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Side S-6 異世界の一番星

1時間後、『ミレニアム王国』郊外…


かつて誘拐されたエリナを取り戻す一連の事件の際、巨大キメラを倒すために戦ってくれたアユムとカオリの蒼い巨人、『スーパーノヴァEX』。その背中が、ウィルの目の前にあった。周囲には何十体もの機械の巨人が居並んでおり、その中にはスティーブが助けてくれたエイジのグリーン迷彩の巨人も、ウィルが捕まった片倉の巨人もいる。そして頭上には、何十本もの白い線が、大地目がけて降下している。アミキソープセイジンとやらの世界を渡る船だそうだ。


アユムの蒼い巨人は自身の身の丈程ある長大な杖を構え、先端をアミキソープの船へと向け、


『シューーート!!!』


先端から光の柱が迸り、アミキソープの船を焼いて行く。敵は全部無人という情報を聞いたアユムは容赦無かった。あの直方体の船にはアユム達と同じ機械の巨人が大量に乗っているのだろうが、アユムは奴等が降りて来るのを大人しく待つ気は無かった。


それを後ろから眺めていたフィリップとスティーブは、

「今回、僕等がこの世界に召喚された理由は、アミキソープセイジンの侵略からチキュウを守る事だろうけど…」

「…あれ、僕等にはどうにもならないよね…」

だが、2人の後ろでそれを聞いていたウィルは、

「父さん、ツァウベラッドを…『フリューゲル』を出してくれないかな?」

「!?…何だか知らんが、ほら…」

スティーブが自身のツァウベラッド『フリューゲル』を取り出すと、ウィルはそのシートの下に右手を突っ込み、何かをまさぐると、バキっ!!音を立てる。

「な…何をする!!それは父さんから貰った…」

声を荒げるスティーブだったが、ウィルがシートの下から取り出したのは、ケーブルの先に着いた、グリップ付きのスイッチ。グリップに書かれている文字は………"Einbisshen"!!


「『アインビッシェン』!?何故、僕の『フリューゲル』にこんな物が!?いや、そもそもウィル!何故お前がこの事を知ってたんだ!?」

「スティーブ父さん自身から聞きました。」

「ぼ…僕が!?」

驚くスティーブに、フィリップが言った。

「…僕はお前(スティーブ)に安全な人生を送って欲しかった。だが、心の何処かでお前が僕と同じ人生を選ぶかもしれないとも思ってた。だから…僕は『フリューゲル』に隠し機能として、非変型のアインビッシェンフォームを仕込んでいた…親バカと笑ってくれ…」

口をあんぐり開けて呆然とするスティーブに構わず、ウィルが、


「父さんがその事を僕に話してくれた時も、『私はとんだ親不孝者だ』と嘆いてましたよ…とにかくこれで、僕のツァウベラウトも含めて、3台のアインビッシェン持ちが揃った事になります。みんな、それぞれのツァウベラッドを、僕の指示通りに並べて下さい。」


ウィルのツァウベラウトを中心に、左右にフィリップの『ブラウ量産型』とスティーブの『フリューゲル』、後部にモリガンの『ロートⅡ』とライオスの『ブリッツ』を並べて配置、前にはテレサの『ヴィント』が並べられ、それぞれには各々の搭乗者も乗っていた。


「ウィル、言う通りにしたけど…」「一体、何を………」


『ツァウベラウト』の運転席に座ったウィルは、サイドのシフトレバーをガチャガチャと操作し、叫ぶ。


「『ツァウベラウト・シュテルン』、トランスフォーム!!」


ガシャン!!ツァウベラウトの前部のが斜めに90度回転し、上を向く。そして後部から太いパイプの様な物が生えると、先端にハサミの様な物が伸び、『ロートⅡ』と『ブリッツ』を掴む。

「わわっ!?」「な、何をするんだウィル君!!」

次に、ツァウベラウトの前輪が収納されるとそこからもハサミを持つパイプが伸び、『ブラウ量産型』と『フリューゲル』を掴む。

「おいウィル!?」「な、何の真似だ、これは!?」

最後に回転した運転席のジョイントからも同じ物が伸び、『ヴィント』を掴む。

「う、ウィルちゃん!?」

今のツァウベラウトの形は、寝そべった巨人だ。『ロートⅡ』と『ブリッツ』が両足、『ブラウ量産型』と『フリューゲル』が両腕、そして、『ヴィント』が頭…


「ツァウベリッター『エルスターシュテルン』、ウェイクアップ!!」


魔動車両を寄せ集めて出来た巨人は、踵の関節だけでゆっくりと起き上がると、巨人はついに立ち上がった!!エリナ誘拐事件の際に見た蒼い巨人の、自身の世界の技術での再現だ。


「「「な、何これ〜〜〜っ!!!」」」


パイライトの一族達の悲鳴が木霊した。


…フィリップとモリガンの孫にして、スティーブとウララの息子、ウィルは、歴史書では凡庸な三代目と評されている。しかしそれは、彼の生涯の功績の中で、あまりにも突拍子も無い物を、歴史家達が後世の創作と見なして除外した結果、当たり障りのない物しか残らなかったという事情があった…


「ちょっとぉウィル!!私なんでこっちに座ってんのぉ!?」

「僕はいつの間にこっちに!?」


『エルスターシュテルン』が立ち上がった時、『ブラウ量産型』にはヴィッキーが乗っており、代わりに『シュテルン』の運転席…いや、操縦席にはフィリップが、ウィルやエリナと共に座っていた。


「『ブラウ量産型』への魔力供給はヴィッキー姉がお願い!!モリガンばあちゃん、ライオス義父さん、前進させて下さい!!」

「あいよ。」「前進だな…エミリー、魔力供給頼む。」「は…はい…」

『ロートⅡ』と『ブリッツ』の車輪を回転させて前進するアレッツもどきは、光の柱を迸らせる大砲を宙へと向ける『スーパーノヴァEX』の隣りに並び立つ。

『え…えええ〜〜〜っ!?』

『スーパーノヴァEX』のコクピットのアユムもさすがに驚いている様だ。

「僕も戦います、アユム君!!父さん、姉さん、腕を前に出して、魔力供給お願い!!」

「あ、ああ…」「ウィル…あんたね…」

『エルスターシュテルン』の両腕が肩で回転し、天へと突き出された形になる。どうやらこの形態では両足の車輪と肩の回転しか出来ないらしい。

「エリナも魔力をお願い!!」「え、ええ…」

天へと突き出された巨人の両腕に、魔力の光が集まり、段々大きくなっていく。

「しょ、照準、狙いよーし…」

頭に乗るテレサが半ば呆けた様に言う。

「行くよじいちゃん!!」「えーいこうなりゃ自棄だ!!」


ウィルとフィリップは声を合わせて叫び、両腕の魔力光が、天へと放たれる。


「「【アイン】!!」」


極太の魔力光の柱が、天を埋め尽くす宇宙船の群れに巨大な『穴』を開けた!!

「な…!?」

エイジも流石に驚いている様だ。だが操縦席のフィリップとウィルは、

「まだまだ敵が多いな…面制圧が必要か…」

「右旋回しよう。ライオス義父さんの足は止めたままで、ばあちゃんだけ少し前進して。姉ちゃんと父さんは腕を上に上げて。タイミング合わせて行くよ!!」

「はいよ…」「分かった。せーの…」


「「【ツヴァイ】!!」」


再度照射!!今度は左下から右上への横薙ぎ!!宇宙船の群れの『穴』は巨大な帯状となった!!

「今度は左旋回。義父さん前進して。腕はもう一度上に。」

「人使いが荒いな、君…」


「「【ドライ】!!」」


今度は左上から右下への横薙ぎ!!アミキソープの宇宙戦艦が次々と落ちて行く!!両腕のヴィッキーとスティーブは、

「うっぷ…何度も上下させたから気持ち悪い…」

「吐くなよ。お前が乗ってるのは、お前のおじいちゃんの大事な機体だ。」


「な、何だあれは!?」「下賤な地球人…いや、あれは一体どこから来たんだ!?」

楕円球型の有人艦の『地球侵攻派』達も慌てふためく。


「「【フィーア】!!」」


とどめに下から上への縦薙ぎ!!!直方体型の強襲揚陸艦は連鎖反応的に爆発を繰り返す!!!


「も…もう彼等だけでいいんじゃないかな…」

『スーパーノヴァEX』のコクピットでアユムは主人公らしからぬ台詞を吐いた。彼と、ウィルの巨人によって、アミキソープの強襲揚陸艦は全滅し、その残骸の一部が楕円球型の有人艦に降り注ぎ、


ズズズズズ…『『『う、うわぁぁぁ〜〜〜っ!!』』』


有人艦は仙台の郊外に墜落した…


「あわわ…」「私達の艦が…」

有人艦の表面に口が開き、中から数人の男達…『地球侵攻派』がヨタヨタと出て来るが、ジャキっ!!グリーン迷彩のアレッツ、エイジ機が弓の無いクロスボウを彼等に構えると、そいつ等は両手を上げ、力無くへたり込んだ…


『アミキソープ星人、網木ソラ君に告ぐ!!』

エイジが叫ぶ。

『彼等は私達山形復興村の捕虜だ!!彼等の身柄引き渡しの条件として、アミキソープ星の代表者による、2年前の地球侵攻に始まる一連の事件への謝罪と賠償を要求する!!』


空中を飛ぶ紫の魚型巨人に乗った網木ソラは、半ばおどけて、

『アラ怖い。デモ分かっテ。地球トアミキソープとガ直接通話する手段ガ無いノ。ダカラこの話ハ一旦持ち帰らせてもらうワ。ワタシがプレジデントの返事ヲ携えテ戻ルその日マデ、捕虜ハくれぐれモ人道的な扱いをお願いネ。』

「心得ている。だが今の地球はどこも、アミキソープ星人のせいで、無駄飯を食わせる余裕は無いので、食う分の労働はしてもらう事になるが…」

『地球侵攻派』の男達の顔がみるみる青くなる。

『その点ハ理解してるワ。ジャ、バイバーイ!!』

そう言い残して上昇するソラ機。捕虜となった男達は慌てて叫ぶ。

「待て!!行かないでくれ!!私達を置いていかないでくれ!!」

「私は自分の罪を認める!!アミキソープの法に則った裁判を受けさせてくれ!!」

「そこのお前…いや、あ、あなた!!さっきのあいつの言葉を聞いたろう!?アミキソープは私達を見捨てる気だ!!私達は人質の価値は無いぞ!!だから解放してくれ!!」

「バカっ!!こんな寄る辺も無い所で放り出されたってどこへ行くって言うんだ!!」


…こうして、山形復興村は、新たな労働力を得たのだった。聞けば彼等はアミキソーブに居場所が無い上に、温室効果で沈む国の者もいるそうだ。掘っ立て小屋の汚い一室だけとは言え地球を征服する事は出来たし、山形は盆地のため、大嫌いな海を一生見ずに済むだろう。本当に良かったな…

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