71話
この物語には自己解釈やオリジナル設定が含まれています。
オリジナルの妖怪が登場することもあります。
素人がただ思い付きで書いている物語なので最後まで温かい目で読んでいただければと思います。
志乃達が陽葵の部屋でペットに病気を運ぶ妖怪をおびき寄せるために血梅香を焚いていると部屋外にまで妖怪が来た気配がする。
中までおびき寄せるために囮であるハラミ以外の3人は2号の幻で姿を隠して様子を見ていると黒い小さな影がドアの隙間から部屋の隅を伝ってハラミに素早く近づいて行く。
ハラミはその影に気づくと目で追っていてハラミに飛び掛かろうとした時、ハラミは念力でその影の動きを止める。
ハラミ「おい、こいつなのか?」
志乃「そうだと思うが、小さいな。」
鼠と狸を足して2で割ったような黒い生物が空中で手足をパタパタ動かし、2本の牙を見せて威嚇する。
志乃「妖気はちゃんと牛打ち坊だな。」
牛打ち坊「クソッ!こんな美味そうな獲物を前に何で。放せ。」
志乃「お前か?最近ペットを病気にしているのは。」
牛打ち坊「少し血を貰っただけだ。後のことは知らん。」
志乃「お前のせいで家族を亡くしている人がいるんだ。」
牛打ち坊「この辺牛がいないから仕方ないだろ。俺だって栄養が取れなくてこんな体になったのにさ。」
志乃「そうか。」
志乃は9号から短刀を受け取って牛打ち坊を斬ると牛打ち坊は白い煙となって何も残さず消えた。
陽葵「これで終わり?」
志乃「まだだ。病気になっている動物を見つけて薬飲ませないと。」
陽葵「元凶がいなくなったのに病気治らないの?」
志乃「呪いなら解呪される事も多いが、既に罹ってしまった病気は治らない。」
樹霧之介「僕達も手伝いましょうか?」
志乃「だがどこにいるか分かるのか?」
樹霧之介「風見に手伝ってもらいます。」
陽葵「私も近くにいたら分かるよ。」
志乃「樹霧之介達は人に見えないからいいがお前はどうやって飲ませるんだ?」
陽葵「それなら浜名瀬さんだって。」
志乃「私は4号に飲ませてもらう。」
陽葵「なら私はハラミに手伝ってもらうもん。」
志乃「お前にしては頭が回るな。」
陽葵「それ褒めてる?」
ハラミ「俺まだ働かないといけないのか?」
それから志乃達は3組に別れて病気のペット達に薬を飲ませて回った。
それが終わる頃には夕方になっていてそれぞれ帰路に着く。
志乃と樹霧之介は樹霧之介の家に行き、黒根に今回の事を話す。
黒根「牛打ち坊がそんな変化をしていたとはのう。」
志乃「今までは出てこなかったのか?」
黒根「知っている範囲ではおらん。」
樹霧之介「他にもこんな変化している妖怪がいるんでしょうか。」
黒根「そう言えば今回は玉は出てこなかったのか?」
志乃「出てこなかったな。」
黒根「そうか。」
そこで戸が叩かれる。
山姥「志乃はこっちか?」
志乃「どうしたんだ?」
樹霧之介「入って来てください。」
山姥「邪魔するよ。何話してたんだ?」
樹霧之介「今日、牛打ち坊が出たんです。本来より大きさが違ったみたいで話し合っていたんです。」
それを聞いた山姥の顔が強張った。
山姥「それは志乃も行ったのか?」
樹霧之介「え?はい。」
山姥「あの玉は出てきたのか?」
樹霧之介「いえ。だけど病気が広まって治すのが大変でした。」
山姥「志乃、用事は終わったのか?」
志乃「ああ。」
山姥「ちょっと来い。」
志乃「どこ行くんだ?」
山姥「お前の屋敷に行こう。2人で話したい事がある。」
志乃は山姥と隠里にある屋敷に移動し、到着した途端山姥は志乃に向かって怒鳴った。
山姥「馬鹿者!何を考えているんだ。」
志乃「お前が心配している事は無かっただろ。」
山姥「今回はな。もしそいつがあの玉を呑み込んでいたらお前の居場所がバレて仲間も危険になるんだぞ。」
志乃「それでも私が動かなければ変に思われる。」
山姥「お前の心配がそれなら私はこの事を話すぞ。」
志乃「、、分かった。次から気を付ける。」
山姥「今度から修行の時間を増やそう。そうすれば行かなくていいだろう。」
志乃「なら何かありそうな時は山に籠るか。」
山姥「ああ。そうしてくれ。」
それから数日後、治った禅釜尚が槍毛長と虎隠良を連れてお礼の呪具を持って来た。
この時は黒根と樹霧之介の2人が対応し、3人は早々に帰って行った。
樹霧之介はその呪具を他の仲間に配る。
復帰して初の作業だったため調子に乗り作り過ぎたようで真琴、雫、焔、茂蔵、風見それから樹霧之介本人と黒根が持っても3つ余った。
樹霧之介はそこから2つを持って志乃が修行している山に行くと、志乃は山姥と地面を見ながら何かをしていた。
樹霧之介「今大丈夫ですか?」
志乃「あ、待て、止まれ。」
樹霧之介「え?」
志乃の注意が遅く、樹霧之介が一歩踏み出すと樹霧之介の動きが止まる。
樹霧之介「え、あれ?動けない。」
次の瞬間中央の石が光ってそれに樹霧之介が吸い込まれそうになったので志乃は慌てて足元の石を蹴って動かすとそれは止まり、樹霧之介は尻もちをついた。
樹霧之介「何ですか?これ。」
志乃「石を使った封印術で輪の中に入った妖怪の動きを止めて封印する術なんだが、今はどこまで範囲が広げられるか試していたところだ。」
志乃が樹霧之介近づき手を差し出すと樹霧之介はその手を掴んで立ち上がり周りを見る。
樹霧之介「そう言えば石が輪になってますね。気づきませんでした。」
山姥「気づかれれば避けられる可能性があるからそういう術も同時に掛けるんだ。」
樹霧之介「何で石なんですか?」
山姥「山伏は山を渡っているから山にあるものを媒介にする事が多いんだ。」
樹霧之介「旅するなら持ち物は最小限にしたいですもんね。」
志乃「それで何しに来たんだ?」
樹霧之介「あ。そうでした。さっき禅釜尚さん達が来て約束の呪具を持って来てくれたんです。」
志乃「もうできたのか、紐声環。」
樹霧之介「はい。それで志乃さんにも1つ持っていてほしくて、、」
樹霧之介が持って来たのは金属を布でくるんで紐を付けたお守りのような形で中央には捌の文字が書かれている。
志乃「捌、、こんなに作ってくれなくても良かったのに。」
樹霧之介「実は全部で10個持って来てくれたんです。それで山姥さんも1つ持っていてください。」
樹霧之介は山姥に玖と書かれと書かれた紐声環を渡す。
山姥「私もか?」
樹霧之介「はい。山姥さんは今妖ノ郷を管理してくれているので何かあった時の連絡に使ってください。」
山姥「あい、分かった。」
樹霧之介「それで壱が父さん、僕は弐です。」
樹霧之介は自身の首に掛けた紐声環を見せる。
樹霧之介「それから参が風見で肆が真琴、伍が雫で陸が焔、漆を茂蔵が持っています。捌と玖は見ての通り志乃さんと山姥さんですね。拾は今のところ使うものがいないので予備として置いておきます。」
志乃「そうか。」
樹霧之介「それで父さんに電話してみてくれませんか?」
志乃「今か?」
樹霧之介「はい、何か聞きたいこともあるみたいなので動作確認として使ってみてください。」
志乃「分かった。黒丸は壱だったな。」
これは妖力を使うので志乃は1号を竹筒から出して黒根に繋げてもらう。
志乃「黒丸。」
志乃が呼びかけると紐声環から黒根の声が聞こえる。
黒根「おお、志乃か。樹霧之介は無事に届けれたんじゃな。」
志乃「それで聞きたい事って何だ?」
黒根「今河童が来ておってな、変な壺を見つけたから調べてほしいとの事なんじゃ。今時間はあるか?」
志乃「今封印術の研究していて所々に仕掛けてあるんだ。放置はできないから片付けないと。」
樹霧之介「え。もしかしてあれ、他にも仕掛けてあるんですか?」
志乃「術を張るのに夢中になってしまってな。」
山姥「こいつ、教えた術を詳しく知ろうとして色々試すんだ。本当に血は争えないな。」
樹霧之介「もしかして志乃さんのお母さんもそうだったんですか?」
山姥「懐かしいよ。お互いに教えあった時、あいつも教えた傍からすぐに吸収してな。それを使って新しい術まで作っていた。」
樹霧之介「凄い人だったんですね。」
山姥「一度考えだしたら周りを見ずに色々試していたよ。今のこいつのようにな。」
黒根「なんじゃ。こいつがたまに何かに集中しとったのは親譲りか。」
志乃「その話はもういいだろ。それより黒丸、河童の方はいいのか?」
黒根「そうじゃ。ちょっと話してくる。」
志乃「ちなみにその壺は壊れたり妖気が漏れたりしているのか?」
黒根「ちょっと待ってくれ、それも聞いてみる。」
それから足音が遠ざかると遠くて内容までは分からないが話し声が聞こえる。
紐声環は少し大きく黒根は持てないので少し離れた場所に置いてあるようだ。
黒根「壺は壊れたりはしておらんようじゃ。ただ札で封がされていて重くて動かせず、壺のある場所が河童が住む川の近くで危ないものが封印されている物だったら怖いからハッキリさせたいそうじゃ。」
志乃「そこまで急ぎではないんだな。」
黒根「ああ、河童の方も時間がある時で良いと言っておる。いつなら行けそうじゃ?」
志乃「山姥、修行1日休んでも良いか?」
山姥「でもな、、」
渋る山姥に志乃は小声で話す。
志乃「あいつは封印された妖怪に干渉できないだろ。」
山姥「そうだな。だが河童にも注意しろよ。」
志乃「ああ。呪いの気配だけは常に気を付けるよ。」
山姥「そういう事なら良いだろう。だがこの山を片付けてからにしてほしい。」
そこには積み上げられた石や意味深に並べられた木の枝などがいくつもあった。
志乃「、、やり過ぎたとは思っている。」
山姥「これは1日掛かるぞ。」
樹霧之介「崩せばいいだけじゃないんですか?」
志乃「術を完全に消さないといけないから少し時間がかかるんだ。」
樹霧之介「なにか手伝いましょうか?」
志乃「止めておけ、さっきのようになるぞ。」
樹霧之介「、、そうですね。間違って封印される可能性がありますもんね。」
黒根「なんじゃ。樹霧之介を封印しようとしたんか?」
志乃「事故だったんだ。それより河童には明後日また来てもらう事はできるか?」
黒根「いつでもいいとは言っておる。聞いてみるから少し待っておれ。」
そう言ってまた黒根は河童の方に行く。
志乃「不便だな。」
樹霧之介「次から壱を父さんの本体に、拾を家のちゃぶ台に置いておきましょうか。」
志乃「もしかして今紐声環は本体に置いてあるのか?」
樹霧之介「はい。」
志乃「なら黒丸は出たり入ったりしているのか。」
樹霧之介「そうだと思います。僕がこっちに来る途中で河童さんが来たみたいで、父さんだと紐声環動かせないから。」
志乃「なら河童に移動してもらえばいいのに。」
黒根「待たせたな。明後日、昼頃にまた来るそうじゃ。」
志乃「ならその時間に私もそっちへ行く。」
黒根「分かった。そう伝えておく。」
会話が終わると声が聞こえなくなった。
志乃「さて、発動だけしないようにしないとな。」
樹霧之介「頑張ってください。」
志乃「まあ、自分のした事を片付けるだけだからな。」
山姥「全く、私もうかつに歩けなくなったじゃないか。」
志乃「なら途中で止めてくれ。」
山姥「それで止まらなかったのはお前だろ。」
樹霧之介「それで僕、来た時は平気だったんですが帰り道、何もないですよね?」
志乃「そっちには無いはずだが、前にあげた霊力に反応するお守りがあるだろ。あればそれで分かるはずだ。」
樹霧之介「そう言えばありましたね。」
樹霧之介はポケットから鈴の付いたお守りを出して鈴が鳴るように持ちながら歩いて帰って行った。
2日後、志乃は樹霧之介の家に来て河童を待つがなかなか来ない。
志乃「黒丸。河童の話だと今日の昼頃だったよな?」
黒根「ああ。」
志乃「もう昼を過ぎそうなんだが。」
黒根「おかしいのう。約束を破るような奴ではないんじゃが。」
志乃「まあ、もう少し待ってから河童の所へ行ってみるか。」
志乃が樹霧之介の家へ来る数時間前、黒根は樹霧之介と日課になった妖ノ郷の見回りに出ていて、その時に陽葵が志乃に会いに樹霧之介の家まで来ていた。
陽葵「浜名瀬さんいる?」
陽葵は樹霧之介の家の戸を勢いよく開けるが誰もいない。
陽葵「あれ?樹霧之介もいないの?」
部屋の中を見回しながら中へ入ると背後から豪快な声が響いた。
???「おう。おめえが黒根の言っていた志乃って人間だろ?」
陽葵「え?」
陽葵が振り向くとそこには背が2mくらいある大きな河童が立っていた。
陽葵「え?私は浜名瀬さんじゃないですよ。」
大河童「だから志乃だろ。式神を連れた女の人間なんて今の時代あまり見ないからな。間違いない。」
陽葵「だから私は、、」
大河童「少し時間は早いがいいだろ。一昨日約束したんだから来てもらうぞ。」
陽葵「え?え?」
ハラミ「おい、ちょっと待てよ。」
大河童は強引に陽葵とハラミを両脇に抱えて住処である川に向かう。
陽葵が川辺に足を踏み入れた途端、わらわらと河童たちが集まってきた。
背の高さはバラバラだが大河童より大きい河童はおらず、皿を揺らしながら口々に好き勝手なことを言い始める。
河童1「ねえねえ、君が壺をみてくれる術師?」
河童2「連れてるの猫でしょ。触ってみたい。」
河童3「お前相撲できるか?後でしようぜ。」
陽葵「え、あの、、私は、、」
陽葵は口々に言ってくる河童達に押され、何も言えずにいた。
大河童「静かにしろ。壺をみてもらうのが先だ。」
河童4「ならその後で遊んで。」
河童5「猫ちゃんならいいでしょ。」
ハラミ「あ、おい。俺は濡れるのが嫌いなんだ!そんな濡れた手で触るな!」
ハラミは河童達に追われて高めの岩の上へ飛び乗って威嚇している。
大河童「壺はあっちだ。早く行くぞ。」
陽葵「あの!だから私は、、」
大河童は話を遮って強引に陽葵の手を引き、壺の所まで引っ張って行く。
しばらく上流の方に歩いて行った所の土手に大きな薄汚れた壺が蓋の周辺だけ出ていた。
壺の蓋はしっかりと閉じられてお札で封がされている。
大河童「この前の大雨で崩れて一部が出てきてな。掘り出してみたら札が貼られた壺だったんだ。」
陽葵「私何もできませんよ。」
大河童「何故だ?あそこの親父さんはおめえなら解決してくれると言っていたぞ。」
陽葵「だ、か、ら。それは浜名瀬志乃の事でしょ。」
それを聞いてキョトンとするが少し考えて何かを思いついたように笑顔で答える。
大河童「、、ああ。そう言えば人間は名前の他に苗字があるんだったな。そうかそうか。」
陽葵「分かってくれた、、」
大河童「まあ、ここまで来たんだ。式神連れてるってことは知識はあるんだろ。見るだけ見てくれよ。」
陽葵「いや、私は、、」
大河童「謙遜すんなって。できるできる。」
陽葵「何を根拠に!?」
陽葵は大河童に押されてバランスを崩し、壺の蓋に手をつくと蓋がずれてお札も外れる。
大河童「ほら、俺らがいくら押しても引いても開かなかった蓋が開いたぞ。」
陽葵「え、だけどこれって、、」
開いた蓋からは気味の悪い妖気が漏れ出て壺にはヒビが入る。
陽葵「私、封印とかできませんよ。」
大河童「冗談だろ?」
陽葵「こんな時に冗談なんて言いません!」
ヒビは徐々に大きくなりついには割れてしまった。
陽葵と大河童は完全に割れる前に距離を取って観察しているとそこから出て来たのは熊くらいの黒い大きな丸い毛皮から木の枝が数本伸びている妖怪で、それには顔と呼べるものはなくただ木の枝がクネクネと動き、何かを探しているようだった。
陽葵「な、何これ。」
その声に反応してその妖怪は転がりながら陽葵の方に近づいてくる。
大河童「動いたぞ。」
陽葵「えっと、そうだ。」
陽葵は志乃から貰った数珠の主玉を1つ外して妖怪の方に投げつける。
すると当たった所から電撃のような光が放たれ妖怪はその場で止まった。
陽葵「助かった?」
大河童「やるじゃねえか。」
そう安堵したのも束の間、妖怪は下の方に生えている木の枝を足のように使い陽葵の方に走り出した。
陽葵は走って逃げるがしばらく雨続きだった地面はぬかるんでいて足を滑らせて転んでしまう。
陽葵に追いついた妖怪は足に使った枝とは違う枝を1本陽葵に伸ばして数珠を持った腕に巻きつける。
陽葵は振り払おうとするがそれは強く陽葵の腕を締め付けて解く事はできない。
強い力で締め付けられて数珠も地面に落としてしまい、それを拾おうとしたもう片方の手も他の枝が巻きつく。
枝に捕まった陽葵を見ていた大河童は妖怪に体当たりするがびくともせず、他の枝も伸びると陽葵の体に巻きついていく。
大河童は諦めずに何度も体当たりを繰り返すが妖怪は動かず何かを進めている。
陽葵が動けなくなると妖怪は尖った枝を数本上から生やして陽葵を上に持ち上げる。
陽葵「え、まさか?ヤダヤダ、まだ死にたくない!」
妖怪は陽葵の予想通り背中から尖った枝を目がけて振り下ろす。
だがそれはギリギリで止まった。
陽葵が目を開けるとそこにはハラミがいて、念力で陽葵の体を支えていた。
陽葵「ハラミ!」
だが陽葵の体は徐々に下に下がっている。
陽葵「ねえ、これ上には上げられないの?」
ハラミ「悪い俺にはこれが限界だ。」
陽葵「死ぬのに変わりないじゃん。まだやりたい事いっぱいあるのに。」
大河童「元気があるなら最後まで諦めんじゃねえ。」
そう言いながら大河童は体当たりを繰り返す。
陽葵「そう言われても、、」
陽葵の背中に枝の先が当たり血が流れる。
ハラミ「俺、そろそろ限界、、」
陽葵「やだ、頑張って!」
ハラミの念力が弱くなり陽葵の体がもっと下に下がりそうになった時、横から影が飛び出して来て陽葵に巻きついた枝や尖った枝を斬ると陽葵を抱えて着地する。
陽葵「浜名瀬さん!」
陽葵は涙目になりながら志乃に抱き付こうとするが志乃は手を離して陽葵を地面に落とし、お尻から落ちた陽葵は泥だらけになった。
陽葵「何するの!」
志乃「何でお前がここにいるんだ?約束の時間に河童は来ないし河童の川の近くで数珠は使われるしで急いで来たんだぞ。」
陽葵「それは、その、、」
大河童「おい!おめえら。こいつ俺の体当たりでもびくともしないんだ。細っこいおめえらじゃ無理だ逃げろ!」
陽葵「え、だけど、、」
大河童「いいから逃げろ!これはおめえらを巻き込んじまった俺の責任だ。こいつは俺が命に代えても倒す。」
志乃「簡単に命を懸けるな。」
大河童「だけどこんな気持ち悪い奴、それくらいしないと倒せないだろ。」
志乃「そいつは水熊。川を溢れさせる妖怪で熊などの動物の皮を被って暮している奴だ。」
陽葵「皮ってまさか、、」
志乃「今使っている皮がもうボロボロだからな。新しい物に変えたかったんだろう。ハラミがいて良かったな。」
陽葵「あ、ありがとう、ハラミ。」
ハラミ「晩御飯、豪華にしてくれよ。」
そんな話をしている間に水熊の斬られた枝は再生し、今度は標的を志乃に変えて襲ってきた。
枝が伸びてきたので志乃は短刀で枝を斬り本体に近づくと短刀を突き刺そうとするがびくともしない。
大河童「あいつの皮は厚い、そんなんじゃ無理だ。」
志乃は黙って距離を取ると次に水熊は残った枝を伸ばしてきたので志乃は枝を避けると4号から液体の入った瓶を数本受け取り水熊に投げつける。
すると瓶が割れて中の液体が水熊にかかり、全体を濡らす。
次に志乃は3号を竹筒から出すと3号は水熊に向かって火の玉を飛ばし、火の玉が水熊に当たると水熊の体全体に燃え広がり、燃えている間水熊は動きを止める。
陽葵「何したの?」
志乃「油を掛けて外皮を焼いている。」
大河童「倒したのか?」
志乃「これだけでは致命傷にはならない。そろそろ動き出すぞ。」
その言葉通り火が落ち付いてくるとモゾモゾと水熊が動き出し、燃えた木の枝もまた生えて襲ってくる。
陽葵「ヒイッ!」
ハラミ「グエッ。」
陽葵はさっきのがトラウマになってハラミに抱きついた。
志乃は先ほどと同じく木の枝を切りながら本体に近づき短刀を突き刺すと今度は短刀が突き刺さり黒い血のような液体が流れ出る。
志乃はそのまま短刀を動かして傷を広げていくと水熊は苦しんで暴れ出した。
水熊の体に押しつぶされそうになった志乃が離れてもしばらく暴れて体を地面や土手にぶつけ回り、毛皮が徐々に剥がれていく。
そこから現れたのは黒く、艶のある木の幹の塊で、それはまるで生き物のようにうねうねと動き、毛皮が無くなった事により幹自体も襲ってくるようになった。
太い幹の1本が志乃に向かって鞭のように振るわれ、志乃はそれを短刀で受け止める。
だがピシッという音と共に短刀がひび割れそのまま折れてしまい、幹はそのまま志乃の胴体を引き裂こうとしたが志乃は咄嗟に結界を張り幹を止めた。
幹が襲ってきた事により中心部が露わになったので志乃はそこに呪滅符を腕ごと突っ込んで発動させると水熊の動きが止まりうめき声のような木のきしむ音を出しながら崩壊し、白い煙となって消えていった。
陽葵「終わったの?」
大河童「ハッハッハ!そんな細っこい体であの化け物ぶっ倒すとはな!やるじゃねえか!」
陽葵「浜名瀬さん、怖かったよ。」
志乃「それで陽葵は何でここにいるんだ?」
陽葵「え、あ、あの、それは、、」
志乃「河童!お前もだ。何で時間通りに来ない。」
大河童「もしかしておめえがあいつが言っていた志乃って奴か?」
志乃「そうだ。何故陽葵を連れてきた?」
大河童「いやあ、約束の時間より早く行ったらこいつがいて式神を連れた人間の女なんて昨日紹介された術者だと思ったってわけよ。」
志乃「陽葵。お前また勝手に妖ノ郷に入ったのか?」
陽葵「え、えっと。今日休みだし、何かしたくて、、」
志乃「勝手に来るなと言っただろ!確かに私も甘かった、今度山姥に頼んでハラミの妖力じゃ入れないようにしてもらうからな。」
陽葵「え、そこまでしなくても、、」
志乃「今回お前は死にかけたんだぞ!」
大河童「まあまあ、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。」
志乃「あ”。」
志乃は大河童の方も睨みつける。
大河童「こ、今回は俺の勘違いが起こした事でもあるんだ。それくらいで許してやってくれないか?」
志乃「こいつが約束を守っていればこんな事にはならなかった。これはこれまで約束破ってもなあなあにしてきた私の責任でもあるんだ。」
大河童「だけどな。こいつの顔を見てやれよ。」
志乃が陽葵の顔を見てみると陽葵は顔を真っ赤にして涙を堪えている。
大河童「さっきまで死にかけていたんだ。おめえも少し落ち着いて話せ。」
志乃「...。」
大河童に言われて3人は土手に座って落ち着いて話す事になった。
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