Side S-4 異世界の虜囚
時は少し遡る。『ミレニアム王国』、長町…
カナコと赤ん坊のユウイチを家まで送り届けると、彼女は再びお礼を言った。
「本当にありがとうございます。」「だー!!」
ユウイチも手を振る。するとウィルが、
「あのー、カナコさん、ちょっと聞きたい事があるんですけど…」
「黒部さーん、どうかされましたかー!?」
そこに、向こうから揃いの服を着た3人の男性が歩いて来た。
「あ、片倉さん、パトロールご苦労様です。」
カナコが挨拶すると、ウィルが、
「カナコさん、どなたです?あの人達は!?」
「『ミレニアム王国』自警団団長の、片倉さん。」
「と、いう事は、衛視みたいなものか…なら…あのー、すみませーん…」
ウィルが片倉と呼ばれた男に向き直ると、彼等の目が大きく見開かれる。だがウィルはそれに気づかず、
「ちょっとお尋ねしますが、この辺に、アユムって人いませんか!?蒼い機械の巨人に乗ってる…」
ウィルに話しかけられて、片倉達の表情が徐々に強張る。
「…どうかされましたか!?」
さすがにウィルも彼等の異変に気付いた。
「お、お前………」
「はい!?」
片倉はワナワナ振るえる指でウィルの腰を指差し、
「その日本刀は何だ〜〜〜っ!!いくらこんな世の中でも、銃刀法違反だ〜〜〜っ!!」
ウィルの腰には曲刀を履いていた。
「こ、これは恩人から貰った物で…大体、みんなだって機械の巨人を持ってるじゃないですか!?」
「う、うるさぁい!!アレッツはいいんだ、アレッツは!!」
言いながら片倉達は銃を構える。
「弓の無いクロスボウ…それも、武器なんですよね!?」
ウィルも見事な拵えの曲刀を抜き、刃の方を下にして構える。
タァァァン!!タァン!タァァァァン!!! 銃声が3つ。
「遅い!!」
次の瞬間、ウィルは自警団員の横にいた。そして、
ガン!! 曲刀の峰で団員を打ち下ろす!
「貴様!!」
片倉達が銃を構え直すが、返す刀でもう一人の団員と、片倉も打ち据える!!倒れる3人。
ウィルは曲刀を鞘に納めながら、
「安心しろ、峰打ちだ…」
「何やってんのよぉぉぉ!!」バキっ!!「ぐぇっ!?」
車椅子のカナコに腹を殴られてもんどり打つウィル。カナコは怒鳴る。
「いくら刃のついてない方ででも、そんな鉄の棒で殴られたら、痛いに決まってるでしょぉぉぉ!!!」
確かに、片倉達は殴られた部分が青く変色している。
「ご、ごめんなさい、私の連れが…」
エリナが慌てて片倉達に駆け寄り、
「怪我を治癒させて下さい。【エリアヒール】!!」
周囲の空間が緑の光に包まれると、片倉達の内出血や打撲があっという間に癒えてしまった。
「あ、あ、あ、あ………」
片倉は自分の身体に起きた…この奇妙な3人が起こした怪奇現象に目を白黒させた後、叫んだ。
「怪しい奴等め、ひ、引っ立てろ〜〜〜!!」
※ ※ ※
『ミレニアム王国』、自警団詰め所、地下留置所…
ガチャン………
鉄格子に鍵が下ろされ、ウィル達は閉じ込められてしまった…
「貴様等は山形の復興村に流刑にしてやる!!すぐに迎えが来るからな!!」
そう言い残して片倉は階段を上がって行った。後に残されたウィル達は、
「…どうしよう…どさくさに紛れて刀はアイテムストレージに隠したから無事だけど…」
ヴィッキーは懐から何十枚ものカードを取り出す。さすがの片倉達も、これが武器だとは思えなかったらしい。ヴィッキーが数奇な巡り合わせで手に入れた力…
ヴィッキーは1枚のカードを取り出す。金貨に見える五芒星4つを、男が両手両足で独り占めしようとする様に抱え込んでいる図案。
「フォー・オブ・ペンタクルズ!!」
本来これは、カードの男の様に大事な物が入った宝箱や扉に鍵をかける物だ。だが、上下逆に使えば…
ヴィッキーはカードを、逆位置に鉄格子に貼り付ける。すると…
カチャっ…!! 鉄格子の鍵は開いた。
「さ、出よ!!」「う、うん…」「いいのかしら…」
ウィル達は抜き足差し足で階段を登り、詰め所を抜けて行った…
※ ※ ※
同時刻、仙台と山形を繋ぐ谷間…
明らかにエルフ系と思われる者達を罪人として囚えた、その話を聞いたスティーブとライオスは、
「ウィル達もこっちに来てるの!?それとも母さんか!?」
「そ、その人達を解放する様に言ってくれ!!エリナがいるならその子だけでも頼む!!」
興奮しながら叫ぶ2人に、エイジはスマートフォンに話しかける。
「もしもし!?実はこちらでもその人達の関係者と思われる人を……」
だがスマートフォンの向こうから声が聞こえない。
「もしもし!?どうされました!?もしもーし……」
ようやく戻って来た通話相手が告げたのは…
「…え!?………脱獄されたぁ!?」
「「「えええ~~~っ!?」」」
叫び声は谷間に木霊した…
※ ※ ※
同時刻、『ミレニアム王国』、長町…
「牢屋を出れたけど…」
「これからどうしよ!?」
そんなウィル達に話しかける人影…
「ねぇ、あんた達………」
車椅子の、カナコだった。
「カナコさん!?」「どうしてここに!?」
「アユムに用があるんでしょ!?案内したげる…さっきの車、出して…」
「い、いいんですか!?」
「…自警団の人達とは色々あったけど、あんた達、悪い人じゃ無さそうだし…言っとくけど、その刀をアユムに向けたら承知しないからね!!」
「分かってます!!僕等はアユム君の敵ではありません!!」「ありがとうございます、カナコさん…」
ウィル達はカナコの案内で、仙台市街地の廃墟を北上して行った…
※ ※ ※
同時刻、仙台と山形を繋ぐ谷間を東へと走る自動車が1台…
スティーブ達とエイジが乗った車だった。
「い、急いで下さい!!僕等の関係者ならきっと、アユム君の所へ行ったはずです!!」
「急かさないでくれ!!安全運転で行かせてくれ!!」
やがて自動車の前が開け、蛇行する広瀬川の向こうに杜の都の廃墟が広がるのが見えた…




