そっちには無いはずだが、前にあげた霊力に反応するお守りがあるだろ。あればそれで分かるはずだ。」

樹霧之介(きりのすけ)「そう言えばありましたね。」

樹霧之介(きりのすけ)はポケットから鈴の付いたお守りを出して鈴が鳴るように持ちながら歩いて帰って行った。

2日後、志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)の家に来て河童(かっぱ)を待つがなかなか来ない。

志乃(しの)黒丸(くろまる)河童(かっぱ)の話だと今日の昼頃だったよな?」

黒根(くろね)「ああ。」

志乃(しの)「もう昼を過ぎそうなんだが。」

黒根(くろね)「おかしいのう。約束を破るような奴ではないんじゃが。」

志乃(しの)「まあ、もう少し待ってから河童(かっぱ)の所へ行ってみるか。」

志乃(しの)樹霧之介(きりのすけ)の家へ来る数時間前、黒根(くろね)樹霧之介(きりのすけ)と日課になった妖ノ郷(あやかしのさと)の見回りに出ていて、その時に陽葵(ひまり)志乃(しの)に会いに樹霧之介(きりのすけ)の家まで来ていた。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さんいる?」

陽葵(ひまり)樹霧之介(きりのすけ)の家の戸を勢いよく開けるが誰もいない。

陽葵(ひまり)「あれ?樹霧之介(きりのすけ)もいないの?」

部屋の中を見回しながら中へ入ると背後から豪快な声が響いた。

???「おう。おめえが黒根(くろね)の言っていた志乃(しの)って人間だろ?」

陽葵(ひまり)「え?」

陽葵(ひまり)が振り向くとそこには背が2mくらいある大きな河童(かっぱ)が立っていた。

陽葵(ひまり)「え?私は浜名瀬(はまなせ)さんじゃないですよ。」

大河童(おおがっぱ)「だから志乃(しの)だろ。式神を連れた女の人間なんて今の時代あまり見ないからな。間違いない。」

陽葵(ひまり)「だから私は、、」

大河童(おおがっぱ)「少し時間は早いがいいだろ。一昨日約束したんだから来てもらうぞ。」

陽葵(ひまり)「え?え?」

ハラミ「おい、ちょっと待てよ。」

大河童(おおがっぱ)は強引に陽葵(ひまり)とハラミを両脇に抱えて住処である川に向かう。

陽葵(ひまり)が川辺に足を踏み入れた途端、わらわらと河童(かっぱ)たちが集まってきた。

背の高さはバラバラだが大河童(おおがっぱ)より大きい河童(かっぱ)はおらず、皿を揺らしながら口々に好き勝手なことを言い始める。

河童(かっぱ)1「ねえねえ、君が壺をみてくれる術師?」

河童(かっぱ)2「連れてるの猫でしょ。触ってみたい。」

河童(かっぱ)3「お前相撲できるか?後でしようぜ。」

陽葵(ひまり)「え、あの、、私は、、」

陽葵(ひまり)は口々に言ってくる河童(かっぱ)達に押され、何も言えずにいた。

大河童(おおがっぱ)「静かにしろ。壺をみてもらうのが先だ。」

河童(かっぱ)4「ならその後で遊んで。」

河童(かっぱ)5「猫ちゃんならいいでしょ。」

ハラミ「あ、おい。俺は濡れるのが嫌いなんだ!そんな濡れた手で触るな!」

ハラミは河童(かっぱ)達に追われて高めの岩の上へ飛び乗って威嚇している。

大河童(おおがっぱ)「壺はあっちだ。早く行くぞ。」

陽葵(ひまり)「あの!だから私は、、」

大河童(おおがっぱ)は話を遮って強引に陽葵(ひまり)の手を引き、壺の所まで引っ張って行く。

しばらく上流の方に歩いて行った所の土手に大きな薄汚れた壺が蓋の周辺だけ出ていた。

壺の蓋はしっかりと閉じられてお札で封がされている。

大河童(おおがっぱ)「この前の大雨で崩れて一部が出てきてな。掘り出してみたら札が貼られた壺だったんだ。」

陽葵(ひまり)「私何もできませんよ。」

大河童(おおがっぱ)「何故だ?あそこの親父さんはおめえなら解決してくれると言っていたぞ。」

陽葵(ひまり)「だ、か、ら。それは浜名瀬(はまなせ)志乃(しの)の事でしょ。」

それを聞いてキョトンとするが少し考えて何かを思いついたように笑顔で答える。

大河童(おおがっぱ)「、、ああ。そう言えば人間は名前の他に苗字があるんだったな。そうかそうか。」

陽葵(ひまり)「分かってくれた、、」

大河童(おおがっぱ)「まあ、ここまで来たんだ。式神連れてるってことは知識はあるんだろ。見るだけ見てくれよ。」

陽葵(ひまり)「いや、私は、、」

大河童(おおがっぱ)「謙遜すんなって。できるできる。」

陽葵(ひまり)「何を根拠に!?」

陽葵(ひまり)大河童(おおがっぱ)に押されてバランスを崩し、壺の蓋に手をつくと蓋がずれてお札も外れる。

大河童(おおがっぱ)「ほら、俺らがいくら押しても引いても開かなかった蓋が開いたぞ。」

陽葵(ひまり)「え、だけどこれって、、」

開いた蓋からは気味の悪い妖気が漏れ出て壺にはヒビが入る。

陽葵(ひまり)「私、封印とかできませんよ。」

大河童(おおがっぱ)「冗談だろ?」

陽葵(ひまり)「こんな時に冗談なんて言いません!」

ヒビは徐々に大きくなりついには割れてしまった。

陽葵(ひまり)大河童(おおがっぱ)は完全に割れる前に距離を取って観察しているとそこから出て来たのは熊くらいの黒い大きな丸い毛皮から木の枝が数本伸びている妖怪で、それには顔と呼べるものはなくただ木の枝がクネクネと動き、何かを探しているようだった。

陽葵(ひまり)「な、何これ。」

その声に反応してその妖怪は転がりながら陽葵(ひまり)の方に近づいてくる。

大河童(おおがっぱ)「動いたぞ。」

陽葵(ひまり)「えっと、そうだ。」

陽葵(ひまり)志乃(しの)から貰った数珠の主玉を1つ外して妖怪の方に投げつける。

すると当たった所から電撃のような光が放たれ妖怪はその場で止まった。

陽葵(ひまり)「助かった?」

大河童(おおがっぱ)「やるじゃねえか。」

そう安堵したのも束の間、妖怪は下の方に生えている木の枝を足のように使い陽葵(ひまり)の方に走り出した。

陽葵(ひまり)は走って逃げるがしばらく雨続きだった地面はぬかるんでいて足を滑らせて転んでしまう。

陽葵(ひまり)に追いついた妖怪は足に使った枝とは違う枝を1本陽葵(ひまり)に伸ばして数珠を持った腕に巻きつける。

陽葵(ひまり)は振り払おうとするがそれは強く陽葵(ひまり)の腕を締め付けて解く事はできない。

強い力で締め付けられて数珠も地面に落としてしまい、それを拾おうとしたもう片方の手も他の枝が巻きつく。

枝に捕まった陽葵(ひまり)を見ていた大河童(おおがっぱ)は妖怪に体当たりするがびくともせず、他の枝も伸びると陽葵(ひまり)の体に巻きついていく。

大河童(おおがっぱ)は諦めずに何度も体当たりを繰り返すが妖怪は動かず何かを進めている。

陽葵(ひまり)が動けなくなると妖怪は尖った枝を数本上から生やして陽葵(ひまり)を上に持ち上げる。

陽葵(ひまり)「え、まさか?ヤダヤダ、まだ死にたくない!」

妖怪は陽葵(ひまり)の予想通り背中から尖った枝を目がけて振り下ろす。

だがそれはギリギリで止まった。

陽葵(ひまり)が目を開けるとそこにはハラミがいて、念力で陽葵(ひまり)の体を支えていた。

陽葵(ひまり)「ハラミ!」

だが陽葵(ひまり)の体は徐々に下に下がっている。

陽葵(ひまり)「ねえ、これ上には上げられないの?」

ハラミ「悪い俺にはこれが限界だ。」

陽葵(ひまり)「死ぬのに変わりないじゃん。まだやりたい事いっぱいあるのに。」

大河童(おおがっぱ)「元気があるなら最後まで諦めんじゃねえ。」

そう言いながら大河童(おおがっぱ)は体当たりを繰り返す。

陽葵(ひまり)「そう言われても、、」

陽葵(ひまり)の背中に枝の先が当たり血が流れる。

ハラミ「俺、そろそろ限界、、」

陽葵(ひまり)「やだ、頑張って!」

ハラミの念力が弱くなり陽葵(ひまり)の体がもっと下に下がりそうになった時、横から影が飛び出して来て陽葵(ひまり)に巻きついた枝や尖った枝を斬ると陽葵(ひまり)を抱えて着地する。

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん!」

陽葵(ひまり)は涙目になりながら志乃(しの)に抱き付こうとするが志乃(しの)は手を離して陽葵(ひまり)を地面に落とし、お尻から落ちた陽葵(ひまり)は泥だらけになった。

陽葵(ひまり)「何するの!」

志乃(しの)「何でお前がここにいるんだ?約束の時間に河童(かっぱ)は来ないし河童(かっぱ)の川の近くで数珠は使われるしで急いで来たんだぞ。」

陽葵(ひまり)「それは、その、、」

大河童(おおがっぱ)「おい!おめえら。こいつ俺の体当たりでもびくともしないんだ。細っこいおめえらじゃ無理だ逃げろ!」

陽葵(ひまり)「え、だけど、、」

大河童(おおがっぱ)「いいから逃げろ!これはおめえらを巻き込んじまった俺の責任だ。こいつは俺が命に代えても倒す。」

志乃(しの)「簡単に命を懸けるな。」

大河童(おおがっぱ)「だけどこんな気持ち悪い奴、それくらいしないと倒せないだろ。」

志乃(しの)「そいつは水熊(みずくま)。川を溢れさせる妖怪で熊などの動物の皮を被って暮している奴だ。」

陽葵(ひまり)「皮ってまさか、、」

志乃(しの)「今使っている皮がもうボロボロだからな。新しい物に変えたかったんだろう。ハラミがいて良かったな。」

陽葵(ひまり)「あ、ありがとう、ハラミ。」

ハラミ「晩御飯、豪華にしてくれよ。」

そんな話をしている間に水熊(みずくま)の斬られた枝は再生し、今度は標的を志乃(しの)に変えて襲ってきた。

枝が伸びてきたので志乃(しの)は短刀で枝を斬り本体に近づくと短刀を突き刺そうとするがびくともしない。

大河童(おおがっぱ)「あいつの皮は厚い、そんなんじゃ無理だ。」

志乃(しの)は黙って距離を取ると次に水熊(みずくま)は残った枝を伸ばしてきたので志乃(しの)は枝を避けると4号から液体の入った瓶を数本受け取り水熊(みずくま)に投げつける。

すると瓶が割れて中の液体が水熊(みずくま)にかかり、全体を濡らす。

次に志乃(しの)は3号を竹筒から出すと3号は水熊(みずくま)に向かって火の玉を飛ばし、火の玉が水熊(みずくま)に当たると水熊(みずくま)の体全体に燃え広がり、燃えている間水熊(みずくま)は動きを止める。

陽葵(ひまり)「何したの?」

志乃(しの)「油を掛けて外皮を焼いている。」

大河童(おおがっぱ)「倒したのか?」

志乃(しの)「これだけでは致命傷にはならない。そろそろ動き出すぞ。」

その言葉通り火が落ち付いてくるとモゾモゾと水熊(みずくま)が動き出し、燃えた木の枝もまた生えて襲ってくる。

陽葵(ひまり)「ヒイッ!」

ハラミ「グエッ。」

陽葵(ひまり)はさっきのがトラウマになってハラミに抱きついた。

志乃(しの)は先ほどと同じく木の枝を切りながら本体に近づき短刀を突き刺すと今度は短刀が突き刺さり黒い血のような液体が流れ出る。

志乃(しの)はそのまま短刀を動かして傷を広げていくと水熊(みずくま)は苦しんで暴れ出した。

水熊(みずくま)の体に押しつぶされそうになった志乃(しの)が離れてもしばらく暴れて体を地面や土手にぶつけ回り、毛皮が徐々に剥がれていく。

そこから現れたのは黒く、艶のある木の幹の塊で、それはまるで生き物のようにうねうねと動き、毛皮が無くなった事により幹自体も襲ってくるようになった。

太い幹の1本が志乃(しの)に向かって鞭のように振るわれ、志乃(しの)はそれを短刀で受け止める。

だがピシッという音と共に短刀がひび割れそのまま折れてしまい、幹はそのまま志乃(しの)の胴体を引き裂こうとしたが志乃(しの)は咄嗟に結界を張り幹を止めた。

幹が襲ってきた事により中心部が露わになったので志乃(しの)はそこに呪滅符(じゅめつふ)を腕ごと突っ込んで発動させると水熊(みずくま)の動きが止まりうめき声のような木のきしむ音を出しながら崩壊し、白い煙となって消えていった。

陽葵(ひまり)「終わったの?」

大河童(おおがっぱ)「ハッハッハ!そんな細っこい体であの化け物ぶっ倒すとはな!やるじゃねえか!」

陽葵(ひまり)浜名瀬(はまなせ)さん、怖かったよ。」

志乃(しの)「それで陽葵(ひまり)は何でここにいるんだ?」

陽葵(ひまり)「え、あ、あの、それは、、」

志乃(しの)河童(かっぱ)!お前もだ。何で時間通りに来ない。」

大河童(おおがっぱ)「もしかしておめえがあいつが言っていた志乃(しの)って奴か?」

志乃(しの)「そうだ。何故陽葵(ひまり)を連れてきた?」

大河童(おおがっぱ)「いやあ、約束の時間より早く行ったらこいつがいて式神を連れた人間の女なんて昨日紹介された術者だと思ったってわけよ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)。お前また勝手に妖ノ郷(あやかしのさと)に入ったのか?」

陽葵(ひまり)「え、えっと。今日休みだし、何かしたくて、、」

志乃(しの)「勝手に来るなと言っただろ!確かに私も甘かった、今度山姥(やまんば)に頼んでハラミの妖力じゃ入れないようにしてもらうからな。」

陽葵(ひまり)「え、そこまでしなくても、、」

志乃(しの)「今回お前は死にかけたんだぞ!」

大河童(おおがっぱ)「まあまあ、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。」

志乃(しの)「あ”。」

志乃(しの)大河童(おおがっぱ)の方も睨みつける。

大河童(おおがっぱ)「こ、今回は俺の勘違いが起こした事でもあるんだ。それくらいで許してやってくれないか?」

志乃(しの)「こいつが約束を守っていればこんな事にはならなかった。これはこれまで約束破ってもなあなあにしてきた私の責任でもあるんだ。」

大河童(おおがっぱ)「だけどな。こいつの顔を見てやれよ。」

志乃(しの)陽葵(ひまり)の顔を見てみると陽葵(ひまり)は顔を真っ赤にして涙を堪えている。

大河童(おおがっぱ)「さっきまで死にかけていたんだ。おめえも少し落ち着いて話せ。」

志乃(しの)「...。」

大河童(おおがっぱ)に言われて3人は土手に座って落ち着いて話す事になった。

ここまで読んでいただいてありがとうございます。

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