appendix3 ライトニングのエミリー・下
ドンドンドンドン!!
エミリーの思索は、部屋のドアを叩く音に中断された。
「エミリーさん、大変です!!すぐに養生所へ来てください!!」
「お母さんが…!?」
※ ※ ※
それから、色々な事が立て続けに起きた。
母エレンの死去、葬儀。エミリーは結局、間に合わなかった。
王国でのエルフ殺人事件と、その犯人の、ライオスによる殺害、
ライオスのスティーブ呼び出し、
ライオスとスティーブの決闘、そして、
ライオスの自首………
だがエミリーには、嘆き、哀しみ、俯き、思い悩んでいる時間があまり与えられていなかった。
共和国はライオスに、過去視の魔動具の技術の封印を言い渡して、身柄を王国へ引き渡し、
王国はライオスを、『迷ひ家の村』での終生防人の刑に処し、
そこにエミリーも同道した。
(スティーブは、世間の者は私を馬鹿な女と嘲笑うでしょうね。でも…)
『迷ひ家の村』でエミリーは、【リカバリー】使いの高位の治癒術師である、村長夫人イナに師事し、エルフの治癒術師達と交流を持ち、
『目に見えない小さな生物』に冒された病人の治癒方法を模索しつつ、自身も治癒術師としての腕を磨く。
雷に怯えていた少女はもういない。
雷は天と地とを繋ぐもの。
(ライオスやスティーブが成し遂げた、天の神の技を地に住まう人々にもたらす事が、きっと私にも出来るはず…)
※ ※ ※
ライトニングのライオス
防人として『迷ひ家の村』へ流されたライオスだったが、彼を待っていた最初の仕事は…大工仕事だった。
村長宅の隣接した、養生所の建設。『死人すら生き返らせる』というイナ夫人の噂を聞き付けて、エルフの貴族がお忍びで治療に訪れる様になり、心尽くしで良いから、彼等が宿泊するための、きれいな宿が必要になったのだ。
ライオスの防人としての刑期は、終始その様に、緩やかに過ぎて行く。
有事の際は剣を取って戦ったが、平時は鍬を持って畑を耕した。
そして時は流れ、『迷ひ家の街』に冒険者ギルドの『港街』支部の出張所が出来て防人が有名無実化し、
伯爵夫人オリヴィアの第三子出産による恩赦で放免された後も、ナイン村長にその人柄を見込まれて街に留まり、
ライオスじいさんは、事ある毎に『俺を町長と呼ぶな~~~!!』と叫び出すナインの息子や孫を叱咤しながら余生を過ごす事となる。
防人としてやって来てから50余年、天寿を全うして棺に入れられたライオスの亡骸には、短く尖った耳が生えていたという…




