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Side S-5 異世界の侵略者

『ミレニアム王国』、匂宮、アユムの工房…


「「本っっ当にすみません!!」」


フィリップとスティーブは深々と頭を下げ、左右に立っている男女の後頭部を両手で押さえて無理やり下げさせた。カナコに連れられたウィル達と、エイジに連れて来られたスティーブ達がアユムの下にたどり着くと、フィリップとモリガンは既にアユムとカオリに合流していたのだ。そして、スティーブからウィル達が問題を起こして自警団に捕まったのを脱獄して来たと聞かされたフィリップはスティーブと共に、ウィルとヴィッキーを無理やりアユムに頭を下げさせたのだ。


「痛たたたた!!じ、じいちゃん痛いよ!!」

「あいつらの方から突っかかって来たんだよ、父さん…痛っ!!」


「やかましい!!異世界に来てまで、他人様に迷惑かけるんじゃない!!」

「一体いつまで、冒険者気取りでいるつもりだ!!」

さらにグイ!と、頭を下げさせるフィリップとスティーブ。


「あは、あはは………」

口角をヒクつかせて苦笑いするアユム。因みにエイジは自警団の人達と話をつけてくると言って行ってしまい、カナコはツァウベラッドの前半分の様な物をアユムから借りると、車椅子の前に着けて自分で帰って行った。(帰ったらああいうのも商品化してみよう…)頭を押さえられながらウィルは思った。


「フィリップさんやウィル君と同じ顔が、もう1つある…モリガンさんやヴィッキーさんと同じ顔も…」


呆然とするアユムに、そのフィリップやウィルと同じ顔のもう1人が歩み寄り、


「久しぶりだね、アユム君。スティーブだ。」

「え〜〜〜っ!?でも、あの時は…」

「はっはっは…僕にも若い頃はあったよ。そして僕の若い頃はこんなだったんだ…」

「久しぶりだね、アユム君。俺は分かるかな!?」

他の誰とも違う顔の男がアユムの元へやって来る。

「えーっと………ライオスさん!?」

「正解だ。よく分かったね…」

「耳、尖ってますから…」

言われてライオスは自身の耳に手を当てる。短く尖っている…

「俺の耳は…歳とってから治してもらったのに…身体は若い頃なのになんで…」

「ま、お前はやっぱりその尖った耳が似合ってるよ。」

スティーブが言った。


「はじめまして、アユム君!!私とは前の時に会ってないよね!?」

モリガンそっくりの少女がアユムの元にやって来る。

「私、テレサ!フィリップ父さんとモリガン母さんの娘で、スティーブ兄ちゃんの妹!!でねー、ウィル君とヴィッキーちゃんの叔母さん!!!」

いい加減に家系図が欲しいな…アユムは思った。


「ところでアユム君、あれから…」

「ア〜ユ〜ム〜〜〜!!!」


怒気をはらんだ声をあげながら、勝ち気そうな美女がツカツカと歩いて来て、アユムの胸ぐらを掴む。

「か…カオリさん…」

前回の転移でアユムと共にスティーブ達の世界にやって来たカオリだった。

「あんた、ここ数日様子がおかしいと思ったら…結婚指輪作ってたんですってぇ………!!」

「は、はい。僕達の結婚式は、収穫祭に間借り、料理も持ち寄り。だからせめて、これだけでも自分で用意しようと思って、ずっと銀の廃材を集めて加工してまし………ぐへっ!?」バッチーーーン!!

アユムの言葉はカオリの平手打ちで遮られる。

「あたしがここ数日、どれだけ心配したと思ってんだ!!大体そのために他の仕事遅らすな!!!」

アユムは涙目になって殴られた頬をさすりながら、

「ごめんなさい…じゃあ、この指輪は潰して他に使いますね…」

アユムは首から下げた紐に通した2つの指輪を手に取ると、カオリはそれを両手でぎゅっと握り、

「…それはそれ、これはこれ。指輪はちゃんと完成させなさい。結婚式であたしにはめてね。」

それからカオリは自分が叩いたアユムの頬にチュっとキスすると、行ってしまった。


「アユム君…」

「ははは…お恥ずかしい所をお見せしました…」

スティーブ達に呆れられて、アユムも苦笑いする。


「ところでアユム君…」

「そろそろワタシの話もしてくれないカシラ!?」

スティーブの話に割り込む様に言い出したのは、2m近い大男。アユムは言う。

「この人は、多分本名じゃ無いと思いますけど、網木ソラさん。アミキソープ星の人ですけど、かつての僕の仲間で、僕の旅を何度も助けてくれた恩人です。」


「アミキソープというのは、アユム君達の世界の外の世界か…」

「という事は、2年前にアユム君達の世界を滅茶苦茶に破壊した張本人の同族、か…」


スティーブも、そしてウィルも、エイジやカナコから聞かされていた。この世界は自分達の世界より遥かに高度に栄えていたのだが、2年前、アミキソープセイジンとやらがアユム達のチキュウにやって来て壊滅的な被害を与えて去って行き、今チキュウ全土はその復興の途上だそうだ。因みにアレッツと呼ばれる機械の巨人も、アミキソープセイジンの墜落した船から出て来たらしい。ソラと呼ばれた大男は言った。


「ワタシ達アミキソープ人ハ、あれカラアユム君達にもらったバグダッド電池の研究を進めテ、量産化に漕ぎ着けたノ。北も南モ無く、世界一丸トなって、バグダット電池の改良ト増産に突き進んで行った。長年ワタシ達ヲ苦しめてきた、エネルギー問題という呪いカラ解放されタ喜びに、今のアミキソープハ満ち溢れているワ…」


ぐい!ソラの胸ぐらを下から掴みかかる手が伸びた。ウィルだ。


「両足を失った女性に会ったよ…あんたのお仲間のせいでな!!」

「よせ!!ウィル!!」

「ウィルさん、ソラさんは地球侵攻に反対してた人なんです!同じアミキソーブ星人だからって一緒くたにしちゃいけません!!」

スティーブとアユムに両肩を掴まれるウィル。胸ぐらを掴まれたソラはポロポロと涙を溢して、


「…ゴメンナサイ。ソレハ2年前、ワタシも地球ヲ旅しテ、身をもっテ知った事だワ。デモ、事実トシテ、アミキソープの現状ヲ知って欲しかったノ。」

ソラの涙にウィルはようやく両腕をほどいた。

「とにかく、アミキソープは自分達の力デエネルギー問題ヲ解決出来る。モウ地球ニ迷惑ハかけない…デモ………私達ノ輪の中ニ加われナイ者達…私達と同じ喜びヲ感じられナイ者達ガいたノ…」


「『地球侵攻派』………地球の石油じゃなく、最初から地球の征服そのものが目的だった人達ですね…!?」


アユムがそう言ったその時…


青い空に、地上からでも見える無数の白い点が現れた!!


     ※     ※     ※


同時刻、地球衛星軌道上…


宇宙船のブリッジで、複数の男達が、忌々しそうに青い地球を見下ろしていた。


「地球人が余計な事をしてくれたせいで、救世の英雄となるはずだった私達は、地球人皆殺しの極悪人扱いだ…」

「地球征服後の開拓の利権のために投資した莫大な資金が回収出来ん。あいつらのせいで…」

「あの星では子供でさえ扱える化石燃料代価エネルギーを、大の大人が何百人も揃ってたどり着けなかったのかと、私達科学者は良い笑い者だ!!」

「石油代価エネルギーのせいで、アミキソープ最大の油田を有していた我が国の地位は地に落ちた!!」

「温室効果で我が国は遠からぬ未来に海に沈む。我々には地球が…沈まぬ大地が必要なのだ!!」

「聞けば地球人は我々アミキソープ人にそっくりだそうじゃないか。若い美女を連れ帰って金持ちのヒヒジジイに売りつければ大儲けだ!!」


あるいは激昂し、あるいは邪な野望を吐露した後、彼等は再び地球を見下ろし、睨む。


「最早我々はアミキソープに居場所は無い。我々にはもう、地球という新天地を手に入れるしか無いのだ…!!」


彼等の乗る楕円球型の有人艦の周囲には、無数の直方体型の強襲揚陸艦が、共に地球の大気圏へと突入していた。


「…コードネーム『WD-BH』を始末せねばならんかったのは痛かったな…ただでさえ我々には戦力が無いと言うのに…」

「あんな狂犬だとは思わなんだ。制御出来ん兵器に価値など無い。だが奴の戦闘データは取らせてもらったそ…10000機の疑似ホワイトドワーフ軍団。これだけあれば、地球のサルなぞ十分だ!!」

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